第1章 改正障害者差別解消法の施行 第2節 2
第2節 改正障害者差別解消法の施行に向けた取組
2.関係府省庁における「対応指針」の改定概要
(1)関係府省庁における改定概要
「障害者差別解消法」第11条第1項において、主務大臣は、「基本方針」に即して、同法第8条に規定する事業者における不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下本章では「対応指針」という。)を定めることとされている。
また、同条第2項において準用される同法第9条第2項から第4項までの規定により、「対応指針」の作成・変更に当たっては、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成・変更の後は「対応指針」を公表しなければならないとされている。
「対応指針」は事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれた合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではないが、事業者においては、「対応指針」を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。
「改正障害者差別解消法」により、事業者による合理的配慮の提供が義務化されることを契機に、事業者においては、各主務大臣が作成する「対応指針」に基づき、合理的配慮の必要性について一層認識を深めることが求められる。このため、「改定基本方針」においては、障害を理由とする差別の禁止に係る具体的取組はもとより、相談窓口の整備、事業者の研修・啓発の機会の確保、個別事案への対応を契機とした障害を理由とする差別の解消の推進に資する内部規則やマニュアルなど制度等の整備等も重要であるとされ、「対応指針」の作成・変更に当たってはこの旨を明記するものとされたほか、「対応指針」は事業者に加え、障害者が相談を行う際や、国や地方公共団体における相談機関等が相談対応を行う際等にも、相談事案に係る所管府省庁の確認のため参照され得るものであることから、「対応指針」においては、各主務大臣が所掌する分野及び当該分野に対応する相談窓口をわかりやすく示すことが求められる旨が追記された。
これを受け、「国等職員対応要領」と同様、各主務大臣においては、「改定基本方針」に即して、「改正障害者差別解消法」の施行前に、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングを行った後、パブリックコメントを経て、「対応指針」の改定を行った。
改定内容は、主務大臣や事業分野ごとに様々であるが、多くの主務大臣や事業分野においてみられる主な変更点としては、「改定基本方針」に即して、建設的対話を通じて相互理解を図ることの重要性や、事前的改善措置として環境の整備を図ることの有効性について追記したこと、相談窓口の整備・事業者の研修等の機会の確保に係る記載を充実したこと、「正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」や「正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」、「合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例」、「合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例」、「合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例」などの具体例について整理・充実したことなどがあげられる。
(2)不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供等の事例
不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供等に関する事例については、主務大臣や事業分野ごとに、障害種別ごとの障害特性や事業内容等を踏まえ、様々な事例が記載されているが、以下は、そうした事例の一部について、一部要約等を行い、同一又は類似した事例を記載している府省庁や事業分野の例を示した上で関係すると考えられる障害種別ごとに整理したものである。
なお、以下においては、事例を特定の障害種別に当てはめて記載しているが、事例を記載した障害種別以外の障害種別にも関係する場合もあることに注意する必要がある。
また、本項目に記載している「障害特性と主な配慮事項」はあくまでも一例であり、障害の種類は同じでも、程度や症状、必要とする配慮やニーズは多様であるため、画一的ではなく、柔軟に対応することが求められる。
【視覚障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
視覚障害には、全く見えない場合(全盲)と見えづらい場合(視機能の障害)がある。
[見えづらい場合]
・細部がよくわからない
・光がまぶしい
・暗いところで見えにくい
・見える範囲が狭い(視野の一部が欠けたり、望遠鏡でのぞいているような見え方)
・特定の色がわかりにくい
【主な配慮事項】
○一人で行動することが困難
→慣れていない場所では、一人で移動することが難しい方が多い。
○音声を中心に情報を得ている
→視覚から情報が得にくいため、音や音声、手で触ることにより情報を入手している。
○文字の読み書きが困難
→文書を読むことや書類に文字を記入することが難しい方が多い。
【視覚障害に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●車椅子使用者、白杖使用者等外見上障害者と認識して止まることなく、乗車を拒否する。又は障害者と認識した時点で、乗車を拒否する。(国土交通省・一般乗用旅客自動車運送業)
〈正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例〉
●混雑時に視覚障害のある利用者から搭乗の補助を求められた場合において、状況を丁寧に説明した上で、周囲の混雑状況が解消するまで、待合スペースでの待機を提案する。(安全の確保)(国土交通省・航空運送業)
●手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認すること。(障害者本人の損害発生防止の観点)(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●視覚障害のある者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内すること。その際、同性の職員がいる場合は、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内すること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●理容店や美容店で、視覚障害者の髪を切る際、次に何をするのか細かく声をかけるほか、カットの仕上がりを、頭を触って長さ等を確認してもらうこと。(厚生労働省・衛生分野)
●障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。)に応じて、重要事項説明や契約条件等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビ振りを行う、書類の作成時に大きな文字を書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。(国土交通省・不動産業)
●振込等の手続を行うに当たって、ATMの操作が困難な顧客を窓口に誘導する場合に、振込手数料をATM利用時と同等に減額して取り扱う。(金融庁)
●スクリーン、手話通訳者、板書、教材等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保すること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●視覚障害者が、点字ブロックのないイベント会場内の移動に必要な介助を求める場合に、「安全上何かあったら困る」という理由で移動介助の可能性を検討せず、一律に介助を断ること。(文部科学省)
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●店舗等において、混雑時に視覚障害のある者から店員に対し、店内を付き添って買物の補助を求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買物リストを書き留めて商品を準備することができる旨を提案すること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)(内閣府、国家公安委員会、こども家庭庁、総務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●図書館等において、混雑時に視覚障害者から職員等に対し、館内を付き添って利用の補助を求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、職員が聞き取った書籍等を準備することができる旨を提案すること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)(文部科学省)
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、 以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
【聴覚・言語障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
聴覚障害には、全く聞こえない場合と聞こえにくい場合がある。また、言語障害を伴う場合とほとんど伴わない場合もあり、言語障害のある場合にはその状況等に応じて他者とのコミュニケーションに困難を生じる場合がある。
【主な配慮事項】
○外見からわかりにくい
→外見からは聞こえないことがわかりにくいため、挨拶したのに返事をしないなどと誤解されることがある。
○視覚を中心に情報を得ている
→音や音声による情報が得にくく、文字や図などの視覚により情報を入手している。
○声に出して話せても聞こえているとは限らない
→聴覚障害のある方の中には声に出して話せる方もいるが、相手の話は聞こえていない場合がある。
○補聴器や人工内耳を付けても会話が通じるとは限らない
→補聴器や人工内耳を付けている方もいるが、それらを使用しても、明瞭に聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報で話の内容を補っている方も多い。
【聴覚・言語障害に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●緊急事態が起きた時、非常ベルや館内放送があっても気づかないので、危険であるとの理由で、聴覚障害者の宿泊を断ること。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●(聴覚に障害のある顧客に対しては、)パンフレット等の資料を用いて説明し、筆談を交えて要望等の聞き取りや確認を行う。(金融庁)
●災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害のある者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。(国家公安委員会、環境省)
●口話が読めるようにマスクを外して話をすること。(厚生労働省)
●スクリーン、手話通訳者、板書、教材等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保すること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)【再掲】
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●聴覚障害等のある者から入電があり、電話リレーサービスを介した問合せを希望する旨の意思の表明があった場合に、本人確認ができないこと等を理由に対応を拒否すること。(経済産業省)
●電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断ること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●講演会等で、情報保障の観点から、手話通訳者を配置したり、スクリーンへ文字情報を提示したりする(環境の整備)とともに、申出があった際に、手話通訳者や文字情報が見えやすい位置に座席を設定すること。(合理的配慮の提供)(文部科学省)
●公共インフラとしての電話リレーサービスや独自の手話通訳サービスの利用により、残高照会、取引照会、キャッシュカード等の紛失時の手続等を行えるよう、マニュアル等を整備し、職員に周知する(環境の整備)とともに、障害者から対応を求められた場合には、マニュアル等を踏まえ、適切に職員が対応する(合理的配慮の提供)。(金融庁)
【盲ろう】
〈障害特性と主な配慮事項〉
盲ろうは、視覚と聴覚の両方に障害がある状態をいう。見え方や聞こえ方の程度及びその重なり方によって様々なタイプに分けられ、大きく4つのタイプがある。
聞こえない | 聞こえにくい | |
---|---|---|
見えない | 全盲ろう | 全盲難聴 |
見えにくい | 弱視ろう | 弱視難聴 |
【主な配慮事項】
○見え方の違い、聞こえ方の違いに加え、コミュニケーション方法も様々である
【盲ろうに関係すると考えられる事例】
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●(盲ろう者に対しては、)視覚・聴覚の両方に障害があることを踏まえ、本人の希望や障害の程度に応じて、手のひら書き等のほか、多様なコミュニケーション手段により情報の伝達及び本人の意思確認を行う。(金融庁、復興庁)
●盲ろう者が使用する触手話や指点字ができる職員がいない際、手のひらに書く(手書き文字)コミュニケーション手段により、情報の伝達を行う。(厚生労働省・福祉分野)
【肢体不自由】
〈障害特性と主な配慮事項〉
肢体不自由のある方の中には、上肢や下肢に切断や機能障害のある方、座ったり立ったりする姿勢保持が困難な方、脳性マヒの方等がいる。
また、移動には杖や松葉杖、義足、電動の車椅子等を使用する方、自力歩行の方等がいる。運動機能を補完するため、義肢・装具・車椅子等の補装具を利用している。
【主な配慮事項】
○移動に制約のある方もいる
→下肢に障害のある方は、段差や階段、手動ドアなどがあると、一人では進めない、 歩行が不安定で、転倒しやすいなどの制約がある。車椅子を使用されている方は、高い所には手が届きにくく、床のものは拾いにくいといわれている。
○文字の記入が困難な方もいる
→手にマヒのある方や脳性マヒで不随意運動を伴う方などでは、文字を記入できなかったり、 狭いスペースに記入したりすることが困難な場合がある。
○体温調節が困難な方もいる
→脊髄を損傷された方では、手足が動かないだけでなく、感覚もなくなり、周囲の温度に応じた体温調節が困難な場合がある。
○話すことが困難な方もいる
→脳性マヒの方の中には、発語の障害に加え、顔や手足などが自分の思いとは関係なく動いてしまうため、自分の意思を伝えにくい方もいる。
【肢体不自由に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみを理由として、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることなく、一方的に乗車できる場所や時間帯を制限し、又は障害者でない者に対して付さない条件をつける。(国土交通省・鉄道事業)
●障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、一律にあるいは漠然とした安全上の問題を理由に社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等の施設利用を拒否すること。例えば、車椅子利用者が体育館の利用を希望した場合に、他の利用者の活動に支障がないにも関わらず、単にタイヤの跡が付いてしまうという理由で体育館の利用を拒否すること。(文部科学省)
●特定転貸事業者が、障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみを理由として、客観的に見て正当な理由が無いにもかかわらず、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して敷金や保証金等を通常より多く求める。(国土交通省・不動産業)
●車椅子使用者、白杖使用者等外見上障害者と認識して止まることなく、乗車を拒否する。又は障害者と認識した時点で、乗車を拒否する。(国土交通省・一般乗用旅客自動車運送業)【再掲】
〈正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例〉
●車椅子等を使用して駅構内の移動や列車に乗車をする場合、段差があることなどによって、係員が補助を行っても車椅子利用者、高齢者、ベビーカー利用者等の安全確保が困難等の理由により、利用できる駅や列車等を提示する。(安全の確保)(国土交通省・鉄道事業)
●車椅子利用者等に対し、事前に関係個所との調整を行い、スムーズな乗降補助により待ち時間を短縮するため、列車に乗車する場合に、乗降に必要な利用者の情報の提供を求める。(権利・利益の保護)(国土交通省・鉄道事業)
●車内が混雑していて車椅子スペースが確保できない場合、車椅子使用者に説明した上で、次の便への乗車をお願いする。(安全の確保)(国土交通省・一般乗合旅客自動車運送業)
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●事業者が管理する施設・敷地内において、車椅子・歩行器利用者のためにキャスター上げ等の補助をし、又は段差に携帯スロープを渡すこと。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
●介助者は映画を観ないのでチケットを買っていなかったが、障害者1人ではシアタールームへの出入りが困難であるため、出入りの際のみ介助者の付き添いを認めること。(厚生労働省・衛生分野)
●障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。)に応じて、関係者間の情報共有などにより待ち時間ができるだけ短くなるよう努めたうえで、障害のある方が列車に乗降する、又は列車の乗降のために駅構内を移動する際に手伝う。(国土交通省・鉄道事業)
●配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡すこと。パンフレット等の位置を分かりやすく伝えること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●食事面では、ナイフ・フォークの使用が難しいときは、一口サイズにカットする等の配慮や、バイキング形式の食事ではトレーで食べ物を運ぶのが難しいため配膳の補助やワゴンを用意する。(厚生労働省)
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●車椅子利用における乗降介助や駅構内の移動介助、券売機における購入補助、時刻や行先等の案内、その他特性に応じた社会的障壁の除去に関する申出に対して、「何かあったら困る」という抽象的な理由や「特別扱いはできない」という一方的な理由で、当該申出を断る。(国土交通省・鉄道事業)
●劇場・音楽堂等において、車椅子利用者から施設の構造上もしくは前席の観客の体格や行動等により舞台がよく見えないこと等を理由として、観覧席の変更を求める申出があった場合に、車椅子利用者観覧席の床面を嵩上げしたり、良好な視野を確保できる別の場所や席に案内したりといった対応が可能かどうかの検討を行うことなく、一律に対応を断ること。(文部科学省)
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●車椅子利用者が試合直前になって介助者を同伴してスポーツを観戦することになった場合に、介助者席として車椅子利用者の隣の席は用意できなかったが、できるだけ近接した席を用意すること。(過重な負担(物理的・技術的制約)の観点)(文部科学省)
●歩行に困難のある児童生徒やその保護者から段差でつまずかないように特別支援教育支援員を追加で配置するよう求めがあった場合に、つまずきを防止するための方策について検討した結果として、例えば簡易スロープによる段差の解消といった代替案を提案すること。(過重な負担の観点)(文部科学省)
●改修設計において段差の解消を求められた場合において、構造等の制約により対応できないことが判明したため、その事情を丁寧に説明し、手すりの設置等の代替対応策を提案する。(実現困難なもの)(国土交通省・設計等業)
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●設置者が、エレベーターやバリアフリートイレ、スロープの設置といった学校施設のバリアフリー化を進める(環境の整備)とともに、教職員が、車椅子を利用する児童生徒の求めに応じて教室間の移動等の補助を行うこと。(合理的配慮の提供)(文部科学省)
【内部障害・難病に起因する障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
内部障害とは、内臓機能の障害であり、心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、ぼうこう・直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能、肝臓機能などの機能障害がある。
内臓機能の障害は難病(発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期にわたり療養を必要とする疾病)などに起因することもある。症状の変化が毎日あり、日によって変化が大きく、進行性の症状を有することが多い。同じ疾患でも患者によって異なる症状を示す場合もある。
○心臓機能障害
不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している方もいる。
○呼吸器機能障害
呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携帯したり、人工呼吸器を使用している方もいる。
○腎臓機能障害
腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している方もいる。
○ぼうこう・直腸機能障害
ぼうこう疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストマ)を造設している方もいる。
○小腸機能障害
小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている方もいる。
○ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害
HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウイルス剤を服用している。
○肝臓機能障害
肝臓の機能が低下した障害で、倦怠感(だるさ)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、出血傾向(あざができやすい)、易感染性(感染しやすい)、吐血、意識障害などが生じやすくなる方もいる。
【主な配慮事項】
○外見からわかりにくい
→外見からは障害がわかりにくいため、電車やバスの優先席に座っても周囲の理解が得られないなど、心理的なストレスを受けやすい状況にある。
○疲れやすい
→障害のある臓器だけでなく全身状態が低下しているため、体力がなく、疲れやすい状況にあり、 重たい荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動が制限される。
○タバコの煙が苦しい方もいる
→呼吸機能障害のある方では、タバコの煙などが苦しい方もいる。
○トイレに不自由されている方もいる
→ぼうこう・直腸機能障害で人工肛門や、人工ぼうこうを使用されている方(オストメイト)は、 排せつ物を処理できるオストメイト用のトイレが必要。
【内部障害・難病に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な障害者、重度の障害者のサービスの利用を拒否すること。(厚生労働省)
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●児童生徒等が医療的ケアを必要とする場合、障害の状態や特性に配慮しながら、医療的ケアの実施のための別室等を用意するなど、衛生的な環境を提供すること。(文部科学省)
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●医療的ケア児が体調不良のため登校ができない場合に、医療的ケア看護職員に家庭での個別の体調管理を依頼する等、事業の一環として行っていない業務の提供を保護者等から求められた場合に、その提供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)(文部科学省)
●座席指定制を導入する乗合バスにおいて、車内持ち込み医療器具等のために複数の座席を必要とする旅客について、1席を超える座席の旅客運賃を徴収する。(この場合においては、当該旅客に過度な負担が生じないよう、可能な限り配慮する。)(費用・負担が過重なもの)(国土交通省・一般乗合旅客自動車運送業)
【知的障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳未満)にあらわれ、日常生活の中で様々な不自由が生じることをいう。例えば、複雑な事柄やこみいった文章・会話の理解が不得手であったり、おつりのやりとりのような日常生活の中での計算が苦手だったりするなど、知的な遅れと社会生活への適応のしにくさを有している。
また、障害のあらわれ方は個人差が大きく、少し話をしただけでは知的障害の状況がわかりにくいこともある。しかし、自分の置かれている状況や抽象的な表現を理解することが苦手であったり、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難であったりする方は多く、支援の仕方も一人一人異なる。
【主な配慮事項】
○複雑な話や抽象的な概念は理解しにくいこともある
○人に尋ねたり、自分の意見を言うのが苦手な方もいる
○漢字の読み書きや計算が苦手な方もいる
○自分が納得できるまで同じ質問を繰り返す方もいる
【知的障害に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●チェックイン時に知的・行動障害があることを伝えたところ、大浴場の利用時間を(利用客が少ないと思われる)深夜に指定され、宿泊者の入浴時間や就寝時間に大きな影響を受けた。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●知的障害のある利用者等に対し、抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使うこと。例えば、「手続」や「申請」などのサービスを受ける際に必要な言葉の意味を短い言葉で分かりやすく具体的に説明して、当該利用者等が理解しているかを確認すること。(文部科学省)
●障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。)に応じて、契約内容等に係る簡易な要約メモを作成したり、家賃以外の費用が存在することを分かりやすく提示したりする等、契約書等に加えて、相手に合わせた書面等を用いて説明する。(国土交通省・不動産業)
●知的障害者の中には、食事がビュッフェ方式の場合、会場が大人数になることで不安定になってしまう人もいることから、食べる分量を客室に持ち帰って食べられるような配慮など必要な配慮を、宿泊予約時やチェックイン時に聞き取ること。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
●イベント会場において知的障害のある子供が発声やこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者から子供の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子のときは個室等に誘導すること。(内閣府、国家公安委員会、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、財務省、農林水産省、経済産業省、環境省)
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●不動産管理業者が重要事項の説明等を行うにあたって、知的障害を有する者やその家族等から分かりづらい言葉に対て補足を求める旨の意思の表明があったにもかかわらず、補足をすることなく説明を行った。(国土交通省・不動産業)
●知的・発達障害の特性として、床を強く踏み鳴らしてしまう行動もあり得ることから、階下の宿泊客に迷惑とならないよう1階の部屋に変更することを希望したところ、空室があるにもかかわらず、また入室前にもかかわらず、理由なく変更を断られた。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●社会教育施設等を利用する知的障害者や読字に障害のある方に向けて、わかりやすい資料を準備したり、施設内の看板や表示にるびやピクトグラムを使用したりする(環境の整備)とともに、利用者一人一人の障害の状態等に応じて、スタッフがわかりやすい言葉を用いて説明、代読する等の配慮を行うこと。(合理的配慮の提供)(文部科学省)
●飲食店において、メニューに写真を活用する(環境の整備)とともに、利用者に対して、分かりやすく説明を行うこと。(合理的配慮の提供)(厚生労働省・衛生分野)
【重症心身障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
重症心身障害とは、
・自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由
・年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害
の2つが重複している状態をいう。
その状態にあるこどもを重症心身障害児、さらに成人した人を含めて「重症心身障害児(者)」という。
【主な配慮事項】
○ほとんど寝たままで自力では起き上がれない状態の方が多い
○移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴などが自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要な方もいる
○声が出せても会話で意思を伝えることは難しいことが多い
○口や目の動き、身振りなどを用いて意思を伝えるが、日常的に介護している人でないと読み取りづらいこともある
○体温調整がうまくできないことも多いため、急な温度変化を避ける配慮が必要な方もいる
【重症心身障害に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な障害者、重度の障害者のサービスの利用を拒否すること。(厚生労働省)【再掲】
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●児童生徒等が医療的ケアを必要とする場合、障害の状態や特性に配慮しながら、医療的ケアの実施のための別室等を用意するなど、衛生的な環境を提供すること。(文部科学省)【再掲】
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●医療的ケア児が体調不良のため登校ができない場合に、医療的ケア看護職員に家庭での個別の体調管理を依頼する等、事業の一環として行っていない業務の提供を保護者等から求められた場合に、その提供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)(文部科学省)【再掲】
●座席指定制を導入する乗合バスにおいて、車内持ち込み医療器具等のために複数の座席を必要とする旅客について、1席を超える座席の旅客運賃を徴収する。(この場合においては、当該旅客に過度な負担が生じないよう、可能な限り配慮する。)(費用・負担が過重なもの)(国土交通省・一般乗合旅客自動車運送業)【再掲】
【精神障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
精神障害のある方は、統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、てんかん、アルコール依存症、摂食障害等の様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えている。適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば症状をコントロールできるため、大半の方は地域で安定した生活を送っている。
○統合失調症
幻覚、思考障害、感情や意欲の障害など多様な精神症状を特徴とし、現実を認識する能力が妨げられ、正しい判断ができにくくなる、対人関係が難しくなるなど、様々な生活障害を引き起こすが、薬によってこれらの症状を抑えることもできる。
○気分障害
気分の波が主な症状としてあらわれる病気である。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ。うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状が出る。躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、些細なことにも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。
○てんかん
通常は規則正しいリズムで活動している大脳の神経細胞(ニューロン)の活動が突然崩れて激しい電気的な乱れが生じることによって、発作があらわれる病気である。薬によって約8割の方は発作を止められるようになっている。
○高次脳機能障害
交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害である。身体的には障害が残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障害」ともいわれている。
【主な配慮事項】
○ストレスに弱く、疲れやすく、対人関係やコミュニケーションが苦手な方が多い
○外見からはわかりにくく、障害について理解されずに孤立している方もいる
○精神障害に対する社会の無理解から、病気のことを他人に知られたくないと思っている方も多い
○周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感を持ってしまう方もいる
○学生時代に発病したことや、入院が長くなったことなどで、社会生活に慣れていない方もいる
○気が動転して声の大きさの調整が適切にできない場合もある
○認知面の障害のために、何度も同じ質問を繰り返したり、つじつまの合わないことを一方的に話す方もいる
【精神障害に関係すると考えられる事例】
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難である場合に、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設けること。(国家公安委員会、金融庁、消費者庁、復興庁、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省、環境省)
【発達障害】
〈障害特性と主な配慮事項〉
発達障害とは、自閉症、学習障害(LD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)等、脳機能障害であって、通常低年齢において症状が発現する。発達障害には、知的障害を伴う場合と伴わない場合とがある。
【主な配慮事項】
○外見からわかりにくい
○相手の言っていることを、そのまま繰り返す可能性がある
○遠回しの言い方や曖昧な表現だと理解が難しい方もいる
○相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手な方もいる
○想定外のことが起きた際に自分で立て直すことが苦手な方もいる
○一般的な社会的コミュニケーションスキルが十分ではない方もいる
○関心あることばかり一方的に話す方もいる
○知的発達に遅れがないものの、流暢に音読することができない方もいる
【発達障害に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例〉
●発達障害や愛着障害、強度行動障害を有するこども等、集団での行動に留意が必要なこどもを、それぞれの特性に応じて他のこどもとは異なる取扱いをしたり、他のこどもの安全のために距離を確保したりするなどの取扱いをすること。(こども家庭庁)
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●(吃音症等の発話に障害のある顧客に対しては、)障害の特性を理解した上で、顧客が言い終えるまでゆっくりと待つ、又は発話以外のコミュニケーション手段も選択できるようにする。(金融庁、復興庁、厚生労働省)
●レストランにおいて発達障害のために偏食がある方に対し、料理内容の工夫等を行うこと。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
●比喩表現等の理解が困難な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明すること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、障害のある子供が必要以上の発声やこだわりのある行動をするなど落ち着かない状況にある場合に、保護者から子供の特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着くことができるよう、個室等を提供すること。(文部科学省)
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●知的・発達障害の特性として、床を強く踏み鳴らしてしまう行動もあり得ることから、階下の宿泊客に迷惑とならないよう1階の部屋に変更することを希望したところ、空室があるにもかかわらず、また入室前にもかかわらず、理由なく変更を断られた。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))【再掲】
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●発達障害等の特性のある大学生から、得意科目で習得した単位を不得意な科目の単位として認定してほしい(卒業要件を変更して単位認定をしてほしい)と要望された場合、受講方法の調整などの支援策を提示しつつ、卒業要件を変更しての単位認定は、自大学におけるディプロマ・ポリシー等に照らし、教育の目的・内容・機能の本質的な変更に当たるとの判断から、当該対応を断ること。(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点)(文部科学省)
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●社会教育施設等を利用する知的障害者や読字に障害のある方に向けて、わかりやすい資料を準備したり、施設内の看板や表示にるびやピクトグラムを使用したりする(環境の整備)とともに、利用者一人一人の障害の状態等に応じて、スタッフがわかりやすい言葉を用いて説明、代読する等の配慮を行うこと。(合理的配慮の提供)(文部科学省)【再掲】
【その他、幅広い障害種別に関係すると考えられる事例】
〈正当な理由がないため、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例〉
●障害者について、ツアー中の介助、補助その他の支援措置が必要ない、又は、支援措置が必要であるとしても、添乗員等において対応可能な医学的、専門的知識を要しない軽微な措置で足りるにもかかわらず、一律に、ツアーへの参加を拒否したり、旅程の一部に制限を加える、又は、介助者の同行をツアー参加の条件とする。(国土交通省・旅行業)
●賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、先に契約が決まった事実がないにもかかわらず、「先に契約が決まったため案内できない」等、虚偽の理由にすり替えて説明を行い、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。(国土交通省・不動産業)
●教育、保育、養育等の提供に当たって、正当な理由なく、日常の保育活動や行事等への参加を制限する、年齢相当のクラスに所属させないなど、他の利用者とは異なる取扱いをすること。(こども家庭庁)
●障害者本人が回答できるのにもかかわらず、本人を無視して保護者や支援者・介助者だけに話しかけること。(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)
●障害者が多く参加する行事で使用するため宿泊施設を予約しようとしたら、個々の障害や状況等を確認しないまま、宿泊施設内は階段や段差が多いため危ないという理由で利用を断られた。(厚生労働省・衛生分野(旅館業))
〈正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例〉
●障害の状況等を考慮した適切な物件紹介や適切な案内方法等を検討するため、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護)(国土交通省・不動産業)
〈合理的配慮に該当すると考えられる配慮の例〉
●障害者が立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで一旦列から抜けて別室や席等を用意すること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
●書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。また、書類の内容、取引の性質等に照らして特段の問題がないと認められる場合に、自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応する。(国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、国土交通省)
〈合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例〉
●介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断ること。(内閣府、国家公安委員会、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、環境省)
●試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。(内閣府、国家公安委員会、消費者庁、こども家庭庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省)
●イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省)
〈合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例〉
●抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)(内閣府、国家公安委員会、金融庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
〈合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例〉
●障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら店員が代筆する(合理的配慮の提供)。(内閣府、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
【関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(内閣府):https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioshishin.html】