1 国外調査 1.7.3
1.7 トルコにおける合理的配慮・環境整備と障害者権利委員会審査状況
1.7.3 トルコにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ
トルコでは、トルコ障害法(TDA)第5378号が障害者法制の根幹をなしている。この法律は2014年に改正され、障害やそれに関連する概念の定義や、合理的配慮の提供に関する規定などを障害者権利条約に沿う形に修正がなされたとされているが、障害の認定制度では依然として医学モデルによる評価が用いられている。一方、障害者の差別禁止に関しては、教育と労働における差別禁止のみが法制化されており、それぞれ国民教育法と労働法で定められているにとどまる。障害に基づく差別に対する罰則規定については、憎悪による差別のみが刑法で定められており、その実効性が疑問視されている。これらの法制に含まれないあらゆる場面での差別に関しては、2016年に設立されたトルコ人権平等機関がカバーするとされている。
環境整備に関しては、建物のアクセシビリティの確保の進捗が思わしくなく、脱施設化やインクルーシブ教育の導入の障壁にもなっている。アクセシビリティ監視・監査委員会が積極的な監視を行っていないという指摘、そしてアクセシビリティ基準の遵守規定に対して2度の期限延長がなされているという指摘からも、さらなる意識の向上と基準の遵守徹底のための措置が必要であることがうかがえる。
一方、前向きな動きとしては、精神障害者の脱施設化について、再発期の患者の介護体制を、精神病院による集中的な治療から地域の小規模な医療機関や保健センターによる介護に切り替える取組がなされている。また、市民社会によって開発された、視覚障害者の投票の秘密を守るための特殊な投票用紙について、政府は既に導入することが決定した段階にあると回答しており、今後の利用実績が注目される。