第1章 改正障害者差別解消法の施行 第2節 4
第2節 改正障害者差別解消法の施行に向けた取組
4.障害者の差別解消に向けたその他の取組等
(1)周知・啓発
政府においては、障害者の差別解消に向けた国民各層の関心と理解を深めるとともに、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等を推進するため、必要な周知・啓発活動を行うこととしている。
内閣府では以下のような周知・啓発活動に取り組んでおり、これらの活用を通じて、合理的配慮の提供を始めとする障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、「障害者差別解消法」に対する国民の理解が一層深まることが期待される。
内閣府における周知・啓発の取組
・「改正障害者差別解消法」の施行に向けて、事業者を対象に、「改正障害者差別解消法」の説明や有識者による講演を内容とするオンライン説明会を2023年11月に合計8回実施。また、2023年12月には、「改正障害者差別解消法」の説明動画を内閣府ホームページに掲載。
【障害者差別解消法(内閣府):https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/kyoseisyakai/syogaisyasabetukaisyoho/】
・2021年度から、事業者団体、障害者団体等が主催する講演会等において、「改正障害者差別解消法」の説明・周知を実施。2023年度は合計10回開催。
・2021年度から、地方公共団体職員等を対象に、「改正障害者差別解消法」の説明、有識者による講演、グループディスカッションを内容とする「障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会」を実施。2023年度は合計6回開催。
・政府広報
①新聞広告(2023年10月)
「改正障害者差別解消法」に関する突出し広告を掲載。(全国紙、ブロック紙、地方紙 合計73紙)
②インターネット広告(2023年12月以降)
「改正障害者差別解消法」に関するインターネット広告を実施。
③政府広報オンライン(2024年2月)
「改正障害者差別解消法」に関する広報動画・解説記事を掲載。
資料:内閣府
・「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を関係省庁、地方公共団体、障害者団体等から収集し、障害種別や生活場面別に整理した上で、「合理的配慮の提供等事例集」として取りまとめ、内閣府ホームページに掲載。
【合理的配慮の提供等事例集(内閣府):https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html】
・企業や店舗などの事業者や国・都道府県・市区町村などの行政機関等における「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」など、「障害者差別解消法」により定められている事項について一層の広報啓発を推進することを目的として、「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」を2022年3月に公開。2023年には同サイト上で「障害者差別解消に関する事例データベース」も公開。
「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」:https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/
「障害者差別解消に関する事例データベース」:https://jireidb.shougaisha-sabetukaishou.go.jp/
・「改正障害者差別解消法」や「つなぐ窓口」に関するリーフレットやチラシを制作し、内閣府ホームページに掲載。音声コードの付与、大活字版の制作、テキストデータの提供など、多様な利用者に配慮した情報保障を実施。また、毎年「障害者週間」(12月3日から9日)に開催する「『障害者週間』作品展」などで配布。
【リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」(内閣府):https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html】
(2)障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進
「障害者差別解消法」において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下本章では「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。「地域協議会」を設置することで、その地域の関係機関による相談事例等に係る情報の共有・協議を通じ、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築されるとともに、障害者や事業者からの相談等に対し、「地域協議会」の構成機関が連携して効果的な対応、紛争解決の後押しを行うことが可能となり、差別解消に関する地域の対応力の向上が図られる。
「改定基本方針」においては、「地域協議会」において情報やノウハウを共有し、関係者が一体となって事案に取り組むという観点から、地域の事業者や事業者団体も参画することが有効であるとしている。また、設置促進に向けた取組として、「地域協議会」の単独設置が困難な場合等に、必要に応じて圏域単位など複数の市区町村による「地域協議会」の共同設置・運営を検討することや、必要な構成員は確保しつつ、他の協議会等と一体的に運営するなど開催形式を柔軟に検討することが効果的と考えられることや、市区町村における「地域協議会」の設置等の促進に当たっては都道府県の役割が重要であることが明示されている。
2023年4月1日時点において、全ての都道府県及び指定都市が「地域協議会」を設置しているほか、中核市等(中核市、特別区及び県庁所在地の市(指定都市を除く。))においては88%、一般市(指定都市及び中核市等のいずれにも該当しない市)においては74%、町村においては51%が「地域協議会」を設置しており、一般市や町村における設置割合についても増加傾向にある。しかしながら、比較的小規模の地方公共団体を中心に未設置の地方公共団体が多くなっており、その理由としては人員不足や専門的な知識及びスキルの不足などがあげられている。また、既に設置している地方公共団体においてもその活動の活性化を図っていく必要がある。このため、「改定基本方針」においては、内閣府において、地方公共団体の担当者向けの研修の実施を通じ、地域における好事例が他の地域において共有されるための支援を行うなど、体制整備を促進することとしている。こうした状況を踏まえ、各都道府県等で「地域協議会」の設置や活性化に向けた的確な助言等ができる人材育成等を図ることを目的とした「障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会」を、2023年度は6ブロック(北海道・東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州・沖縄)で開催した。
選択肢 | 計 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
都道府県 | 指定都市 | 中核市等 | 一般市 | 町村 | ||||||||
数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | 数 | 割合 | |
設置済み | 1,136 | 64% | 47 | 100% | 20 | 100% | 78 | 88% | 519 | 74% | 472 | 51% |
設置予定 | 57 | 3% | - | - | - | - | 1 | 1% | 19 | 3% | 37 | 4% |
設置しない | 60 | 3% | - | - | - | - | 1 | 1% | 22 | 3% | 37 | 4% |
未定(設置するかしないか決まっていない) | 535 | 30% | - | - | - | - | 9 | 10% | 146 | 21% | 380 | 41% |
計 | 1,788 | 100% | 47 | 100% | 20 | 100% | 89 | 100% | 706 | 100% | 926 | 100% |
2024年4月1日に「改正障害者差別解消法」が施行され、事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されることも踏まえ、事業者は、地域における共生社会の実現を図る重要な担い手となることが一層期待されている。ここでは、事業者の参画の下、障害を理由とする差別の解消に向けた様々な取組を行っている地方公共団体として、福島県(以下本章では「県」という。)における取組を紹介する。
1.相談体制の構築
県では「障害者差別解消法」の趣旨を踏まえ、障がいのある人もない人も互いを理解し、尊重し、支え合い、共に暮らしやすい社会の実現を目指して「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい福島県づくり条例」(以下本章では「条例」という。)を2019年4月1日に施行している。条例に基づき、県では、障害を理由とする差別に関する相談やその解決のために、2019年4月より専用の相談窓口である「障がい者差別解消相談専用ダイヤル」(以下本章では「相談ダイヤル」という。)を設置した。相談ダイヤルには専門の相談員を配置し、障害のある人やその家族から寄せられる障害を理由とする差別についての相談だけでなく、県内事業者からも合理的配慮の提供等に関する相談を受け付けており、事案の解決に至るまでの支援を行っている(専門の相談員は、社会福祉士、精神保健福祉士、保健師のうち、いずれかの資格を有するものと定めている。)。
また、県では知事の附属機関として「福島県障がい者差別解消調整委員会」を設置し、障害を理由とする差別に関する事案について、県が相談対応を行っても解決しない場合に、相談者の申立てに基づき、同委員会が調査審議し、解決に向けた助言・あっせんを行うことができることとしている。事案を調査審議し解決に向けた助言・あっせんを行うためには、多様な視点からの事案の検討が必要との観点から、同委員会では幅広い分野からの代表を委員として委嘱している。
▽福島県障がい者差別解消調整委員会
構成員 | 障害当事者、福祉、医療、商工、教育、運輸、法曹等の各分野の団体の代表、学識経験者(計18名) |
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2.「地域協議会」における取組状況
県では、障害者差別に関する相談などについて情報共有し、障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、福島県自立支援協議会の専門部会として2016年に「障がい者差別解消支援部会」(以下本章では「支援部会」という。)を組織した。
▽福島県自立支援協議会障がい者差別解消支援部会
構成員 | 障害当事者、福祉、医療、商工、法曹等の各分野の団体の代表、学識経験者、行政機関(人権、雇用、福祉、運輸、教育、警察)の関係者(19名) |
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開催頻度 | 年1~2回程度 |
支援部会は、複数名の障害当事者を含む、様々な関係団体や行政機関からの代表で構成されており、2023年度の支援部会では、条例の一部改正や相談ダイヤルに寄せられた相談事案について検討を行うとともに、県内市町村の「障害者差別解消法」の施行状況や障害者差別に関する各団体の取組等について情報を共有した。
3.周知啓発活動
県では、広報物や研修・イベントの開催などを通じて、多くの県民や事業者が障害についての理解を深めるための取組を進めている。ここでは主に「改正障害者差別解消法」を対象とした周知啓発活動を紹介する。
(1)合理的配慮に関する動画・ガイドブックの作成
県では、「改正障害者差別解消法」により、事業者による合理的配慮の提供が義務化されることから、その普及啓発のために、県内の事業者向けに合理的配慮の提供に関する動画「障がいのある方もない方も共に暮らしやすい福島県にするために」を作成し、県の公式YouTubeチャンネルに掲載したほか、障害のある方への差別的取扱いをなくすため、個別の状況に応じて配慮すべき内容についてわかりやすく説明した「合理的配慮ガイドブック」を作成して県ホームページに掲載し、県内の事業者にこれらを活用した従業員研修の実施を要請している。
(2)ふくしま共生サポーター養成講座の実施
県では、条例の施行に伴い、障害や障害のある方への理解を深め、障害のある方に対する差別や偏見をなくすための取組の一つとして、県民向けに「ふくしま共生サポーター養成講座」を実施している。障害に関する基礎的な情報と「障害者差別解消法」についての講座を受講した方には受講証を交付し、「ふくしま共生サポーター」として職場や地域において障害についての理解に関する情報発信や障害のある方への積極的な支援などの役割を担っていただいている。2023年度末現在で931名の方が「ふくしま共生サポーター」として活躍している。
また、「ふくしま共生サポーター」の趣旨に賛同し、組織ぐるみで活動いただく企業(団体)を「ふくしま共生サポーター協賛企業(団体)」に認定し、地域における障害のある方への理解を更に促進している。
(3)民間事業者を対象としたセミナーの実施
県では、「改正障害者差別解消法」が施行され、2024年4月から事業者の合理的配慮の提供が義務化されることに伴い、障害や障害のある方への具体的な合理的配慮の提供について学び、企業や団体内で実践してもらうための取組の一つとして、2024年2月に企業向けの理解促進活動事業である「合理的配慮セミナー」を開催した。Web参加も含めて248名が参加し、障害全般に関することや合理的配慮の提供、簡単な手話について講義を受けた。
また、補助犬の受入れ拒否を無くすため、民間事業者を対象とした補助犬セミナーを開催している。2023年度は宿泊施設関係者や観光事業者等を対象に3回開催し、補助犬のデモンストレーションやユーザーの体験談を交えながら、補助犬の役割や配慮が必要なポイント等についての講義を実施した。
「障害者差別解消法」第15条により、国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとされている。
事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けることなどを内容とする「改正障害者差別解消法」が2024年4月1日に施行されることなどを踏まえ、内閣府は、「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」(以下本章では「ポータルサイト」という。)を開設した。
ポータルサイトでは、「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」を始めとした、「障害者差別解消法」により定められている事項などについて、イラストや動画でわかりやすく解説している。また、「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」、「環境の整備」の具体例を、障害の種別などに応じて検索できる「障害者差別解消に関する事例データベース」(以下本章では「データベース」という。)も運営している。
(https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/)
〇ポータルサイトの主な内容
資料:内閣府
①「共生社会の実現」とは
②「障害者差別解消法」とは
・「改正障害者差別解消法」説明動画・資料等
③「不当な差別的取扱い」とは
④「合理的配慮の提供」とは
・障害種別ごとの主な特徴や事例紹介、事例動画
⑤「環境の整備」とは
・障害種別ごとの主な特徴や事例紹介
⑥事業者の障害者差別解消に関する取組事例
⑦障害者の差別解消に関する事例データベース
〇データベース
ポータルサイトでは、「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」、「環境の整備」について国民の理解を深めるとともに、実際の対応時の参考となるよう、行政機関等の相談窓口に寄せられた具体例をデータベースとして公開している。このデータベースは、利用者の要望に応じた事例を提供できるよう、キーワード検索のほか、障害の種別や事例が生じた場面ごと等の検索ができる。さらに、検索によって抽出された各事例の内容・経緯・背景や事例を解決するための対応などについても詳細に確認できるシステムとなっている。
(データベースで確認できる各事例の主な項目)
「障害の種別」、「障害者の性別」、「障害者の年代」、「事例が生じた場面」、
「事例の内容・経緯・背景」、「事例を解決するための対応」など
資料:内閣府