平成23年度を中心とした障害者施策の取組
第4章 日々の暮らしの基盤づくり
1 生活安定のための施策
障害のある人が、その有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに関する給付その他の支援を行う「障害者自立支援法」が平成18年4月から一部施行され、同年10月から全面的に施行された。
同法の施行後、法の定着を図るため、激変緩和のために累次の対策を講じ、利用者負担の軽減や事業者の経営基盤の強化などを行ってきたところである。
こうした中、平成21年9月の連立政権合意において、「障害者自立支援法」を廃止し、「制度の谷間」がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくるとされた。
同年12月に閣議決定により設置された本部の下で、障害のある人や障害福祉に関する関係者、有識者等を構成員とする推進会議が平成22年1月から開催され、障害者の制度に係る改革について議論が行われてきた。この推進会議の議論を踏まえて平成22年6月29日に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において、障害保健福祉分野については、現行の「障害者自立支援法」を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)を制定することとされた。
新法の内容については、多くの障害当事者が参加する「総合福祉部会」で、約2年間にわたって議論され、平成23年8月には「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」が取りまとめられた。その後、「民主党厚生労働部門障がい者WT(ワーキングチーム)」において、同年7月に成立した改正障害者基本法や同提言等を踏まえて検討がなされ、平成24年3月12日には、本部において、「障害者自立支援法」を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」とする内容を含む「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」が本部決定され、翌13日には閣議決定・国会提出されたところである。(法案の概要はP15の図表5参照)。なお、制度の見直しまでの間においても障害者の地域生活の支援の充実を図るために、平成22年12月の障害者自立支援法・児童福祉法の一部改正により、利用者負担について応能負担を原則とするとともに、障害児支援の強化や相談支援の充実等が図られ、平成24年4月に本格施行がなされたところである。(改正の概要については、図表30)。
【主な施策等】
- 制度の見直しまでの間においても障害者等の地域生活の支援の充実を図るために、議員立法により国会提出された「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」が平成22年12月に成立、障害者自立支援法等が改正。(改正の内容については、図表30を参照。)
- 公的賃貸住宅の整備に際して、障害のある人の生活に関連したサービスを備えた住宅を整備するため、障害者福祉施設との一体的な整備を推進するとともに、平成22年度からは、障害のある人を対象とした住まいづくり・まちづくりに関する先導的な取組についても支援。
- 障害者虐待の防止に向けた取組
<1> 障害者虐待防止対策支援事業
厚生労働省においては、平成22年度から、障害者虐待防止の取組を支援するため、「障害者虐待防止対策支援事業」を実施し、23年度は実施主体を都道府県から市町村にも拡大している。具体的には、地域における関係機関等の協力体制の整備・充実を図るとともに、過去に虐待のあった障害のある人の家庭訪問、障害者虐待防止に関する研修、虐待事例の分析等が行われている。
<2> 障害者虐待防止・権利擁護に関する人材の育成
国において、障害のある人の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施している。
- 障害者相談支援事業により、平成18年10月から、障害のある人や障害のある児童の親に対する一般的な相談支援に対して対応してきている。地域生活支援事業の中には、市町村における相談支援事業の機能を充実・強化するためのものもある。
- 相談支援体制の整備をはじめとした支援システム等の構築について関係者が協議する場として、市町村には地域自立支援協議会が、都道府県には都道府県自立支援協議会が位置付けられている。
- 相談支援専門員がサービス利用計画を作成することにより、障害のある人や障害のある児童の親が障害福祉サービスを適切に利用することができるように支援を行っている。
- 市町村に対する専門的な技術支援、情報提供の役割を担っている更生相談所等が都道府県には設けられており、身体障害者相談員、知的障害者相談員、児童に関する相談員及び精神保健福祉相談員を設置している。
- 公営住宅については、障害のある人の共同生活を支援することを目的とするグループホーム事業等への活用を可能としており、平成22年度からは、公営住宅等を身体障害のある人向けのグループホーム等として利用するための改良工事費を支援。
- 都道府県及び市町村は、障害福祉計画の策定に当たり、地域生活や一般就労への移行を進める観点から、平成26年度を目標年度として数値目標及びこれに係る必要なサービス見込量を設定。
- 平成21年度から、障害等により自立が困難な刑務所出所者等が出所後直ちに福祉サービスを受けられるようにするため、刑務所等の社会福祉士等を活用した相談支援体制を整備するとともに、「地域生活定着支援センター」を各都道府県に整備し、同センターと保護観察所との協働により、社会復帰を支援する体制の構築を推進。
- 都道府県・指定都市社会福祉協議会及び事業を委託された市区町村社会福祉協議会等では、認知症高齢者、知的障害のある人、精神障害のある人等のうち判断能力が十分でない人々が、地域において自立した生活を送ることを支援するため、社会福祉協議会が実施主体となって福祉サービスの利用や日常的な金銭管理に関する援助を行うため、日常生活自立支援事業を実施している。
- 厚生労働省は、「発達障害者支援体制整備事業」を、文部科学省の実施する「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」と連携協働の下に実施。平成22年度からは、発達障害児(者)の親が、発達障害のある子を持つ親に対して心理的な支援を行うペアレントメンターの活動を推進するとともに、発達障害の早期発見や、支援の必要性を把握するためのアセスメントツールの導入を促進する研修会等を実施し、発達障害児(者)及びその家族に対する支援体制をより充実。
- 発達障害の早期発見、早期の支援等を図るなど、発達障害のある人やその家族に対する支援を総合的に行うため「発達障害者支援センター」の整備を図ってきたところであり、平成23年度末において65都道府県・指定都市に設置されている。
- 「大分国際車いすマラソン大会」が毎年大分県で開催されており、第31回大会においては、世界16か国から261名の車いすランナーが出場。
- 障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として、「第11回全国障害者芸術・文化祭埼玉大会」(平成23年度)が埼玉県において開催。
- 「福祉用具法」に基づく福祉用具実用化開発推進事業の下、障害のある人や高齢者、介護者の生活の質の向上を目的として優れた技術や創意工夫のある福祉用具の実用化開発を行う民間企業等に対し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて研究開発費用を助成。
- 独立行政法人福祉医療機構では、平成22年度より「社会福祉振興助成事業」の先進的・独創的活動支援事業として、日常生活、社会参加等を支援する福祉用具の実用化研究開発に対し助成。
- 国際的な標準化動向を踏まえた日本工業規格(JIS)等を活用した福祉用具の標準化を推進。平成23年度には新たに福祉用具の規格として歩行器(JIST9264)及びエルボークラッチ(JIST9266)を制定。
- 国際標準化機構(ISO)の包装技術委員会(ISO/TC122)や人間工学技術委員会(ISO/TC159)での活動への参加とともに、これら委員会への日中韓3カ国による規格案の共同提案を行い、平成23年度までに5規格が国際規格として発行。21年度にはアクセシブル・デザインについて、より専門的かつ集中的な議論をするため、我が国からの提案によって福祉用具技術委員会(ISO/TC173)に新たにアクセシブル・デザイン分科委員会(SC7)が設立され、22年度には第1回東京会議を開催。
- 社会福祉士等の福祉専門職の養成・確保を図るとともに、専門的な技術及び知識を有する理学療法士等のリハビリテーション従事者を確保し、資質を向上。
2 保健・医療施策
健康診査等による障害の原因となる疾病等の予防・早期発見・治療、学校安全の充実、労働災害防止対策の推進のほか、障害のある人に対する医療・医学的リハビリテーション等を実施している。
心の健康づくり、精神疾患の早期発見・治療等精神保健・医療施策を推進するとともに、「自殺対策基本法」に係る、自殺対策の基本的かつ総合的な指針としての「自殺総合対策大綱」に基づき総合的な自殺対策を推進している。
【主な施策等】
- 幼児期において、身体発育及び精神発達の面から最も重要な時期である1歳6か月児及び3歳児のすべてに対し、総合的な健康診査を実施しており、その結果に基づいて適切な指導を行っている。
- 平成20年度からは、「適度な運動」、「適切な食生活」、「禁煙」に焦点を当てた国民運動として「すこやか生活習慣国民運動」を展開し、また、22年度より産業界との連携を促進する「Smart Life Project」を開始するなど、生活習慣病対策の一層の推進を図っている。
- 平成24年度の診療報酬改定においても、超重症児(者)に対する入院医療の評価を、平成22年度診療報酬改定に引き続き、充実したところ。
- 都道府県に高次脳機能障害者への支援を行うための支援拠点機関を置き、<1>相談支援コーディネーターによる高次脳機能障害者に対する専門的な相談支援、<2>関係機関との地域ネットワークの充実、<3>高次脳機能障害の支援手法等に関する研修等を行う「高次脳機能障害支援普及事業」を実施。
- 自殺対策の緊急的な強化を図るため、平成22年2月5日、「いのちを守る自殺対策緊急プラン」が閣僚級の「自殺総合対策会議」において決定。
平成22年9月には同会議に設置された「自殺対策タスクフォース(以下『TF』という。)」において「年内に集中的に実施する自殺対策の取組について」を策定し、22年中の自殺者数を可能な限り減少させるために、関係省庁と地方公共団体、関係団体が連携して必要な緊急対策の機動的な取組を実行。「TF」の設置期限を24年3月31日まで延長することを決定。