1 国外調査 1.10.2
1.10 スペインにおける合理的配慮・環境整備と障害者権利委員会審査状況
1.10.2 スペインにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ
「平成26年度障害者の権利に関する条約の包括的な最初の報告の検討プロセスに関する国際調査報告書」で述べられているとおり、スペイン政府は第1サイクルで障害者権利条約の批准に応じた法整備を積極的に行っており、最終見解では好意的な評価を得ていた部分も少なからずあった。
その後の障害者を巡る各種法制度の整備に関しては、2011年の「障害者権利条約への法規則の適合に関する法」によって多くの法律が改正され、法務省は代理意思決定の仕組みから支援付き意思決定の仕組みへの移行のため、現在も法改正に取り組んでいるとされている。一方、第1サイクルの最終見解で勧告がなされていた後見制度や法的能力の判断に関しては、最高裁判所が条約に沿った法解釈を行うことにとどまっており、制度の廃止や改革を見据えた抜本的な動きはみられない。
アクセシビリティに関しても、最終見解以降に多くの取組が見られている。2014年9月に障害に関する戦略的行動計画2014-2020が承認され、アクセシビリティ促進が戦略目標の1つとされた。また、国民アクセシビリティ計画IIの準備作業が行われており、その目標として公共政策の計画、実行、評価におけるアクセシビリティの横断的管理をはじめとする施策が掲げられている。情報へのアクセスについては、公共のウェブサイトのアクセシビリティの定期調査を行うウェブアクセシビリティ監視局が2010年に立ち上げられている。以上から、一定の関心を持ってアクセシビリティ政策が進められていることがうかがえる。
最終見解で障害者権利委員会から期待を寄せられていたものの、失敗した取組もある。2007年12月26日発効の法第49/2007号で定められている、障害者の平等、無差別及び普遍的なアクセシビリティに関する恒久的専門事務所の設立に関しては、スペイン政府は事前質問事項に基づく報告書の中で、制度がほとんど利用されず失敗したことを認めた。
最終見解で懸念を示され、複数の勧告がなされた脱施設化に関する問題については、パラレルレポートによって厳しい現状が指摘されており、第1サイクルから状況は改善していないことが伺える。脱施設化に向けた前向きな動きとしては、2017年に中央政府と地方自治政府の協力の下で立ち上げられた、自立生活支援のためのパーソナルアシスタントの提供状況を分析、研究するワーキンググループが挙げられる。このグループは2018年1月から活動を開始しており、研究を通じて地域での介護や在宅介護の改善提案を提示することを目的としている。