7 国内各地域における取り組み事例
7-1:北海道新得町――小規模自治体のトップランナー
- 小規模自治体単独での地域協議会設置事例
- 条例や自立支援協議会の活用
1.新得町の概況
- 人口:6,457人(平成27年度末時点)
- 障害者手帳所持者数:639人
2.新得町における障害者差別解消に関する取組
(1)手話に関する基本条例の制定
- 平成26年4月1日施行。ろう者と共に生きる町づくりを進めることを目的とする。
- 昭和28年、町内に社会福祉法人厚生協会が設立されて以後、新得町には数多くの聴覚障害者が生活。
- 人口比でみると町民の3.2%が聴覚障害者として手帳を所持しており、全国比の80倍。
- 条例を受けて、手話通訳者の設置・派遣を行い、手話に関する理解促進や普及を進める。
例)一般校における手話の授業実施等
(2)町障がい者条例の制定
- 平成27年12月3日成立。平成28年4月1日施行。
- 北海道障がい者条例が、千葉県に次いで議員発議で制定されたことを受け、新得町議会議員から率先して継続して障害者を支援していく体制を作ってはどうかと提案。
- 北海道障がい者条例を参照しつつも、町内在住の障害者との議論をふまえ、障害者の家族や介護者に対する配慮を盛り込む点を修正。
- 自立支援協議会内に「暮らしづらさ解消委員会」を設置することを定め、この委員会が調査・調整・提言を行うことを規定。
- 北海道障がい者条例が指導・あっせんに関する権限を規定しているため、町でできることは町で行い、解決が難しいものについては圏域レベルや道に上げていくという考え方。
- また、施行規則にて、「暮らしづらさ解消委員会」が、障害者差別解消法における地域協議会と道条例における調整委員会を兼ねることを規定。
(3)町職員対応要領の策定
- 内容としては内閣府の対応要領に準ずるものだが、策定にあたっては総務課が対応。
- 手話に関する基本条例や町障がい者条例策定のプロセスで町全体としての取組みがあり、障害についての理解をしなければという意識が強くなっていたと思われる。
3.暮らしづらさ解消委員会
(1)設置に際しての考え方
- 平成27年12月に町障がい者条例が成立。この条例で定める暮らしづらさ解消委員会を地域協議会として規定。
- 組織図としては、自立支援協議会の一部会という位置づけ。
- だが、同時に障害者差別解消法における地域協議会と道条例における調整委員会を兼ねており、独自性をもつ。
- 自立支援協議会は専門職や支援者が多いため、町民と障害者が半々ぐらいの構成を想定。イメージとしては、自立支援協議会よりも障害者に近い議論の場。
- 「差別だけ」を議題とすると年に1回しか開催されないような委員会になってしまうので、社会参加や権利の問題について課題に思っていることを吸い上げる場に。合理的配慮の事例集積も行いながら進めていく。
- 実際に、当事者の本音の意見が聞ける場になっている。大きなことは解決できないと思うが、小さなことの積み重ねができる。
(2)構成メンバー
委員 | 町内で生活する障害者、その家族、介護者 | 3名 |
---|---|---|
公募町民 | 1名 | |
弁護士又は司法書士 | 0名 | |
人権擁護委員 | 1名 | |
民生委員又は主任児童委員 | 1名 | |
学識経験者(自立支援協議会委員兼務) | 2名 | |
関係行政機関職員 | 0名 | |
事務局 | 町保健福祉課 |
- 条例の規定では10人。ただ、現時点では弁護士・司法書士の了承が得られなかった。
- また、関係行政機関としては、案件ごとに参加部署が変わると考えており、現時点では保健福祉課(事務局)以外は参加していない。このため、現在は8名で開催。
- 差別案件の事例検討をすることになった場合は、10名体制で開催。
4.暮らしづらさ解消委員会の実施状況
(1)開催状況と議題
〇第1回
日時:平成28年11月21日
内容:
暮らしづらさ解消委員会の立ち上げ
福祉レターについて
〇第2回目
日時:平成28年3月7日
内容:
福祉レターの内容検討
次期障害者計画に向けたアンケートについて
福祉レター
- 暮らしづらさに関する意見集約を進めるための案。
- 暮らしづらさ以外に、合理的配慮の事例収集も目指す。
- 町の行政全般に対する「まちづくりレター」があり、これを模したもの。まちづくりレターは実名報告であるため、福祉レターでは匿名報告を可能にした。
- 小さい町で言いにくいこともあり、困りごとが潜在している可能性もあるため。
5.障害者差別解消に関する今後の取組について
(1)福祉レター
- 福祉レターを通して意見の集約。それをふまえて次の一歩の検討。
(2)町民に対する周知啓発
- 障害について知らないために差別的な発言や対応をしてしまう場合がある。
- 障害者と健常者が出くわした時に、嫌な思いをさせたい人はいない。みんなの悩みを共有して理解が深まれば、多くの差別は回避できると考える。
- そういった部分を少しでも理解促進し、努力していきたい。
(3)これから協議会を立ち上げる自治体へのメッセージ
- 新得に何ができるかわからないけれど、何かはできる。町でやれることをやるだけでも意味があると考える。
- 条例といった形だけが先にできている部分が大きい。ただ、障害者の期待には応えたい。
- 圏域や都道府県レベルに困ったときは相談して。対町民は町でできるので、法的なアドバイスや情報提供は都道府県にお願いするなど。
都道府県と町の関わり
- 北海道障がい者条例に基づいて「地域づくり委員会のコーディネーター」が圏域ごとに配置されている。このコーディネーターや道担当者が定期的に地域を回ってくるので相談している。
- 北海道障がい者条例に基づく「地域づくり委員会」が、市町村の会議と同時に開催される場合がある。前回は、障害者差別解放法に関する情報共有が行われた。定期的に顔を合わせることで、いざとなった時に連携しやすくなる。