事例14:桑名市図書館等複合公共施設特定事業(事業概要)

(三重県 桑名市 人口110,653人(平成16年10月1日))

桑名市図書館等複合公共施設の写真

「桑名市図書館等複合公共施設特定事業」は、わが国初の図書館PFI事業として平成13年6月13日に実施方針を公表、同年11月12日付で入札公告を行いました。平成14 年3月1日に6グループから応札及び事業計画提案書の受付を行い、総合評価一般競争入札方式により鹿島グループを落札者として決定、同グループ構成企業が出資して設立した「桑名メディアライヴ(株)」と平成14年6月26日に事業権契約を締結しました。
施設は既存の図書館、保健センター及び勤労青少年ホームに、多目的ホールを加えた複合施設で、平成16年10月1日より運営を開始しており、維持管理・運営期間は30年間としています。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 総合計画の策定を推進する中で、図書館の建て替え、図書等の蔵書数を増す市民ニーズが高かった。
  • 総合計画に図書館など既存施設の機能充実を図ることについて明記。
  • PFI法施行前であり、シンクタンクやゼネコンの営業活動によりPFIに関する情報を収受。
  • 各部局主管課長、まちづくり担当課長、行政改革推進本部事務局担当主幹等によりPFI推進検討会を設置。勉強会等を実施。
  • PFI法施行にあわせ、本格的にPFIに取り組むこととなる。
  • PFI手法を行政改革の一環として位置付け。
  • PFI導入可能性調査は、当時PFIの実績がある財団法人日本経済研究所に随意契約により委託(平成12年9月~平成13年2月)。
  • PFI導入可能性調査は一つの係の一業務として、企画課企画調整係の職員1名が兼務にて実施。
  • PFIアドバイザリー業務を財団法人日本経済研究所に委託。(平成13年4月~平成16年2月)
  • 実施方針策定から入札公告までは、政策員1名と企画調整係の専従職員1名の2名体制。
  • 実施方針から入札公告までの資料提供や資料作成は、「図書館等複合公共施設整備に係る庁内会議」のメンバーと調整しながら進めました。
  • 政策課が支援体制にまわり、担当課が中心になって事業推進していくという位置付けでした。
  • 事業契約締結から運営開始までは、平成14年度に新たに設置された政策課PFI推進係の職員2名体制。

2.本事業における課題とその解決策

運営業務をどこまで民間にゆだねるか

当初は複合施設全てにPFIを導入しようという話もありましたが、運営業務をどこまで民間にゆだねるかといった程度によっては、職員の処遇に関する問題が発生する懸念もありました。
実際には、保健センター、勤労青少年ホーム及び多目的ホールの運営は従来どおりとし、民間事業者に運営をゆだねたのは図書館だけにとどめました。従来の図書館職員については、民間事業者のモニタリングや物事の最終決定権の所在といったように業務の質が変わりました。

運営種別 分担 理由
図書館 民間 レファレンス業務を含め民間にお願いすることでサービス向上が見込めると期待しました。
保険センター 医療行為に対する事業者リスクがあり、VFM達成に支障があると判断しました。
勤労青少年ホーム カルチャー的要素があり、事業期間中、事業として成立するかが問題でした。
多目的ホール 単純な貸館業務であり、シルバー人材センターから人材調達する議論もありました。

リスク分担は先送りにせずできるだけ金額で決定

事が起きた時点で協議するのは、その時点で予算化しなければいけない問題等もあり、決められるものについては最初から金額で決めました。

リスク
種別
契約内容とその理由等
技術革新リスク PFIだから更新頻度を多くすることは無く、従来方式の場合を想定して5年更新としました。高スペック化への対応は提案価格の50%の額を加えた額までの範囲で見直すこととしました。
備品リスク 備品リスクについては、図書資料とそれに付随するものを想定しています。盗難・紛失・破損に関するリスクが0.3%くらいはあり、そこまでを市のリスクとしています。
金利リスク 民間からは5年ピッチで更新したいという意見や毎年更新して欲しいという意見もありましたが、市のリスクを下げる意味合いを含め、地方債の最大期間にあわせて10年更新としています。

数が少ない図書館運営企業

参画グループ数をどう増やすかは競争原理発揮の基本です。図書館運営企業が全国でも数少ないと想定していたため、数の多いゼネコンとどのようにコンソーシアムを組ませるかが難しい問題でした。結果として図書館運営企業は協力企業として複数グループへの参画可能としましたが、同じ企業が別々のグループに入った場合、提案が似てくるのではと懸念していました。

地元企業が参画しやすい工夫

地元企業については特段の参加促進策は実施していませんが、経営事項審査点数について、桑名市の事業者が参画しやすいように750点まで下げて入り口を広げました。市内企業が代表企業にはなれなくても、構成員での参画の可能性はあると思っていました。

障害者の意見をどう反映するか

障害をお持ちの方からの意見聴取をどうするかといった問題がありました。基本的には県のバリアフリーのまちづくり推進条例に則りましたが、市の福祉関連の窓口部署に対して、通常どのような点に配慮するのかを聞いたりしました。

PFI特有の用語説明

PFIは言葉が難しく、金融用語は特に分かりにくいものでした。PFIに取りかかった当初には50ページ程度の用語集を作成したり、審査委員の発言もその場では理解しにくく、後から意味の確認を行ったりしました。当時、NPO(非営利組織)やTMO(街づくり機関)等、アルファベット3文字用語がPFIに限らず多かったため、これが分かりにくさを助長していたとも思います。

3.事業開始後の状況

(1)PFI導入のメリット

想定以上の利用者数

現在のところ順調に運営しており、大きな問題は特に生じていません。物珍しいというのはあるかもしれませんが、利用者数は想定以上でした。嬉しい反面、駐車場や駐輪場の不足といった問題もあります。

安定した図書等の供給

図書等購入費用についてはサービス対価に含み、30年間安定して供給可能な予算措置ができたというのは大きなメリットでした。

(2)PFI導入のデメリット

市の重視するポイントが100%反映されないこともあります

性能発注では事業者に対して文章表現で市の思いを伝えるため、きちんと表現できていなければ市と事業者が重視するポイントがずれる可能性があります。そのため確認、協議を数多く行いながら進める必要があります。

(3)運営モニタリングの状況

事業者との定期的なコミュニケーション

事業者とのコミュニケーションを図るため、毎週1回、事業者と市とで定期的にミーティングを行っています。

モニタリングの実施状況

運営に入ってからは政策課の手から離れて担当課が定期的にモニタリングを実施しています。突発的なことがあれば随時モニタリングを行うこととしています。モニタリング手法の策定までの支援はアドバイザリー契約に入っていましたが、運営開始からは市で直接行っています。

本事業のしくみ(事業スキーム図)
本事業のしくみ(事業スキーム図)

4.PFI事業を振り返って

(1)PFI事業の成功のポイント

黒田勝さんと近藤光彦さんのお写真

桑名市市長公室政策課PFI推進係
黒田勝さん・近藤光彦さん

組織トップの理解と協力

当初は政策課が中心になって勉強会を開催してきましたが、PFI法の施行にあわせて、首長からのトップダウンにより本格的に取り組むこととなりました。
担当課の発案に加え、トップの一声があるとやりやすいと感じましたが、このためには首長をはじめ周囲がPFIを理解していないと難しいと思います。本市の首長はPFIに対する理解があり、少数の議員が相当勉強していたため、PFIに対しご理解を得ることができました。

(2)PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

PFI推進体制の早期確立

PFI導入可能性調査を実施している時点では、一つの係の一業務として進めていましたが、コンサルタントから先々そのような体制では難しいと指摘されました。これからPFIに取り組む自治体には、ある程度PFI推進体制を固めてから取り組まれることを強くお薦めします。

行政として重視したいポイントはアピールすべき

従来の仕様発注と比較して、性能発注では活字で表現しなければならなかったので、本当に建物が建つのかという疑問はありました。庁内である程度の建築イメージを持っていた方が良かったと思います。市として重視したいポイントと設計者の思いとが異なるのは良くありません。市の重視したいポイントがあれば、仕様的なものを書いたほうが良いかなという思いはあります。文章表現なので双方が取り違わないような表現が必要になります。

先進事例を糧として積極的にPFI活用を

現在は当初と比較してある程度参考になるPFI事例が出てきていると思いますので、サービス向上と財政負担の削減が見込まれるのであれば他自治体の方々も前向きに考えても良いのではと思います。
本事業はPFI導入マニュアル策定前に事業化を推進しており、次のステップにどのような事をするのかが見えてこず、とにかく大変だったということが感想としてありますが、これが最初で最後のPFIということは無く、サービス向上と財政負担の削減が見込まれるのであれば他の事業でも積極的に考えていきたいと思います。

事業担当者

桑名市 市長公室政策課
PFI推進係 黒田係長
〒511-8601 三重県桑名市中央町二丁目37番地
TEL:0594-24-1464
桑名市図書館等複合公共施設特定事業(桑名市)

キーワード:わが国初の図書館PFI、複合施設、BOT方式サービス購入型、事業期間32年

事例14:桑名市図書館等複合公共施設特定事業