1 国外調査 1.11.3

1.11 ベルギーにおける合理的配慮・環境整備と障害者権利委員会審査状況

1.11.3 ベルギーにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ

ベルギー政府の最終見解以降の主な動きとしては、2014年9月に施行された、支援付き意思決定を導入する法的能力に関する法律の実施と、条約の実施の監視を担当するUniaのパリ原則への一部準拠が挙げられる。
 前者は最終見解の直前に施行されたもので、障害者権利委員会はこの法律の下でも代理意思決定を選択することが可能となっている点に懸念を示していた。これに対し、第2・第3連結定期報告に先立つ事前質問事項(LOIPR)の検討に向けて提出されたパラレルレポートでは、司法機関は資源や時間の不足を理由に代理意思決定を選択する傾向にあるとの指摘がなされ、懸念された通りに運用されていることが明らかにされた。もっとも、この結果も含めて先行事例として有益な知見を提供していることは間違いないといえる。

後者については、2018年に国家人権機関世界連盟によって、パリ原則への一部準拠を認める「ステータスB」の認証を得ており、一部ではあるものの最終見解の勧告に沿った動きが見られた。
一方、その他の諸点についてはパラレルレポートによる厳しい指摘が並んでいる。ベルギーは合理的配慮を含む障害者の包容のための協定が連邦国家と各連邦構成主体の間で結ばれているとされているが、2014年に障害者権利委員会から示された最終見解では国内法が条約に適合していないことが指摘されている。LOIPRの検討に先立って2019年2月までに提出されたパラレルレポートでも、差別禁止法制や合理的配慮の不備が指摘されており、障害者の包容を考慮に入れた法整備における課題は多い。

アクセシビリティに関しては、建造物のアクセシビリティ基準の遵守の監視が不十分なために整備が進んでいない問題、最終見解で勧告された、建築許可を発行する公的機関の職員に対するアクセシビリティ研修の提供が実施されていないこと、手話通訳者の不足の3点がパラレルレポートで報告され、国内で環境整備が積極的に進められていない現状が明らかにされている。
障害のある学生、生徒のインクルーシブ教育については、各連邦主体にそれぞれ制度はあるものの、特別教育学校も同時に維持されている問題がパラレルレポートで指摘されている。最終見解で懸念が示された教育現場における合理的配慮の不備に関しては、パラレルレポートでも同様の不備が指摘されており、改善された形跡は見られない。
 上記の通り、ベルギーは第2サイクルを前に多くの課題を残しており、その他の取組の詳細に関しては事前質問事項に基づく報告書による報告が待たれるところである。

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