1 国外調査 1.10

1.10 これまでの国連障害者権利委員会審査における論点

 ここでは、これまでに審査を受けた締約国の一部における、総括所見の内容を表1.10-1に整理する。対象国としては、初回審査が完了している国の中から、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカ大陸のそれぞれの地域において、障害者差別解消に関して先進的な取組がなされていることがこれまでの調査によって判明している国々を取り上げた。具体的には、ヨーロッパよりイギリスとスウェーデン、オセアニアよりニュージーランドとオーストラリア、アメリカ大陸よりカナダを取り上げている。比較の対象とする条項としては、第6条、第12条、第14条、第19条、第21条、第24条、第27条、第31条を取り上げる。これらの条項は、内閣府障害者政策委員会がまとめ、第1回政府報告の付属文書とされた「議論の整理」において、特に重要なテーマとして取り上げられたものである。これらの条項に加えて、国連障害者権利委員会(以下、委員会)による審査上の評価のポイントを可視化するため、各国の総括所見の冒頭で述べられる「肯定的側面」も比較の対象とする。
 考察に先立ち、各国の「肯定的側面」の内容、及び、それぞれの対象条項への委員会からの推奨、勧告、要請を抽出したものを、表1.10-1にまとめる。

表1.10-1 障害者権利委員会審査における各国に対する勧告内容
イギリス カナダ ニュージーランド スウェーデン オーストラリア
総括所見の提示 2017年10月 2017年5月 2014年10月 2014年5月 2013年10月
肯定的側面 4. 委員会は、締約国に対し、条約の第12条(4)の留保の撤回を賞賛する。
5. 委員会は、スコットランドで2016年に開始された条約を実施するための国内行動計画、及びスコットランドの社会保障制度等、条約の、並びに障害者団体が関与したその設計における、様々な面を発展させる立法及び政策措置の採用に関する情報を歓迎する。また、スコットランドのアクセシブルトラベルフレームワークが2016年に採択されたことを歓迎する。これには、障害者のアクセシビリティに関する規定及び社会に係るサービスと健康の枠組みを提供する2014年の社会福祉法(ウェールズ)が含まれる。
4. 委員会は、締約国が条約の選択議定書の批准に向けた手続に入ることを約束した点を歓迎する。委員会はまた、締約国の憲法及び制定法の枠組み、特に、人権に基づく障害の定義を認識し、複合的な理由とその複合効果に基づく差別を禁じたカナダ人権法、及び「精神的もしくは身体的障害」を理由とした差別を禁じる「カナダ人権・自由憲章」を称賛する。
5. 委員会は、条約の実施を目的とした、連邦・州・準州の各レベルの法律及び公共政策の措置を、採用及び/もしくは制定したことを歓迎する。これには以下が含まれる。2016年に可決された、連邦の省庁に対し、障害者が利用可能な形式で情報を発するよう求めるコミュニケーション及び連邦政府の同一性に関する政策。2015年の「仙台防災枠組 2015-2030」の承認。そして、障害のある被害者及び目撃者が、刑事訴訟の間に、証言を提供できるようにするための刑法における規定。
6. 委員会は、締約国が2016年に「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」に同意したことを称賛する。
4. 委員会は、多くの成果、特に障害者戦略と2014-2018年の障害者行動計画についてニュージーランドを賞賛する。委員会は、今後数年間における行動計画の進展に期待する。ニュージーランド手話委員会の設置と資金調達、及びニュージーランド手話が国の3つの公用語の1つに指定されているという事実に留意する。委員会はまた、メディアや映画の字幕の増加、及び大学や他の高等教育機関への障害者の入学を増やすために行われた取組にも留意している。委員会は、聴力ループの使用が同時に増加することを望む。委員会は、2014年9月20日の選挙で電話投票が初めて行われたことを知り嬉しく思い、ニュージーランドの選挙で、知的及び/もしくは心理社会的障害者を含めた障害者が投票できるようにしたことについてニュージーランドを賞賛する。また、締約国に対し、条約第33条の要件を満たすための独立した監視の仕組みを確立したことを賞賛する。 4. 委員会は、多くの成果についてスウェーデンを賞賛する。言語法に従い、スウェーデンの手話は国の5つの少数民族の言語と同等であることに留意し、その重要な措置を歓迎する。委員会は、そのインクルーシブな教育制度についてスウェーデンを賞賛する。この教育制度では、家族の決定に従って、1.5%の児童が通常の学校の外で指導を受ける。2011年に施行された新しい教育法に加えて、教育審査委員会に先立って、特別な支援に関する決定を上訴する権利が導入された。これは、利用可能な保障を拡張する改善である。委員会はまた、合理的な配慮の否定を差別として分類する新しい法律の採択に留意する。委員会は、投票の機密性を確保する制度についてスウェーデンを賞賛する。 2015年に発効する障害のある有権者向けの多肢選択式の柔軟な支援制度の作成に関する新しい法律と、代表団が委員会に通知したように、2018年の選挙のために、障害者が完全に利用可能な電子投票を試験的に導入するための準備と計画について賞賛する。締約国が障害者政策の観点を国際協力活動にもたらし、最新の条約締約国会議及び、障害と開発に関する総会の高官レベルの会議への障害者運動の代表者の参加のために資金を提供したことを知り嬉しく思う。委員会はまた、22の州機関がそれぞれの分野で条約を実施し、スウェーデン障害者政策調整機構(Handisam)の調整する権限の下で進捗状況を毎年監視するよう委託されていることと、スウェーデンが心理社会的及び知的障害を含むすべての障害者の投票権及び選挙権を確保していることに留意する。 4. 委員会は、すべての管轄区域にわたって条約を実施するための、締約国による2010-2020年の国家障害戦略の採択を賞賛する。
5. 委員会は、教育、雇用、保健サービス、法律と司法の利用を高める、障害に包容的な開発を支援する国際協力プログラムについて締約国を賞賛する。
6. 委員会は、締約国に対し、集中的な支援を必要とする人を含む自主的な障害者支援の国家計画である「障害者支援オーストラリア」を導入したことを称賛する。
7. 委員会は、2013年6月における、締約国による、障害者の法律の前での平等及び法的能力への障壁に関する調査のオーストラリア法改正委員会への委任を歓迎する。また、ニューサウスウェールズ州及び南オーストラリア州による支援付き意思決定の先行的な取組への資金提供も歓迎する。
第6条 障害のある女子 19. 委員会は、障害のある女性及び女児の団体と密接に協議し、障害のある女性及び女児の権利を、障害及びジェンダー平等政策において主流化することを締約国に勧告する。また、持続可能な開発目標のターゲット5.1、5.2、5.5並びに障害のある女性及び女児に関する委員会の一般的意見第3号(2016)に沿って、締約国が、包括的で、なおかつ対象を絞った措置を採用することを勧告する。これには、障害のある女性及び女児、とりわけ、知的障害者及び/もしくは心理社会的障害のある女性及び女児に対し、教育、雇用、健康、司法へのアクセス、及び貧困・暴力の点における複合・交差差別を防止するために、分類されたデータを収集することが含まれる。 16. 委員会は、障害のある女性及び女児に関する一般意見第3号 (2016) に沿って、締約国に以下を勧告する。
(a) ジェンダーに基づく暴力に対処する連邦戦略に、障害のある女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力に対処する取組のための行動指針、特定のプログラム及び基準を含めることを確保すること。
(b) 経済的・実践的な支援を創出し、偏見及び否定的固定観念に対処するため、障壁を除去するとともに、包容的な取組を策定すること。
(c)障害のある先住民の女性が、利用可能な教育制度にアクセスできること、また、障害のある先住民の女性が条約に基づく自らの権利を自覚すること、並びに、障害のある先住民の女性が自らの権利を主張するために利用可能な支援へのアクセスを確保すること。
(d)持続可能な開発目標のターゲット5.1、5.2、及び5.5を実施しつつ、条約第6条の下での締約国の義務に留意すること。
16. 委員会は、障害のある女性が教育を受けること、雇用を得ること、また家庭内暴力と戦うことに対して援助するため、この取組199が継続・強化されることを勧告する。委員会はさらに、障害のある女性及び女児を代表する団体がこれらのプログラムに参画することを勧告する。 14. 委員会は、締約国に対し、性別と障害の視点を、法律、政策、調査、計画、実施、評価、監視活動、サービスに確実に浸透させるよう勧告する。また、締約国が、障害のある女性及び女児に対する交差差別を防止する効果的、具体的な手段を講じるよう勧告する。 17. 委員会は、締約国に対し、ジェンダーに基づく暴力の防止に係る公的プログラム及び公共政策において、障害のある女性に対しての一層の包括的な配慮を含めるよう勧告する。これはとりわけ、障害のある女性が、実効性を有するとともに差別的待遇を受けることのないような対応制度にアクセスできることを、確保するためのものである。
第12条 法律の前にひとしく認められる権利 31. 委員会は、締約国に対し以下のことを勧告する。黒人及びマイノリティの民族集団の代表者を含めて、障害者団体と緊密に協議するとともに、法律の前にひとしく認められる権利に関する委員会の一般的意見第1号(2014)に沿って、意思決定能力にかかわる諸法律と精神保健法の双方における新しい政策を開始するために、条約に従った新しい法律を審査し、採択することにより、生活のあらゆる側面・領域に関する代理意思決定のすべての形態を廃止すること。委員会は、締約国が、支援付き意思決定の体制の分野における研究、データ、グッドプラクティスを促進する取組を立ち上げ、支援付き意思決定の体制の設置のスピードアップを図るよう要請する。また委員会は、締約国が、障害のある亡命希望者及び難民が条約に盛り込まれたすべての権利を行使できることを確保するよう勧告する。 28. 委員会は、締約国に以下を勧告する。障害者の団体及び他のサービスの提供者との協議に基づいて、法的能力の判別にかかわる一貫した枠組みを創設するとともに、法的能力を行使する上で必要な支援を利用可能にするために州及び準州との協働において指導力を発揮すること。また委員会は締約国に対し、除外条項を連邦法から取り去るための措置を講じること、並びに、銀行法、所得税法、及び他の該当する法令において、支援付き意思決定のための条項を導入することを勧告する。 22. 委員会は、締約国が関連法を改正し、代理意思決定制度を支援付き意思決定に置き換えるよう、早急な措置を講じることを勧告する。この措置が、その個人の権利を尊重しつつ、当該者の能力に基づき、インフォームド・コンセントをとりわけ医療において提供・撤回すること、司法、婚姻、仕事にアクセスすることの権利に関することも含め、条約第12条に完全に準拠し、何よりも、法律の前にひとしく認められる権利に関する一般的意見第1号(2014)に整合する、その個人の自律、意思、選好を尊重した幅広い措置を提供するべきである。 34. 委員会は、締約国が、代理意思決定を支援付き意思決定に置き換える早急な措置を講じるよう勧告する。また、当該者の能力に基づき、医療におけるインフォームド・コンセントを提供及び撤回すること、司法、投票、婚姻、仕事へのアクセスを有することの権利に関することも含め、条約第12条に完全に準拠し、その個人の自律、意思、選好を尊重した幅広い手段を提供する措置を講じるよう勧告する。 25. 委員会は、締約国が、代理意思決定を支援付き意思決定に置き換える早急な措置を講じるために、最新の調査を効果的に用いることを勧告する。また、締約国が、当該者の能力に基づき、医療におけるインフォームド・コンセントを提供及び撤回すること、司法、投票、婚姻、仕事へのアクセスを有する権利に関することも含め、条約第12条に完全に準拠し、個人の自律、意思、選好を尊重した幅広い措置を提供することを勧告する。
26. さらに委員会は、締約国が、障害者及びその代表団体との協議、協力のもと、国レベル、州・準州レベル・地方政府レベルで、公務員、裁判官、ソーシャルワーカーを含むすべての関係者に対して、障害者の法的能力にかかわる認識について、及び、法的能力の行使において、支援付き意思決定の仕組みが最重要であるという点についての、研修を提供するよう勧告する。
第14条 身体の自由及び安全 35. 委員会は、締約国に以下のことを勧告する。
(a) 実際にある、あるいはあるとみなされた障害に基づき、障害者の同意を伴わない、意思に反する、強制的な治療及び拘束を是認する法律及び慣習を廃止すること。
(b) 施設内にいる障害者のあらゆる形態の虐待を調査し除去するための適切な措置を講じること。
32. 委員会は、締約国に以下を要請する。
(a) 強制的な身体拘束に関連する連邦・州・準州の政策及び慣行を見直すこと。こうした政策及び慣行を、条約第14条及びそれぞれの指針を遵守したものにすることが目的である。
(b) 刑事裁判の間、障害者が適切な配慮を受けつつ裁判を受ける権利に関して、連邦・州・準州の管轄区域全体に、最低限の核となる義務を設定すること。
(c) 連邦の管轄区域下の被収容者に対して、他の者と対等な立場で、当該者の自由とインフォームド・コンセントに基づき、保健サービス(心理社会的支援を含む)へのアクセスを確保すること。
(d) 刑務所及び/もしくは拘留施設に拘禁されている、すべての障害者に合理的配慮を提供するための指針を採用し、これを実施すること。また、こうした施設にいる女性が、適切な支援及び合理的配慮を受けられるよう、保障すること。
(e) 収監中の障害のある先住民及び移民の状況を評価し、対処するための措置を講じるために、カナダ人権委員会及び州人権委員会との連携の下に作業すること。
30. 委員会は、締約国が、いかなる人も、実際の障害又は障害と認識された状態に基づき、医療施設において、本人の意思に反して拘束されないことを確保するため、直ちに必要なすべての立法上、行政上、司法上の措置を講じることを勧告する。また、委員会は、締約国が、すべての精神保健サービスが、条約に従い、当事者の自由意志によるインフォームド・コンセントに基づいて提供されることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、1992年精神保健(強制的評価と治療)法が条約に沿った形で改正されることを勧告する。
32. 委員会は、医療施設内での隔離及び拘束を廃止するための措置が直ちに講じられることを勧告する。
34. 委員会は、締約国が、刑事訴訟があらゆる安全措置に従っており、健常者に適用可能であることを確保すること、並びに自由の剥奪が最終手段として適用されるべきであり、修復的司法を含むその他のダイバージョン・プログラムが、未来の犯罪を抑止するのに不十分である時に適用されるべきであることを確保するために刑事司法制度を見直すことを勧告する。委員会はまた、締約国が障害者を尊重し、刑務所内の環境下で合理的配慮を確保することを勧告する。
36. 委員会は、締約国が、いかなる人も、実際の障害又は障害と認識された状態に基づき、医療施設において、本人の意思に反して拘束されないことを確保するため、直ちに必要なすべての立法上、行政上、司法上の措置を講じることを勧告する。また、委員会は、締約国が、すべての精神保健サービスが、当事者の自由意志によるインフォームド・コンセントを伴って提供されることを確保するよう勧告する。締約国が、患者を支援するための地域社会に基づく通院サービスを十分に確保するために、高いレベルの支援を必要とする知的障害者及び心理社会的障害者に、より多くの財源を割り当てることを勧告する。 32. 委員会は、締約国に対し、緊急の問題として以下を勧告する。
(a) 特に、障害のあるアボリジニとトレス海峡島嶼民に関して、条約に準じた立法上、行政上、そして支援の枠組みを確立することによって、有罪を宣告されていない障害者の管理のための正当な理由のない監獄の利用をやめること。
(b) 刑事司法制度の下にある障害者が、適切な支援と配慮を提供されることを確保するよう、義務的な指針と慣習を確立すること。
(c) 精神的あるいは知的障害を含む障害に基づいた自由の剥奪を許す締約国の法律を審査し、見かけ上の障害、あるいは診断された障害に関連付けての意思に反した強制収容を是認する規定を廃止すること。
34. 委員会は、締約国が、関係する障害者への自由意志とインフォームド・コンセントを伴わない医療行為、個人への精神保健施設収容令状、又は、「地域療養命令」200という手段による、施設内及び地域社会の両方において、強制的な治療を課すことを正当化するすべての法制度を廃止することを勧告する。
第19条 自立した生活及び地域社会への包容 45. 委員会は、自立した生活及び地域社会への包容に関する委員会の一般的意見第5号(2017)及び、条約の選択議定書の第6条に基づいて実施されたグレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国に関する委員会の調査報告に沿って、締約国に以下のことを勧告する。
(a) 自立した生活及び地域社会への包容の権利を、主観的な権利として認識し、そのすべての要素の実行可能性を認識し、実施を確保するための、権利に基づいた政策、規則及び指針を採択すること。
(b) 社会的支援と自立した生活の分野において、十分な資金と適切な戦略を通じて、政策改革の負の影響に対処し、これを防止するために、障害者団体との緊密な協議を経て、定期的に評価を行うこと。
(c) 障害者が自立して生活し、地域社会に包容され、自らの居住地やどこで誰と住むかを選ぶ権利を行使することを可能にするための十分な資金を継続的に配分できるよう、自治政府を含む地方自治体及び行政機関に対し、適切かつ十分に割り当てられた資金を提供すること。
(d) 障害者の脱施設化を目的として、障害者団体と緊密に協力して策定された包括的な計画を作り、教育、育児、交通、住宅、雇用、社会保障を含む全体論的かつ横断的なアプローチを通じて、地域社会に根差した自立した生活の計画を策定すること。
(e) 都市部や農村部におけるすべての障害者の様々な生活条件に応じて、支援サービスが利用可能なものであり、容易に利用でき、手頃な価格で、満足のいくものであり、適応的で、配慮があるものであることを確保するための十分な資源を割り当てること。
38. 委員会は、締約国に以下を勧告する201
(a) 障害者の主体的かつ行使可能な権利として、自立した生活を送り地域社会に包容される権利の認識に向けて、障害者の個人的自立を尊重するという原則、及び、どこで誰と生活するかを選択する障害者の自由を再確認しつつ、国の指針を採用し、州及び準州の管轄区域に対する継続的かつ基礎的な助言を提供すること。
(b) すべてのレベルで、あらゆる居住計画及び政策において、障害に対する人権に基づいたアプローチを採用すること。そのために締約国は、心理社会的及び知的障害者に向けて、支援サービスだけでなく、手頃で障害者が利用可能な居住ユニットについても、利用可能性を高めるべきである。
(c) 州及び準州の管轄区域が施設を閉鎖し、これを、自立した生活の包括的支援制度(障害者への在宅支援及びパーソナルアシスタントを含む)に置き換えるための、期限を切った戦略を策定するよう確保すること。
(d) アクセシビリティに関する法律、計画、プログラムが、障害者の地域社会への包容の促進と、障害者の孤立や施設化の防止を目的とした、サービスや設備のアクセシビリティを含んでいることを確保すること。
(e) 知的及び/もしくは心理社会的障害のある個人に対して、(居留地における)ファースト・ネーションズ202のコミュニティ内で、適切なサービスの提供を確保すること。
40. 委員会は、より多くの障害者が地域社会で自立した生活を送れるよう、「自立生活モデル」及び「良い生活を可能にプログラム」が拡張されるよう勧告する。委員会はまた、障害者自身がどこで生活するかに関して、居住地を自ら選択するとともに自ら管理するという権利の行使を確保するため、地域社会において幅広い支援が利用可能となるよう勧告する。 44. 個人が地域社会において自立した生活を送れることを保障するため、委員会は、締約国に対し、パーソナルアシスタント・プログラムによって、十分かつ適正な財政支援の提供を確保するよう勧告する。 42. 委員会は、締約国が居住型施設の閉鎖に向けた全国的な枠組みを策定・実施し、障害者が地域社会で生活できるように必要な支援サービスの財源を割り当てることを奨励する。締約国は直ちに、障害者がどこで誰と生活するかについて自由に選択し、その居住地にかかわらず、必要な支援を受ける資格があることを確保するための措置を講じるよう勧告する。したがって締約国は、あらゆる種別の障害者のニーズに基づき、様々な居住施設の形態を示すべきである。
第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会 47. 委員会は、障害者を代表する団体と協議して、締約国に以下のことを勧告する。
(a) ICTに基づいた情報チャネルにおける義務的アクセシビリティ基準の実施における著しい格差を明らかにすること。
(b) 法律が、条約に従って、聾者及び難聴者のすべての生活領域において、質の高い手話通訳及び他の形式の代替コミュニケーションの権利を規定することを確保すること。
(c) 聴覚障害のある児童やその家族、及び同級生や同僚等のその他の者に対し、イギリス手話や触覚言語を用いて教育を行うための資源を割り当てること。
40. 委員会は、締約国に以下を勧告する。
(a) 聾者の諸団体との協議のもと、アメリカ手話及びケベック手話 (Langue des signes Quebecoise203) を公用語として認めるとともに、学校での使用を認めること。また、通訳サービスの質を確保する仕組みを、聾者の諸団体と共同で設置し、手話通訳者に対して継続的な研修の機会が提供されるよう確保すること。
(b) わかりやすい版、及び障害者が利用可能なその他の形式、方法、コミュニケーション手段の利用を推進し、容易にすること。また、障害者に対し、情報及びコミュニケーション技術(あらゆる障害者を対象としたソフトウェアや補助的装置の提供を通じての利用を含む)の利用を許可すること。
(c) 政府のウェブサイトのアクセシビリティを確保する取組、及びインターネットを通じてサービスを提供している民間団体が、すべての障害者が利用可能な形式でアクセシビリティを確保する取組を、倍増させること。
(d) 障害者権利条約を、手話に翻訳すること。
42. 委員会は、手話委員会が教育的、文化的活動を含む、日常生活のあらゆる面でのニュージーランド手話の利用増加と同様に、十分な人数の手話通訳者の研修と雇用のための財源確保に取り組むことを勧告する。
44. 委員会は、障害のあるマオリ及び太平洋に住む人、並びに、特に聾者及び盲聾者の情報へのアクセスを可能にするために一層の取組がなされることを勧告する。
勧告なし 44. 委員会は、締約国が、条約の第24条第3項及び第29条(b)に従い、オーストラリア手話をオーストラリアの公用語の1つとして認識し、コミュニケーション上のその他の利用可能な形式の使用を、その開発、促進、使用に必要な財源を割り当てることによって発展させることを勧告する。
第24条 教育 51. 委員会は、締約国が、遅滞なく、条約第24条(2)(a)及び(b)の留保を取り下げることを勧告する。
53. 委員会は、締約国が、障害者団体、特に障害のある児童や若者を代表する団体と密接に協議し、インクルーシブ教育を受ける権利に関する委員会の一般的意見第4号(2014)204並びに持続可能な開発目標のターゲット4.5及び4.8に沿って、以下のことを勧告する。
(a) インクルーシブ教育のための包括的かつ調整された立法上及び政策上の枠組みを策定するとともに、以下を確保するための期限を策定すること。普通学校が、学校環境における障害のある児童の真の包容を促進することを確保すること。並びに、教員及び他のすべての専門家及び児童と接する者が、包容の概念を理解し、インクルーシブ教育を強化することができるようにすること。
(b) 障害のある児童の就学に関する学校の実践を監視するための措置を強化し、また、補償のための計画を決定することも含めて、障害に関連した差別及び/もしくは嫌がらせの事例には適切な救済策を講ずること。
(c) インクルーシブ教育を増加させ改善することに関し、一貫的で、なおかつ適切に予算が割り当てられた、具体的なスケジュールと測定可能な目標を伴った戦略を採択し、実施すること。その戦略は以下のようであるべきである:
(i) 授業間の休憩内の、並びに「教育時間」外の社会化を通しての環境を含む、質の高い包容環境を提供するすべてのレベルにわたって、教室でのインクルーシブ教育、支援提供、教員研修(教育上の手腕を含む)の程度と質を向上させるための法律、法令、規則の実施を確保する。
(ii) 障害のある児童の親の間での、インクルーシブ教育に関する意識向上と支援の取組を開始する。
(iii) インクルーシブ教育及び分離教育の双方に関して、機能障害、年齢、性別、民族的背景、及び児童の能力を反映した教育の成果といった項目によって分類された、児童数についての十分な関連データを提供する。
44. 委員会は、締約国に以下を勧告する。
(a) 締約国の全領土内において、インクルーシブで、なおかつ質の高い教育に関する政策を採用し、実施し、これを監視すること。
(b) すべての障害者の、特に女性及び児童、先住民のコミュニティの構成員、並びに、遠隔地や農村地域に居住する障害者の、教育機関への入学を推進すること。
(c) 教員たちが、すべての教育レベルにおけるインクルーシブ教育及び手話、並びに、障害者が利用可能なその他の情報・コミュニケーション形式の研修を受けることを確保すること。
(d) 学校及び他の学習施設において、合理的配慮を提供するための戦略を採用すること。これには、技術を介しての合理的配慮や、学級支援、アクセシビリティ、学習教材を通じた合理的配慮が含まれる。
(e) 持続可能な開発目標のターゲット4.5及び4 (a) を実施しつつ、条約第24条、及びインクルーシブ教育を受ける権利についての委員会一般意見第4号 (2016) に従うこと。
(f) 手話をする難聴及び聾の児童が、教育に完全に参加できるようにするために、2か国語学校において、手話を学習できる環境を確保すること。
50. 委員会は、初等・中等教育において合理的配慮の提供を増やし、障害者が高等教育へ入学する割合を高めるためのさらなる取組が行われることを勧告する。委員会は、締約国に対し、反いじめプログラムを実施し、インクルーシブ教育を受ける権利が法的強制力のあるものとなるように確立することを奨励する。 48. 委員会は、障害のあるすべての児童の普通教育制度への包容を約束し、彼らが必要とする支援を受けられることを確保するよう、締約国に要請する。 46. 委員会は、締約国に対して以下のことを勧告する。
(a)教育において必要とされる質の合理的配慮を提供する取組を促進すること。
(b)現在のインクルーシブ教育政策の効果、各州・特別地域における「教育のための障害基準」がどの程度実施されているかについて調査を指揮すること。
(c)すべての教育・研修レベルで、障害のある生徒の参加・修了率を高める目標を設定すること。
第27条 労働及び雇用 57. 委員会は、締約国に対し、障害者団体との緊密な協力の下、並びに条約の選択議定書第6条の下で行われたグレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国に関する委員会の調査報告に従い、次のことを勧告する。
(a) 障害者に100万件の仕事を提供するという締約国の目標を踏まえ、すべての障害者に一定水準以上の仕事を確保することを目的とした効果的な障害者雇用政策を開発・決定すること。並びに、特に障害のある女性、心理社会的及び/もしくは知的障害者、視覚障害者に焦点を合わせ、仕事の価値相応の報酬を確保すること。
(b) 職場で合理的配慮を要求するすべての障害者に対して合理的配慮が提供されるようにすること、障害のない雇用主及び従業員が合理的配慮に関する定期的な研修を受けられるようにすること、並びに合理的配慮の否定に当たっての諫止的かつ効果的な制裁の実施を確保すること。
(c) 「労働能力評価」205を含む、労働能力を評価する手続の立法上・行政上の要件が、障害の人権モデルに則っていること。そのモデルについて、評価を実施する者が認定を受けており、適切に研修を受けていること。並びに、その評価がその他の個人的な環境と同様に、業務に関する環境も考慮に入れていることを確保すること。締約国は、仕事へのアクセスに必要な調整と支援が、経済的支援と同様に提供されること、並びに、それらが求職活動の遂行に当たっての罰則や制限の対象とならないことを確保しなければならない。
(d) 条約第27条の留保を撤回すること。
(e) 条約第27条と持続可能な開発目標のターゲット8.5の関連性を留意すること。
48. 委員会は、締約国に以下を勧告する。
(a) 障害のある先住民を含む、障害者の雇用についての政策を採用すること。その政策は、雇用へのアクセスを保障し、開かれた、包容的で、かつ障害者が利用可能な市場及び環境での仕事、機会均等、及び男女平等を促進し、そして勤務中の障害者に合理的配慮を提供するものである。

(b) 障害のある女性や若者向けに、然るべき職を得る機会を提供することを目指した戦略を策定すること。これには以下が含まれる。合理的配慮を提供すること、就業時間を柔軟に調整すること、適切な職業訓練、並びに、職場における嫌がらせ及び他の様々な形態の差別を防止するための措置を講じること。
(c) 法的拘束力のある差別撤廃措置を実施すること。これには以下が含まれる。公的及び民間部門において、障害者の雇用を促進することを目的として、達成目標額を設定した基金を割り当てること。
(d) 持続可能な開発目標のターゲット8.5を達成するための取組を行なう際には、条約第27条に留意すること。
56. 委員会は、障害者の雇用水準の向上のためのさらなる措置が講じられることを勧告する。
58. 委員会は締約国が障害者の雇用における最低賃金免除許可206の代替案の検討を行うことを勧告する。
50. 委員会は、締約国がFunkA調査(FunkA-utredning)によって示された報告に基づいて障害者が仕事を得る機会を向上させるための措置を講じることを勧告する。さらに委員会は、締約国が、とりわけ、雇用におけるパーソナルアシスタント、職場で対応してくれる技術支援者、社会的費用の減免、雇用主への経済的支援、リハビリテーションと職業訓練を含む、支援の手段を増加させること、雇用と報酬における男女格差を減少させるための手段を実行することを提案する。委員会は締約国が障害者を指す「衰えた能力あるいは制限のある人」という用語が労働市場で使われていることについて影響を評価し、無差別の原則に従ってこれを修正するよう勧告する。 50. 委員会は、締約国に次のことを勧告する。
(a) 「ビジネスサービス賃金評価ツール」207の使用を直ちに中止すること。
(b) 「支援された賃金体系」208を、雇用支援を受けている者の賃金に対する確実かつ正確な評価に修正するよう確保すること。
(c) 障害のある女性が労働参加することに対する特定の根本的な構造的障壁に取り組み、彼女らの雇用への参加を増加させる取組を採択すること。
第31条 統計及び資料の収集 65. 委員会は、締約国が、持続可能な開発目標のターゲット17に沿って、すべての一般人口調査や国勢調査を含めて、とりわけ、収入、性別、年齢、ジェンダー、人種、民族的出自、移民・亡命・難民の認定状況、障害、地理的な位置及び国内の状況に関連したその他の特性によって分類され、質が高く、即時的かつ信頼性の高いデータの利用可能性を大幅に高めることを勧告する。また、比較可能な障害統計の収集のために、「ワシントン・グループの障害についての短い質問集」とツールを、締約国が使用することも勧告する。 54. 委員会は、締約国に以下を勧告する。締約国は、障害者についてのデータ及び統計を収集し、編集し、最新の状況に更新することを、体系的に円滑化すること。そうしたデータは、年齢、性別、障害の種別、直面した障壁、民族性、及び住居もしくは施設の種別についてのデータや障害者に対する差別もしくは暴力にかかわる事例についてのデータを含む、地理的な位置といった項目に分類されたものとする。委員会は締約国に対し、上記の過程で、障害者の団体と締約国とが協議を行なうよう勧告する。 68. 委員会は、ニュージーランド統計局が障害調査2013を元に、障害のある女性及び男性の人権上の成果と、障害のない女性及び男性のそれとを比較した報告書を作成し、また可能であれば、障害のある男性及び女性の人権上の成果と、障害のない男性及び女性のそれとを利用者が比較できるよう、障害調査2013のデータテーブルを利用可能な状態にすることを勧告する。
70. 委員会は、政府機関、クラウン・エンティティ、及び地方自治体が、障害者に関する分類されたデータを収集するとともに、それぞれの年次報告書の中で公開するように勧告する。
56. 委員会は、締約国に以下を勧告する。締約国は、性別、年齢、障害の種別といった項目に分類されたデータの収集、分析、及び普及を系統立てて行なうこと。その点に関して、能力の開発を増強すること。並びに、条約の様々な規定の実施に関してなされた進捗状況についての監視及び報告を行う目的で、法律の策定、政策の立案、及び組織の強化を支援するため、ジェンダーに配慮した指標を策定すること。
58. 委員会は、締約国が、先住民の集団に属する者を含めた、障害のある女児、男児、及び女性についてのデータを体系的に収集し、分析し、普及させることを勧告する。
54. 委員会は、締約国が、条約に規定されている義務全般にかかわるデータの収集と分類されたデータのパブリックレポート作成のために、国全体で一貫した措置を策定すること、並びにすべてのデータが年齢、性別、障害の種別、住居の場所、文化的背景で分類されることを勧告する。委員会はさらに、締約国が条約の実施についての将来の進捗を測定できるよう、分類されたデータの基準を確立するため、障害のある女性及び女児の状況に対する包括的な評価の実施を委託し、その資金を提供するよう勧告する。
56.委員会は、締約国が性別、年齢、障害、児童へのあらゆる形態の虐待や暴力を含んだ児童の状態ごとに分類されたデータを体系的に収集し、分析し、普及させることを勧告する。委員会はさらに、締約国が条約の実施についての将来の進捗を測定できるよう、分類されたデータの基準を確立するため、障害のある児童の状況についての包括的な評価の実施を委託し、その資金を提供するよう勧告する。

199 取組の内容はニュージーランドに対する総括所見第15項を参照のこと。
200 原文はCommunity Treatment Order
201 カナダはオンタリオ州が部分的ながら脱施設化を達成し、委員会は総括所見の第37項で、これについて賛辞を述べている。
202 在日カナダ大使館のウェブサイトでは、ファースト・ネーションズは「先住民族インディアン」を指すものとされている。(https://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/about-a_propos/faq-first_nations-indien.aspx?lang=jpn)
203 片仮名で表記すると、「ラング・デ・シーニュ・ケベコワーズ」となる。
204 インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見第4号は2016年8月に採択されたが、原文では2014年と表記されており、ここでは原文に従って翻訳した。
205 Work Capability Assessment (WCA)
206 原文は"minimum wage exemption permits"となる。障害者に対し、最低賃金を下回る賃金を設定できる制度。(参考:ビジネス・イノベーション・雇用省 https://www.employment.govt.nz/hours-and-wages/pay/minimum-wage/minimum-wage-exemptions/)
207 オーストラリアに対する総括所見第49項に基づく勧告である。
208 原文は"Supported Wage System"。

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