7-2:茨城県那珂市――市職員や市議を対象とした研修

ポイント

  • 小規模自治体での設置事例
  • 社会福祉協議会と協働して専用相談窓口

1.那珂市の概況

人口:55,312人(いずれも2017年4月1日時点)

手帳所持者
身体障害者手帳 1,653人
療育手帳 403人
精神障害者保健福祉手帳 289人

2.那珂市における障害者差別解消に関する取組

(1)障がい者差別解消推進事業実施要綱の策定

  • 平成28年4月1日法施行と併せて策定
  • 障がい者差別解消相談室及び障がい者差別解消支援地域協議会の設置、情報収集や普及啓発に関する取り組み等について定めるもの。
  • 相談受付票の様式も定めている。

(2)障がい者差別解消相談室の設置

  • 平成28年4月1日法施行と併せて設置。
  • 平日8:30~17:15受付。相談方法は、対面、電話、FAX。予約不要。常勤2名体制。
  • 社会福祉協議会に運営業務を委託。担当課(社会福祉課)でも相談に対応するが、基本的には差別解消相談室で対応する形。
  • 社会福祉協議会の方が福祉専門職の人が多く、他の福祉制度に関する知識や地域資源に関する情報を持っていることから相談に対応しやすいと考え、委託形式で設置。
  • 相談状況については、想定より少ないという印象がある。周知不足なのか、障害者が相談出来ない別の理由があるのか、検討しているところ。
  • 社会福祉協議会の独自事業「心配ごと相談」の窓口には、障がい者自身から10件程度の相談が寄せられている。多くは心配事であり、傾聴や制度説明で解決できている。

(3)市職員対応要領の策定

  • 平成28年4月1日法施行と併せて施行。
  • 職員が遵守すべき服務規律の一環として策定した。
  • 差別禁止に係る具体的取り組みと併せて、相談窓口の明確化、職員の研修・啓発の機会の確保等の徹底を明記している。
  • 策定に際しては、総務課と協議調整を行い、社会福祉課が作成。総務課も人権擁護に係わる内容ということもあり、積極的に関与してくれた。

(4)全職員を対象とした「障がい者差別解消研修会」の開催

  • 平成28年5月11日から31日にかけて11回開催。市職員及び市社会福祉協議会職員が参加。
  • 主催:市、市社会福祉協議会
  • 内容:講義、DET(障害平等研修)、実習
  • 講師は学識経験者(大学講師)。障害当事者であり、非常に説得力がある。
  • 研修会の必要性について、社会福祉課が企画して総務課に相談。通常、研修担当は総務課であるため、総務課と共同で開催することになった。
  • 市職員については対応要領で、対象を「非常勤職員を含む。」としていたため、嘱託や臨時職員も含めた全職員に参加要請。社協職員も同様に全職員に参加要請した。全職員対象とはいえ、勤務形態や各課における業務の状況によっては全員の参加は難しいと考えていたが、積極的な参加が得られ、約98%と高い出席率となった。
  • 来年度以後も、研修を継続していく予定。

(5)障がい者差別解消支援地域協議会研修会の開催

  • 日時:平成29年3月1日
  • 構成:
     第一部:行政報告「法施行後の那珂市における取り組み状況について」
     第二部:講演「障がい者差別のない共生社会づくりのために、いま私たちのできること ~障害者差別解消法施行から1年たって~」
  • 主催:障がい者差別解消支援地域協議会、共催:地域自立支援協議会、後援:市
  • 一般市民のほか、自治会、事業者、障害当事者に向けて呼びかけ。
  • 民生委員・児童委員、地区まちづくり委員会、福祉関係事業所(障害福祉サービス事業所、地域包括支援センター、介護保険事業所)、商工会事務局、一般市民、障害当事者、約200名が参加。
  • 講師は学識経験者(大学講師)。障害当事者であり、非常に説得力がある。

3.障がい者差別解消支援地域協議会

(1)設置に際しての考え方

  • 平成28年4月1日法施行と併せて設置。
  • 地域自立支援協議会と併設、委員は兼任。
  • 市や差別解消相談室の窓口が主に個別の相談に対応するのに対し、地域協議会は寄せられた相談についての情報交換や共有、協議を行う場所(ネットワーク)という考え。
  • 地域協議会は、指導や勧告の権限を有していないので、紛争等が起きた場合の調停を行うことは想定していない。権限や機能を持つ既存の機関への橋渡しをしていくことが主な役割になると考えている。

(2)構成メンバー

相談支援事業者関係者 2名
保健医療機関関係者 1名
福祉サービス事業所関係者 3名
民生委員・児童委員 1名
教育・就労機関関係者 4名
学識経験者 2名
その他障害福祉に関係する者 2名
行政関係者 4名
  • 地域自立支援協議会と併設・兼任であるため、地域協議会の会議及び運営は地域自立支援協議会に準じて行っている。委員定数は20人以内(現在数19人)。
    ⇒地域協議会について、地域自立支援協議会との役割分担の明確化や委員構成の最適化を検討していきたい。

(3)地域協議会を開催しての印象

  • 地域協議会の構成メンバーにはそれぞれ専門知識や経験、情報を持つ機関が集まっているので、ネットワークの中で相互に連携・補完しあうことで、市や差別解消相談室、個々の機関のみでは難しい案件が発生した場合でも対応し易くなり、相談案件の把握もし易くなるのではないか。地域協議会を設置する意義、効果の一つと考えている。

4.障がい者差別解消支援地域協議会の実施状況

(1)開催状況

○第1回

  • 日時:平成28年9月29日
  • 協議内容:委員の委嘱・任命、正・副委員長の選任、地域協議会について(概要説明)、法施行後の那珂市における対応について

(2)障がい者差別解消支援地域協議会研修会の開催

  • 日時:平成29年3月1日
  • 構成:第一部:行政報告「法施行後の那珂市における取り組み状況について」
  • 第二部:講演「障がい者差別のない共生社会づくりのために、いま私たちのでき
  • ること~障害者差別解消法施行から1年たって~」
  • 講師は学識経験者(大学講師)。障害当事者であり、非常に説得力がある。

5.障害者差別解消に関する今後の取組について

(1)普及・啓発の継続推進

  • 平成28年度は「障がい者差別解消職員研修会」を実施したほか、商工会や民生委員・児童委員協議会の会議での法概要説明、まちづくり出前講座の実施、市広報紙への記事連載、市役所本庁舎での「障がい者就労支援事業所定期物品販売会」などを実施した。
  • 今後も同様の取り組みを継続していく。一般市民や事業者に対する普及・啓発を重視して取り組んでいきたい。

(2)市役所窓口環境の改善

  • 合理的配慮の提供の具体的取り組みの一つとして、障害者の障害特性に応じたコミュニケーションを円滑に行うため、3障害のうちまずは身体障害者向けに、社会福祉課窓口へ意思疎通支援機器(拡大読書器、活字文書読み上げ装置、耳当て式助聴器、会話補助装置、筆談用電子黒板、点字墨字プリンター)を導入した。平成29年度から本格的に運用していく。
  • 意思疎通支援機器は、他の窓口各課も共同活用出来る形とし、必要に応じて設置拡大を検討していく。
  • プリンターは、点訳の出来る職員がいないため、誰でも使用出来るよう点字墨字が両方とも印刷可能なものとした。まずは市広報紙や福祉制度の案内チラシなどに活用していければと考えている。
  • 活字文書読み上げ装置は、音声コード(QRコード)を作成し文書に付与出来るので、点字墨字プリンターと同様に市の広報紙などに導入出来ないか、広報担当と協議し検討していきたい。市のホームページは、すでに音声読み上げ対応としている。
  • 市役所本庁舎1階の各課は窓口カウンターの位置が低く車椅子利用者がそのまま入れないので、窓口の一部に車椅子対応の高いカウンターを設置していく。
  • その他、市の公共施設や学校などに点字墨字の電話帳を設置した。
  • 身体障害者以外の障害特性(知的障害者や精神障害者など)に対しても、どのような合理的配慮の提供が可能なのか検討していきたい。

前のページへ次のページへ