事例12:(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業(事業概要)

(大分県 大分市 人口440,855人(平成16年))

(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センターのイメージ画像

完成予想図

老朽化、狭隘化した鶴崎支所の移転建設を行い、併せて地域福祉保健センターの設置や情報化への対応など21 世紀に求められる高度な諸施設、機能の充実を図るとともに、コミュニティゾーンの設置など地域住民の交流・活動の拠点となるような複合的公共施設の整備を行う事業です。
事業方式はサービス購入型BTO方式、事業期間は設計・建設1年7ヶ月、維持管理18年5ヶ月の20年間。施設の供用開始は平成17年11月を予定しています。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センターの事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 大分市では、PFI法の施行に伴い、今後の公共事業の実施に当たっては、事業化手法の検討段階においてPFIの導入可能性について判断を行う必要があるとの方針のもと、導入の検討を進めていた。当時はPFIに限らず、PPP等を広く検討するために講演会が開催された。
  • 既存の支所施設の老朽化等が極度に進んでおり、周辺住民からも早く新しい施設を作って欲しいという要望が強かったため、建て替えは必然的な課題となっていた。
  • 平成14年度にPFIで建て替え及び維持管理を行うことができるか、コンサルタント(財)日本経済研究所を代表とするグループ)の支援を受けてPFI導入可能性調査を行った。
  • 可能性調査の結果、定量的な効果が見込まれるという結論に至り、PFIで本事業を実施する方針を決定。
  • 庁内の課長級7名で組織する検討部会を開催し、事業スキーム等を調整・検討。
  • PFI実施体制としては、総務部総務課長のリーダーシップ(他部局との横断的な調整も含む)のもと、庁舎管理係2名が担当スタッフとして既存業務との兼任体制を取った。

2.本事業における課題とその解決策

早急な建て替え需要への対処

早く既存の支所を新しくして欲しいという住民や議会からの要望が多かったものですから、すぐに内部決定がされ、時間のかかるPFIを導入しつつも素早く事業の実施ができるようPFIを進めていきました。

多くの事業者に参入機会を与えるため、2つの支所建て替えを別事業として実施しました。

鶴崎総合市民行政センターと稙田総合市民行政センターの整備を平行して実施(両事業の実施方針を同日に公表)することとなりましたが、各々を別のPFI事業として実施することで、より多くの事業者に事業参画の機会を作る工夫をしました。類似の事業ですから、一つの事業として実施するということも検討しましたが、2つの事業は離れた場所にあるので、一事業とすることによるメリットがそれ程大きくないと判断したため2つのPFIとしました。また、別々の事業とすることで万が一のSPC倒産リスクも軽減することとしました。

PFI導入効果を明確にしました。

PFIでは、どのような導入効果を求めるかについて明確に決めることが重要だと考えます。本事業では除算方式を採用し、コストを抑える部分を意識しました。また、同時に要求水準書において性能発注を徹底することで、事業者がコストとのバランスをとりながら、独自のノウハウや提案を可能な限り発揮してもらうようにしたことで、価格と質のバランスの取れた提案を求めるという市の要求を事業者の皆さんに伝えることができたと考えています。

事業スキームをシンプルにしました。

地元事業者にも積極的に参加してもらいたいという判断から、事業スキームが複雑だと事業者が参加しづらくなるので、できるだけスキームをシンプルにし、また市と民間事業者のどちらがリスクを分担するかという点についても分かりやすくしました。これにより、事業者の参加が増え、安定的な事業の遂行が可能となると考えました。

市財政の負担軽減

庁舎の建て替えについては補助金や起債が見込めないため、一般財源からの拠出となります。今後、定年退職者が多く発生する時代となりつつありますが、単年度に大きな支出をすることは市財政にとって非常に負担となります。したがって、PFIの特徴である支払いの平準化を行うことで、単年度の負担が軽減され市財政にメリットをもたらすことが可能となったと考えています。

入札スケジュールに余裕を持たせました。

できる限りたくさんの事業者に参加してもらえるよう、また、より深く検討してもらえるように入札公告から入札までの期間を4ヶ月と長めに設定しました。これにより、入札説明書等に関する質問回答も2回実施することができ、結果として3グループの入札参加者がありました。

3.事業開始後の状況

(1)運営モニタリングの方法

現在は建設中の段階ですが、建設モニタリングは設計と建設の2つの部会を設け、事業者と市で定期的な検討を行っています。また、財務・法務の関係については公共だけでは難しい部分もあるので、コンサルタントに依頼する予定です。

(2) PFI導入のメリット

多くの民間の創意工夫やノウハウにより財政負担を軽減することができました

メリットは、当然のことですが費用の削減効果がとても大きいということ、建設工事期間の短縮などです。

(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センターの事業スキームのイメージ図

財政支出の平準化が可能となりました

PFIでは建設費を延べ払いする効果があり、単年度の財政支出を抑えることが可能となりました。本市においても今後、財政状況が厳しくなることから、平準化した支払は非常に重要なメリットとなってくると思います。

(3) PFI導入のデメリット

PFIは時間がかかります

事業の検討段階から工事の着手までに、とにかく時間がかかることです。十分な時間が取れない事業や緊急性を要する事業であればPFI導入は困難ではないかと思います。もっと簡単に導入できような仕組み、例えば事業の実施に必要となる各書類の雛型などが、あらかじめ準備されるようになっていけばよいのではないでしょうか。

仕様変更などは困難です

選定された事業者が提案した仕様が公共の希望しているものと異なる場合でも、途中で仕様を変更したりすることは困難といえます。(性能発注のため)どうしても譲れない部分についてはあらかじめ要求水準書等の中で明記しておかなければなりません。

4.PFI事業を振り返って

(1) PFI事業の成功のポイント

求めるものを明確に

民間事業者から提案を受けるに当たり、施設や維持管理のより良い内容を求めるのか、財政削減を求めるのか、公共の求めるものを明確にすることで、事業者のノウハウを最大限引き出すことが可能となるのだと思います。

スケジュール管理は重要です

事業をスケジュールどおりに進めることは大変難しく、きちんとしたスケジュールの設定・管理を心掛けることが必要です。そのためには、可能性調査段階からしっかりとしたスケジュールを設定することも、重要なことだと考えます。

(2) PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

可能性調査は慎重に

事前の可能性調査で、事業の方向性のかなりの部分が決まるため、可能性調査をしっかり行うことが重要です。可能性調査がきちんと終了すれば、あとはレールに乗って実施していけばよいわけです。

本幡さんのお写真

御担当者の本幡さん

スキームはシンプルに

スキームについては、庁舎などであればBTOが基本です。PFI導入における取組の人員体制は、簡単な事業スキームであれば、2名から3名の兼任体制でもなんとかなるのではないでしょうか。

庁舎の建て替えはPFIが向いています

庁舎の建て替えを考えている地方公共団体の方は、起債や補助金が期待できないという特殊性から、庁舎整備には、資金調達手段としてのPFIの適用は効果的であると考えますので、PFI導入を積極的に検討することがよいと思います。

事業担当者

大分市 総務部 総務課
庁舎管理係 阿部氏・藤澤氏
本幡氏(当時)
〒870-8504 大分市荷揚場町2-31

キーワード:支所庁舎、複合的公共施設、BTO方式サービス購入型、事業期間20年