目次]  [戻る]  [次へ

第2編 全般的推進状況(平成24年度を中心とした障害者施策の取組)

第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

1 障害のある子どもの教育・育成

障害のある幼児児童生徒がその能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を養うため、一人一人の障害の状態に応じて、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、あるいは通級による指導においてきめ細やかな指導を実施している。

特別支援学校については、これまで蓄積してきた専門的な知識・技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能・役割(センター的機能)を果たすために、小・中学校等の要請に基づき、これらの学校に在籍する障害のある児童生徒等の教育に関して助言・援助を行うよう努めることとされるとともに、小・中学校等においても発達障害を含む障害のある児童生徒等に対する特別支援教育を推進することが明確に規定されたところ。

【主な施策等】

◯ 文部科学省では、小・中・高等学校において使用される拡大教科書の標準的な規格を策定・公表し、教科書発行者による拡大教科書の発行を促進するとともに、拡大教科書等を作成するボランティア団体等に対して教科書デジタルデータの提供を行い、その作成の負担軽減を図っている。

◯ 障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術などの活用を進めることが重要である。そのため、平成23年度より「学びのイノベーション事業」において特別支援学校における情報通信技術の活用実証研究を進めているところ。

◯ 国立特別支援教育総合研究所において、情報通信技術の活用に向けての研究を実施しているとともに、各都道府県等の指導的立場に立つ教職員を対象とした研修において、情報手段を活用した教育的支援に関する内容の充実を図っている。このほか、各教育委員会などの研修の支援のための各種研修講義の配信や、発達障害教育情報センターWebサイトにおける各種教育情報の提供、教員向けの研修講義の配信等、総合的な情報の提供を行っているところ。

◯ 発達障害等のある児童生徒については、それぞれの障害の特性等に応じた教科書や教材等の研究を行う必要があるため、「民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業」を実施し、発達障害等の子どもの障害の状態に応じた教材等の在り方及びそれらを利用した効果的な指導方法や教育効果等についての実証的な研究を実施。

◯ インクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について検討を行うため、中央教育審議会の「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」において審議。平成24年7月には、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(初等中等教育分科会報告)」が取りまとめられ、<1> 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築について、<2> 就学相談・就学先決定の在り方について、<3> 合理的配慮の充実とその基盤となる教育環境整備等について、<4> 多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進について、<5> 教職員の専門性向上等について提言された。

◯ 文部科学省では、「特別支援教育総合推進事業」において、地域を指定し、特別な支援が必要となる可能性のある子ども及びその保護者に対し、早期からの情報提供や相談会の実施等に取り組み、柔軟できめ細やかな対応が出来る一貫した支援体制を構築するとともに、特定の高等学校等を指定し、在籍する発達障害のある生徒へのキャリア教育の充実等に関する実践研究を実施している。

◯ 公立幼稚園、小・中学校、高等学校に在籍する障害のある子どもをサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されており、支援体制の構築が図られている。

◯ 教職員の指導体制については、学級編制の標準が公立特別支援学校の小・中学部で6人、公立小・中学校の特別支援学級で8人とされている等のほか、公立小・中学校における通級による指導のための教員配置や特別支援教育コーディネーターの配置など特別支援教育に対応するための加配定数の措置を講じている(平成25年度政府予算:600人の定数改善を含む5,941人)など、特別の配慮がなされている。

◯ 特別支援教育関係の教職員の資質向上を図るため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、研修を行っているほか、独立行政法人教員研修センターにおいても、各地域で中核となって活躍する管理職を育成する学校経営研修において特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。都道府県等教育委員会においては、小学校等の教諭等の初任者研修や10年経験者研修においても、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。

◯ 障害のある人がその能力・適性等に応じて高等教育へ進むための機会を拡充するために、従来から各国公私立大学等に対し、大学入学者選抜実施要項や各種会議を通じて、障害のある人に対する適切な配慮を求めている。大学入試センター試験や各大学の個別試験においては、点字・拡大文字による出題等の受験上の配慮を実施。

◯ 「特別支援学校施設整備指針」や「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定し、その普及を図っている。また、平成23年7月には、災害時に応急避難場所となる学校施設におけるバリアフリー化の必要性等について示した「『東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備について』緊急提言」を取りまとめ地方公共団体等に配布するなど、その普及を図っているところ。

2 雇用・就労の促進施策

ノーマライゼーションの実現のためには、職業を通じての社会参加は基本となるものであり、障害のある人が可能な限り雇用の場に就くことができるようにすることが重要である。この考えの下、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく障害者雇用率制度を柱とした施策を実施している。

障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策が重要であるため、保健福祉、教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進や、雇用への移行を進める支援策、職業能力開発の充実を図る等総合的な支援施策を実施している。

【主な施策等】

◯ 平成24年度の障害者の雇用状況は、民間企業における障害のある人の雇用者数は382,363.5人と9年連続で過去最高を更新し、雇用されている障害のある人の割合は1.69%であった。
 また、国の機関(法定雇用率2.1%)に勤務している障害のある人の数、在職している障害のある人の割合はそれぞれ7,105.0人、2.31%であった。

◯ 知的障害のある人等を各府省等で非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を国の行政機関において率先して実施し、全府省で採用に向けた取組を実施。

◯ 民間企業に対する法定雇用率の達成に向けた指導は、ハローワークが雇用率の著しく低い企業に対し、雇入れ計画の作成を命じ、障害者雇用を進めるよう継続的に行っている。

◯ 障害のある人の雇用を推進する観点から、本府省等及び国の地方機関において、職場体験実習を実施するとともに、地方8ブロックにおいて「公務部門における障害者雇用推進に関する地方別実務研究会」を開催。

◯ 事業主の経済的負担を軽減し、障害のある人の雇用の促進及び雇用の継続を図るため、障害者雇用納付金制度に基づく各種の助成金の支給を実施。
 ハローワークにおける障害特性に応じたきめ細かな職業相談、職業紹介の実施、障害者職業センターにおける職業リハビリテーションの実施、就業と生活両面における一体的な支援を行う「障害者就業・生活支援センター」の設置促進等の実施。

◯ 障害者就労施設で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じる「障害者優先調達推進法」が平成24年6月に成立し、25年4月から施行。

◯ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、IT機器を利用し、障害のある人の職場拡大に資することを目的として、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。

◯ 全国障害者技能競技大会は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、実施。平成24年度は、第33回が長野県で開催された。

目次]  [戻る]  [次へ