目次]  [前へ]  [次へ

第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策

1.特別支援教育の充実

(1)特別支援教育の概要

障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導を行うとともに、必要な支援を行う必要がある。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、一層きめ細かな支援体制の整備が求められている。特別支援教育は、発達障害も含めて、特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものであり、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても、合理的配慮の提供を行いながら、必要な支援を行う必要がある。平成19(2007)年に特別支援教育が本格的に実施されてから10年が経過し、平成29(2017)年5月1日現在、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている幼児児童生徒の総数は約49万人となっており、増加傾向にある。このうち義務教育段階の児童生徒については、全体の約4.2%に当たる約41万7千人である。

平成30(2018)年度から開始した障害者基本計画(第4次)においては、基本的考え方として、共生社会の実現に向け、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けることのできる仕組みの整備を進めるとともに、障害に対する理解を深めるための取組を推進すること等を掲げた。具体的には、個別の指導計画や個別の教育支援計画の活用を通じた、全ての学校における特別支援教育の充実、障害に対する理解や交流及び共同学習の推進、学校における外部人材の活用、医療的ケアや長期入院に係る教育機会確保、障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について、記載を充実させている。また、小・中・高等学校等において通級による指導を受けている児童生徒数を毎年増加させていくことや、現状の体制整備状況を踏まえ、校内委員会の設置率や特別支援教育コーディネーターの指名率等の特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組を全て行っている幼・小・中・高等学校等の割合をおおむね100%にすることなどを数値目標として盛り込んでいる。

(2)多様な学びの場の整備

ア 特別支援教育に関する指導の充実

① 特別支援学校等における教育

平成29(2017)年4月に新特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を公示し、①重複障害者である子供や知的障害者である子供の学びの連続性、②障害の特性等に応じた指導上の配慮の充実、③キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上など自立と社会参加に向けた教育等を充実させた。また、新特別支援学校学習指導要領等の円滑な実施のため、学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成や、一人一人の障害の状態等に応じた指導方法の改善・充実について、先導的な実践研究を実施した。

通級による指導については、高等学校段階において、小・中学校等のような通級による指導が制度化されていなかったことから、高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議において高等学校における通級による指導の制度化に向けた検討を行い、平成28(2016)年に関係する省令等を改正した上で、平成30(2018)年度から開始することとした。また、障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教師を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。平成29年5月1日現在、小学部1,240人、中学部782人、高等部806人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。

② 障害のある児童生徒の教科書・教材の充実

特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。このため、文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。

なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。

また、文部科学省においては、拡大教科書など、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図っている。

加えて、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要であることから、企業・大学等が学校・教育委員会等と連携して行う、ICTを活用した教材など、児童生徒の障害の状態等に応じた使いやすい支援機器等教材の開発の支援を実施した。

③ 学級編制及び教職員定数

公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。

④ 教職員の専門性の確保

特別支援教育担当教師の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。幼稚園、小・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。また、平成29(2017)年11月に教育職員免許法施行規則の改正を行い、教職課程において「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」を新たに独立した事項として設け、平成31(2019)年4月以降に入学する者については1単位以上修得することを定めた。

また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。

⑤ 免許制度の改善

平成19(2007)年度より、従来、盲学校・聾学校・養護学校ごとに分けられていた教諭の免許状が、特別支援学校の教諭の免許状に一本化されている。同時に、特別支援学校教諭免許状の取得のためには、様々な障害についての基礎的な知識・理解と同時に、特定の障害についての専門性を確保することとなっている。また、大学などにおける特別支援教育に関する科目の修得状況などに応じ、教授可能な障害の種別を定めて授与することとしている。

ただし、特別支援学校教諭免許状については、教育職員免許法(昭和24年法律第147号)上、当分の間、幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教師となることが可能とされているが、専門性確保の観点から保有率を向上させることが必要である。特別支援学校の教師の特別支援学校教諭等免許状の保有率は、全体で77.7%(平成29(2017)年5月1日現在)であり、全体として前年度と比べ1.9ポイント増加しているが、特別支援教育に関する教師の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっていることから、特別支援学校教諭等免許状の取得に資する取組や特別支援学校教員等に対する専門的な研究を実施した。

イ 学校施設のバリアフリー化

文部科学省では、学校施設の整備について、障害のある幼児児童生徒が支障なく学校生活を送るために障害の種類や程度に応じたきめ細かな配慮を行うよう、学校種ごとの学校施設整備指針において、施設の計画・設計上の留意点を示している。このほか、学校施設のバリアフリー化に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定するとともに、具体的な取組を事例集として取りまとめている。また、報告書「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」では、災害時に避難所となる学校施設におけるバリアフリー化の必要性について示している。これらの指針や事例集等は、地方公共団体等に配布するとともに、研修会等を通じて普及啓発に努めている。

さらに、学校施設におけるバリアフリー化の取組に対する支援の一つとして、エレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行っている。

ウ 専門機関の機能の充実と多様化

① 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に、「特別支援教育専門研修」や「インクルーシブ教育システムの充実に関わる指導者研究協議会」を実施しているほか、インターネットを通じて、通常の学級の教師を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教師の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校の教師の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。

② 特別支援教育センター

都道府県の特別支援教育センターにおいて、当該都道府県における特別支援教育関係職員の研修、障害のある子供に係る教育相談、特別支援教育に係る研究・調査等が行われている。

(3)充実した支援体制の整備

ア 幼稚園から高等学校段階までの校内支援体制整備

文部科学省では、学校や教育委員会などの取組を促進しており、障害のある子供への支援体制の整備、巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施、関係機関との連携など、支援体制整備の推進に係る経費の一部を補助している。

平成29(2017)年度特別支援教育体制整備状況調査によると、小・中学校においては、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており、「個別の指導計画」の作成、「個別の教育支援計画」の作成についても着実な取組が進んでいる。

文部科学省では、幼稚園段階からの支援の強化に向け、障害のある子供に対する早期からの教育相談及び支援体制の構築を推進するため、教育と保育、福祉、保健、医療等の連携推進、情報提供等の取組に対する支援を実施している。

また、発達障害を始め障害のある子供たちへの支援における教育と福祉の連携については、各自治体の教育委員会や福祉部局が主導し、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目なく支援が受けられるよう、文部科学省と厚生労働省の両省による「トライアングル」プロジェクトを平成29年12月に設置し、家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策について検討を行った。

イ 発達障害のある子供に対する支援

学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正(平成18(2006)年)により、幼稚園、小・中・高等学校等のいずれの学校においても、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。

平成28(2016)年6月には発達障害者支援法(平成16年法律第167号)の一部改正が公布され(同年8月施行)、発達障害児がその年齢・能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮することや、支援体制の整備として個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成推進、いじめの防止等のための対策の推進等が規定された。また、小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援に当たって、①特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法、②学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方、③通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法、④指導や支援の内容等を適切に進学先等に引き継ぐための方法、⑤学校と福祉機関との連携支援、支援内容の共有方法に関する研究を実施した。

ウ 医療的ケアが必要な子供に対する支援

平成23(2011)年6月に公布された介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、平成24(2012)年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教師等についても、制度上実施することが可能となった。

平成29(2017)年5月1日現在、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が特別支援学校に8,218人、小・中学校に858人在籍しており、文部科学省では、特別支援学校や小・中学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、看護師の配置に必要な経費の一部を補助している。また、学校において高度な医療的ケアに対応するため、医師と連携した校内支援体制の構築や、医療的ケア実施マニュアル等の作成など、医療的ケアの実施体制の充実を図るモデル事業を実施した。

エ 私学助成

私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある幼児が就園している幼稚園の果たす役割の重要性から、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国は経常的経費の一部の補助等を行っている。

オ 家庭への支援等

保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のために必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。

2.障害のある子供に対する福祉の推進

(1)障害児保育の推進

厚生労働省においては、障害のある児童の保育所での受入れを促進するため、昭和49(1974)年度より障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきた。

当該事業については、事業開始より相当の年数が経過し、保育所における障害のある児童の受入れが全国的に広く実施されるようになったため、平成15(2003)年度より一般財源化し、平成19(2007)年度より地方交付税の算定対象を特別児童扶養手当の対象児童から軽度の障害のある児童に広げる等の拡充をしている。

また、平成27(2015)年度より施行した子ども・子育て支援新制度においては、①障害のある児童等の特別な支援が必要な子供を受け入れ、地域関係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こども園に配置、②新設された地域型保育事業について、障害のある児童を受け入れた場合に特別な支援が必要な児童2人に対し保育士1人の配置を行っている。

さらに、保育現場におけるリーダー的職員を育成するため、平成29(2017)年度より開始した「保育士等キャリアアップ研修」の研修分野に「障害児保育」を盛り込み、障害児保育を担当する職員の専門性の向上を図っている。

なお、障害児保育の研修分野を含めた保育士等キャリアアップ研修を修了し、リーダー的職員となった者に対して、その取組に応じた人件費の加算を実施している。

加えて、障害児保育に係る地方交付税について、平成30(2018)年度からは、措置額を約400億円から約800億円に拡充するとともに、障害児保育に係る市町村の財政需要を的確に反映するため、各市町村の保育所等における「実際の受入障害児数」に応じて地方交付税を算定することとした。

(2)放課後児童クラブにおける障害のある児童の受入推進

障害のある児童の受入れを行っている放課後児童クラブは、年々、着実に増加しており、平成29(2017)年5月現在で、全24,573クラブのうち約56%に当たる13,648クラブにおいて、36,493人を受け入れている状況である。障害のある児童を受け入れるに当たっては、個々の障害の程度等に応じた適切な対応が必要なことから、障害のある児童を1人以上受け入れている放課後児童クラブに専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費を補助しているところである。

加えて、平成29年度からは、消費税財源を活用して、障害のある児童3人以上の受入れを行う場合について、更に1名の専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費の上乗せ補助や医療的ケア児の受入れを行う場合について、看護師等を配置するために必要な経費の補助を行っており、放課後児童クラブの利用を希望する障害のある児童が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援している。

(3)療育体制の整備

ア 福祉施設における療育機能の強化

障害児支援については、平成24(2012)年4月から知的障害児施設等の障害種別に分かれていた施設体系について、通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」にそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っている。さらに、学齢期における支援の充実を図るために「放課後等デイサービス」を、保育所等に通う障害のある児童に対して集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設した。

平成28(2016)年6月に改正された児童福祉法(昭和22年法律第164号)により、重度の障害等により外出が著しく困難な障害のある児童に対し、居宅を訪問して発達支援を提供する「居宅訪問型児童発達支援」を創設した。加えて、保育所等の障害のある児童に発達支援を提供する「保育所等訪問支援」について、訪問先を乳児院及び児童養護施設にも拡大した。

イ 地域における療育体制の整備

平成28(2016)年6月に改正された児童福祉法により、医療的ケアが必要な障害のある児童が適切な支援を受けられるよう、地方公共団体において、保健、医療、福祉等の連携促進を図ることが努力義務とされた。併せて、障害児支援の提供体制の計画的な構築を図るため、地方公共団体において、「障害児福祉計画」を策定することが義務付けられた。

平成29(2017)年7月には「児童発達支援ガイドライン」を発出し、提供すべき支援の内容や運営に関する基本事項を示すことにより、支援の質の向上を図っている。関係機関と連携を図り、円滑な児童発達支援の利用と適切な移行を図ることとしている。

さらに平成30(2018)年度からは、外部の看護職員が事業所を訪問し、障害のある児童に対して長時間の支援を行った場合等について新たに報酬上評価するなど、医療的ケア児に対する支援を拡充している。

3.社会的及び職業的自立の促進

(1)特別支援学校と関係機関等の連携・協力による就労支援

文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。

(2)高等教育等への修学の支援

大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字(大学入試センター試験においては、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成)による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、試験時間の延長、代筆解答等の受験上の配慮を実施している。

(3)地域における学習機会の提供

文部科学省では、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設について、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。

(4)生涯を通じた学びの支援

文部科学省内に「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置するとともに、平成29(2017)年度から生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設した。また、平成30(2018)年度より新規で「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」として、学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な学習プログラムや実施体制、関係機関・団体等との連携等に関する実証的な研究等に取り組むこととしている。

第2節 雇用・就労の促進施策

1.障害のある人の雇用の場の拡大

(1)障害者雇用の現状

ア 平成29(2017)年障害者雇用状況報告

身体障害者又は知的障害者を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数50人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。平成29年の報告結果は次のとおりである。

① 民間企業の状況

平成29(2017)年6月1日現在の障害者雇用状況は、雇用障害者数が14年連続で過去最高を更新し、495,795.0人(前年同日474,374.0人)となるなど、一層進展している。障害者である労働者の実数は406,981人(前年同日386,606人)となった。

また、民間企業が雇用している障害者の割合は1.97%(前年同日1.92%)であり、法定雇用率を達成した企業の割合は、50.0%を超えた。なお、雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年の報告より増加した。

② 国・地方公共団体の状況

国の機関(法定雇用率2.3%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.50%、7,593.0人であった。

また、都道府県の機関(法定雇用率2.3%)は2.65%、8,633.0人であり、市町村の機関(法定雇用率2.3%)は2.44%、26,412.0人であった。

さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.2%)は2.22%、14,644.0人であった。国、地方公共団体等ともに、勤務している障害者数は前年同日の報告より増加した。

イ ハローワークの職業紹介状況

平成28(2016)年度のハローワークを通じた就職件数は、平成27(2015)年度を上回る93,229件(前年度比3.4%増)であった。このうち、身体に障害のある人は26,940件(前年度比3.8%減)、知的障害のある人は20,342件(前年度比1.9%増)、精神障害のある人は41,367件(前年度比7.7%増)、その他の障害のある人(発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)は4,580件(前年度比19.5%増)となり、精神障害のある人の就職件数が大幅に増加した。

(2)障害のある人の雇用対策について

ア 障害のある人の雇用対策の基本的枠組み

障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)(以下「障害者雇用促進法」という。)や同法に基づく障害者雇用対策基本方針(平成30年厚生労働省告示第178号)等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。

イ 障害者雇用率制度及び法定雇用率の達成に向けた指導

① 障害者雇用率制度

(ア)障害者雇用率制度

障害者雇用促進法では、民間企業等に対し、一定の割合(障害者雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。平成30(2018)年4月からは、新たに精神障害者が雇用義務の対象となり、民間企業の障害者雇用率は2.2%となった(平成33(2021)年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.5%(都道府県等の教育委員会は2.4%)としている(民間企業と同様に、平成33年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。

(イ)特例子会社制度等の特例措置

事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。平成29(2017)年6月1日現在で464社を特例子会社として認定している。

② 法定雇用率の達成に向けた指導の一層の促進

障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。

(ア)民間企業等に対する指導

実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(平成24(2012)年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害のある人の雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。

(イ)国・地方公共団体に対する指導等

国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあることを踏まえ、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画的な採用を図るよう要請を行っている。

ウ 障害者雇用納付金制度

障害者雇用促進法は、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、障害者雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。

エ チャレンジ雇用

各府省・各地方公共団体で知的障害のある人等を非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を推進している。

オ 職業リハビリテーションの実施

ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に障害のある人が希望や能力、適性に応じた職場に就き、それを継続し、それにおいて向上することができるようにするための就労に関するサービスを実施している。

カ 助成金等による企業支援や普及啓発活動

国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や、障害特性に応じた雇用管理や雇用形態の見直し等の措置を実施する企業に対して助成する「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。

キ 税制上の特例措置

障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、平成30(2018)年度税制改正では、障害のある人を多数雇用する場合の機械等の割増償却制度(所得税、法人税)について、基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であることとの要件における重度障害者割合を55%以上に引き上げた上、その適用期限の2年延長を行った。

ク 障害者差別禁止と合理的配慮の提供

雇用分野において障害があることを理由とした差別を禁止し、過重負担とならない限り、合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。このため、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害のある人からの相談に応じ、必要な場合は事業主に助言・指導等を行っているほか、都道府県労働局長や障害者雇用調停会議による紛争解決の援助を行っている。

2.総合的支援施策の推進

(1)障害のある人への地域における就労支援

ア ハローワーク

就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークの専門窓口で、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。

① ハローワークを中心とした「チーム支援」

② トライアル雇用

イ 地域障害者職業センター

ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。

① 職業評価・職業指導及び職業リハビリテーション計画の策定

② 障害のある人の就労の可能性を高めるための支援(職業準備支援)

③ 障害のある人の職場適応に関する支援(職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業)

④ 精神障害のある人等に対する総合雇用支援

⑤ 地域の就労支援機関に対する助言・援助

ウ 障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(平成30(2018)年4月現在334か所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。平成29(2017)年度には、職場定着支援の強化を図るため、ジョブコーチとして多くの障害のある人の支援に携わり、障害のある人の職場定着支援に関する豊富な知識と経験を有する「主任職場定着支援担当者」を増員するとともに、精神障害のある人に対する支援経験を有するなど精神障害のある人の支援に特化した担当者及び企業における人事管理や障害者雇用の経験を有するなど事業主からの雇用相談や雇用管理支援に対応する担当者をモデル配置するなど、センターの定着支援機能の強化を図った。

(2)福祉的就労から一般就労への移行等の支援

ア 就労移行支援について

一般就労を希望する障害のある人が、できる限り一般就労が可能となるように、就労移行支援事業所では、在宅就労も含めて生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行っている。

イ 就労継続支援A型について

雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な障害のある人に対し、生産活動等の活動の機会の提供及びその他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、就労継続支援A型事業所における就労の質を向上させるため、平成29(2017)年4月に改正した指定障害福祉サービス等基準に基づき、事業所の生産活動の収支を利用者に支払う賃金の総額以上とすることなどとした取扱いを徹底し、安易な事業参入の抑制を図るとともに、基準を満たさない事業所に経営改善計画の提出を求めることにより、事業所の経営状況を把握した上で地方公共団体が必要な指導・支援を行うことを通じ、障害のある人の賃金の向上を図ることとした。

ウ 就労継続支援B型について

通常の事業所に雇用されていた障害のある人であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進している。

エ 就労定着支援について

平成28(2016)年度の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の一部改正により、就労移行支援事業所等を利用し、一般就労に移行した障害のある人に対して、一般就労に伴い生じる生活リズムの乱れや給料の浪費などの生活面の課題に対応できるよう、家族や関係機関との連絡調整等の支援を一定期間にわたって行う新たなサービスを創設した。

オ 平成30(2018)年度障害福祉サービス等報酬改定(以下「報酬改定」という。)について

障害のある人がその能力を十分に発揮し、地域で自立した生活を実現することができるよう、報酬改定において、一般就労への定着実績や工賃実績等に応じた報酬体系を構築し、就労系障害福祉サービスにおける工賃・賃金の向上や一般就労への移行の更なる促進が図られるよう見直しを行った。

(3)障害特性に応じた雇用支援策

ア 精神障害のある人への支援

精神障害のある人について、ハローワークの専門窓口で「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による相談支援等を行っている。

民間企業に対しては、継続雇用する労働者へ移行することを目的に、週の所定労働時間10時間以上20時間未満から一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の支給などを行っている。

なお、精神障害のある人については、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成29(2017)年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指しており、平成29年6月1日現在で5.0万人となっている。

イ 発達障害のある人への支援

ハローワークでは、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。

また、平成30(2018)年度よりハローワークに発達障害者雇用トータルサポーターを新たに配置し、カウンセリング等の求職者支援や事業主が抱える発達障害のある人等の雇用に係る課題解決のための個別相談等を実施している。

さらに、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。

ウ 難病のある人への支援

ハローワークでは、「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する総合的な就労支援を行っている。

また、事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。

エ 在宅就業への支援

① 在宅就業支援制度

自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、在宅就業支援団体(平成29(2017)年6月現在で22団体)を介して業務を発注した事業主に対して、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。

② 就労支援機器等の普及・啓発

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。

(4)就労に向けた各種訓練の推進

国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、一般就労を希望する65歳未満の障害のある人に対して、就労に必要な知識や技能を獲得させるため、障害福祉サービス(就労移行支援)を実施している。

(5)障害のある人の創業・起業等の支援

経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(平成29(2017)年12月現在で1,379市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っている。

(6)障害のある人の就労支援に当たっての農業部局との連携

農林水産省では、障害のある人等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「農業分野における障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、シンポジウムを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。

厚生労働省では、農福連携による障害のある人の就労支援を推進する取組として、農業分野に取り組もうとする就労継続支援B型事業所等に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援B型事業所等が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催を支援している。平成30(2018)年度は全都道府県での実施を目指している。

(7)職場での適応訓練

ア 職場適応訓練

障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4千円/月)が支給される(訓練期間6か月以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費も増額(2万5千円/月)している。

イ 職場適応訓練(短期)

障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(訓練期間2週間以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(4週間以内(原則))、職場適応訓練費も増額(1,000円/日)している。

(8)資格取得試験等(法務関係)における配慮

司法試験においては、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。

司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。

(9)福祉施設等における仕事の確保に向けた取組

ア これまでの取組

官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公需の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、平成20(2008)年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。

また、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)(以下「障害者優先調達推進法」という。)の施行(平成25(2013)年4月)にあわせて、「予算決算及び会計令」を改正し、随意契約によることができる場合として、「慈善のため設立した救済施設から役務の提供を受けるとき」を追加する措置を講じた。

イ 障害者優先調達推進法の成立

平成25(2013)年4月から、障害者優先調達推進法が施行され、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じることとなった。当該法律に基づき、全ての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでいる。

(10)職業能力開発の充実

ア 障害者職業能力開発校における職業訓練の推進

一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施している。

平成30(2018)年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が5校で、全国に18校が設置されており、国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、他の11校は都道府県に運営を委託している。

障害者職業能力開発校の就職率については、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に70%となるよう目標設定されている。

イ 一般の公共職業能力開発施設における受入れの促進

都道府県立の一般の公共職業能力開発施設において、精神障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促進し、受講機会の拡充を図っている。

ウ 障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練

障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校等早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な職業訓練を行うことが可能な制度である。なお、委託訓練修了者の就職率については、平成28(2016)年度は46.2%であり、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に55%となるよう目標設定されている。

エ 精神障害・発達障害のある人に対する職業訓練

都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害のある人や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるよう独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。

オ 障害のある人の職業能力開発に関する啓発

① 全国障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)の実施

障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、平成29(2017)年度には、栃木県で第37回大会が開催(11月17日~19日)された。

② 国際アビリンピックへの日本選手団の派遣

障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深めること等を目的として、昭和56(1981)年10月に第1回国際アビリンピックが東京で開催され、第9回大会がフランス共和国ボルドー市において平成28(2016)年3月に開催された。日本からは、第35回全国大会での成績優秀者31名の選手が参加した。

(11)雇用の場における障害のある人の人権の確保

全国の法務局・地方法務局及びその支局では、人権相談等により雇用の場における、障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。

3.働き方改革における「障害者関連施策」について

ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)を踏まえて策定された働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定。以下「本実行計画」という。)では、日本経済再生に向けた最大のチャレンジは働き方改革であるとし、働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行うこととされた。

障害者関連施策については、「障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進」として位置付けられており、今後の対応の方向性について「障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて最大限活躍できることが普通になる社会を目指す。このため、長期的寄り添い型支援の重点化等により、障害者雇用ゼロ企業を減らしていくとともに、福祉的就労の場を障害者がやりがいをより感じられる環境に変えていく。また、特別な支援を必要とする子供について、初等中等・高等教育機関と福祉・保健・医療・労働等の関係行政機関が連携して、就学前から卒業後にわたる切れ目ない支援体制を整備する。」こととされている。

本実行計画では、上記2項目を含む合計19項目からなる対応策について、10年先の未来を見据えたロードマップが策定されている。平成30(2018)年度においては、平成29(2017)年度に引き続き、本実行計画に盛り込まれた施策について、ロードマップに沿って進めていく。

目次]  [前へ]  [次へ