7-12:山口県――あいサポート運動との相乗効果
- あいサポート運動推進連携会議を包摂する地域協議会の事例
- 差別解消法・あいサポート、2つの事業の相乗効果に期待
1.山口県の概況
人口:1,395,927人(平成28年4月1日現在推計人口)
障害者手帳所持者数:91,009人(平成28年3月31日現在)
2.山口県における障害者差別解消に関する取組
(1)2つの機能を持つ協議組織
本県では平成27年度に次の2つの事業施策に取り組むこととなっており、当初は、それぞれの協議組織の設置を検討していた。
1 障害者差別解消法施行に向けた取組
法第17条に規定された地域協議会としての機能
2 「あいサポート運動推進事業」の開始
平成28年度からの障害者差別解消法施行を踏まえ、広く県民の障害や障害者への理解促進及び社会的障壁除去に向けた配慮の促進を図るための取組が急務とされたことから、あいサポート運動の実施に取り組むこととなった。
この運動を広く県民運動として展開するための推進母体「あいサポート運動推進連携会議」としての機能
⇒平成27年度予算編成の段階で両者を兼ねる協議組織として整理することとした。
(2)相乗効果への期待
「あいサポート運動推進連携会議」は本来、「障害者差別解消支援地域協議会」とは別個の組織であるが、地域協議会の場で「あいサポート運動」の周知や、あいサポーター及びあいサポート企業等の要請を行うなど、両者を有効にリンクさせることにより、双方の事業実施に相乗効果を得られることが見込めることから、地域協議会に推進連携会議を取り込み、両者を兼ねる協議組織として設置することとした。
また、地域協議会の設置に当たっては、当初、「山口県障害者施策推進協議会」を活用する方法も検討したものの、地域協議会の構成団体(構成員)に要請される事業者団体が施策推進協議会に不足していた一方で、「あいサポート運動推進連携会議」においては企業・事業者団体を当初から構成メンバーとして検討していたため、新たに協議組織を立ち上げることとなったものである。
(3)設置時の問題点
事務局で選定した全ての団体から委員を引き受けてもらうことはできたものの、事業者団体の一部からは、会員企業を代表する立場としての協力には限界があるとの不安の声もあった。
3.山口県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり推進会議
(1) 組織形態
- 設置日:平成27年7月28日
- 組織:障害者の自立と社会参加に関連する分野を所管する行政機関(国・県・市町)、障害者・事業者・福祉分野の関係団体及び学識経験者(16)を構成団体とする。
- 所掌事項:
- ア 障害者差別解消法第18条に基づき、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)が行うものとされている事務等に関すること
- イ あいサポート運動の推進に関すること
(2)構成団体
学識経験者 | 山口大学教育学部 |
---|---|
国 | 山口労働局 |
山口地方法務局 | |
障害当事者 | 山口県身体障害者団体連合会 |
山口県手をつなぐ育成会 | |
山口県精神障害者福祉会連合会 | |
事業者 | 山口県経営者協会 |
山口県商工会議所連合会 | |
山口県商工会連合会 | |
山口県中小企業団体中央会 | |
山口経済同友会 | |
福祉 | 山口県社会福祉協議会 |
山口県民生委員児童委員協議会 | |
山口県社会福祉士会 | |
市町 | 山口市 |
平生町 |
あいサポート運動
「誰もが、多様な障害の特性、障害者が困っていること、必要な配慮などを理解して、ちょっとした手助けや配慮を実践する」県民運動(鳥取県提唱で現在、全国8県8市町で推進)。
〇あいサポート運動との連携によるメリット
1 事業実施の相乗効果
障害の有無に関わらず誰もが暮らしやすい共生社会の実現を目指すという「あいサポート運動」の理念は、障害者権利条約、障害者基本法及び障害者差別解消法の理念と共通するものであり、障害者基本法や障害者差別解消法で規定された国民の責務や地方公共団体の取組趣旨にも合致するものである。
また、私人においては差別禁止が法による規制対象とされていないものの、啓発活動を通じて法の趣旨の周知を図っていくこととされており、この点において、県民運動として展開する「あいサポート運動」が法の主旨を補完する役割を果たしている。
区分 | 障害者差別解消法 | あいサポート運動 |
---|---|---|
対象 | 一般私人までを対象としていない | 県民を対象とした県民運動 |
フレーズ | 合理的配慮 | ちょっとした手助けや配慮 |
理念・目標 | 共生社会の実現 |
2 組織兼務による業務効率化
両組織は本来、別個の役割と審議事項を有するものであるが、別組織とした場合でも構成団体の過半は共通するものであったことから、人選や会議開催等において業務の効率化が図れたこと。
4.会議の実施状況
(1)平成27年度第1回(平成27年7月28日)
本推進会議を設置し、構成団体へ設置主旨や県の取組等について説明するとともに、情報交換を行った。
1 推進会議設置の経緯・趣旨等について
2 障害者差別解消法に係る県の取組状況について
- 職員対応要領の策定準備
- 相談体制の整備
- 地域協議会(=本推進会議)の設置
- 啓発活動
3 あいサポート運動の取組状況について
(2)平成27年度第2回(平成28年2月24日)
県職員対応要領(案)をはじめとした障害者差別解消法への対応状況及び障害者差別解消法に係る県独自条例の必要性について意見聴取を行った。
1 障害者差別解消法に係る県の取組状況について
ア 法の概要と県の取組状況
イ 本県の対応状況
- 職員対応要領の作成
- 相談体制の整備
- 地域協議会の設置
- 啓発活動
ウ 障害者差別の解消に係る県独自条例について
エ 法の施行と推進会議の役割について
2 あいサポート運動の進捗状況について
(3)平成28年度第1回(平成28年9月7日)
県内の差別事案や合理的配慮の提供事例等について協議報告を行うとともに、県・市町・関係機関の取組について情報交換を行った。
1 障害者差別解消に関する事案・事例及び取組について
ア 障害者差別解消の取組に関する事案等について
○差別に関する事案(参考)
○合理的配慮提供の事例
- 県民からの募集事例
- 県における事例
- 市町における事例
イ 障害者差別解消のための関係機関の取組について
- 県の取組
- 市町の取組(7月31日時点調査)
- 関係機関の取組
2 あいサポート運動の現状と今後の取組について
5.障害者差別解消に関する今後の取組について
(1)地域協議会の成果と課題
1 成果
- 法施行に向けた職員対応要領作成や相談体制整備、啓発活動等について、法施行前年度に協議組織を設置・開催したことにより、地域協議会の場で障害者差別解消法とあいサポート運動の連携について、有用な意見等を反映することができた。
- 同様に、地域協議会の設置を含めた法に基づく県の対応が早い段階でできたことにより、市町へも効果的な影響を及ぼしたと思われる。
- 啓発活動や県の取組(相談体制整備等)について、構成団体の委員を通じて意見交換することで、傘下団体や関係先まで含めた効果的な周知・発信を行うことができている。
2 課題
- 構成団体委員のうち、行政や福祉団体、当事者団体においては、法への理解や取組支援を得やすいものの、事業者団体においては、広範な分野にわたる事業者の上部組織、連合組織の意向を踏まえた意見となりにくい傾向にある。
- 地域協議会において、差別に関する事案の協議や合理的配慮提供の事例等を共有することとされているが、事案・事例の収集実績に乏しく、蓄積状況が低調であるため今後の開催にあたっては不足感がある。
(参考)差別に関する事案
○紛争の防止や解決を図るために地域協議会で共有すべき事案
該当無し
(一次受付窓口の市町に、解決が困難として県へ報告された事案及び県に直接寄せられた事案のうち、地域協議会で共有すべき事案なし)
○県が対応した相談事例
相談事例内訳:8月末時点で10件
(1)相談件数(窓口):障害者支援課6、県民局1、障害者権利擁護センター3
(2)相談方法:電話9、文書1
(3)相談者:障害当時者6、障害者家族1、支援者1、事業者1、県民1
(4)相談内容
- 市職員や警察職員による対応についての苦情、要望
- 精神障害者への社会の偏見解消
- 身障者用駐車場、障害者住居への要望 等
(※平成28年度第1回推進会議資料より抜粋)