事例4:横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業(事業概要)

(神奈川県 横浜市 人口3,495,117人(平成16年))

「横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業」は、下水道工事等で掘削された建設発生土に、市が有償で供給する焼却灰を混合して良質な埋戻し材となる改良土を製造する施設を市の北部第二下水処理場の敷地の中に整備(市の既存プラント施設の増設)し、その後平成26年度末までの約10年間にわたり、施設の運営・維持管理を行うPFI事業です。また、本事業は、PFI事業者が施設の建設、維持管理,事業運営に要する費用を改良土処理費(製造した改良土を販売して得る収入)による収入で賄う事業です。
現在、既存の改良土プラント施設(改良土製造能力30m3/時)の増設工事(増設後能力70m3/時)を完了し、平成16年1月から施設の運転を開始しております。

横浜市下水道局改良土プラント写真

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

横浜市下水道局改良土プラントの事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図(平成12年から平成13年)
  • (平成11年のPFI法の施行)
  • 下水道経営の改善に向け、下水道局局長からの指示を受けて、平成12年度に下水道局の事業のうちPFIを導入可能な事業について局内で検討を開始。
  • 検討を開始後、比較的短時間に「発生土有効利用施設」がPFI方式に適するであろうという局内の大まかな方向性について局内で合意。
  • 平成13年、PFI導入可能性調査を(株)三菱総合研究所に外部委託。
  • 同年、下水道局総務部事業計画課技術開発係に課長1名、係長1名、担当1名の計3名体制で本事業の事務局を設置。
  • 加えて、庁内関係各課課長10名強によるワーキンググループ(WG)を設置。事務局で詳細検討を行い、当WGに判断・意思決定を諮る形で検討を進める。
  • 必要に応じて、事務局が適宜、法制課、契約課等に相談・協議。
横浜市下水道局改良土プラントの事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図(外部調査から平成16年1月施設の併用開始まで)

2.本事業における特色や課題とその解決策

下水道国庫補助金の交付に関して、民間事業者から負担金の支払を受けました
(公共下水道国庫補助:増設費用約4億円の内、55%を補助金として受領)

公共事業の実施に際して民間資金を有効に活用するというPFIの趣旨をかんがみ、国庫補助金の交付に際しては、施設増設の費用のうち国庫補助金を除く部分に相当する額の負担金を民間企業から頂く方法を取りました。また、建設費は、全額を市の予算として執行しています。

契約交渉者の選定から工事完工引渡しまでのスケジュール

事前に、事業に関する様々な不確定要素について、周到な対応策を検討・実施しました

既存(現有)施設に関し、応募希望の民間事業者へ詳細な情報提供を事前に行いました

本事業では、既存(現有)の改良土製造プラント施設の増設を行いますが、事業期間中の10年間は、事業者自らが施設整備を行っていない既存施設を含めて施設の運転・維持管理を行うこととなります。したがって、民間事業者が事業へ応募する際は、自らが施設整備を行っていない既存(現有)施設部分について詳細な情報を把握する必要があります。
こうした事情に対応して、本事業では、民間事業者が応募前に既存施設の図面、改修・故障履歴や運転記録を市役所にて1週間、閲覧できるようにしました。閲覧の際には、これらの提供情報に関する疑問点等について、民間事業者と市職員との質疑応答も適宜その場で行いました。またこれに加え、応募希望者を対象とした現場見学会(半日)を実施しました。このような取組により、本事業への応募を希望する民間事業者が本事業への応募に際して必要とする情報を適切に提供できるように極力努めました。

事前に改良土の受入市場を開拓し、将来の需要変動を抑える工夫をしました

本事業は改良土販売収入により事業を運営していくPFI事業であるため、将来の改良土の需要の変動(減少)を把握することが事業の安定的な継続のために大変重要です。本事業では、事前の庁内検討・調整により、下水道事業だけでなく道路事業や水道事業など他部署の事業においても改良土を使用することが市の『建設発生土処分要領』の中に明記されました。これにより、将来の改良土の利用先を拡大し、需要変動リスクを低減し事業の安定化に寄与しました。

地元に根ざした企業が持つ地域情報を有効に活用して事業を実施することになりました

政令市である横浜市は、WTOによる制約があり、そもそも、事業者の選定に関して、地元企業が有利となるような特段の措置をとることは法的に不可能でした。
ただし、結果的には、本事業で選定された民間事業者グループは、以前から現有施設の運転・維持管理を行っていた地元企業を構成員に持つグループとなりました。事業者の選定過程においては、代表企業は、県内の改良土市場等の地域情報に詳しい点等を活かして事業に当たることができるため、高い評価を得ることになりました。

本PFI事業の民間事業者

横浜改良土センター(株)(特別目的会社、SPC)
代表企業:奥多摩工業(株)
構成企業:JFEプラント&サービス(株)、奥多摩建設工業(株)
資本金:3,000万円
事業概要図
横浜市下水道局改良土プラントの事業概要図

3.事業開始後の状況

(1) PFI導入のメリット

平成16年1月から順調に運営を続けています

当改良土プラントは、平成16年1月15日の供用開始後、既に1年間以上、施設を運転しています。施設の運転は非常に順調で、改良土の生産販売量も当初の事業者予測量どおりに着実に推移しています。

運営業務の効率化に繋がる民間ノウハウが活用されています

PFIの導入によりもたらされた本事業での民間ノウハウ活用の一例として、当施設への発生土の持込みに際して、発生土持込み業者とPFI事業者の間の手続きにチケットシステムが導入されました。発生土の持込み業者からは、現場での発生土の受入作業がスムーズになったと高い評価を得ています。

市職員の事務作業の負荷を削減できました

民間事業者により事業運営が行われるため、発生土の受入等に関係する市の事務負担が軽減され、以前に市が既存施設を運営していた際と比較して、市の嘱託職員1名の人員削減につながっています。

(2) PFI導入のデメリット

今のところ、特段のデメリットは見当たりません。

4.PFI事業を振り返って

(1) PFI事業の成功のポイント

事業化に際しては組織トップの強いリーダーシップが重要です

事業化に際しては、下水道局局長の強いリーダーシップが、局内の意思決定や合意形成を円滑に進めることに大きく寄与したと感じます。また、市長もPFIを市の財政逼迫を好転する有効な施策の一つとして認識しており、PFI導入に前向きなスタンスで対応することができました。

関係する庁内他部署との調整を着実に実施しました

本事業の実施に当たっては、随時、事務局が庁内の関係他部署(道路、水道、環境等の各部署)と綿密な調整を重ねました。その結果、本施設で製造する改良土の需要の増加・安定化を図ることが可能になり、将来の安定的な事業継続に寄与することができました。

早い段階での国との交渉を行いました

本事業は国庫補助対象事業であり、補助金の所管官庁である国土交通省都市・地域整備局下水道部と市の間で、平成13年から度重なる折衝を前もって重ねました。その結果、国庫補助金の交付を円滑に実現することができました。

(2) PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

事業実施へ向けた確固とした『シナリオ』を描くこと

PFI事業は、従来型の事業と比べて事業の計画・実施過程が煩雑なため、PFI事業の担当者は、まずは、確固とした「シナリオ」を持つことが重要です。つまり、事業全体のスケジュールをにらみつつ、庁内での検討や調整、国等との折衝など、必要となる対応事項を具体的かつ事前に把握し事業の計画・実施に当たることが必須です。

既存施設の改修や増設は、収益による事業運営を可能とするPFI事業に適すると考えます

本事業も該当しますが、既存施設の改修や増設は、当然のことですが、施設を新設する場合に比べて初期投資(施設整備費)を低く抑えることが可能です。そのため、民間事業者が施設の建設、維持管理,事業運営に要する費用を施設からの料金収入により賄うPFI事業として実施しやすいのではと考えます。また、地方公共団体における既存の公共施設ストックの有効利用という観点からも、今後も、改修や増設方式のPFI事業が増えるのではと考えます。

既存施設運営に関する単年度委託を、長期一括委託にするメリットも大きいと考えます

毎年、随意契約で民間企業へ委託している施設の運営や維持管理業務などは、数年間の長期一括契約とすることによって、民間企業の創意工夫や企業努力を有効に活用して、提供するサービスの向上やコストダウンの効果を享受することが可能になると考えられます。このような場合は、建設部分(初期投資)を伴わない運営型PFI事業という形も考えられるのではないでしょうか。

脇本 景さんのお写真

PFI事業担当者のお一人の横浜市
下水道局 脇本 景さん

PFI事業における地方公共団体内部の検討体制について

PFI事業の検討を始めた、平成13、14年当時は、まだ、市のPFI事業を統括して担当する部局が市庁内に無く、本事業においても、技術職3名による担当課(事務局)のみで検討を行っていました。
PFI事業では、従来型の事業と異なり、技術以外に財務や法務の知識が幅広く要求されるため、事務局を支援する部署(経理、契約関係部署等)の職員の事務局への参加があったならば、本事業においても、もっとスムーズに検討を実施することができたと思われます。
なお、本市では、その後、旧プロジェクト推進室を経て、公共事業調査課という部局が設立され、PFIを含むPPP(官民協働による事業手法)全般に関し庁内取りまとめを行う担当が設置されることとなりました。また、現在は、市独自のPFIガイドラインも策定済みです。

事業担当者

横浜市 環境創造局 環境活動推進部 環境科学研究所
担当係長 脇本 景氏
〒235-0012 神奈川県横浜市磯子区滝頭1-2-15
TEL:045-752-2605
改良土プラントPFI事業(横浜市)

キーワード:下水道事業、既存施設の改修・増設、BTO方式、ミックス型(改良土料金収入+国庫補助金)

事例4:横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業