2 国外調査 2.1

2.1 国外調査の目的

 障害者を理由とする差別の解消の推進に関する法律の附則第7条に基づき3年後見直しの検討が進み、令和3年には、民間事業者における合理的配慮の提供の義務化を主な内容とする法案が国会に提出なされたところ、こうした法的措置による対応の強化と補完的なアプローチとして、自発的な取組を促進するための方策を検討することは、重要である。

 諸外国における「環境・社会・ガバナンス」(以下、ESGと呼ぶ。)に関する施策・取組には、社会(ダイバーシティ・人権等)やガバナンス(内部統治及び内規整備を含むマネジメント、情報開示の充実等)領域において、障害者施策が含まれ得ると考えられ、ESGにおける障害者施策、特に障害者差別解消法と対応する施策領域の位置づけを明らかにすることで、ESGの潮流を障害者差別解消のための自発的な取組を推進するために活用できる可能性がある。そのため、主要国におけるESGに関する施策・取組の状況及び動向を把握することは、我が国が今後民間事業者における自律的な取組を促進するための施策を検討していく上で有益と考えられる。

 こうしたことを踏まえ、本年度の調査研究事業では、諸外国における民間事業者の障害者差別の解消に資する自律的な取組の促進に関する施策、特にESGに関する施策・取組の状況及び動向について調査を実施した。

 なお、本年度の調査研究事業については、これまで障害者の権利に関する条約の実施等に関する内容について調査を行ってきたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初、令和2年3月から同年4月に予定されていた国連障害者権利委員会第23会期が延期されたこと、同会期が同年8月から9月に開催された際には締約国審査が実施されなかったこと、続く第24会期においても締約国審査が実施されるかどうかが未定であること、仮に締約国審査が実施された場合でも、総括所見が採択されるのは来年度に入ってからとなる見込みであることなどのため、障害者権利条約に関する調査研究の実施が困難であったことから、上記の研究を行うこととしたものである。

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