事例15:鯖江駅周辺駐車場整備事業(事業概要)

(福井県 鯖江市 人口66,518人(平成16年))

鯖江駅周辺駐車場の写真

「鯖江駅周辺駐車場整備事業」は、JR鯖江駅周辺において、駅前に34台分、駅東に176台分の市営の駐車場が当時整備されていたものの、依然として駐車場が不足していたため、鯖江駅東第3駐車場(36台)を新設し駅周辺の駐車場収容台数を拡大する事業です。また併せて、既存の駅前駐車場(34台)、駅東第1駐車場(97台)・第2駐車場(79台)及び市の主要施設である鯖江市文化センター前駐車場(300台)の4つの既存駐車場についても、老朽化が顕著な既設駐車場の機械器具等の更新整備を行いました。PFI事業者は、上記の施設整備に加えて事業期間7年間にわたり、計5つの駐車場施設を所有し(BOT方式)、運営管理を行いますが、施設の整備・更新、運営管理に要する費用は全て、駐車場の利用料金収入で賄う独立採算型の事業です。
本事業は、平成15年2月下旬に工事に着手し、平成15年4月1日から施設の供用を既に開始しています。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

鯖江駅周辺駐車場の事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 平成11年、当時の市長の発意により未来政策課に庁内検討会が設置され、PFIを導入可能な事業の抽出を開始。民間コンサルタント等からPFIに関する情報提供等もあり、PFIに関する庁内勉強会としても機能した。

  • その中で料金収入がある市営駐車場へPFIを適用するという方針を決定。
  • 耐用年数を迎えつつある3つの既存駐車場の更新への適用を検討。
  • ただし、当時は、PFI事業の実施プロセスが明確に確立されていなかったため当3事業はPFI方式に準じた手法で実施。
  • 例えば、実施方針は公表したが、特定事業の選定(VFM定量評価)は行っていない。
    • BOT方式・独立採算型で事業を実施
    • 設備更新等と6~9年間の運営維持管理を行う『PFI的な事業』
  • (上記の3駐車場事業は当時所管であった土地開発課の2、3人の担当者で検討)
  • 当PFI事業の検討体制は、原則1人。(兼務で本PFI事業の負荷は全体業務の1/4程度)ここでの検討結果は庁内政策会議(市長、助役、理事者で構成)に諮る形で検討を進めた。
  • 検討に関しコンサルタント等への外部委託は行っていない
  • 事前の3駐車場事業でのノウハウを活用し検討の円滑化を図った。
  • 江坂駅南立体駐車場PFI事業の公表資料等を参考に、江坂市担当者に電話で質問しつつVFM算定や募集要項等の作成を実施。

2.本事業における課題とその解決策

長期的な事業の継続のために、将来需要(駐車場利用者数)の予測を慎重に行いました。

本事業は、民間事業者が施設の整備、運営・維持管理に要する費用を、駐車場利用者から徴収する駐車料金のみで賄う独立採算型の事業であるため、事前の駐車場利用者数の需要予測が長期的な事業の安定性を確保するために非常に重要です。その点、本事業は、もともと駅前にある駐車場の増設を行うものであるため、既存の駐車場の過去の利用実績をもとに、ある程度確度の高い需要予測ができたと考えています。これに加えて、選定された民間事業者の事業計画も保守的な利用者数予測値に基づいており、その点でも、それ程大きなリスク要因とはならないだろうと考えていました。事実、施設の供用開始後の現在の状況も、選定された民間事業者の予測値を上回る利用があり、安定した事業運営を行っています。

民間事業者に事業期間の提案を求めました。

本事業では、募集要項等において行政が事業期間を事前に規定するのではなく、応募を希望する事業者に対して、施設所有権を市へ移転するまでの事業期間(年数)の提案を求めました。民間事業者から市への施設所有権移転後から施設耐用年数までは、駐車場の運営により市が収益を上げることができるため、PFI事業の期間が短い提案の場合(残りの期間が長くなる)、市はより多くの収入を得ることができるため高評価となります。選定された事業者の提案では、事業期間は7年でした。

民間事業社に提案を求めた事業期間の図

民間事業者の本事業への参画意向を事前に把握しました

当初、民間事業者の応募があるかどうかについて心配していたため、市の広報誌や市ホームページでの情報提供や募集要綱等資料を既存市営駐車場BOT事業を実施している民間事業者に送付する等して、民間事業者の本事業への参加を促す対応を取りました。
一方、地元企業の参画に関しては、駐車券発券設備の整備等、事業の内容として、そもそも地元企業向けではないこともあり、特段の対応を行っていません。

(参考)本事業の事業スキーム
鯖江駅周辺駐車場の事業スキームのイメージ図

3.事業開始後の状況

(1)運営モニタリング

供用開始直後は、市職員が不定期で運営状況を現場にて確認していましたが、特段の問題は出なかったため、現在は、事業者からの報告書の確認のみ市で実施しています。
また、鯖江市文化センター前駐車場(300台)については、もともと無料の駐車場を今回のPFI導入を契機として有料化しましたが、その結果、夜間や長期間の駐車や駐車場のたまり場的な使用が減少し、駐車場の秩序や周辺の環境が向上し、特に周辺住民からは喜ばれています。

(2) PFI導入のメリット

駐車場の写真

地域から必要とされた公共施設の早期供用開始を実現しました

本事業については、従来型公共事業の手法により施設を整備することも選択可能でしたが、その場合は、市の財源の関係から、今回のように複数の駐車場を一括で整備・更新することは困難であり、複数年の段階整備にならざるを得なかったと思われます。必要な施設の早期供用を実現できる点は、PFI方式の導入の大きなメリットの一つであると考えます。

民間の創意工夫やノウハウを取り込むことにより、サービス品質が向上しました

選定された民間事業者から駐車場の機能・サービスの向上を図るための幾つかの提案を受けました。
例えば、本施設の車両入出ゲートは民間事業者のサポートセンター(関東地方)から遠隔操作・監視が可能となったため、ゲート故障時の駐車場利用者への対応が他の市営駐車場に比べ格段に迅速になっています。
また、その他にも施設供用の開始後に事業者から追加提案があり、料金支払にプリペイドカード方式が導入され、利用者の利便性がさらに向上しています。

(3) PFI導入のデメリット

従来型で事業を実施する場合に比べ、PFI事業の場合、事業実施や発注・事業者選定のプロセスにおいて、行政として踏まえるべきステップが多く、かつ手続きも煩雑であり、事務の負荷が増えたと実感します。
また、事業の運営面においては、北陸という土地柄、駐車場の運営面では冬季の除雪が大切なポイントですが、運営上重大な問題となるレベルではないものの、本PFI事業の場合、他の市営駐車場で行われているよりも除雪の頻度はやや少ないようです。

4.PFI事業を振り返って

(1)PFI事業の成功のポイント

行政と民間事業者の双方にメリットのある事業とすることが重要です

PFI事業の実施に際しては、行政と民間事業者の両方にバランスよくメリットがあるような事業にしなければ、応募する民間事業者の確保が望めず、企業間の競争が働かないため、結果としてVFMが達成できない可能性があるという点を強く考慮すべきです。そのためには、行政としても、事業の実施や応募に際し民間事業者へ要求する条件について、民間事業者の意向などを事前につかんだ上で、柔軟な対応を取る必要があります。

(2)PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

佐々木博隆さん(右)と青山勇二さん(左)のお写真

本事業の担当者の鯖江市の
佐々木博隆さん(右)と
青山勇二さん

行政内に適切な検討体制を構築することが重要です

本事業の経験から述べますと、PFI事業を担当者1人で行うというのは非常に大変です。また、検討過程において、行政内部で事業の細部に精通した担当者間で議論しつつ検討を行えるというメリットを考えると、本事業の場合は、担当2人の体制が望ましかったと考えます。

地方公共団体の財政の逼迫状況下、独立採算型PFI事業は、行政にとってメリットの大きい手法であると考えます

地方公共団体の財政が苦しく、まとまった初期投資の財源確保が困難な状況下では、PFI方式、特に独立採算型事業の導入は非常にメリットがあります。ただし、独立採算型の事業であるため、そもそも事業が成り立つのかどうか、事業の採算性については、事業者の募集に先立ち行政側で事前に入念な需要予測等を行う必要があることは明白です。

事業担当者

鯖江市 企画財政部 財政課 財産管理Gr
参事 佐々木 博隆氏
鯖江市 都市整備部 都市計画課 都市計画Gr
参事 青山 勇二氏

〒916-8666 福井県鯖江市西山町13-1
TEL:0778-53-2238

キーワード:駐車場(地上・平面式)、BOT方式独立採算型、事業期間7年