7-3:東京都八王子市――市町村独自条例の先駆者
- 平成24年度条例制定当時からの取組みを強化
- 全職員、教育委員会を対象とした研修や周知啓発活動等、多彩なカード
1.八王子市の概況(平成28年3月末現在)
- 人口:562,019人
- 手帳所持者数:23,849人
身体障害者手帳 | 15,474人 |
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療育手帳 | 4,101人 |
精神障害者手帳 | 4,274人 |
2.八王子市における障害者差別解消に関する取組
(1)障害のある人もない人も共に安心して暮らせる八王子づくり条例(通称:障害者差別禁止条例)の制定及び改正
1 条例改正等の状況
平成24年4月 八王子市障害者差別禁止条例の施行
平成28年4月 八王子市障害者差別禁止条例の改正、職員対応要領を策定
2 制定当初の条例の規定
- 基本理念、市の責務、市民等の責務を規定
- 差別禁止を明記
- 合理的配慮の提供を明記(市、市民、事業者ともに努力義務)
- 差別事案についての相談体制を整備し、解決につなげる仕組みを設ける
(相談窓口の設置)
障害者福祉課及び市委託相談支援事業者(5か所)
(八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会の設置)
委員構成(7名)・・・市長への申立てに係る助言、あっせん等の答申
弁護士、人権擁護委員、学識経験者、医療関係団体(元医師)、教育関係機関(特別支援学校長)、障害者支援事業者、障害者団体を代表する障害者
3 条例の改正
【改正の理由】
- 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」と市条例の整合を図る。
- 市が条例を施行して3年以上経過したなかで検討した結果、今後も取り組むべき施策を明記し、また、これまで課題となっていた事項の見直しを図る。
【改正点】
- ア 合理的な配慮の義務化
- 「障害者差別解消法」では、行政については義務化されることから、市は、合理的な配慮をするよう努力義務から義務とした。
併せて、指定管理者は、市の施設の管理運営などの事務事業をしていることから、市の外郭団体は、市と同様のレベルでの対応が求められることから、合理的な配慮をするよう努力義務から義務とした。
ちなみに、市委託事業者については、委託業務の範囲が広いため、条例で義務化することはせず、必要に応じ契約の中で明文化することとした。 - イ 女性や児童への配慮について
- 女性の障害者は、複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害のある児童には成人とは異なる支援が必要となる場合があることから、市が差別をなくすための取組をするときには、障害者の性別、年齢及び障害の状態に十分配慮する旨を条例に明記した。(差別解消法の国基本方針に準拠)
- ウ 障害理解教育に関することについて
- 条例施行以降の活動の中で、障害者に対する差別をなくすためには、障害及び障害者を理解することが必要であり、特に、子どものころから理解を進めることが大切であると認識したことから、児童及び生徒の障害理解教育に教育委員会と連携して取り組む旨を条例に明記した。(差別解消法の国基本方針に準拠)
具体的には、小学生向けの障害理解のガイドブック及び学習指導案並びに障害理解教育に参加してくれる事業者や障害者団体のリストを作成するなどの準備を進め、29年度から授業の中などで活用できるようにする。 - エ 保育の確保に関することについて
- 制定当初の条例には、市の施策として「療育」と「教育」について取り組むことが規定されていたが、同様に「保育」についても、今まで取り組んできたこと、これから取り組むべきこととして、障害のある乳児、幼児、児童について、必要な保育を確保するため、必要な措置を講ずるよう努める旨を条例に明記した。
- オ 差別の解消のための体制強化について
- 制定当初の条例の規定では、差別の相談をした方が、何らかの理由で取り下げたとき、差別をしたと思われる方への対応ができない、という課題があり、これを解消する必要が生じた。
また、差別解消法では、「地方公共団体は、差別相談に的確に応ずるとともに、差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図ること」が求められ、また、そのために関係機関により構成される「障害者差別解消支援地域協議会」を組織することができるとされたことから、「八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会」の体制を、次のように強化し、より差別の解消に取り組むことができるようにした。
(委員構成)
- 委員数7名→20名以内(現在16名)に増員
- 民生委員、商工会議所、不動産関係団体(東京都宅地建物取引業協会)、市委託相談支援事業者3人、社会福祉法人八王子市社会福祉協議会、八王子市保健所の職員、八王子市教育委員会の職員を追加
(所掌事項の拡大)
- 対象事案に係る申立てについての調査審議に関すること。(現行事務)
- 情報の交換、協議、情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めること。(差別解消支援地域協議会の事務)
- 相談者が何らかの理由で相談を取り下げた場合、その事案への対応協議及び事実調査に関すること。(課題解決のための新しい事務)
(2)差別解消に向けた市の取組
1 障害者に対する理解を広げ、差別をなくすための取組を総合的かつ計画的に実施する。
○年2回(計12回)全職員を対象に障害理解研修を実施
→ 指定管理者も受講対象
受講者累計:市職員 約1500人、指定管理者 約180人
○教職員を対象とした研修を実施
→ 児童への障害理解教育のため、学校教員に周知研修を実施
平成26年度 | 夏季教員研修1回、個別研修2回(小・中学校各1校) |
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平成27年度 | 生活指導主任研修1回、教務主任研修1回 |
○年1回(計3回)条例周知イベントをクリエイトホールで開催
→ 27年度からは、いちょう祭りに参加し、より多くの市民に周知を図る。
平成24年度 | 270人 |
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平成25年度 | 132人 |
平成26年度 | 93人 |
平成27年度 | 手話体験347人、点字体験 92人、クイズ 147人 |
平成28年度 | 手話体験170人、点字体験 88人、クイズ 380人 |
2 市、市民、事業者は、障害者の権利利益を侵害することのないよう、合理的な配慮に努めること。
○障害理解のためのガイドブック「みんなちがってみんないい」発行
→ 職員研修、イベントをはじめ、多くの市民等への周知に活用
平成24年度 | 6,000部 |
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平成26年度 | 1,500部 |
平成27年度 | 1,500部 |
平成28年度 | 1,500部 |
「みんなちがってみんないい」
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/005/014/009/p021337.html
○八王子駅周辺を中心に大型商業施設、金融機関、不動産業者や市内の病院を対象とした周知
→ 障害理解、合理的な配慮等の説明を兼ねた面会によるアンケート調査
平成25・26年度に実施:大規模店6施設17店舗、病院11か所、市営駐車場2か所、金融機関3か所、不動産業5か所
3 差別事案についての相談体制を整備し、場合によっては市長に申立てて解決につなげる仕組みを設けていること。
○差別相談への対応や差別事案の情報共有等
平成24年度 | 10件 |
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平成25年度 | 2件 |
平成26年度 | 8件 |
平成27年度 | 5件 |
平成28年度 | 7件 |
3.八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会
(1)構成員
法曹等 | 弁護士 |
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人権擁護委員 | |
学識経験者 | |
医療・保健 | 医療関係団体(元医師) |
八王子市保健所の職員 | |
当事者 | 障害者団体を代表する障害者 |
事業者 | 商工会議所 |
不動産関係団体(東京都宅地建物取引業協会) | |
福祉 | 市委託相談支援事業者 3人 |
障害者支援事業者 | |
社会福祉法人八王子市社会福祉協議会 | |
民生委員 | |
教育 | 教育関係機関(特別支援学校長) |
八王子市教育委員会の職員 |
(2)今年度の調整委員会の開催状況
〇第1回:4月20日
- 委員委嘱、説明等
- 27年度までの市内差別相談事例の紹介及び検討
〇第2回:9月13日
- 28年度上半期の市内差別相談事例の報告
4.障害者差別解消に関する今後の取組について
○事業者・一般市民への周知啓発
これまで、事業者に対しては、八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会に参加している事業者協会の機関誌に情報を載せて周知啓発に取り組んできた。しかし、そういった協会・組合に加盟していない事業者や個人商店等に対し、周知啓発をどのように展開するのかが課題となっている。
今後は、上述した取組を継続しつつ、市民や事業者の理解を進めるための取組みを強化していく予定である。現時点では、相談支援事業者や障害者団体に呼びかけし、店舗での合理的配慮の事例を収集、類型化して事例集としてまとめることを検討している。