内閣府では、昨年10月に開催された第1回日本アフリカ科学技術大臣会合で合意した事項の1つである、アフリカ科学技術調査ミッションを、平成21年2月18日(水)から3月8日(日)にかけて派遣しました。訪問国では、各国政府の科学技術担当関係者、各国及びその周辺国の主要研究機関の研究者等と情報・意見の交換を行い、アフリカの科学技術の現状について知見を広めるとともに、研究者間の交流を深めました。
第1回:望遠鏡を使った科学技術教育プログラムの普及協力
自然科学研究機構国立天文台 関口和寛教授からのご報告
アフリカ科学技術調査ミッションを機会に、エジプトでの組立天体望遠鏡を使った科学技術教育プログラムの普及協力が進んでいます。
平成21年2月18日(水)から3月8日(日)にかけて内閣府が派遣した、アフリカ科学技術調査ミッションを機会に、エジプト高等教育科学研究省、エジプト国立天文・地球物理学研究所(NRIAG)、独立行政法人国際協力機構(JICA)と自然科学研究機構国立天文台が協力して、エジプトで組立天体望遠鏡キットを使った科学技術教育プログラムを実施することになりました。
今年(2009年)は、近代科学の父ガリレオ・ガリレイが自作の望遠鏡を使って宇宙探求の扉を開く観測を行ってから400年を記念した、世界天文年2009(International Year of Astronomy 2009)です。世界中で天文学と科学に関する行事が、さまざまな規模やかたちで展開され、我が国でも、世界天文年日本委員会によりたくさんの主催企画が実施されています。
その一つに、国立天文台が中心となって、ガリレオが宇宙を観測した望遠鏡と同じ口径4cmの組み立て式望遠鏡を教材に使って、主に小中学生を対象とした体験学習プログラムを世界中に紹介し、ガリレオが体験した驚きや発見を追体験してもらおうという企画「君もガリレオ」プロジェクト(自然科学研究機構国立天文台への外部リンク:新しいウィンドウで開きます)があります。これは、世界中の子どもたちが夜空を見上げ、宇宙の中の地球や人間の存在に思いを馳せ、自分なりの発見をしてもらうとともに、科学や技術への興味を喚起することを目的としたものです。
アフリカ諸国との科学技術協力では、日本の研究・教育機関との連携・協力による、人材交流、教育研究、技術移転等を包括的に推進することが考えられています。特に途上国においては、高度な科学技術の移転だけではなく、それを元にした持続可能な発展を支援することが肝要です。しかし、これらの諸国では、初等中等レベルにおける科学技術を啓蒙する教育のための人物両面での資源が十分とはいえません。特に、子供たちに体験を通して科学技術への興味を持ってもらうための教材が不足しています。日本で開発された安価で高品質な組み立て式望遠鏡を使った教材をアフリカ諸国でも使うことにより、科学技術協力を下支えできます。また、日本の教材を使って科学に興味を持った子供達が、日本に留学して学び、国に帰って研究を続けるようになれば、自然と共同研究などの協力関係も芽生えてくるはずです。
今回、「君もガリレオ」プロジェクトのアフリカ諸国での展開については、特に途上国の初等中等教育関係者から多くの問い合わせが寄せられました。またガーナでは、現地の日本大使館からこの取り組みに興味があるとの連絡がありました。そして、エジプト政府が2,000台の組み立て式望遠鏡を購入し、教育の場での活用を試みることになりました。エジプト国立天文・地球物理学研究所の協力を得て、教材とその説明文などのアラビア語への翻訳を行い、今年秋の学期から使用します。この取り組みは、世界天文年の今年だけではなく、今後もより多くの国と地域で科学技術教育の深まりに資することが出来ればと期待しています。