1 国外調査 1.7.2

1.7 アルバニアにおける合理的配慮・環境整備と国連障害者権利委員会審査状況

1.7.2 アルバニアの政府報告の国連審査状況

(1)審査プロセスの現状

 アルバニアは、2012年11月に障害者権利条約を批准し、2015年5月に政府報告を国連障害者権利委員会に提出した。2019年2月には2つの市民社会団体から事前質問事項に向けてのパラレルレポートが提出され、2019年5月に国連障害者権利委員会より事前質問事項が示された。アルバニアは事前質問事項への政府回答を2019年7月30日に国連障害者権利委員会へ提出した。その後、第22会期の審査に先立ったパラレルレポートが3団体から提出されたものの、そのうちの1団体、アルバニア障害者団体ネットワークからの報告は2020年1月現在で閲覧できない状態となっている。その後10月に委員会による総括所見が提示された。
 パラレルレポートを提出した各組織の概要は以下のとおりである。

カリタス・アルバニア(Caritas Albania)

 アルバニアの貧困層の生活状況を向上させることを目的とした非政府組織で、カリタス・インターナショナル及びカリタス・ヨーロッパの下部組織となっている。介助や援助の提供、職業訓練、情報提供等多岐にわたる障害者支援事業を展開している。

アルバニア盲人協会(Albanian Blind Association)

 1991年に設立された市民社会組織。民主化以降、最古の組織で、多くの障害者を代表しているにもかかわらず、全国障害委員会に加えられていない。

アルバニア障害者団体ネットワーク(Network of Disavility Organizations (Albania))

 9団体と2人の個人の連合体。EUとユニセフの基金によるプロジェクト、「西バルカン及びトルコにおける暴力から児童の保護と障害のある児童の社会的包容の促進(Protecting children from violence and promoting social inclusion of children with disabilities in Western Balkans and Turkey)」の枠組みの中で、事前質問事項に向けたパラレルレポートを作成した。

(2)主な論点

第1~4条 一般的義務

 第1条~第4条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 新しい障害の定義は幾つかの法律で定められたが、いまだに障害評価は医学的基準でなされている。枠組みが細分化されており、社会モデルへの移行を可能にする効果的な仕組みになっていない。社会的モデルに基づく評価の試験的なプロジェクトがティラナ市で行われているが、それについて市民社会組織は知らされていない。
  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律における概念の定義は、障害者権利条約の定義を支持あるいは転用していないため、この法律は具体的な効果をもたらさない。
  • この法律で「障害者のための組織」が定義され、公的予算によって政府等への助言やプロジェクト等で活動しているが、これは当事者団体ではない(障害者にサービスを提供する非営利団体等)。盲人協会は、この規定に抗議している。
  • 全国障害委員会が設立され、7人の障害者が評議員となっているが、ここに盲人協会は入っていない。評議員は首相によって任命され、政府の政策に同意するかが基準となっている。
  • アルバニアは、欧州諸国と比べて社会保護支出割合が最も低い。条約調印が国の予算構造に影響を与えたとは思えない。障害者手当は非常に低い水準にとどまっており、サービス提供事業者も困難な状況にある。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 「精神障害者」、「労働無能者」、「精神遅滞」等の軽蔑的なカテゴリが含まれている、社会手当を目的とした障害の分類と認証のための法規、基準、手続を締約国が見直すつもりかどうか。
  • 欧州連合との加盟交渉の準備における障害者団体の効果的な参加を確保するために講じられた措置について。
  • 障害者のための国家行動計画2016-2020の内容と、これまでに達成された具体的な成果について。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 障害者権利条約の基準に従って法的枠組みの変更を進めている。障害者のための国家行動計画2016-2020を策定し、生活の質の向上と効果的な包容を目指している。
  • 障害の定義と評価の基準は、心理社会的評価に関し広範囲に見直されている。障害評価の改革が進んでおり、2017年からティラナ市で新しい社会障害評価制度が試験運用されている。新しい障害評価は身体機能、活動への参加、環境及び障壁の影響の評価に基づく。
  • 電子障害者登録も試験運用されている。これにより、新しい経済援助計画の実施を始めている。障害者の支払いに対する支出が大幅に増加した。

 総括所見において、委員会は次のような勧告を行った。

  • 締約国が、障害者権利条約が重視する障害の人権モデルを採用し、自国の法律と調和させ、障害者権利条約に従い、差別禁止に関する法律に障害の人権モデル及び合理的配慮の否定を含めること。
  • 地方レベルで障害者が、主流の、又は障害に特化したサービスにアクセスできることを確保するために、締約国が障害者団体と緊密に協議して、社会に係るサービス法第121/2016号、雇用促進法第15/2019号並びに閣議決定第380号(2019年)で定められた、社会的保護受給資格のための障害評価を含む、既存の法律及び草案を見直すこと。
  • すべての法律、公文書、公的な談話から、使用されている障害者に関するすべての軽蔑的な言葉を削除すること。

 さらに、障害者権利条約の実施及び監視において、障害者代表団体を通じて、障害のある児童を含めて、障害者の参加に関する一般的意見第7号を考慮することを勧告した上で、以下の勧告を行った。

  • 全国障害委員会において、障害のある女性及び児童、聾者又は難聴者、心理社会的、知的障害者の代表団体等、障害者代表団体の任命及び選挙に対して必要な、あらゆる法的及びその他の措置を講じること。
  • 全国障害委員会に十分で定期的な財政支援及び行政支援を提供すること。また、専門家の質、障害者、特に障害のある女性及び児童の利益を適切に代表するため、全国の障害者代表団体の多様な参加を確保すること。
  • 障害者団体の機会均等を確保するため、障害者権利条約の公定訳文を訂正すること。

 以上に加え、委員会はこれ以上の遅滞なく選択議定書を批准することを勧告した。

第5条 平等及び無差別

 第5条に関しては、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 差別禁止に関する法律や障害者の包容とアクセシビリティに関する法律の実施レベルや効果は低く、都市部でのみ継続している。原因として、制度に対する信頼喪失、関係機関の積極的な役割の欠如等がある。
  • 政府の措置は、医学的な障害の診断に基づいており、1990年代以降改正されていないため、異なる障害種別の人の間に深刻な不平等を生じている。知的障害者、心理社会的障害者は支援に関して最も差別されている。
  • 従来は、個人が得た収入とは無関係に障害給付が行われたが、政府は法律を改定し、ほかの所得の有無、年齢、学歴等に基づく障害給付の条件付けと削減を進めている。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で次の点に関する情報提供を求めた。

  • 差別禁止に関する法律及び、障害者の包容とアクセシビリティに関する法律における、障害を理由とする差別の定義と、違反した場合の罰則や救済措置について。
  • 障害者権利条約の批准以降、障害に基づく差別について、差別防止委員会及び裁判所によって下された決定について。
  • 障害のあるロマ人、特に女性と女児に関する、教育、健康、雇用の状況。

 これに対し、アルバニア政府の回答は次のようなものであった。

  • 差別禁止に関する法律には、差別に対する包括的な定義に加え、直接差別、間接差別、関連差別、迷惑行為、差別的行為を命令することに対して個別に定義がなされている。障害も差別事由の1つとして挙げられている。障害者の包容とアクセシビリティに関する法律では、「障害者の差別」と「合理的配慮の否定」の2つに対し定義付けがなされている。差別を受けた者は差別防止委員会に苦情を持ち込むか、法廷で争うことができる。差別防止委員会が差別を認定した場合、差別的行為を行った者に対して是正命令を下すことができる。相手が命令に従わない場合、罰金を科すことができる。裁判の場合は、判決で賠償金が求められる。
  • 2016年1月1日から2019年5月31日までに、差別防止委員会は61件の障害に基づく差別の苦情を扱い、うち27件で差別が認定された。苦情の多くは合理的配慮の提供、給付金及びサービスの提供、公立学校における障害のある児童の同化を目的とした法制度の不適用に関するものだった。
  • 差別防止委員会は、この期間中ロマのコミュニティにおける障害者差別の事例は扱っていない。健康・社会保護省は、児童、ロマ、エジプト人、LGBTIに対するジェンダー平等と家庭内暴力に関する国内法や戦略、行動計画に基づいて、障害者差別防止の措置を実施している。社会的保護戦略とロマとエジプト人の権利に関する国家行動計画の中には、経済支援、教育、雇用サービス、司法、市民保護等に関する特定の指標を伴った措置が含まれている。
  • 教育・スポーツ・若者省はロマコミュニティの児童による教育への参加を監視し、すべての教育機関とROMALBシステムからデータを収集している。

 総括所見において、委員会は次のような勧告を行った。

  • あらゆる形態の複合・交差差別及び合理的配慮の否定等、あらゆる形態の障害を理由とする差別を明示的に含むよう、障害に基づく差別の明確な禁止を導入するため、法律を見直すこと。
  • 障害者が締約国のどこに居住しているかにかかわりなく、障害者に対して、調和のとれた透明性のある基準、公正な評価手続、平等な資格を策定し、適用すること。
  • 特に、他者との平等を基礎として、教育、保健、雇用の権利に焦点を当てて、障害のあるロマの状況を改善するための効果的な動機付けを含む、国のプログラムを策定すること。
第6条 障害のある女子

 第6条に関しては、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 政府が挙げている法律や文書のほとんどには、障害のある女性や女児のための具体的な記述はない。
  • 差別禁止に関する法律は、差別対象のカテゴリを列挙しているが、複数の原因に基づく差別についての規定はない。
  • 障害者のための国家行動計画は、障害のある女性、女児のための具体的な対策や指標を有していない。
  • 女性差別撤廃委員会(CEDAW)の監視に関するオンブズマン報告では、障害のある女性が二重の差別に直面していることを示している。
  • 政府統計では、社会保障制度の女性受益者に関するデータがなく、国勢調査等でのデータ収集方法の見直しが必要である。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 障害のある女性及び女児が直面している複合・交差差別に関する法規定。
  • 障害者のための国家行動計画2016- 2020に記載されている、障害のある女性及び女児の権利に関する明確な言及及び義務、並びにその分野における成果。
  • 女性差別撤廃委員会(CEDAW/C/ALB/CO/4、第39項)の勧告を実施するために講じられた具体的な措置。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 複合・交差差別を個別に定義している法律はない。
  • 2018年に行われた家庭内暴力への措置に関する法律に関連する改正には、家庭内暴力の被害者となった障害のある女性の扱いが含まれている。
  • 特定のカテゴリに属する脆弱な女性を受益者に設定する法律は存在する。また、家庭内暴力や性的虐待、人身売買の被害者を救済する複数の法律がある。また、国家ジェンダー平等戦略と行動計画2016-2020の実施によって、政治的、公的な意思決定過程におけるジェンダー平等や性別に基づく暴力の防止に関する取組がなされ、国内のジェンダー平等の仕組みの調整と監視が強化されている。
  • 国家雇用・スキル戦略2014-2020と社会的保護戦略2015-2020は、ロマをはじめとする脆弱なグループを対象としている。

 総括所見において、委員会は一般的意見第3号を参照し、持続可能な開発目標のターゲット5.1、5.2、5.5を考慮し、以下を勧告した。

  • 法律及び政策において、障害者権利条約の遵守、並びに障害のある女性及び女児の権利の完全な保護を確保すること。また、雇用に関する政策や措置を含め、すべてのジェンダー平等の政策及びプログラムに障害の視点を取り入れ、その実施のために効果的な戦略を策定することを確保すること。
  • 特に司法、教育、保健、雇用へのアクセスにおいて、障害のある女性及び女児が直面する複合・交差差別を防止し排除するために、障害者のための国家行動計画2016-202089を完全に実施し、必要とされる適切で透明性のあるすべての措置を講じることを確保すること。
  • 2016年の女性差別撤廃委員会の勧告を実施すること。(CEDAW/C/ALB/CO/4、第39項 (c))
第9条 施設及びサービス等の利用の容易さ

 第9条に関しては、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律は、コミュニケーションとインフラにおける障壁撤廃のための予算とスケジュールを設定することをすべての公的機関、一般に公開される民間の機関に求めたが、その作成期限が過ぎても公的機関はその義務を遵守していない。また、その遵守を確保する制裁措置もとられていない。
  • 公的機関は、障害者にとってのアクセシビリティツールやサービスの重要性を理解していない。障害者のための国家行動計画に電子機器のアクセシビリティを追加する提案は採用されず、視覚障害者が利用できるアルバニア語のスクリーンリーダーがない。
  • ティラナ市では幾つかの試みがなされたが、その多くは技術的基準に準拠しておらず目的にかなっていない。苦情処理の仕組みは存在しない。
  • アルバニアのバス路線には、聴覚障害者や視覚障害者のための情報提供が欠如している。
  • 手話公認の閣議決定後、手話へのアクセスを改善するためにアルバニア政府によって講じられた措置はなく、手話通訳者は4人しかいない。聴覚障害者は、警察署、消防署、病院等へのアクセスもできない。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 公共サービス提供における環境上、インフラ上の障壁の除去に関して、障害者の包容とアクセシビリティに関する法律及び閣議決定第1074号(2015)の実施状況と、この法律に基づく義務を遵守した公的機関の数と割合。
  • アクセシビリティを確保するための期限付き目標や測定可能な指標、適切な苦情処理の仕組みを含む、採用された計画又はロードマップに関する詳細な情報。また、アクセシビリティ基準の遵守違反に対する制裁措置の適用に関するデータについて。
  • 都市ルネッサンス構想に与えられたアクセシビリティの状況を含め、情報通信技術とサービスが障害者に利用可能であることを確保するために講じられた措置。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 道路インフラの改善や、すべての学校の新築、改築の際における、障害のある児童のアクセシビリティを考慮した基準への準拠といった措置が講じられている。
  • 健康・社会保護省による調整の下で、アクセシビリティの監視のための機関横断ワーキンググループが立ち上げられ、アクセシビリティに関する行動計画の草案の作成作業を進めている。
  • 2018年の調査で、スロープを設置した都市がごく一部にとどまるなど、法的枠組みの実施に反して障害者へのアクセシビリティの確保は困難を伴っている。2016年、オンブズマンは国内の61の首長に対し、公共施設やサービスのアクセシビリティを確保する措置を講じることを勧告した。
  • 障害者のための国家行動計画の下では、手話講師の認定証発行、音声等を通じた障害者が利用可能な情報形式の提供等の情報と通信へのアクセスに関する活動が実施された。アルバニア議会でも、議会中の手話サービス提供のプロジェクトが開始された。
  • 音声、映像の放送においては個人の特別なニーズを考慮することや、聴覚障害者のためにニュース等で、合理的な範囲での手話の使用を確保することが視聴覚メディアに関する法律第97/2013号で規定されているが、一部この規定を守っていない事業者がある。事業者には緊急で措置を講じることが求められており、罰則が適用される可能性もある。

 総括所見において、委員会は一般的意見第2号に沿って、障害者権利条約第9条と持続可能な開発目標のターゲット9(c)、11.2、11.7との関係に注意を払うよう勧告し、さらに、以下の勧告を行った。

  • 遵守違反に対する法的強制力のある効果的な制裁とともに、十分な予算、効率的な監視の仕組み、障壁を除去するための基準を確保し、法第93/2014号の実施のための包括的な国の行動計画を策定すること。
  • 障害者権利条約の対象となるすべての分野で、アクセシビリティ基準の遵守を監視し、遵守違反の場合に、制裁を科す仕組みを制定すること。
  • ソーシャルメディアに特に注意を払い、電子メディアのアクセシビリティに関する包括的な情報を提供すること。
第12条 法律の前にひとしく認められる権利

 第12条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • アルバニア政府は、法の前の平等に関する何らかの措置の計画を持っていない。
  • 障害者のための国家行動計画2016-2020では、支援付き意思決定に関する研究の実施、刑事訴訟法の改正等が含まれているが、これらはいまだに政府によって実施されていない。
  • 法的能力の喪失について、知的障害者だけでなく、感覚障害者も事実上、能力を失っている。例えば銀行や公証人は、視覚障害者、聴覚障害者が自身で文書に署名することを妨げる傾向がある。
  • 盲人は介護人しかその権利を行使することができないとして、裁判所が盲人の訴えを棄却した事案もある。これは、法律の「介護人」を「保護者」とみなすことから生じている。
  • 障害手当はほとんどの場合、障害者と介護人とで均等に分割され、障害者が自らの財源を処分する能力を制限している。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 民法、民事訴訟法、家族法を含む障害者の法的能力を否定又は制限する国内法の規定を改正するために講じられた、あるいは検討されている措置。
  • 精神的健康に関する規定と法律及び支援付き意思決定のための既存の又は計画された仕組みに関する規定。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 法の前の平等の認識は国家行動計画の目標の1つである。障害評価の問題の観点から、民法、刑法、家族法、国内法について改正の必要な箇所があると、「国家行動計画に関する監視報告書 (Monitoring Report on National Action Plan)」で述べられている。
  • 司法制度における障害者の権利の尊重が国際基準に沿っているかどうか、閉鎖された施設の状況改善を目的とした活動の点から審査されるべきである。これは障害者の無料の法的扶助へのアクセスにも関連している。

 総括所見において、委員会は以下を勧告した。

  • 一般的意見第1号及び欧州評議会の人権委員による2018年5月21日~25日のアルバニア訪問後の報告を想起し、障害者権利条約を遵守し、法律を一致させること。
  • 代理意思決定の制度を、本人の自律、意思、選好を尊重する支援付き意思決定制度に置き換え、法的能力を除去された障害者に対する透明性のある救済を確立して、障害者、とりわけ、知的障害者や心理社会的障害者の法的能力を制限するあらゆる法律を廃止すること。
第13条 司法手続の利用の機会

 第13条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 司法機関は物理的アクセシビリティ、文書や手続のアクセシビリティに問題があり、検察や警察も同様である。
  • 聴覚障害者は、手話通訳の費用を個別に負担することを求められる。また手話通訳者数が少ないため全体に対応できない。
  • 知的障害者、心理社会的障害者は、訴訟を起こす権利、証人となる権利、訴訟当事者としての権利を制限される。
  • 2018年に法的扶助に関する法律が施行されたが、現在の課題はその効果的な実施の欠如である。この法律の実施規則の公表は1年以上遅れた。
  • EU、法務省、オンブズマン、最高裁、検事総長室と盲人協会の協力プログラムにより刑事訴訟法、民事訴訟法、公証人法の修正案を起草した。しかし、アルバニア議会はまだ立場を示していない。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で以下について情報提供を求めた。

  • 裁判所、警察、検察機関への完全なアクセシビリティ(情報、コミュニケーションに関するもの)。
  • 違反した場合の救済策を特に考慮して、すべての司法分野における国内法における年齢に応じた適切な手続的配慮。
  • 国家が保障する法的扶助に関する法律とその実施、及びこの法律に基づいて導入されたサービス。
  • 裁判官、弁護士及びその他の司法職員のための障害者権利条約に関連する能力の開発プログラム。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 国によって保障された法的扶助に関する法律第111/2017号はすべての個人が司法に平等にアクセスできることを目的としており、専門家による質の高い十分かつ効果的な方法で法的扶助サービスを提供する仕組みを確保している。障害給付金を受けている障害者や精神保健施設で強制的な治療の対象となっている人、精神保健施設で自律的に治療を受けている人、裁判所での行為能力が制限されている人、あるいは法的後見人の制度を脱するための手続を始めようとしている人等が対象者である。
  • 裁判所のアクセシビリティは依然として不適切である。アルバニアには4人の手話通訳者しかいない。司法や行政手続等の参加への物理的アクセス、感覚上の問題がある人の情報へのアクセス、手続上の特別な保護、公証人法の改訂や署名に関する障害者による自由かつ独立した意思表明等を保障するため、オンブズマンは司法省に対して民法、犯罪手続法等の国内法制の改善の勧告を行った。

 総括所見において、委員会は以下を勧告した。

  • 差別なく、障害者に、透明性があり障壁のない司法へのアクセスを確保すること。
  • 障害者、とりわけいまだに施設で生活する障害者による、無料の法的扶助へのアクセスを確保すること。
  • 司法手続及び公証人関連サービスにおいて、支援機器、登録認定された手話通訳へのアクセス、点字、わかりやすい版、手話、その他の代替形式の提供を、差別なく確保すること。
  • 障害に対する人権アプローチの適用において、司法、法執行、公証人に対して、障害者権利条約に関する研修、能力の開発プログラムを提供する取組を強化すること。
  • その法的意識を高めるために、障害者に障害者権利条約に関する研修及び能力の開発プログラムを提供すること。
第19条 自立した生活及び地域社会への包容

 第19条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律は、初めて障害者の自立生活の規定を定めたが、今後細則を起草し承認される必要がある。この法律では、パーソナルアシスタントの制度を定めているが、それに関する閣議決定は期限までに行われなかった。
  • 社会福祉サービス法は、在宅サービスを規定しているが、典型的な医学モデル型のサービスであり、障害者のための選択肢を提供していない。
  • 介護手当は最低賃金の半分以下であり、誰かを雇うことができないので、家族が介護を行う。また障害者でなく介護人に支払われるため、障害者の選択と自己管理の権利を奪っている。
  • 知的障害者の自立生活は当分の間不可能であると考えられている。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 障害者が居住地を選択し、どこで誰と住むのかを選択する権利を保障するための措置。
  • 障害者が利用可能な社会住宅の環境や、自立生活に利用できる支援設備や機器の種類に関する統計データ。
  • 在宅、居住型及びその他地域社会の支援サービスに関する情報、障害者の脱施設化及び自立生活の支援と地域社会への包容のための措置の情報。
  • 規模にかかわらず、依然として施設に入所している障害者の数に関する分類されたデータ。
  • 特にパーソナルアシスタントに関して、障害者の包容とアクセシビリティに関する法律の実施についての情報と、その対象者の数に関するデータ。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 社会住宅に関する法律で、障害者向け住宅入手のための各種補助金の優先的給付、障害を含む特別なニーズのための住宅、視覚障害者等、通常の条件で働けない者に対しての家賃割引制度等が規定されている。
  • オンブズマンは、最低限の生活費の計上額に沿って、社会的保護計画の給付金から現金を支給すること、障害者の生活能力向上のためにデイケアセンターを増やすこと、精神的障害者や25歳以上の障害者の治療のための居住型リハビリテーションセンターの設置を要求している。
  • 障害者向け居住型施設が7施設、デイケアセンターが20施設ある。1,077人の障害者のうち、211人が居住型施設に、866人がデイケアセンターに入所している。これらの施設のサービスを受けている16歳未満の児童は708人おり、児童を対象とした施設28施設のうち9施設が居住型で、19施設はデイセンターとなっている。障害のある児童は93人。
  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律に、障害者向けのパーソナルアシスタントの規定がある。サービスの内容や提供時間は、支援を要する日常生活の内容に応じて決められる。
  • 障害評価のための政策文書では、継続的サービスと臨時的サービスを見越した補助金、家庭内でパーソナルアシスタントの役割を担っている家族に対する退職年金の付加、手話通訳者の提供等が予見されている。

 総括所見において、委員会は一般的意見第5号に沿って、欧州評議会の人権委員による2018年5月21日~25日のアルバニア訪問後の報告を想起するとした上で以下を勧告した。

  • 特に地方レベルで、実施のための十分な資金を割当て、明確な時間枠及び基準とともに、効率的な脱施設化の計画を策定、実施すること。
  • 障害者が地域社会で自立して生活し、包容される権利を行使できる状態を確保するため、自立した生活の計画を促進し、必要とする障害者に対して、パーソナルアシスタントを含む、プログラム及びサービスを展開すること。
  • いまだに施設に居住する障害者数に関する分類されたデータを収集すること。
  • 他者との平等を基礎として、農村部等、どこで誰と生活するか選択する障害者の権利を保障するため、障害者のための地域社会の支援サービスを策定するための必要なすべての措置を講じること。
  • 特に地方レベルで、障害者に利用可能で価格の手頃な住宅等、利用可能な地域社会サービス、支援、設備を提供する、自立した生活の戦略及び計画を策定する上で、障害者団体の関与を確保すること。
第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会

 第21条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 手話を公認する閣議決定の後、手話へのアクセスを改善するためにアルバニア政府によって講じられた措置はなく、手話通訳者は4人しかいない。聴覚障害者は警察署、消防署、病院等へのアクセスもできない。
  • 公共テレビ放送は平日の13時に10分程度の手話ニュースの放送をするのみ。
  • 点字や音声、補助的形式による情報アクセスサービスは、盲人協会のみが提供している。点字テキストは費用が高く、限られた範囲でしか提供できない。2014年以降、政府が資金提供を停止しているため、このサービスは縮小又は閉鎖する危険性がある。
  • 民間団体に障害者の情報アクセシビリティ改善を促す方針や戦略は存在しない。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、特に手話、字幕、点字、わかりやすい版や平易なテキスト等による障害者が利用可能な公共サービス及び情報の強化のため、手話通訳者及び障害者向けのその他のコミュニケーションの利用増加のための行動計画あるいは戦略について情報提供を求めた。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 国立情報社会事務所(National Information Society Agency)は、健康・社会保護省と協力してウェブサイトを立ち上げている。障害者の包容とアクセシビリティに関する法律で公共サービスとのコミュニケーション措置に関する規定がある。
  • 健康・社会保護省は、手話通訳者の資格認定のために教育・スポーツ・若者省及び財務経済省と提携を行っている。
  • ティラナの盲学生協会は視覚障害者に適したサービス提供のため、支援機器の導入や職員の能力向上に努めている。

 総括所見において、委員会は以下を勧告した。

  • 手話、字幕、点字、わかりやすい版、平易な言語でのメディアサービス、電気通信事業者、インターネットのページ等、一般に公開又は提供される、障害者が利用可能な情報通信サービスの入手可能性を強化するために、明確なロードマップとともに、国の行動計画や長期戦略を実施すること。
  • 公用語として手話を完全に承認し、点字の提供を確保するために、関連する障害者団体が関与して、効果的な法律及び戦略を策定すること。
  • わかりやすい版、手話を含む利用可能な方法、措置、形式で、研修等、能力の開発プログラムを採用すること。また、一般に公開されているサービスに対して手話通訳を提供すること。
第24条 教育

 第24条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 2018年に発表された全国調査によると、教育の権利は障害のある児童の30%しか享受していない。
  • 障害のある児童の親は、児童が特別支援学校に通うか普通学校に通うかを選択するが、これは障害者権利条約第24条とは一致していない。
  • 政府は支援教員の任命を進めているが、研修が十分でなく、障害のある児童の支援の知識はない。
  • 学校、幼稚園、保育園の施設のアクセシビリティ基準があるにもかかわらず、レベルは非常に低い。障害者が利用可能なトイレがないために多くの児童が学校を中退している。
  • 手話通訳がいないため、聴覚障害のある生徒は高校や大学に通うことができない。
  • 障害のある児童教育のための予算は特別支援学校のみに与えられており、特別支援学校を支援センターに転換するための措置は講じられなかった。
  • Save the Childrenのプロジェクトと委員会が活動したことは事実だが、プロジェクト終了後、委員会にはインクルーシブ教育の実施を監視する権限がないため、機能不全となった。
  • 社会福祉施設に入所する児童の公立学校への入学はめったにない。
  • 高等教育では、障害のある学生に対する包括的な方針がない。障害のある学生のための定員は、視覚障害者と肢体不自由者のみが対象となっている。
  • 障害のある児童向けの特殊な教育機関があり、そこに参加するには家庭や地域社会から離れなければならない。ここで教育を受けた児童が主流の生活に戻るには大きな課題を伴う。
  • 障害者の大学への入学を支援するための政府と盲人協会の提携に関して、政府はその決定内容を変更したため、近年、高等教育への入学者数は大幅に減少している。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • Save the ChildrenWorld Visionによって進められた2018年の調査の成果について。
  • 学校及び高等教育機関におけるインクルーシブ教育のために割り当てられた公的資源の量について。
  • 特に学級に配置される研修を受けた支援教員への専門家の関与、普通学級での手話や点字の使用、特に集中的な支援が求められる障害のある児童への付き添いといった観点から、インクルーシブ教育の促進のために導入され適用されている措置。
  • 障害のある児童及び成人の機能的非識字率を減少させるために講じられている措置。
  • 障害のある児童にインクルーシブ教育を提供するための評価基準を、インクルーシブ教育の権利に関する委員会の一般的意見第4号にどのように準拠させているか。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • Save the ChildrenWorld Visionによる調査からは、障害者のための法的、政策的枠組みに関して前向きな発展がみられている。教育・スポーツ・若者省はWorld Visionと協力し、基準に沿ったトイレの設置、スポーツコーナーの設置等、障害のある児童のためのアクセシビリティの改善を46校で実施した。また、16の普通学校で障害のある生徒の精神的、身体的発達に寄与する「発達スペース」を導入し、来年度にはほかの初等教育学校にも導入予定である。
  • 支援教員の数は大幅に増えているが、需要には追いついていない。質の高い教育のための職員研修の継続や、障害のある児童のいる普通学校で働く教員の経験共有等、障害のある児童の教育に関する幾つかの措置は講じられている。特別支援学校に入学するための、管理者によって構成される委員会による評価の体制は、すべての地域で確立されている。
  • 閣議決定2017-2018で、各教育段階における入学基準を満たすカテゴリが規定された。視覚障害者は無料で公的教育が受けられる。障害者には一般的な授業料は適用されない。

 総括所見において、委員会は一般的意見第4号と持続可能な開発目標のターゲット4、特に4.5、4.8を想起し、インクルーシブ教育実施を支援する取組を強化することを勧告した。これに加え、以下を勧告した。

  • インクルーシブ教育を1つの権利として認識し、すべての障害のある学生に、個人の特性にかかわりなく、個別支援によって、普通教育においてインクルーシブな学習の機会にアクセスする権利を平等に認めるために、適宜、法律の廃止及び改正をすること。
  • 平等及び無差別の権利を保障することで多様性を尊重するよう促すため、また、障害者の完全で効果的な社会参加を促進するために、個別の人権に基づく教育要件の評価、必要な配慮、教員への指導と支援等、普通教育で包容される文化を促進するための戦略とともに、包括的なインクルーシブ教育の政策を制定し、成立させ、実施すること。
  • 障害者権利条約に沿った、障害者に適合し、かつ利用可能な教材、インクルーシブなカリキュラム、個別支援と配慮の提供等を通じて、学校環境のアクセシビリティを確保すること。
  • 効果的で十分な財源、物的資源、また、障害のある職員等、適切で定期的な研修を受けた職員を割り当てること。
  • 十分な予算を用いて、将来の教員のためのインクルーシブ教育の研修を大学のカリキュラムに取り入れること、現職の教職員に対する必修の研修プログラムを取り入れること。
  • とりわけ、インクルーシブ教育政策に情報を提供するために、インクルーシブ教育の法律及び政策の実施、学校インフラのアクセシビリティ、情報通信技術を含む情報通信に関するデータ収集を増やすこと。
第29条 政治的及び公的活動への参加

 第29条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 法的能力を剥奪された人の投票権は廃止されている。これは知的障害者、心理社会的障害者に影響し、障害者権利条約と矛盾する。
  • 公的生活への包容は、公告及び公聴会に関する法律、情報への権利に関する法律等によって保障されるが、これらの法律は障害者のアクセシビリティや合理的配慮といった概念を欠いており、無差別や包容の一般原則に基づく保護のレベルは不十分である。
  • 選挙において、視覚障害者用の機器や投票用紙を用いた秘密投票の基準はない。また、選挙情報へのアクセスも制限されている。
  • アルバニアでは2006年に全国障害委員会が設立され、重要な活動を行った。しかし、2014年以降、それは障害者団体とサービス提供者による新しい組織に置き換えられ、障害者の声はほとんど存在しなくなった。「障害者のための組織」とは障害者サービス提供者のことであり、障害者問題について公的に行われる協議は、限られた組織で行われている。
  • 障害者の選挙手続への参加は非常に少ない。その要因として、障害者問題を政策に含めるよう試みること、障害者の選挙手続への参加の動機付け、選挙関係のアクセシビリティが欠如していることがある。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 身体障害者及び知的障害者、視覚障害者あるいは聴覚障害者を含む、障害者が投票の権利と彼らのための利用可能な投票制度を行使することを確保するための政策。
  • すべての障害者が公的な協議へ完全に参加することを確保するために講じられている措置。
  • 公告及び公聴会に関する法律、情報への権利に関する法律の下で、障害者の利用できる保障及び救済措置。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 2015年、2017年、2019年の選挙においては障害のある投票者に関する統計はとっていない。障害者のアクセシビリティを考慮して投票所は建物の1階にある。中央選挙委員会は基礎自治体にスロープを設けるよう指導している。
  • 2019年6月30日に行われた選挙では、投票用紙ごとに点字アルファベットの覆いが用意され、すべての投票所で障害のある投票者が秘密投票を行うための部屋が用意された。選挙職員も障害者の投票に関する研修を受け、テレビやラジオは障害のある投票者のための情報に重点を置いた。各種メディアで意識向上のための活動が繰り広げられた。

 総括所見において、委員会は以下を勧告した。

  • すべての障害者の投票権等、政治的、公的生活へ参加する権利を保障するために、選挙法を含む関連する法律、中央選挙委員会に関する手続規則を改正すること。また、法的能力が欠如しているとみなされる者の当該権利を否定するあらゆる規定を廃止すること。
  • 政治生活及び公的な意思決定において、障害のある女性を含め、障害者の参加を促進すること。
  • 委員会の一般的意見第2号に沿って、投票への物理的アクセスを妨げないための措置を講じること。また、投票の秘密を確保する安全な仕組みを制定し、手話、点字、わかりやすい版等、利用可能なその他の選挙資料、障害者が利用可能な形式の情報を確保すること。
第31条 統計及び資料の収集

 第31条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • アルバニアの障害者統計は、社会福祉省や教育省の行政データであり、障害者統計としての信頼性や妥当性を保証していない。また情報収集方法に齟齬があるためデータを部門間で比較することができない。
  • 障害者のための国家行動計画2016-2020では、実証的データ収集を提案し、優れた枠組みを設定しているが、その実施のための措置に問題がある(地域まかせになっている)。
  • 障害者に関する全国調査や定期的な監視によるデータの統合は行われていない。2020年の国勢調査でワシントン・グループの障害についての短い質問集が用いられれば、正確な障害者統計が得られるだろう。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、障害者に関する分類されたデータの体系的な収集と、ワシントン・グループの障害についての短い質問集の方法論を採用しているかどうかについて情報提供を求めた。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 国内の統計調査に関して、障害者の統計には特定のモジュールが使用されており、このモジュールではワシントン・グループの障害についての短い質問集が使用されている。
  • ワシントン・グループの質問集は2011年の人口世帯調査で初めて導入され、2020年の国勢調査でも使用される予定である。今回、この質問集は5歳以上に適用される。人口世帯調査は、国及び地方レベルでの唯一の障害に関する情報源となっている。

 総括所見において、委員会は持続可能な開発目標のターゲット17.18を考慮し、以下を勧告した。

  • 統計研究所が従うべき、障害者権利条約に沿った体系的なデータ収集及び報告手続を確保すること。
  • 性別、年齢、民族、障害、社会経済的地位、雇用、直面する障壁、居住地で分類された人口データ、また、障害者に対する差別や暴力の事案のデータを収集、分析、普及するため、とりわけ国勢調査2020年において、ワシントン・グループの方法論をさらに活用すること。
  • 障害者代表団体と協力して、障害者の状況に対応するため、証拠に基づいた公共政策を策定すること。
第33条 国内における実施及び監視

 第33条に関して、パラレルレポートでは次のような指摘がなされた。

  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律は、本来は、障害者のための権利とサービスに関して各分野の責任省庁が責任を負うべきところを、社会福祉省が全責任を負う唯一の機関と定義している。

 国連障害者権利委員会は事前質問事項で、以下について情報提供を求めた。

  • 中央連絡先も含め、どのように障害者権利条約の実施を調整しているのか。
  • パリ原則に沿った独立した監視の仕組みを設置するために講じられた措置。
  • 障害者権利条約の実施と監視に当たっての障害者団体の役割と、それらの団体が監視の仕組みとして有意義に参画することを確保するために割り当てられている資源について。

 これに対し、アルバニア政府は次のように回答した。

  • 健康・社会保護省が障害者の包容とアクセシビリティに関する法律と障害者のための国家行動計画2016-2020の調整及び実施の監視を行っている。すべての省庁と基礎自治体はそれぞれ障害に関する中央連絡先を設置している。
  • オンブズマンはパリ原則に則った組織で、人権保護に関する国際的な認定もなされている。
  • 障害者の包容とアクセシビリティに関する法律は、全国障害委員会の委員に非政府組織からの代表を含めることを規定している。様々な障害のカテゴリ、年齢、ジェンダーの包容を促進するために、これらの代表者は各省庁の年次報告の作成に協力し、国家レベルでの政策に関する協議に参加する。
  • 障害者を含む市民社会組織は、立法や政策文書の準備に関連する協議過程に関与している。

 総括所見において、独立した監視の枠組みと委員会の作業への参加に関するガイドライン(CRPD/C/1/Rev.1, annex)、一般的意見第7号を考慮して、委員会は、国内の実施及び監視の枠組みが適正かつ長期的に機能できる安定した制度基盤を有し、適切な基金及び資源を提供される状態を、確保することを勧告した。さらに、以下の勧告を行った。

  • 障害者権利条約第33条(1)の下の調整の仕組みを指名するよう検討すること。
  • 独立した監視の枠組み及び仕組みを指定又は設置する場合に、人権の促進及び保護のための国内機構の地位に関する原則(パリ原則)を考慮して、適切な資金の提供を確保すること。
  • 監視の手続において、障害者、障害者代表団体の完全な参加を確保すること。

89 英語版原文(総括所見第2項)では、「the National Action Plan on Disability 2016-2020」となっているが、「National Action Plan for Persons with Disabilities 2016-2020」を指していると考えられるため、「障害者のための国家行動計画2016-2020」と表記する。

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