1 国外調査 1.7.3

1.7 アルバニアにおける合理的配慮・環境整備と国連障害者権利委員会審査状況

1.7.3 アルバニアにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ

 アルバニアでは、障害者に関する権利や義務等の一般原則を定めた障害者の包容とアクセシビリティに関する法律を制定し、同時に、障害者のための国家行動計画2016-2020 を策定している。パラレルレポート等においては、本法に対して幾つかの懸念が表明されている。障害者権利条約との関係でいえば、同法は条約が定めている障害者や障害者団体による施策検討や監視への参加を十分に確保するものではない点、特に、同法が定める「障害者のための組織」が「障害者を代表する組織」を指していないことや、全国障害委員会から特定の障害者団体が排除されていること等に対する指摘が上がっている。国連障害者権利委員会は、この行動計画の策定自体を肯定的側面として賞賛する一方で、全国障害委員会への障害者代表の任命等に関して適切な措置を講じ、障害者代表団体の機会均等を確保するよう勧告している。また、アルバニア政府によれば、同法において、「合理的配慮の否定」の定義がなされているとしているが、国連障害者権利委員会は、差別禁止に関する法律においては「合理的配慮の否定等、障害を理由とする差別を明確に禁止していない」90と指摘しており、法律等に明示するよう勧告している。

 加えて、国連障害者権利委員会は、障害のあるロマの、特に女性と女児に関する教育、健康、雇用の状況をアルバニア政府に対し質問している。これに対し、政府は、差別防止委員会が近年に扱った障害に基づく差別の苦情には、ロマのコミュニティにおける事例がなかったと回答する一方で、障害のあるロマに対する教育、健康、雇用に特化された特定の措置に関する情報は示さなかった。委員会は、総括所見において、教育、保健、雇用の権利に焦点を当てて、障害のあるロマの状況を改善するための効果的な動機付けを含む、国のプログラムを策定することを勧告した。

  また、障害者の包容とアクセシビリティに関する法律で障害者の自立生活のためパーソナルアシスタント制度を定めているが、パラレルレポートでは、それに関する閣議決定がなされていないと指摘している。そして、国連障害者権利委員会は事前質問事項で、障害者の包容とアクセシビリティに関する法律の実施に関する情報と、この法律の定めるパーソナルアシスタントの対象者数に関するデータをアルバニア政府に尋ねている。この質問に対し、アルバニア政府はその回答の中で、障害評価のための政策文書で家庭内でパーソナルアシスタント規定があることは認めたものの、具体的な実施状況やデータは提示しなかった。委員会は総括所見で、パーソナルアシスタントを含む、プログラム及びサービスの展開を勧告した。

 全体として、アルバニアは国家行動計画2016-2020を軸に、様々な取組を行っている一方で、成果を出したり実施そのものに至っていない制度や政策が少なからずあると考えられる。障害者の包容とアクセシビリティに関する法律に関しては、パラレルレポートでの指摘と、事前質問事項及び総括所見の内容に一致がみられる部分が複数あり、この話題において、パラレルレポートが審査において一定の役割を負っていることが推察される。


90 政府回答第11項

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