1 国外調査 1.6.3

1.6 ノルウェーにおける合理的配慮・環境整備と障害者権利委員会審査状況

1.6.3 ノルウェーにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ

 ノルウェーは近年になって包括的な差別禁止法である、差別禁止及びアクセシビリティ法が2018年に施行され、法整備が進んだ。利用者が管理できるパーソナルアシスタンスの提供が制度化されており、またインクルーシブな教育環境に重点を置いた初等中等学校の教職員教育のための枠組みが提供されているなど、複数の分野で積極的に先行事例を提供している国であるといえる。
 その一方で、物品やサービスに対するアクセシビリティを規定する法律がまだない点や、教育機関におけるアクセシビリティの確保が進んでいない点をはじめ、多くの課題がパラレルレポートによって指摘されており、環境整備に依然として課題が多いことが伺える。また、インクルーシブ教育に関しては障害のある生徒に対する高い割合のいじめが報告されており、社会的な意識向上に関しても道半ばであるといえる。
 締約国の中でも先進的な取組がなされている一方で、ノルウェーは選択議定書を批准しておらず、さらに第12条、第14条、第25条に対して解釈宣言を行っている。特に後者に関しては後見制度の継続及び最終手段としての法的能力剥奪制度の維持を明確に主張し、障害者権利委員会と真っ向から対立している。ノルウェー政府として支援付き意思決定自体は支持しており、後見人が被後見人の意思決定の支援を行うことが義務づけられているとしている。この義務を確実に実行できるようにするため、全国的な研修制度の立ち上げを2019年度中に行うなど、障害者の権利のあり方に関しては独自の姿勢をとっている。

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