事例5:留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業(事業概要)
(北海道 留辺蘂町 人口8,989人(平成16年))
「留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業」は、北海道置戸町、訓子府町、留辺蘂町(以下、「3町」という)の廃棄物の適正な処理を広域的に行うため、留辺蘂町内に一般廃棄物最終処分場を新設し、維持管理・運営を行うPFI事業です。廃棄物埋立容量は71,000m3です。
事業期間は、建設期間及び供用を開始した日から17年間(埋立期間15年、管理期間2年)とし、事業者は、埋立終了後、2年間、施設の管理を行います。
平成16年4月から供用を開始しています。
1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ
- 平成11年度から、3町による一般廃棄物最終処分場整備の検討を開始。
- 平成12年4月に3町の町長・担当課長・係長で組織する協議会を発足し具体的な検討に移る。事務局を留辺蘂町が担当し、住民課職員が兼務で対応。
- 協議会の事務局員が北海道大学教授による講義を受け、PFIの存在を知り、本事業へのPFI導入を発意。
- ふるさと財団によるPFIアドバイザー派遣事業講習会を3町の協議会事務局員等が受講し、PFIについて具体的な話を聞く。
- 留辺蘂町外2町一般廃棄物広域処理推進協議会としてPFI導入可能性調査の実施を決定する。
- コンサルタントを入札で選定。パシフィックコンサルタンツ(株)が選定される。
- 導入可能性調査の結果、VFMが出たことによりPFIで行う旨、3町広域処理推進協議会で決定する。
- 13年の6月議会でPFIの事業方針について説明、9月に債務負担行為の議決を受ける。
- 13年6月~8月にかけて住民・地権者の合意を得るとともに補助金について国(環境省)、北海道と協議する。
事業化の過程における議会や住民への対応
議会ではPFIについて「民間事業者が倒産したらどうするんだ」、「安さを追及すれば質の悪いものができてしまうのではないか」といった議論はありましたが、民間事業者が事業継続不可になっても事業そのものは継続できること及び導入可能性調査でVFMが出たことを説明し、特に大きな反対もなくPFIで行うことが議決されました。
住民からは国道から最終処分場に通じる町道を単線でなく、複線にしてほしいといった要望があった以外、反対意見等は特にありませんでした。
2.本事業における課題とその解決策
3町の協力体制の構築により事業スケジュールを守りました
PFIを検討していた段階で、平成16年に供用開始が決まっており、過密スケジュールの中で計画を進めていかなければなりませんでした。用地取得に関わる地権者への説得に時間が掛かったことや、実施方針の公表とほぼ同時に特定事業の選定、入札説明書等の公表を行う必要があったことなど苦労はありましたが、アドバイザーの適切な指導や関係各課の応援体制、そして訓子府町と置戸町の積極的な協力もあり、予定どおり供用開始することができました。
助役の指示により各課の応援体制が築かれ、事業を円滑に進められました
過密スケジュールの中、当初は協議会の事務局になっていた留辺蘂町住民課の職員3人だけで検討を進めなくてはなりませんでした。本事業のための専門職員を置いていたわけではなく、その他の業務と兼務していましたのでかなり大変でした。
しかし、助役の指示によって関係各課の役割分担がなされ、支援体制ができました。例えば、用地購入後における登記事務関係や他機関との連絡調整は企画財政課、土地購入者に対する免税処理や民間事業者に対する用地無償貸与に関する条例などの整備は総務課、国道から最終処分場に通じる町道拡幅については建設課が担当するといった具合です。これによって、各課が本格的にPFI事業を検討する体制が整いました。
民間事業者による新しい金融手法の提案により、節税対策を実現しました
本事業では、財政負担の軽減が大きな目標の一つでした。この点に関しては、落札した民間事業者から、ファイナンスリースという新しい手法による法人税の節税対策の提案がありました。これにより約1億円の節税効果が生まれ、結果として町の財政負担額軽減につながりました。
ごみ量と支払スキーム
年度が経つごとに、年間廃棄物埋立量は徐々に減っていくことが予想されたため、ごみの埋立量に重きをおいて委託料を支払った場合、民間事業者の収支のバランスがくずれる可能性がありました。そこで、委託料については定額部分(固定費として約9割)と変動する変動部分(変動費)に分けて支払うこととしました。
国庫補助金
国庫補助金(廃棄物処理施設整備補助)については所轄の環境省に従来方式と同様に補助金の適用が受けられるか確認しました。当時の環境省のPFIにおける補助金は、原則としてBOT方式を対象とし(現在はBTOも可)、民間事業者へ直接交付を行うとしていたことから、本事業でもBOT方式を採用しました。補助率については、従来方式と同様に補助対象額の25%でした。また交付税措置についても総務省に従来方式と同等の交付となるとの確認を得ました。
3.事業開始後の状況
(1) 運営モニタリングの方法
24時間遠隔監視センター
住民課とコンサルタントにより運営モニタリングを実施していますが今のところ問題点は特にありません。
埋立地に降った雨や雪は、浸出水として汚れた水になりそのまま施設の外に流れ出ると周囲の環境悪化を招く危険性があります。そこで、放流水の水質が適正かどうか等のモニタリングを実施していますが、今のところ問題ありません。
また落札した事業者の提案によって24時間遠隔監視センターが設置され、常に各施設の状況・異常発生を把握し、適切な対策を行う体制が取られています。
(2) PFI導入のメリット
安くていいものができました
樹脂系泡被覆材の活用
価格面では、入札予定価格よりもかなり低額の提案がありました。VFMの値は各グループで大きく異なりましたが、落札グループはVFMが約50%で価格的にも提案審査の評価点も一番の評価でした。
また技術面についても民間事業者の工夫が見られました。落札グループは二重遮水シート工法の採用で、1:3ではなく、1:2の法面勾配を設定することにより、建設時の採掘土量が削減され、建設費の大幅な削減が実現されました。さらには覆土材として樹脂系泡被覆材(容積を取らない新材料)を利用することなど低廉で優れたサービスを提供するための画期的な創意工夫がされています。
(3) PFI導入のデメリット
要求水準書に明示すべき項目の判断は非常に困難でした
PFIでは民間事業者の創意工夫を促すため、仕様を細かく決めるのではなく、行政が求める性能を規定して後は民間の提案にゆだねるというのを基本としていますが、行政で細かく規定すべきだった事項も要求水準書に十分盛り込まなかったために、当初期待していたものと異なる可能性があります。
供用開始された現在の最終処分場は処分場に行くまでの道のスペースが狭く、脱輪した場合の危険性が心配されます。要求水準書にどこまで記述していいのかの判断がPFIの難しいところではないでしょうか。
4.PFI事業を振り返って
(1) PFI事業の成功のポイント
留辺蘂町の脇課長(中央)と
大原課長(右)(左は調査員)
検討事務局を側面支援する他部署の体制構築が重要です
PFI事業の実施には事務局以外の各課の協力体制が重要です。今思えば、事務局だけでは供用開始予定日までの過密スケジュールをこなせなかったと思います。本件では、VFMテスト実施から実施方針の公表までわずか5カ月、その後入札による提案書の受付まで3カ月半と驚異的なスピードでの事業実施でしたが、助役の指導力によって各課の支援体制が整い、予定どおり供用を開始することができました。
民間事業者の創意工夫が発揮されたこと
ファイナンスリース(法的には賃貸借ですが、売買と同様に貸借対照表の資産及び負債に計上することが可能)による節税効果等、民間事業者の創意工夫が発揮され、町の財政負担額を減らすことができました。
(2) PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス
地方公共団体は財政的に厳しいはずで、今後PFIの導入について検討する必要がある事業が今後増加していくと考えます。新しいことを行うことはなかなか大変かもしれませんが、行政として必要となる様々な新しい取組へ前を向いて一歩を踏出すことが必要ではないでしょうか。
事業担当者
- 留辺蘂町 住民課
- 課長 大原 清氏
〒091-8666 北海道常呂郡留辺蘂町字上町61番地
TEL:0157-42-2110