1 国際調査

1.2 内容

(1)諸外国における合理的配慮・環境整備に関する指針や取組モデルの実態状況の把握

 以上の目的のため、本調査ではまず、我が国と比較的近接した時期に障害者権利条約に署名又は加入し、同条約に関する取組を進めており、かつ政府報告を既に提出し、近く国連による審査を控えている国を対象に、各国の政府報告や関連する資料の内容から、各国における障害者差別禁止法制、国内実施体制、政府が策定する基本計画やガイドライン、その他の主要関連施策の動向と特徴を把握・整理した。

(2)障害者権利委員会における諸外国の審査プロセスの実態状況の把握

 次に、対象国の政府報告をはじめ、各国の市民社会などからのパラレルレポートなど、障害者権利委員会に提出された関連資料、事前質問事項や最終見解など、障害者権利委員会が各国に対し発出した関連資料の内容を整理し、特に重要な論点、パラレルレポートで指摘された課題について審査の経緯、ポイントを明らかにした。
また、第1サイクルの審査が終了している国を対象に、障害者権利委員会の最終見解の内容と提出されたパラレルレポートの内容を比較分析し、パラレルレポートの記述内容が最終見解の内容の傾向にどのような関連が見られるかを検討・分析した。
 具体的には、以下の事項の詳細について、順を追って調査した。

a.調査対象国の障害者権利条約に基づく政府報告、パラレルレポート、事前質問事項、最終見解の通読と要点のまとめ
b.事前質問事項、最終見解の各国比較による各国に共通する論点及び固有な論点の抽出
c.b.で得られた論点とパラレルレポートの比較による反映状況の分析
d.関連する資料の収集・翻訳

 上記d.に示した関連資料としては、障害者権利委員会がこれまでに発表している「一般的意見」がb.との関連で特に重要と考えられ、内容の把握及び各国の審査プロセスでの論点との関係性の分析を優先的に行うこととした。

(3)最終見解に対する諸外国の対応状況の把握

 諸外国における合理的配慮・環境整備に関する指針や取組モデルの実態状況を把握するためには、第1サイクルの審査が既に終了している国における審査終了後の障害者差別禁止法制の実施状況と、委員会における審査状況・最終見解の指摘事項とを比較検討することも有効と考えられる。
 このため、調査事項a~dの結果を踏まえ、第1サイクルの審査が終了し最終見解が示された主要国を対象に、各国においてどのような合理的配慮・環境整備に関する指針や取組モデルが策定され、それらがどのように条約との整合性を確保しているのかを分析した。
 ここで明らかにする事項は、以下の通りである。

e.諸外国における合理的配慮・環境整備に関する指針や取組モデルの実態状況の把握とそれらへの最終見解の影響の分析

(4)対象国

 障害者権利委員会に政府報告を提出し、審査を待っている国で、直近の会期(第19会期)及び会期事前作業部会(第9会期事前作業部会)の審査・検討対象国のうち、2017年12月時点で複数パラレルレポートが提出されている国は、フィリピン、ポーランド、ロシア、スロベニア、ネパールである。このため、まずは調査事項a~dに関し、この5か国を対象とする。この5か国については、事前質問事項を軸に、その前後に提出されたパラレルレポートとの関係を分析する。また、ロシア、スロベニア、ネパールについては、調査期間中に公表される見通しの最終見解についても、公開され次第分析した。
 上記3か国の他、2017年4月の第17会期において事前質問事項が作成されたイギリスを対象に加える。イギリスは我が国と社会・経済状況が近く、過去の調査でも度々調査の対象となっている。2016年になって多くの障害者団体が合同してパラレルレポートを提出し、事前質問事項に強く影響したと考えられることから、その関係性などを把握・分析した。
 調査項目e.については、2017年12月時点で第1サイクルの審査が終了している主要国のうち、多くのパラレルレポートが提出され、その中に障害者団体が合同したパラレルレポートが含まれているドイツ(2015年4月審査終了)、スウェーデン(2014年4月審査終了)を対象とした。この2か国については、過去に調査対象となったことがあるが、当時の調査結果を参照しつつ、最終見解がその後の両国の取組に与えた影響を分析した。
 以上をまとめると、調査事項a~dに関しては、フィリピン、ポーランド、ロシア、スロベニア、ネパール、イギリス、ドイツ、スウェーデンの8か国を対象に論点を整理・分析し、調査事項eについては、ドイツ、スウェーデンの2か国を対象に分析した。

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