事例16:八尾市立病院維持管理・運営事業(事業概要)

(大阪府八尾市 人口 266,998人(平成16年))

八尾市立病院の写真

「八尾市立病院維持管理・運営事業」は、八尾市が別途、設計・建設を行う市立病院において、民間事業者が院内の一部の設備、什器、備品等を調達・保有し、事業期間中の病院施設の維持管理及び医療関連サービス等の運営業務を行う事業です。本事業の特徴は、施設(病院)建設を含まず、初期投資が極めて限定的であり、また、医療法に基づく政令8業務や電子カルテを含む総合医療情報システムの運用・保守といった運営業務に重点をおいた「運営型PFI」事業である点です。
本病院は、病床数380床、延床面積約39,000m2、平成13年7月の建設工事着手を経て平成16年5月に開院され、地域の中核病院としての役割を担っています。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

八尾市立病院維持管理・運営の事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • 平成10年、市立病院移転新築基本構想の決定。
  • 平成13年、病院建設工事着手。(平成15年12月竣工)
  • 総合医療情報システムの整備についても、開発スケジュール確保のため、PFI事業範囲とせず、PFI事業に先立ち、別途発注した。
  • 市特別職から'病院建設準備室'へ、病院運営業務のアウトソーシングに関する検討の指示。検討対象の手法の一つとして、PFIも含まれた。
  • 上記の建設準備室の内部検討により、病院事業は運営業務の効率化が非常に重要であると考え、PFI導入のメリットがあると判断。
  • 平成14年4月、"ITを中核としたPFI導入可能性基礎調査"を外部委託。
  • 内閣府より民間資金等活用事業調査費補助金の交付を受ける。
  • コンサルタントの選定では、病院PFI事業での業務実績を重視。プライスウォーターハウスクーパースフィナンシャル・アドバイザリー・サービス(株)、三井安田法律事務所、(株)病院システム等によるグループを選定。
  • 平成14年当初、専任職員1名の事務局体制。その後、最大で、部長級職員を筆頭に全4名の専任体制とした。
  • 下記の3点について、重点的に検討を実施
    (1)新病院における業務把握、(2)民活可能性、(3)事業手法
  • また、市場調査(民間事業者の事業参画意向調査)も実施。民間事業者の本事業に対する高い興味を確認した。
  • 平成14年8月の議会(特別委員会)に報告。PFI導入へ向け賛同を得る。
  • 平成14年8月の議会(特別委員会)に報告。PFI導入へ向け賛同を得る。

2.本事業における課題とその解決策

将来の需要変動(患者数など)に対応可能な、民間事業者へのサービス対価支払方法を採用しています

本事業では、将来の患者数等の需要変動に対応しサービス対価の額が増減する民間事業者への支払方法を採用し、市と民間事業者の間の需要変動リスクに関する負担をバランス化しています。
右の図に示すとおり、民間事業者への支払額が、例えば、病院を訪れる患者数の実際の数により変動します。また、患者数が減ったとしても、人件費等の固定費は常時発生することから、患者数が減少したとしても、固定費相当額については民間事業者に支払うこととし、民間事業者の経営状況の安定化を図ることにしました。

支払額の変動方法のイメージ図

情報システム開発者の優位性を排除した公平な事業者選定の実施に努めました

本事業は、別途整備した医療情報システムの運営、保守管理業務を含んでいたため、当システムを開発した企業が属する応募者グループが事業者選定において過度に優位になり、民間事業者間の競争原理が働かない状態になることが危惧されていました。
これに対して、本事業では、Function Point法(FP法。システムの持つ機能数等を基に、そのシステムの規模を定量的にFP値として計測する方法)を導入しました。将来のシステム変更等の保守に係る、市から民間事業者への支払額については、客観的な指標であるFP値当たりの単価の提案を各民間事業者から求めることとして、システム開発者以外のより多くの民間事業者が適切な費用見積りを行える仕組みを整えました。FP法の採用により、民間事業者の生産性を評価し、工数管理とコスト管理に適用することで、事業期間にわたってシステム開発者の優位性を排除することに一定の効果があったと考えます。

本事業への参加を希望する企業の「事前登録」リストを公表し、応募グループの組成の円滑化をねらいました

民間事業者の提案書提出に先立ち、本事業への参加を希望する民間企業について事前登録を全3回実施し、各企業の連絡先や参加希望の業務種類等のリストを公表しました。また事前登録に際しては、下記の区分を明示し、本事業へ応募する民間事業者グループの組成を円滑に行うことに役立ったと考えます。

  1. PFI事業を行う特別目的会社(SPC)への出資を希望する民間事業者
  2. SPCから業務を受託することを希望する民間事業者(協力企業)
  3. 協力企業から業務を受託することを希望する民間事業者

民間事業者の組織には、業務全体を統括管理することができる有能なゼネラルマネージャーが必要です

PFI導入によって期待されているサービスの向上を達成するためには、本事業に係る全ての業務受託企業を統括できるゼネラルマネージャーの存在が非常に大切です。単なる'受託企業の集まり'ではあってはならないことは明白であり、現場責任者であるゼネラルマネージャーに高い能力が求められると考えます。本事業では、ゼネラルマネージャーの選任に先立ち、病院長と事務局長により面接を行うこととし、有能な人材の配置を民間事業者に求めました。また、その際、出身母体である構成企業の一員としての視点ではなく、市立病院の統括者という視点から事業運営に当たる旨、繰り返し要求しました。

事業スキーム図

3.事業開始後の状況

(1)運営モニタリングの方法

病院の運営は非常に複雑なため、本事業のモニタリング実施計画については、専門の医療コンサルを用い作成しました。通常のモニタリングは、民間事業者から毎月提出されるセルフモニタリングレポートを市が確認する形で行っています。また民間事業者の幹部職員は月2回の病院の幹部会議と月例の病院運営会議に出席し、その都度、民間事業者の運営業務について協議と指示を行っています。ただし、運営を開始したところ、運営開始前の想定と現在の実際の状況の間に乖離も出てきており、モニタリング方法は、供用開始1年後に見直しを行うことになっています。

(2) PFI導入のメリット

民間事業者の創意工夫やノウハウにより事業運営の質的向上を実現しました

PFIの導入により、患者等へのサービス品質が旧病院と比較して向上したと感じます。例えば、病院給食についてはメニューの選択式が実現されました。また、旧病院では夕方以降は、病院にいる事務員や作業員の数が極端に減っていましたが、今は人員配置が柔軟なため、そのようなことはなくなり患者や医師等の利便性が向上しました。一方、PFI事業では複数の業務をPFI事業者が一括して管理するため、各業務の境界領域のすきま業務について、どの事業者も実施しないといった状況は飛躍的に改善されました。
実際、開院後に実施したアンケート調査結果から見ると、概して、患者からの評判は良好です。また、民間事業者が病院の運営に係る様々な業務を行っていることに対しても賛成の声が約半数を占めています。

12.7%のVFM(コスト削減)が見込まれました

事業者選定には4つの民間事業者グループからの参加(途中1グループ辞退)があり、最終的に12.7%ものVFM(事業費の削減)が見込まれました。また、これに加えて、病院内の市職員の人員の削減も達成されています。現在既に、もとの調度係や営繕係の職員6~8人程度の人員が削減されており、将来的には、現在約30人いる事務部門の職員が、人事、経理、企画、モニタリングを担当する15人程度に減らせるのではないかと考えています。こうした事務部門で削減された人数は、医師や医療スタッフの新規採用数の増加にまわせるため、提供する医療のより一層の向上に繋がる効果があります。

民間との協働を通じて、行政職員の意識改革につながっています

具体的に目に見えるメリットではありませんが、民間事業者との包括的な協働体制の構築や民間のビジネス手法を行政に導入する点等、PFI事業の実施は行政にとって新しいチャレンジといえるため、市の職員の意識改革につながる点もPFI導入のメリットの一つとして実感しています。

(3) PFI導入のデメリット

PFIのデメリットといえるかどうかわかりませんが、現在のところ、民間事業者が公共事業(公立病院の運営)に不慣れなため、市職員が民間事業者の手助けをする場面が多いと感じています。今はまだ、事業が開始された直後であり、民間事業者が当初提案した運営レベルが100%達成されている状況には至っていません。実際、ほんの一部ではありましたが、要求された業務を民間事業者が実施できず、該当する部分のサービス対価の請求を民間事業者が行わないということもありました。ただし、民間事業者もスタッフ数を当初予定の8人から12人に増員して運営開始初年度を乗り切るため積極的な努力をしています。今後も継続的にサービスレベルの向上を目指して市と民間事業者の間で協力することが必要と考えています。

4.PFI事業を振り返って

(1)PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

地方公共団体内の体制強化が不可欠です

よく言われることですが庁内の検討体制作りや府・県や国とのネットワーク作りは非常に重要です。PFI検討事務局の体制としては、事業担当課に加えて、財政及び法務担当課の職員が参加することが望ましいと考えます。また、人事担当課へ働きかけ理解を得て、検討期間中に事務局職員の人事異動が無いようにすることも重要と考えます。

阪口明善さん(左)と井上剛一さん(右)のお写真

八尾市立病院の事務局長の
阪口明善さん(左)と
医事管理課係長の井上剛一さん

PFIに適する事業について

図書館や公民館等の教育施設はPFI導入に適する事業ではないでしょうか。例えば、私立大学の図書館がそれぞれ特色・個性をもっているのを見れば明らかなように、PFIを導入し、民間のノウハウを取り入れることにより各図書館の個性を出すことが可能と考えます。
一方で、住民参加により住民の要望を積極的に取り入れることを目指すタイプの公共事業、例えば住民参加型のまちづくり事業等では、PFIを導入したとしても、民間事業者の自由な創意工夫・ノウハウを取り入れることに限界があると考えます。また、運営部分の比重の小さい、施設整備と通常の施設の維持管理を主体とする事業もPFI方式には本来向かないと考えます。

事業担当者

八尾市 市立病院事務局
医事管理課 係長(PFI担当)井上 剛一氏
八尾市 市立病院事務局
医事管理課 主査(PFI担当)植村 佳子氏

〒581-0069 大阪府八尾市龍華町1-3-1
TEL:0729-22-0969
八尾市立病院維持管理・運営事業(PFI)(八尾市)

キーワード:病院、運営型PFI、BOT方式(一部BTO方式)、サービス購入型(+独立採算業務収入)、事業期間15年

事例16:八尾市立病院維持管理・運営事業