事例6:とがやま温泉施設整備事業(事業概要)

(兵庫県八鹿町※ 人口 11,718人(平成16年))
※平成16年4月、養父郡4町合併。養父市となる。

とがやま温泉施設のイメージ画像

「とがやま温泉施設整備事業」は、リハビリ的要素を取り入れた温泉施設を整備し、その後の15年間にわたり施設の運営・維持管理を行う事業です。本事業は、「八鹿病院」や「県立但馬長寿の郷」等の既存周辺施設との連携等により、町内及び広域的な地域住民を対象に、低廉で質の高いサービスを提供し、福祉・健康の増進と地域交流の促進を目指すものです。施設は、延床面積約900m2の鉄筋コンクリート造2階建てで、主浴槽の他、露天風呂、高温サウナ、ジェット風呂、車椅子利用者向けケア浴場を設置、また、軽食・物販や畳休憩コーナーを備えた、全ての人々が利用しやすいユニバーサルデザインの温泉施設です。
平成14年4月に工事着工し、同年12月14日に「とがやま温泉 天女の湯」として施設供用を開始しています。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

とがやま温泉施設の事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 平成7年、源泉調査の開始。平成8年、温泉湧出。温泉分析調査等実施。
  • 平成11年、第3セクター「とがやま温泉(株)」を設立するも、事業化に至ることなく、平成12年、同社解散。
  • 町長から企画商工課へ、直営方式を含め事業化への再検討の指示。
  • 内閣府からPFIのパンフレットが送付される。
    →企画商工課において、PFI方式を検討開始。
  • 行政内部にPFIに関する知見がないため、まずは、基礎調査として、民間コンサルタント(10社)へ簡易なアンケート調査と委託費見積依頼を実施。
    1. 運営開始までのスケジュール、
    2. 本事業のPFI方式への適性、
    3. 委託費を調査
  • 過半数が、PFIや公設民営方式の導入可能性に肯定的回答を寄せる。
  • 再度、町長へアンケート結果を説明、『PFI事業化調査』の実施を組織決定するに至る。
  • 検討期間は6ヶ月と限定。
  • 平成13年4月、PFI事業化調査に係るアドバイザー((株)エイトコンサルタント)を選定。
  • 検討事務局(企画商工課)を2名体制で設置(ほぼ専任)。
  • 企画商工課課長(土木職)+担当者(税・財政部署経験者)
  • PFI事業審査委員会(学識経験者2名、庁内6名)を設立。


審査委員会の下部組織として、作業部会(学識経験者2名+事務局+コンサルタント)を組織し、実際の検討作業を実施。学識経験者2名の主導により検討が進捗。

PFI導入検討初期における庁内説明・調整

平成13年2月に企画商工課でPFI導入に関し検討を開始した当時は、まだ町組織内のPFI導入に関するコンセンサスは得られておらず、またPFIという、これまでに実施したことのない事業手法に対しての抵抗感・違和感がありました。こうした庁内への説明のための第一歩として、基礎的な説明材料作成の意味で、平成13年2月、企画商工課で、関西近辺のコンサルタント10社に対して、(a)運営開始までの所要期間、(b)コンサルタント外注費(アドバイザリー業務委託費用)、(c)本事業のPFI方式への概略の適性等について簡易なアンケート調査を行いました。その結果、無回答2社、PFI導入は不適当とする2社を除き、4社からPFI方式の導入可能性あり、また、2社から公設民営(PFI的手法)の可能性ありという肯定的な回答を得ました。
この結果を町長へ再度説明し、平成13年3月、町長から、期間を6ヶ月に限定したPFI事業化調査の実施の指示を受け、同年5月にPFI事業化調査に係るアドバイザリー業務の委託契約をコンサルタントと締結いたしました。

議会への説明・PFI事業講演会の実施

議会に対しては、適宜、事務局での検討内容について説明・報告をいたしました。また、PFIの内容をより深く理解していただくため、平成13年10月には、本事業のPFI事業審査委員会メンバーの鳥取大学教授によるPFI事業講演会を周辺市町の議員を含めて実施し、約100人にご参加いただきました。

2.本事業における特色や課題とその解決策

本事業の意義、事業の全体像について、実施方針にできる限り明確に示すよう努めました

本事業の実施に当たっては、実施方針の策定に注力いたしました。従来型やPFIといった事業手法以前の「事業の本質」の部分、すなわち、事業の必要性、運営を含めた事業の全体像等について行政内部で検討を重ね、これらをできる限り明確に実施方針の中で表現するように努力いたしました。
実施方針の中で、行政から民間事業者へのメッセージとして事業の基本方針、目標、要求される事業全体像を明確に示すことにより、民間事業者の本事業に関する理解を深めることができたと考えます。また、これに加えて実施方針は、その後の要求水準書、事業者選定基準、運営モニタリングの内容検討を進める上での指針としても大いに利用することができました。
PFI事業実施の過程において、実施方針の策定は行政として「最も大切なステップ」の一つであると考えます。

地元業者が設立した会社(SPC)が本事業を実施しています

本事業は、地元の設計会社と建設業者により設立されたSPC(特別目的会社)により実施されています。また、本事業の施設整備費はPFI事業としては比較的小規模なため、資金調達をPFI事業で通常用いられるプロジェクトファイナンス手法ではなく、選定事業者グループの構成企業である、キタイ設計(株)と但南建設(株)からの融資により調達することになりました。

SPCとがやま温泉株式会社と八鹿町やキタイ設計と但南建設の2社との関係図

3.事業開始後の状況

(1) 運営モニタリングの方法

現在の施設利用者数は当初の需要予測を若干下回るものの、平成14年12月の施設オープン以来、順調な運営を行っています。
運営モニタリングについては、年齢や性別の異なる利用者モニター6名を募り、1月当たり2回の施設無料利用券を各人に配布し、施設のサービス、維持管理状況について定性的な評価をお願いしています。また、その評価結果は民間事業者にフィードバックされ、施設運営の改善を図っています。また、SPCの経営状況についても、毎年、SPCから決算書の提出を受け、庁内の事業監理を担当する部署により確認を行っています。

(2) PFI導入のメリット

露天風呂(左)とケア浴場の電動リフト(右)の写真

露天風呂(左)とケア浴場の電動リフト

落札事業者と行政の間の対話から生まれたアイデアを事業の中で具体化することができました

事業者選定の後、SPC(特別目的会社)支配人と市職員共同で、近隣の障害者施設を視察し、施設の使い勝手等に関して聞き取り調査を実施しました。また、設計協議の一環として、「県立但馬長寿の郷」の理学療法士、作業療法士を交えて利用者の動線等の施設詳細についても検討しました。
事業者の提案内容を実際の施設整備内容に具体化する段階で官民協議を行い、ユニバーサルデザインやバリアフリーの観点から見て、非常に使い勝手の良い施設に仕上げることができたと考えます。従来型の発注手続きではこうした形で施設の詳細設計を行うことは困難ですし、PFI方式の特長の一つである「性能発注」のメリットが発揮されたと認識しています。

(3) PFI導入のデメリット

要求水準書や事業契約書の策定は非常に大変です

それまで行政は温泉事業を運営したことがなかったため、要求水準書という形で、行政から事業者に望む施設の「性能」や運営・維持管理の「サービスレベル」について明確に文章で規定し、応募を希望する民間企業へ意思伝達することは非常に困難であると感じました。本事業では、行政として実施方針の作成に非常に力を入れましたが、民間事業者への行政からの意思伝達の際にも、実施方針の記載内容は非常に大切ではないかと思います。
また、行政としては事業運営の経験がなかったので、将来の具体的なリスクを事前に想定することも非常に困難でした。応募要綱、要求水準、契約書に至るまでの作業は、これまで経験した事のないものばかりで、言葉の意味合いすら分からない状況にありました。PFI事業審査委員会の学識経験者2名の方々の力強いご指導により策定されました。将来のリスクの見極めには、経営感覚が必要ではないでしょうか。

4.PFI事業を振り返って

PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

阿部 稔さんのお写真

事業担当者の養父市政策監理部
八鹿振興課 副課長の阿部 稔さん

専任職員による事務局体制の整備と決定権限の委譲が必要で

行政内の検討体制については、各部署から兼任のメンバーを集めたプロジェクトチームを作ると、各メンバーの当事者意識が不足し、検討のスピードダウンになりかねない面もあります。したがって、専任職員により構成される検討事務局を作って、ある程度、権限を持たせた体制とする必要があります。更に、外部のコンサルタント(アドバイザー)はあくまで行政の業務を補完する立場ととらえるべきであり、検討の主体はあくまで行政であることを認識しなければならないと思います。
また、PFI事業では、聞きなれない専門用語も多く、これらを理解するのも大変であり、業務負荷は大きいので、担当職員は身体に気をつけて欲しいと思います。

コスト削減も重要ですが、「質の良いサービスの提供」がPFI導入の第一の目的です

本事業では、PFIの導入によりVFM(コスト削減)が達成されましたが、PFIを導入する場合、コスト削減のみを重視し過ぎてはいけないと思います。本事業においても、事業運営の安定化と運営内容の充実を第一の目標としましたが、PFIの目的は、質の良いサービスの提供にあります。往々にして定量的評価に目を奪われがちですが、サービスの質の向上といった定性的評価に目を向ける必要性を感じています。また、たとえVFMが出たとしても民間事業者の参加がなければPFI事業は成立しないということも認識しなければなりません。

事業担当者

養父市 政策監理部 八鹿振興課
副課長 阿部 稔氏
〒667-8651 兵庫県養父市八鹿町八鹿1675
TEL:079-662-7601

キーワード:温泉施設、地元企業の参画、BTO方式、ミックス型(サービス対価+利用料金収入)、事業期間15年

事例6:とがやま温泉施設整備事業