事例7:山陽町新型ケアハウス整備事業(事業概要)

(山口県山陽町※ 人口 22,608人(平成16年))
※平成17年3月、小野田市と合併。山陽小野田市となる。

山陽町新型ケアハウス整備事業のイメージ画像

「山陽町新型ケアハウス整備事業」は、町の高齢者を対象とするユニットケアを採用した新型ケアハウス、デイサービス施設、地域交流センター及び小公園で構成される複合施設を整備するPFI事業です。既存の山陽老人福祉センターを解体撤去した後、ケアハウスとデイサービスの定員各40人の地上4階、鉄筋コンクリート造の施設を建設し、施工完了後速やかに山陽町に所有権を移転し、平成37年3月31日までの約21年の運営期間中、本施設を町からPFI事業者へ貸借して運営及び維持管理業務を委託するBTO方式で実施します。
平成15年9月に実施方針を公表後、平成16年4月、優先交渉権者を選定し、7月に契約を締結しています。現在は、施設名称を「ケアハウスさんよう」と決定し、平成17年10月のオープンを目指し、建設工事が進んでいます。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

山陽町新型ケアハウスの事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 平成14年度、そもそも、既存施設の山陽老人福祉センターの老朽化と経営不振への対策を社会福祉協議会理事会において協議中であった。
  • その際に有識者からPFI手法の紹介があり、町長がPFI方式によるケアハウス整備計画の検討を発意。
  • 新型ケアハウスPFI事業の先行事例である東京都杉並区へ課長2名を派遣、聞き取り調査を実施。山陽町での同種事業実施へ肯定的な結果を得る。
  • 平成14年7月、山陽町新型ケアハウス建設PFI調査研究委員会(部長3名・課長9名・係長1名)を設置し、内部検討開始。
  • 杉並区への聞き取り調査結果や「PFI年鑑2004年版(日本PFI協会刊)」の既存PFI事業の実施状況やVFM等を参考に検討した結果、PFI導入の適性があるとの判断となった。
  • 平成14年12月、同委員会から町長へPFIの導入を提言。平成15年度予算に新型ケアハウス調査委託費を計上した。(PFIアドバイザリー業務委託)
  • 平成15年4月、民生部保健福祉課に1名の専属職員(事務局)を配置。
  • 平成15年5月、新型ケアハウス調査委託に係るコンサルタントとしてプロポーザル方式により(株)日建設計シビルを選定。
  • 15年9月、選定審査会(外部有識者2名、庁内5名、住民代表1名)を設置。

2.本事業における特色や課題とその解決策

ケアハウス入居者の将来変動(需要変動リスク)について事前に綿密な調査・検討を町により実施しました。

ケアハウスの運営は、介護報酬、施設利用料等による民間事業者の独立採算となっており、需要変動リスクについても事業者の負担となっていますが、実施方針公表後の質問回答の際に、周辺の類似施設における入所待機者数について電話聞き取り調査を実施し、当施設の規模(40床)を上回る待機者数があることを町にて確認しました。聞き取り調査結果は、質問回答において公表し、民間事業者が需要リスクについて適切な判断が可能となるように配慮しました。

国庫補助金が仮に交付されない場合は、町の責任分担(リスク分担)としました

本事業では、老人福祉施設関係国庫補助(厚生労働省)を申請しました。当初、国庫補助金が交付されなかった場合、町が事業費を調達できなくなり、事業実施そのものが不可能になるのではないかとの懸念が県から提起されましたので、その場合は町の起債で事業費を賄う旨、回答しました。また、万が一の補助金の不交付リスクを町のリスク分担とすることについては、本事業の場合、妥当であると考えられ庁内から異論は出ませんでした。

応募企業グループの代表企業(介護事業者)に対して県内の運営実績を求めました

本事業の応募企業の資格要件について、代表企業は「高齢者介護サービス事業の運営実績を山口県内で有する介護事業者」であることとしました。これに対しては、本事業へ応募する民間事業者の数が減少するのではという懸念もありましたが、本事業の実施のためには地域事情に精通し、かつ、運営段階での迅速な対応能力が不可欠であると考え、県内での運営実績を応募資格要件として求めることとしました。

山陽町新型ケアハウスの事業スキームのイメージ図

予定価格の取扱い及び一部施設内容変更について柔軟な対応策を講じました

本町で従来型事業を行った場合と同様、本事業においても予定価格の公表は実施しませんでした。結果的に、4グループの応募者のうち、予定価格を超過したグループもありましたが、これについては、募集要項で事前に明記していたとおり、価格提案の後に、予定価格超過分について事業者の負担とするか否かを確認し、事業者がこれを承諾したため、当該提案者の提案書についても審査継続の措置をとりました。
また、優先交渉権者と契約を締結する前の段階に、募集要項において民間事業者へ要求していた「短期入所施設(数部屋規模)」について、県から「短期入所施設の本施設への併設は難しい」との指導があり、短期入所施設を事業範囲から除くことになりました。これへの対応策として、民間事業者と町の間で協議を行い、短期入所施設と計画していた床面積部分については、他の用途へ変更することを決定しました。ただし、この際契約金額の変更はありませんでした。

3.事業開始後の状況

(1) 現在の状況とモニタリングについて

現在、施設建設が進行中です。建設モニタリング(町による建設進捗状況の監視)は、町の直営(1級建築士資格を持つ職員1人が担当)で実施しています。また、平成17年10月からの運営期間中は、町職員(ケアマネジャー有資格者)が、月1回施設現地に赴き、運営モニタリングを実施し、事業の運営状況を監視する予定です。また、民間事業者の経営状況の監視のために、財務諸表等のチェックも毎年度、町により実施する予定です。

(2) PFI導入のメリット

民間事業者の創意工夫を事業内容に反映することができました

本事業では、性能発注方式を採用し、また、民間事業者の提案評価について価格以外の事業の内容評価の比重を高くしたことにより、応募4グループ各々から創意工夫のある提案が得られました。例えば、選定案では、本ケアハウス事業と、隣接する既存の公営老人ホーム及び特養施設との連携を柱とした老人福祉の拠点ゾーンとしてその地区の運営を図るといった優れた提案が見られました。

長期一括発注によるコスト削減を達成しました

事業費についても、設計・施工と長期の運営・維持管理を一括発注することにより、当初の町の想定に比して14%ものコスト低減が達成されました。長期一括発注については、従来型の業務毎の個別発注に比べて、コスト削減効果は大きいと実感します。例えば本事業は既存福祉センターの解体工事を含みますが、従来型の解体工事単独発注の場合よりも、新施設建設工事の一部となることで工事管理費等を中心に大きな費用低減が図られたと認識しています。

(3) PFI導入のデメリット

PFIは新しい事業方式であり行政も不慣れなため、検討スケジュールが遅れることも想定されます。本事業でも、定例の町議会日程と県の事業認可スケジュールが合わず、施設供用開始の予定期日の変更を避けるため、当PFI事業の施設買入れの議案のみのために臨時の町議会を開催することとなりました。PFI事業の実施に当たっては、十分に余裕のあるスケジュールを設定するとともに、厳格なスケジュール管理が必須と考えます。
また、PFI事業においては事業者選定手続きが煩雑で負荷が大きいと感じました。特に公開で行う民間事業者との質問回答は、膨大な質問数となり非常に大変でした。ただ、結果として、質問回答を通じ行政の提示する事業計画の不足点等について、民間事業者からの意見を参考に早期に見直し対応することができるというメリットも感じています。

4.PFI事業を振り返って

PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

山相信安さんのお写真

事業担当者の山陽町民生部主査の
山相信安さん

既存のPFI事例を参考に行政内部で初期検討を行うことが可能です

本事業を担当した感想として、施設の供用開始までに時間的な余裕のある事業については、PFI方式導入の検討を行う価値はあると考えます。現在ではPFI事業の既存事例数が相当数あるため、これらの事業規模(事業費)、VFM及び実施スケジュールの実績等を参考にすれば、行政内部で、おおよそPFI導入の可能性や効果を把握することが可能であり、その後のPFI導入可能性調査の予算化のための判断材料とすることも可能であると考えます。

複数名による検討事務局の構築が望ましいと考えます

庁内検討体制ついては、複数名の職員によって構成される事務局を設置することが望ましいと考えます。事業担当課の職員に加え、建築関係部署(施設整備の技術面に対応)や財政関係部署(起債等に対応)の職員が、他業務との兼務でも構わないので、正式に事務局員となることが好ましいと考えます。また、事務局員間の議論・相談の活性化のためには、役職が同等な職員によるフラットな組織を構築することが望ましいと思います。

県担当課との意思疎通や情報共有が重要です。

PFI事業に限ったことではありませんが、市町村によるPFI事業の場合は特に、県の関連担当部局とできる限り早期に意思疎通を図ることが非常に大切です。本事業では、新型ケアハウス調査を外部委託した直後に、県の補助金担当課(高齢保健福祉課)、市町村課、政策企画課への概要説明・報告を行い、情報共有に努めました。
一方、県のPFI事業担当は地域振興政策課、国庫補助に関しては高齢保健福祉課、起債に関しては市町村課と、本事業に関連する県の対応窓口が複数存在し、非常に大変でした。県の窓口の一元化を行ってほしいと希望します。

事業担当者

山陽町 民生部 保健福祉課
主査(PFI担当)山相(やまあい) 信安氏
〒757-8634 山口県厚狭郡山陽町大字鴨庄94番地
TEL:0836-71-1812

キーワード:新型ケアハウス、複合施設、BTO方式、ミックス型(サービス対価+介護報酬+利用料金収入+国庫補助金)、事業期間約21年

事例7:山陽町新型ケアハウス整備事業