2-6 民間の公共施設・サービスにおける合理的配慮の提供

 アメリカにおいて、公共団体とは別に、民間団体や企業などが運営する地域の公共施設や商業施設に対して、ADA第3部によって、合理的配慮の提供が求められている。ここでは、公的な機関の一部として、民間の公共施設に関する規定を概観する。
 ADA第3部の施行規則では、適用範囲として、公共施設(Public accommodation)、商業施設(Commercial facility)、申請、免許、資格に関する試験や講習、中等、高等教育、専門、職業のための資格認定を提供する民間団体が含まれている48。すなわち、民間団体が運営する公共性が高い施設やサービス(民間の公共施設などと略する)が、ADA第3部の対象となる。

 このような公共施設の例としては、ホテル、飲食店、展覧会や娯楽の場所、集会所、販売、レンタル店、サービス施設、特定の公共交通のための駅、公共の展示・収集所、レクリエーション施設、教育施設、ソーシャルサービスセンター施設、運動施設などが挙げられる。また、商業施設として、倉庫、工場、オフィスビルなど、さらに、民間交通サービス、免許、試験場が挙げられる49
 また、ADA第3部施行規則には、特に公共施設に対して、合理的変更の規定も含まれている。したがって、「公共施設が、変更によって、商品、サービス、施設、特権、利益、配慮の性質を根本的に変えると示すことができない限り、その変更が障害者に対して、商品、サービス、施設、特権、利益、配慮を与える必要がある場合に、公共施設は、政策、取組、手続の合理的変更を行わなければならない。」50
 ただし、ADA第3部では、民間の公共施設などにADAコーディネーターを置くことは義務付けられていない。これについて、ADAセンター(New England)では、問題があった場合、企業や団体の所有者か組織のディレクターに連絡するようにアドバイスしている51。したがって、ADA第3部の下では、民間の公共施設などとの合意形成のプロセスについては、具体的な規定は設けられていない。

 ADA第3部に規定された施設において、障害者などが差別を受けたという申立てを行う場合は、直接司法省に申請することになっている。司法省では、申立人の氏名や対象の企業・施設名称など、差別行為に関する情報を送付するよう案内をしている。司法省に申立てを行った場合、障害者権利局(The Disability Rights Section)が、苦情を検討し、その措置(action)を通知する。その調査の結果、司法省が地方裁判所での訴訟を開始するかどうか判断する。そのほか、個人が直接、地方裁判所に訴訟を起こすこともできる。

 その一方で、多くの州で、ADA第3部の民間施設に対する規定を補完する独自の障害者権利法を有している。これについて、サウスイーストADAセンターが、南東部8州において、公共施設に適用可能な州の障害者権利法とADA第3部の実施メカニズムとを比較し、その取組をまとめている。これによれば、幾つかの州では、保護の対象、要求される施設の定義、要件や禁止事項が異なっている。また、幾つかの州では、強制的又は自発的に、調査や実施を補助するために代理(agency)を提供している。さらに、違反に対して、損害賠償や刑罰など、様々な救済を提供している52。(参考資料2-9を参照のこと。)


48 ADA Title III §36.102 Application
49 How to File a Title III Complaint (U.S. Department of Justice Civil Rights Division Disability Rights Section) http://www.ada.gov/t3compfm.htm
50 ADA Title III §36.302 Modifications in policies, practices, or procedures
51 New England ADA center http://www.newenglandada.org/audio/6-ada-title-iii-businesses-and-non-profits
52 Public Accommodations: State-by-State Enforcement and Remedies (The ADA National Network)

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