第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第2節 1
第2節 障害のある人の雇用・就労の促進施策
障害のある人が、希望や能力、適性を十分にいかし、障害の特性等に応じて活躍できるようにするこ とは、収入の面だけではなく、障害者の社会参加において、重要な意味を持つ。障害者雇用はこの20 年間で大きく進展しており、企業における人材の多様性の観点からも、障害のある人と共に働くことが 当たり前の社会の実現に向けて、障害者雇用対策の一層の充実を図っていく必要がある。
1.障害のある人の雇用の場の拡大
(1)障害者雇用の現状
ア 2024年障害者雇用状況報告17
対象障害者18を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数40.0人以上)及び国、地方公共団体については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。2024年の報告結果は次のとおりである。
① 民間企業の状況
我が国の民間企業における障害者雇用の状況は、2024年6月1日現在の雇用障害者数が約67.7万人(前年比約5%増)と21年連続で過去最高を更新しており、一層進展している。また、障害者である労働者の実数は約57.4万人(前年比約7%増)と、22年連続で増加している。障害種別ごとに見ても、身体障害者、知的障害者及び精神障害者のいずれも前年より増加している。特に精神障害者の伸び率は前年比約16%増となっており、この10年間で約4倍となっている。
また、民間企業が常時雇用する労働者に占める対象障害者である労働者の割合(以下本章では「実雇用率」という。)は、2.41%(前年2.33%)と13年連続で過去最高を更新している。企業規模別に実雇用率をみると、規模が大きくなるほど高くなる傾向にあるが、小規模の事業所で低く、引き続き雇入れに向けた支援が必要である。
なお、法定雇用率を達成した企業の割合は、2024年4月の法定雇用率0.2ポイント引上げの影響があり、46.0%と前年を下回った。雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年より増加した。

2018年から2020年までは45.5人以上規模、2021年から2023年までは43.5人以上規模、
2024年以降は40人以上規模)についての集計である。
- 2005年まで
- 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)、知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)、
重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者
- 2006年~
2010年 - 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)、知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)、精神障害者、
重度身体障害者、重度知的障害者又は精神障害者である短時間労働者(精神障害者である短時間労働者は0.5カウント)
- 2011年~
2023年 - 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)、知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)、精神障害者、
重度身体障害者、重度知的障害者である短時間労働者
重度以外身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者(0.5カウント)(※)
- 2024年以降
- 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)、知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)、精神障害者、
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である短時間労働者、
重度以外身体障害者及び知的障害者である短時間労働者(0.5カウント)
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である特定短時間労働者(0.5カウント)
2021年から2023年までは2.3%、2024年以降は2.5%となっている。



ただし、B欄の「重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である短時間労働者」については、1人を1カウントとしている。
② 国・地方公共団体の状況
国・地方公共団体の機関(法定雇用率2.8%)に常時勤務している職員に占める対象障害者の割合と勤務している障害者数は国においては3.07%、10,428.0人、都道府県においては3.05%、11,030.5人、市町村においては2.75%、37,433.5人であった。
一方、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.7%)においては2.43%、17,719.0人であった。
①法定雇用障害者 数の算定の基礎 となる職員数 |
②障害者の数 |
③実雇用率 |
④法定雇用率達成機関 の数/機関数 |
⑤達成割合 |
|
---|---|---|---|---|---|
国の機関 | 339,750.0人 (340,707.5人) |
10,428.0人 (9,940.0人) |
3.07% (2.92%) |
43 / 44 (44 / 44) |
97.7% (100.0%) |
都道府県の機関 | 361,319.0人 (359,503.0人) |
11,030.5人 (10,627.5人) |
3.05% (2.96%) |
150 / 168 (152 / 163) |
89.3% (93.3%) |
市町村の機関 | 1,363,140.5人 (1,353,753.5人) |
37,433.5人 (35,611.5人) |
2.75% (2.63%) |
1,769 / 2,488 (1,910 / 2,460) |
71.1% (77.6%) |
①法定雇用障害者 数の算定の基礎 となる職員数 |
②障害者の数 |
③実雇用率 |
④法定雇用率達成機関 の数/ 機関数 |
⑤達成割合 |
|
---|---|---|---|---|---|
都道府県等教育 委員会 |
728,083.5人 (726,615.5人) |
17,719.0人 (16,999.0人) |
2.43% (2.34%) |
50 / 93 (64 / 95) |
53.8% (67.4%) |
ただし、重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である短時間勤務職員については、1人を1カウントしている。

ただし、重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である短時間勤務職員については、1人を1カウントとしている。
したがって、実雇用率が法定雇用率を下回っていても、不足数が0.0となることがあり、この場合、法定雇用率達成となる。
省庁 | 総務省 | 文部科学省 | 経済産業省 |
外局等 | 公害等調整委員会、消防庁 | 文化庁、スポーツ庁 | 中小企業庁、資源エネルギー庁 |
イ ハローワークの職業紹介状況
2023年度のハローワークを通じた就職件数は、約11.1万件(前年度比約8%増)であった。このうち、身体障害者は約2.3万件(前年度比約5%増)、知的障害者は約2.2万件(前年度比約8%増)、精神障害者は約6.1万件(前年度比約12%増)、その他の障害のある人19は約0.5万件(前年度比約16%減)であり、精神障害者の就職件数が比較的大きく伸びている。
また、新規求職申込件数は約24.9万件(前年度比約7%増)となり、過去10年間で最多となっている。このうち、身体障害者は約6万件(前年度比約2%増)、知的障害者は約3.8万件(前年度比約5%増)、精神障害者は約13.8万件(前年度比約12%増)、その他の障害のある人は約1.5万件(前年度比約8%減)であり、就職件数と同様に、精神障害者の件数が比較的大きく伸びている。


(2)障害のある人の雇用対策について
ア 障害のある人の雇用対策の基本的枠組み
全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害のある人の雇用対策の各施策を推進している。
具体的には、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号。以下本章では「障害者雇用促進法」という。)や「障害者雇用促進法」に基づく「障害者雇用対策基本方針」(令和5年厚生労働省告示第126号)等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。
また、障害のある人の就労意欲が高まるとともに、積極的に障害者雇用に取り組む民間企業が増加するなど障害者雇用は着実に進展している中で、雇用の質の向上の推進や、多様な就労ニーズに対する支援を図る観点から、2022年に「障害者雇用促進法」の一部改正を含む「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」が国会に提出され、2022年12月に成立した(2024年4月1日施行。一部の規定は、2023年4月1日施行、2025年10月1日施行予定)。
「障害者雇用促進法」の主な改正内容は、
・障害のある人の職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことを、事業主の責務として明確化すること
・特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度の身体・知的障害者及び精神障害者の就労機会の拡大を図るため、特例的に実雇用率において算定できるようにすること
・障害者雇用調整金等の支給方法を見直すことや、企業が実施する職場定着等の取組に対する助成措置を強化すること等
であり、引き続き改正法に基づく取組を円滑に実施する。
イ 障害者雇用率制度及び法定雇用率の達成に向けた指導
① 障害者雇用率制度
(ア)障害者雇用率制度
「障害者雇用促進法」では、民間企業等に対し、法定雇用率(障害者雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務付けている。法定雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体障害者、知的障害者又は精神障害者に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。1960年の制度創設時においては、身体障害者のみが対象となっており、民間企業の障害者雇用は努力義務であった。その後、1976年に身体障害者の雇用を義務化し、1998年には知的障害者、2018年には精神障害者の雇用を義務化し、法定雇用率の算定基礎の対象に追加することとされた。また、法定雇用率については、1960年の制度創設時は現業的事業所1.1%、非現業的事業所1.3%であったところ、2021年3月1日には民間企業における法定雇用率は2.3%となった。
2023年4月からは、民間企業における新たな法定雇用率は2.7%とされているが、引上げについては、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、2023年度は2.3%に据え置き、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的に実施している。国等の公的機関については、2023年4月からの新たな法定雇用率は3.0%(教育委員会は2.9%)とし、段階的な引上げに係る対応(引上げ時期及び引上げ幅)は民間事業主と同様としている。
(イ)特例子会社制度等の特例措置
事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、実雇用率を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。特例子会社制度は、障害の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。2024年6月1日現在で614社を特例子会社として認定している。
また、特例子会社を持つ親会社については、関係するほかの子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。
さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。

② 法定雇用率の達成に向けた指導の一層の促進
(ア)民間企業等に対する指導等
障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成の民間企業に対する指導を行っている。実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、障害のある人の雇入れに関する2年間の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害のある人の雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、計画終期で一定の改善がみられなかった企業に対し企業名公表を前提とした特別指導を行っている。一連の指導にもかかわらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。
(イ)国・地方公共団体に対する指導等
国及び地方公共団体の機関は、民間企業に率先して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあり、全ての公的機関における毎年6月1日現在の雇用状況を発表している。また、未達成である機関は、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならず、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省が当該機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。
ウ 障害者雇用納付金制度
「障害者雇用促進法」は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、障害者雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。
このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の整備や障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助、通勤を容易にするための措置等を行った事業主に対する助成金の支給を行っている。また、在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。

エ 職業リハビリテーションの実施
「障害者雇用促進法」において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(第2条第7号)としている。これに基づき、障害のある人が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に、障害のある人が希望や能力、適性に応じた職場に就き、就労を継続し、職業生活において自立を図ることができるようにするための支援を実施している。
オ 助成金等による企業支援や普及啓発活動
国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。
例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した事業主に対して助成する「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行ったりした場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。
また、雇用義務の対象であるものの1人も雇用していない、いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」等を対象に、ハローワーク等が中心となって就労支援機関等と連携した「障害者雇用推進チーム」を設置し、民間企業ごとの状況やニーズ等に合わせて採用に向けた準備から職場定着まで一貫した支援を行う「企業向けチーム支援」を行っている。2024年4月からは、これらの支援に加えて、障害者雇用の経験やノウハウが不足する事業主に対して障害者の一連の雇用管理に関する相談援助の事業を行った事業者に対する助成制度を創設し、民間事業者による取組も推進している。
このほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害のある人の雇用の啓発を行っている。2017年度からは、一般労働者を対象とした「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場における精神・発達障害のある人を支援する環境づくりにより職場定着を推進するため、企業内において精神・発達障害のある人を温かく見守り、支援する応援者を養成し、精神・発達障害のある人に対する正しい理解の促進に取り組んでいる。
2020年度より、障害者の雇用の促進等に関する事業主の取組に関し、その実施状況が優良なものであること等の基準に適合するものである旨の認定を受けた中小事業主について、その商品等に厚生労働大臣の定める表示(認定マーク(愛称:もにす))を付すことができる認定制度(もにす認定制度)を設けている。この認定を受けることで、中小事業主にとっては、自社の商品や広告等への認定マークの使用によるダイバーシティ・働き方改革等の広報効果や、障害のない者も含む採用・人材確保の円滑化といった効果が期待できる。2024年12月末時点で489事業主をもにす認定事業主として認定している。
また、厚生労働省では、毎年9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、職業人として模範的な業績をあげている勤労障害者等に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害のある人の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害のある人の雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。2024年度には3か所の障害者雇用優良事業所、14名の優秀勤労障害者の表彰を行った。
(「障害者雇用支援月間」厚生労働省ホームページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42921.html


カ 税制上の特例措置
障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の特例措置を講じている。具体的には、障害者雇用納付金制度に基づく助成金(障害者作業施設設置等助成金等)の支給を受け、それを固定資産の取得又は改良に使った場合、その助成金分は、圧縮記帳により損金算入(法人税)、又は総収入金額に不算入(所得税)とする取扱い等を講じている。
キ 障害者差別禁止と合理的配慮の提供
雇用分野において障害があることを理由とした差別を禁止し、過重な負担とならない限り、合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。事業主が講ずべき障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務については、障害者雇用促進法に基づく「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第116号。以下本章では「障害者差別禁止指針」という。)及び「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年厚生労働省告示第117号。以下本章では「雇用における合理的配慮指針」という。)により、判断基準等が示されている。障害者差別禁止指針においては、障害者に対する差別禁止について、事業主が適切に対処できるよう、募集・採用、賃金、配置、昇進、降格、教育訓練などの各項目において、差別に該当すると考えられる例を示している。雇用における合理的配慮指針においては、障害者に対する合理的配慮の提供義務について、適切に対処できるよう、合理的配慮に係る措置の例等を示している。いずれもマニュアルを作成しており、随時更新している。
また、厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下本章では「JEED」という。)により、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供義務に関するリーフレットや合理的配慮に係る事例集等が作成・配布され、周知・啓発が行われている。
こうした周知だけではなく、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害のある人からの相談に応じ、必要な場合は事業主に助言・指導等を行っているほか、都道府県労働局長による紛争解決の援助や障害者雇用調停会議が行われている(2023年度実績:相談件数245件、助言件数18件、指導件数2件、勧告件数0件、紛争解決援助申立受理件数10件、調停申請受理件数9件)。
(3)公務部門における障害者雇用について
ア 障害のある人の活躍の場の拡大に関する措置
国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先して障害のある人の雇入れを行うべき立場にある。加えて、2018年の公務部門における障害者雇用の不適切計上事案が明らかになったことを踏まえ、雇用率の達成はもとより、雇用の質の向上を実現するため、障害者雇用推進者、障害者職業生活相談員の選任等が義務化されている。2020年4月からは障害者活躍推進計画の作成・公表義務を課しており、各機関においてはその取組状況の点検結果を毎年公表することとされている。
厚生労働省においては、各機関における活躍推進計画の作成や取組の実施に対して必要な助言、援助等を通じて、障害のある人が活躍できる職場づくり等に対する各機関の取組を支援している。
イ 国における障害のある人の活躍の場の拡大を図るための支援策
① 支援体制の整備
国及び地方公共団体においては、障害者雇用推進者及び障害者職業生活相談員を選任しなければならないとされており、各機関において配置を義務付けている障害者職業生活相談員については、障害のある人の職業生活に関する相談及び指導を行うに当たって必要な知識・スキルの付与を行う「障害者職業生活相談員資格認定講習」の受講等を選任要件としており、当該講習は厚生労働省において実施している。
② 障害者雇用に関する理解の促進
人事院において、一般職国家公務員における合理的配慮の考え方等を定めた「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針(国家公務員の合理的配慮指針)」を策定し(2018年12月)、各府省庁が提供した合理的配慮の事例を厚生労働省と連携して取りまとめ、各府省庁に提供している(2020年1月)。
内閣人事局を中心として厚生労働省、人事院の協力の下、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を2019年3月に作成し、障害のある人を雇用する際の基礎知識や注意点などを各府省庁に周知した(「障害者雇用促進法」の改正内容を踏まえ、2024年1月に改訂)。
厚生労働省において、国の機関における障害者雇用に関する理解の促進を図るため、以下の取組を実施している。
・障害者雇用の際に必要となる設備改善・機器導入に関する情報について、国の機関の人事担当者等を対象に、JEEDに蓄積されたノウハウ・情報の提供を実施した。
・国の機関等の人事担当者等を対象に、障害のある人の働きやすい職場環境づくりや障害特性に応じた雇用管理を内容とする「障害者雇用セミナー」を開催することで、国の機関等における障害者雇用促進のための取組を行った(2023年度実績1回)。
・障害のある人とともに働く国の機関及び地方自治体等の職員を対象に、精神・発達障害の特性を正しく理解し、職場でこれら障害者を温かく見守り、支援する応援者となるための「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」(あわせて同講座のe-ラーニング版を提供)を実施することで、精神・発達障害者に対する理解を促進した(2023年実績384回(国の機関及び地方自治体等に対して実施した数))。
内閣人事局において、障害に関する基礎知識や業務のコーディネート及び障害のある人のサポートを行う上で必要な知識等を各府省庁の職員に提供する「障害者雇用キーパーソン養成講習会」を実施している。
③ 職場実習の実施
厚生労働省において、各府省庁における障害のある人の採用に向けた着実な取組を推進するため、各府省庁の人事担当者等を対象に、各府省庁が行う特別支援学校等と連携した職場実習の実施に向けた支援を行っている。
④ 職場定着支援等の推進
厚生労働省において、ハローワーク等に各府省庁からの職場定着に関する相談を受け付ける窓口を設置して、各府省庁において働く障害のある人やその上司・同僚からの相談に応じるほか、専門の支援者を配置して各府省庁からの要請等に応じて職場適応支援を実施している。
また、各府省庁が自ら職場適応に係る支援を適切に行えるようにするため、職員の中から選任した支援者に必要な支援スキル等を付与する支援者向けセミナーを実施している。
内閣人事局において、就労支援機関等と連携し、各府省庁からの依頼に応じて、障害者雇用に知見を有する専門家を一定期間、各府省庁の職場に派遣し、採用、定着、職業能力の開発及び向上等に関する助言等を行う専門家派遣事業を実施している。
17 障害者雇用状況報告:重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされる。
また、重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者である短時間労働者並びに重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である特定短時間労働者(1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者)については、0.5人分としてカウントされる。
ただし、精神障害者である短時間労働者については、当分の間、1人分としてカウントされる。
18 「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)第37条第2項の対象障害者をいう。具体的には同法第2条第2号の身体障害者、第4号の知的障害者及び第6号の精神障害者のうち「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(昭和25年法律第123号)第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者をいう。
19 「その他の障害のある人」とは、身体障害者・知的障害者・精神障害者以外の障害者をいい、具体的には、障害者手帳を所持しない発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者などである。