事例19:福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業(事業概要)

(福岡県 福岡市 人口1,326,875人(平成16年))

福岡市臨海工場余熱利用施設のイメージ画像

本事業は、市のごみ焼却処理施設「臨海工場」の整備の後、ごみ焼却に伴って発生する熱エネルギーによる発電によって得られる電力を有効に活用し、温海水を利用するタラソテラピー、運動施設、地域コミュニティの交流促進等の機能を備えた「福岡市臨海工場余熱利用施設」を1年間で整備し、その後15年間、施設を運営・維持管理する事業です。

平成14年4月の事業開始後、初年度からの利用者数の伸び悩み等の原因により、事業主体の(株)タラソ福岡の経営状況が悪化し、平成16年11月末をもって、本施設は一旦閉鎖されました。その後、約4ヶ月の施設閉鎖期間を経て、新しい事業主体である福岡臨海PFI(株)による本事業の引継ぎが決定し、平成17年4月から事業を再開することとしています。

1.PFI事業の中止から事業再開に至る経緯

福岡市臨海工場余熱利用施設の事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • SPC「(株)タラソ福岡」(代表企業:大木建設(株))が事業を開始。(運営期間:平成14年4月1日~平成29年3月31日)
  • 初年度利用者数10.9万人。(事業提案時利用者数当初見込み24.7万人)
  • 平成15年3月期(株)タラソ福岡決算。
    • 総売上額2.1億円事業(提案時総売上額見込み4.4億円)、約3千万円の最終損失を計上。
  • タラソテラピーに加えマシンジムやスタジオを増設、一般プール設備を改修し、総合的なフィットネス部門の強化を図る。
  • 代表企業による支援を継続。
    • 劣後融資の利息及びリニューアル工事代金の返済猶予、出向役員の報酬の放棄
  • タラソ福岡協議会(市、(株)タラソ福岡で構成)において、現状のままでは収支悪化が懸念されると(株)タラソ福岡から市へ報告。
  • (株)タラソ福岡が利用者から徴収する施設利用料について基本料金を含め自由裁量により変更できるように、契約内容の変更を求める申し入れ。市は、事業者公募の際の条件変更となるため基本料金については承諾せず。
  • 平成16年3月期(株)タラソ福岡決算。
    • 総売上額2.2億円、1.2億円の最終損失を計上し、債務超過に陥る。
  • (株)タラソ福岡の代表企業である大木建設(株)が民事再生手続開始の申立て。
  • 平成16年9月の(株)タラソ福岡取締役会の決定に基づき、同年11月末、施設閉鎖。
  • 平成16年12月10日福岡市PFI事業推進委員会において「(株)タラソ福岡の事業破綻を越えて~今後のPFI事業推進のために~〔中間報告骨子〕」を発表。
  • 旧SPC「(株)タラソ福岡」から新たに事業を引き継ぐ新SPC「福岡臨海PFI(株)」へ施設譲渡。
  • 新SPC出資者:(株)九州リースサービス、(株)ゼクタ
  • 平成17年4月1日(予定)リニューアル・オープン。(営業再開)

2.タラソ福岡の経営破綻に関する調査検討

現在、本事業の経営破綻に関して、福岡市PFI事業推進委員会において、その原因を調査するとともに、同委員会が先にとりまとめた中間報告骨子に対する関係者の意見等を基に、今後のPFI推進に向けて調査検討報告書として取りまとめることとしています。現時点で聴取した調査結果概要について以下に示します。なお、報告書本文については、平成17年度中に、福岡市ホームページへ掲載される予定と聞いております。
PPP/PFI:官民協働による公共施設の整備(福岡市)

検討すべき項目

  1. PFI事業者が経営破綻するというリスク事象発生の「要因」を課題として分析する。
  2. 経営破綻の影響で4ヶ月間市民へのサービスが中断された点を重要視して分析する。

事業者の経営破綻と事業中断の原因

1.需要リスクに関して

本事業は、民間事業者が負う需要リスクの割合が民間事業者の提案するサービス提供料の価格に連動して変動するスキームであったが、当該リスクへの備え及びその備えを行うための意識が十分でなかった。また、提案審査の段階において、民間事業者のリスク処理能力を客観的に審査する仕組みに不備があった。

2.事業推進時の市の行動

予定された時期に施設供用を開始するために、時間的な余裕がなく、事業手法やスケジュールを見直しや別の手法の採用等、柔軟に対応する姿勢が欠如することとなった。また、事業推進部局が一貫して全ての事務手続きを担い、福岡市内部で十分な相互確認機能が働かなかった。

3.経営破綻時の具体的な対応策の事前検討の不足

施設のサービス水準維持に関するモニタリングシステムは存在したが、財務面で事業継続が困難となる危険性に関して対応可能なモニタリングシステムとなっていなかった。また、民間事業者の経営悪化時に想定していた、融資者の事業介入や市の施設を買い取りによる事業継続についての具体的な手続きや、事業中断なく事業者を変更する方策の検討が不足していた。

4.PFI事業におけるプロジェクトファイナンスの役割

本事業では、融資者が「市による本施設の買い取り価格の金額で回収可能な範囲」でしか融資を行わず、プロジェクトファイナンスにおいて融資者に期待される役割(事業の経済性や民間事業者の事業遂行能力・信用力の審査)が機能する前提が欠如していた。一方、市は、このような状態となっていたにもかかわらず、融資者が事業の経済性、事業遂行能力・信用力の審査を行うという期待、あるいは経営悪化時には事業に介入するであろうという期待を抱き、タラソ福岡の経営悪化について迅速な対応ができなかった。

PFI事業の推進のための提言

1.事業特性を考慮した明確なリスク認識

事業の特殊性やリスクの発生要因と影響等を具体的に把握するための公共側のマネジメント手法の検討が必要である。

2.事業特性に配慮した審査・評価

事業内容や官民のリスク分担方法など個々の事業の特殊性に留意した事業者の選定のための審査方法、基準の設定が必要である。タラソ福岡事業のように民間事業者が負う需要リスクが民間事業者の提案するサービス提供料の価格に連動して変動するスキームにおいては、その提案の実現可能性や継続可能性について民間事業者のリスク処理能力とあわせて客観的にチェックする仕組が必要である。

3.事業推進に対する管理者としての適切な行動

最適な事業方式の決定や客観的な審査を行うためには、十分なスケジュールの確保やコンティンジェンシープラン(複数方式の並行検討等)の用意、事業推進部局以外の者が事業形成の各進捗段階において適宜検査するシステム構築など、状況に最適に対応できるよう柔軟な姿勢をもつことが必要である。
また、PFI事業者選定委員会には、適切な人材、十分な検討時間、適切な情報を確保し、責任ある適切な審査を行いうる環境を整備する必要がある。

4.事業者の経営破綻リスクのマネジメント

事業の設計、建設、運営及び維持管理に関するモニタリングを行うだけでなく、事業者が事業遂行能力面や財務面で事業継続が困難となる状況を早期に把握し、事業継続に対する準備を適時に行いうる体制の構築が必要である。また、民間事業者が事業を継続できなくなったときに、必要な公共サービスをできるだけ中断することなく継続して提供できるよう、暫定的な代替手段を講じ得る仕組みを定めておくこと、また事業者や事業契約の内容の変更が求められた場合の承認や確認手続きについてあらかじめ定めておくことが望ましい。

5.融資者との役割分担

PFI事業におけるプロジェクトファイナンスの役割を適切に理解・認識した融資者が事業の経済性や民間事業者の事業遂行能力・信用力を審査し、プロジェクトファイナンスとしての実現可能性を評価した事業計画については、審査における点数が有利になるような配慮を行うことも一考に価する。
融資者が事業継続中のモニタリングや経営悪化時の事業への介入について期待した役割を果たしうるよう、融資者直接協定の規律を工夫し、また、融資者が事業の経済性や民間事業者の事業遂行能力・信用力をどのように判断しているかについて常に留意する必要がある。
ただし、公共と融資者の利害が常に一致するものではないため、公共サービスの継続的提供を目的とした事業における安定性の評価について、融資者の審査能力のみを過度に期待してはならない。

6.PFIの本質的な理解

今回の問題は、他のPFI事業でも今後起こりうることから、公共、民間事業者、融資者の各々がPFIを本質的に理解することが依然として必要である。

7.適正なプロジェクトファイナンス市場の育成

本事業の資金調達は、実質的には担保付のコーポレートファイナンスであったことも、今回の経営破綻の遠因である。プロジェクトファイナンスの意義が正しく理解され、わが国において適正なプロジェクトファイナンス市場が成立することが必要である。

8.間事業者の事業参加

民間事業者においても、PFI事業に対する本質的な理解を深め、本当に自己でマネジメントとすることのできるリスクであるのかを見極めてPFI事業に参加することが必要である。

以上

事業担当者

福岡市 環境局 施設部 調整課
茅島 清美氏
〒810-8620 福岡市中央区天神1-8-1
TEL:092-711-4307

キーワード:余熱利用施設、PFI事業の破綻、BOT方式、ミックス型(サービス対価+利用者収入)、事業期間15年

事例19:福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業