目次戻る次へ

第3章 調査結果の分析・解説 -3

(本章の内容は、すべて執筆者の見解であり、内閣府の見解を示すものではありません。)

「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の特徴について

日本福祉大学/みずほリサーチ&テクノロジーズ 藤森克彦

1. はじめに

介護保険制度は、高齢化や核家族化の進行などを背景に、「介護の社会化」を目的として2000年に創設された。そして、要介護(要支援)認定者数は約697万人にのぼり(2022年12月末現在)、介護を必要とする高齢者を支える制度として定着している。

特に、介護保険導入後、単身高齢者の増加など高齢者のライフスタイルの多様化が進んだ。生涯未婚や一人暮らしを自らの意思で選択する高齢者もいれば、本人の意思とは別に、配偶者との死別などによって一人暮らしをする高齢者もいる。高齢期に家族がいない状況になることは、誰の人生においても生じる可能性があり、「介護の社会化」は一層重要になっている。

ところで、介護保険制度は定着したが、依然として「介護してくれる家族がいないこと」に不安を感じる高齢者がいる。介護をしてくれる家族がいなくても、不安をもたずに尊厳のある暮らしを送るためには、社会はどのような支援や環境整備をしていく必要があろうか。

そこで本稿では、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の特徴を明らかにする。具体的には、上記不安をもつ高齢者は、①家族のいない人が多いこと(仮説1)、②家族介護は無償であるのに対して介護保険には自己負担が生じるので、経済面に不安をもつ人が多いこと(仮説2)、③家族からは介護以外にも様々な支援を受けられるので、介護保険以外の支援を受けられないことに不安をもつ人が多いこと(仮説3)、④介護保険をよく理解していない人が多いこと(仮説4)、といった点を明らかにする。

本稿では、これら仮説を検証することを目的にする。そして、こうした不安を緩和する方策を探る。

2. 使用するデータと変数の設定

使用するデータは、内閣府(2022)『高齢者の健康に関する調査』である。同調査では、「あなたは、将来、身体が虚弱になって、日常生活を送る上で、排せつ等の介護が必要になる状態(要介護2程度)になると考えた場合、具体的にどんなことが不安ですか」(Q15)を尋ねている。そして、この設問の不安項目の一つに「介護してくれる家族がいないこと」があげられており、不安をもつか否かを問うている。

本稿では「介護してくれる家族がいないこと」について<不安の有無>を従属変数とする。そして、まず、<不安をもつ高齢者>の特徴をクロス表から分析する。次に、「介護してくれる家族がいないことへの不安」をもたらす規定要因は何かを明らかにする。具体的には、後述する独立変数を用いて、ロジスティック回帰分析を行う。特に、家族がいないことを統制してもなお、先述した仮説2~4が規定要因となっているか否かを分析する。

(1)「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の特徴―クロス分析

クロス分析では、まず、高齢者の属性として「性別」「年齢階層別」を統制変数として、「介護してくれる家族がいないことへの不安」をもつ人の比率を分析する。

次に、冒頭で示した4つの仮説について、独立変数を設定する。まず、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者は「家族のいない人が多い」という【仮説1】については、「家族のいない人」として、①「配偶者のいない人(F3)」、②「子どものいない人(F5)」、③「同居人のいない人(F4)」の3つの独立変数から上記不安との関連性をみる。ちなみに、調査対象者に占める各変数の該当者比率をみると、①「配偶者のいない人」は30.8%(n=735)、②「子供のいない人」は9.8%(n=234)、③「同居人がいない人」は15.9%(n=385)である。①②③の全てに該当する人は、総数の4.6%(n=110)となる。

一方、介護してくれる家族がいなくても、「親しい友人や仲間」がいれば、こうした不安をもちにくいことが考えられる。そこで、「親しい友人や仲間の数」と「介護してくれる家族がいないことへの不安」との関連をみる。具体的には、「ふだん、親しくしている友人・仲間がどの程度いますか」(Q4)という問いに対して、「たくさんいる」「普通にいる」「少しいる」「ほとんどいない」「持っていない」の5件法の回答と、上記不安との関連を分析した。

【仮説2】として「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者は「経済面に不安をもつ人が多い」という点については、「介護に要する経済的負担が大きいこと」(Q15-3)と「等価所得」の2つを独立変数として、各々クロス分析を行う。

なお、「等価所得」は、高齢者の世帯所得区分(F7)の中央値を用いて、世帯人数(F4-1)の平方根で除して求める。そして、等価所得を低い人から高い人に並べて20%ずつ区分した5分位を設けて、各分位と「介護してくれる家族がいないこと」への不安との関連性をみる。等価所得が低ければ介護への経済的負担が重くなり、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者が多いという仮説を検証する。

【仮説3】として、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者は「介護保険以外の支援を受けられないことに不安を感じている人が多い」という点については、2つの独立変数から分析する。

まず、「身元保証人がいないため、介護施設に入れないこと」への不安(Q15-8)との関係をみる。一般に、介護施設の入所の際には家族が身元保証人になることが多い。しかし、家族がいないと身元保証人を確保できないことも考えられ、それが「介護してくれる家族がいないこと」への不安になることが考えられる1

また、「日常生活の自立度」(Q2)を独立変数として、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者との関係をみる。日常生活の自立度は、5つの項目(①バスや電車、自家用車を使って1人で外出しているか、②自分で食品・日用品の買物をしているか、③自分で食事の用意をしているか、④自分で請求書の支払いをしているか、⑤自分で預貯金の出し入れをしているか)について、「できる」を1点、「できない」を0点として、上記の5項目から合成変数を作成した。自立度が最も高い場合は満点の5点となり、最も低い場合は0点となる。日常生活の自立度が低ければ、介護保険以外の支援も必要になるため、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつことが考えられる。

【仮説4】は、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者は、「介護保険をよく理解していない高齢者が多い」という点である。独立変数を「介護サービスの利用方法や手続きがわからないこと」への不安(Q15-13)として、従属変数である「介護してくれる家族がいないこと」への不安との関連性をみる。

上記変数の記述統計量は、以下の通りである(図表1)。

(図表1)使用する変数の記述統計量

(図表1)使用する変数の記述統計量の図

(注)「親しい友人や仲間の数」については、「たくさんいる」(4点)、「普通にいる」(3点)、「少しいる」(2点)、「ほとんどいない」(1点)、「持っていない」(0点)として、点数化した。

1 なお、厚生労働省は、厚生労働省令によって、「入所希望者に身元保証人などがいないことはサービス提供を拒否する正当な理由に当たらない」ことを指摘している(平成 11 年厚生省令第 39 号~第41号、1999年)。しかし、医療機関や施設の9割以上が、入院・施設入所の契約時などで「身元保証人等」を求めている実態がある(成年後見センター・リーガルサポート(2014)『病院・施設等における身元保証等に関する実態調査報告書』、9頁)。

(2)「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の規定要因―ロジスティック回帰分析

次に、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもたらす規定要因を分析するために、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>を1、<不安なし>を0とする二値変数を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。独立変数は、図表1の記述統計量に示した変数を用いる。

特に、家族がいないことを統制してもなお、経済面に不安を感じていること(介護の経済的負担に不安ありダミー、等価所得)、介護保険以外の支援を受けられないことに不安をもつこと(身元保証人なく施設に入れない不安ありダミー、日常生活自立度)、介護保険をよく理解していないこと(介護サービス手続きわからないダミー)が、規定要因となっているか否かを分析する。

3.調査結果

以下では、クロス分析の結果と、ロジスティック回帰分析の結果について各々示していく。

(1)「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の特徴―クロス分析

まず、回答者総数(n=2,414)では、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>は14.0%、<不安なし>は86.0%となっている。

クロス分析においては、カイ二乗検定の結果、有意差が認められた場合には、どのセルが有意差をもたらしたのかを明らかにするために残差分析を行う。残差分析によって出力される調整済み残差は、その絶対値が 1.96以上であれば、5%水準で有意な差があると解釈できるため、カイ二乗検定による有意が認められた場合には、該当のセルに注目する。

A.属性

男女別に「介護してくれる家族がいないこと」への不安の有無の割合をみると、クロス表はp<0.05 となっていて統計的に有意である。女性は男性よりも<不安あり>の比率が有意に高い(図表2)。一方、年齢階層別にみると、クロス表はp=0.069となっていて、統計的に有意な差は認められない(図表3)。

(図表2)男女別に見た「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率

(図表2)男女別に見た「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率の図

(図表3)年齢階層別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率

(図表3)年齢階層別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率の図

B.家族の有無との関連性

配偶者の有無別に「介護してくれる家族がいないこと」への不安の割合をみると、クロス表はp<0.001と統計的に有意である。そして、配偶者のいない人は、配偶者のいる人よりも、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>の比率が高く、有意な差になっている(図表4)。

次に、子どもの有無別にみると、クロス表はp<0.001で統計的に有意である。子どものいない高齢者は、子どものいる高齢者に比べて「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>の比率が高く、有意な差になっている(図表5)。

さらに、同居人の有無別にみると、これもクロス表はp<0.001となっていて統計的に有意である。同居人のいない高齢者は、同居人のいる高齢者よりも、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>の比率が有意に高い(図表6)。

(図表4)配偶者の有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率

(図表4)配偶者の有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率の図

(図表5)子どもの有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率

(図表5)子どもの有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率の図

(図表6)同居人の有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率

(図表6)同居人の有無別にみた「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率の図

一方、「親しい友人・仲間の数別」にみると、クロス表はp<0.001となっていて統計的に有意である。親しい友人や仲間のいない高齢者は、友人や仲間のいる高齢者(「少しいる」「普通にいる」)に比べて、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>の比率が高く、有意な差になっている(図表7)。

(図表7)親しい友人・仲間数との関連性

(図表7)親しい友人・仲間数との関連性の図

C.経済的負担との関連性

経済的負担との関連性について、まず「介護に要する経済的負担が大きいこと」への不安との関連をみる(図表8)。クロス表はp<0.001となっており統計的に有意である。介護に要する経済的負担に不安をもつ高齢者は、もたない高齢者に比べて、「介護をしてくれる家族がいないこと」に<不安あり>と答える人の比率が有意に高い。

(図表8)介護の経済的負担への不安の有無との関連性

(図表8)介護の経済的負担への不安の有無との関連性の図

次に、「等価所得5分位」との関連性をみる。クロス表はp<0.01となっていて、統計的に有意である。残差分析によって有意差をもたらしたセルに着目すると、第1分位では「介護をしてくれる家族がいないこと」に<不安あり>と答える高齢者の比率が有意に高い。また、第5分位では「介護をしてくれる家族がいないこと」に<不安あり>と答える高齢者の比率が有意に低い(図表9)。

(図表9)等価所得5分位との関連性

(図表9)等価所得5分位との関連性の図

(注)5分位の境界で等価所得が同じ人が多数並ぶため、厳密には20%区分となっていない。

D.介護保険以外の支援との関連性

次に、介護保険以外の支援を受けられない不安と、「介護してくれる家族がいないこと」への不安との関連性をみる。まず、「身元保証人がいないため、介護施設に入れないことへの不安」との関連性をみると、クロス表はp<0.001となっており、統計的に有意になっている。「身元保証人がいないため、介護施設に入れないこと」に不安をもつ高齢者は、不安をもたない高齢者よりも、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ人の比率が高く、有意な差になっている(図表10)。

(図表10)等価所得5分位との関連性

(図表10)等価所得5分位との関連性の図

また、「日常生活自立度」との関連性をみると、クロス表はp<0.01であり、統計的に有意な差となっている。残差分析を行うと、日常生活の自立度が最も低い0点において、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ人の比率が有意に低い。一方、日常生活の自立度が最も高い5点において、「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ人の比率が有意に高い(図表11)。

(図表11) 日常生活自立度との関連性

(図表11) 日常生活自立度との関連性の図

E.介護保険をよく理解していないこととの関連性

最後に、「介護サービスの利用方法や手続きがわからないこと」への不安と、「介護してくれる家族がいないこと」への不安との関連性をみると、クロス表はp<0.001となり、統計的に有意になっている。「介護サービスの利用方法や手続きがわからないこと」に不安をもつ高齢者は、「介護をしてくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の比率が高く、有意な差になっている(図表12)。

(図表12)「介護サービスの利用方法や手続きがわからないこと」との関連性

(図表12)「介護サービスの利用方法や手続きがわからないこと」との関連性の図

(2)「介護してくれる家族がいないこと」に不安をもつ高齢者の規定要因―ロジスティック回帰分析

それでは、「介護してくれる家族がいないことへの不安」の規定要因は何か。特に、家族がいないことを統制してもなお、「経済的負担に不安をもっていること」「介護保険以外の支援を受けられないことに不安をもっていること」「介護保険をよく理解していないこと」といった点は、「介護してくれる家族がいないことへの不安」の規定要因になっているのだろうか。

そこで、「介護してくれる家族がいないこと」に<不安あり>を1、<不安なし>を0とする二値変数を従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。 独立変数は、図表1の記述統計量に示した通りである。

分析結果としては、まず、カイ二乗検定は p<0.001 で有意となっている(図表13)。分析に投入した変数の有意確率をみると、「女性ダミー」「子どもがいないダミー」「同居人いないダミー」「親しい友人・仲間の数」「介護に要する経済的不安ありダミー」「身元保証人なく施設に入れない不安ありダミー」「日常生活自立度」「介護サービス手続きわからないダミー」は、5%水準で有意である。

また、これらの独立変数は、「親しい友人や仲間の数」を除いて回帰係数はプラスであり、「介護してくれる家族がいないことへの不安」をもつことに正の影響を与える規定要因である。したがって、「女性であること」「子どもがいないこと」「同居人がいないこと」「介護の経済的負担に不安があること」「身元保証人なく施設に入れない不安があること」「日常生活自立度が高いこと」「介護サービスの手続きがわからないこと」は、「介護してくれる家族がいないことへの不安」を高める規定要因である。

一方、「親しい友人や仲間の数」は、回帰係数の符号がマイナスである。つまり、親しい友人や仲間の数が多くなれば、「介護してくれる家族がいないことへの不安」を軽減する規定要因になっている。

なお、「等価所得」は統計的に有意ではなく、必ずしも「介護してくれる家族がいないことへの不安」の規定要因とは言えない。

(図表13)「介護してくれる家族がいないこと」への不安の規定要因―ロジスティック回帰分析

(図表13)「介護してくれる家族がいないこと」への不安の規定要因―ロジスティック回帰分析の図

4.考察と結論

本稿では、高齢者の「介護してくれる家族がいないことへの不安」の規定要因として、①家族がいないこと、②経済的負担に不安をもっていること、③介護保険以外の支援を受けられないこと、④介護保険をよく理解していないこと、といった4つの仮説をあげて分析してきた。

その結果、第一に、家族がいないことについては、「子どもがいないこと」と「同居人がいないこと」は、「介護してくれる家族がいないことへの不安」をもつことに正の影響を与える規定要因である。一方、「配偶者がいないこと」は、必ずしも規定要因とは認められない。

第二に、経済的負担に不安をもっている高齢者は、家族の有無を統制してもなお、「介護してくれる家族がいないことへの不安」に正の影響を与える規定要因となっている。一方、「等価所得」自体は、必ずしも「介護してくれる家族がいないことへの不安」の規定要因とはいえない。

第三に、介護保険以外の支援を受けられないことについて、「身元保証人がなく施設に入れない不安」をもつことは、家族の有無などを統制しても「介護してくれる家族がいないことへの不安」に正の影響を与える規定要因となっている。また、オッズ比をみると、「身元保証人なく施設に入れない不安」をもつ高齢者は、もたない高齢者に比べて「介護してくれる家族がいないことへの不安」が約12倍も高い。「身元保証人なく施設に入れない不安」は、「介護してくれる家族がいないことへの不安」との関連性が強い。

なお、「身元保証人なく施設に入れない不安」をもつ高齢者の比率は小さく、回答者全体の1.9%(n=46)である。これは「身元保証人がいないと施設に入所が難しい」という実態を知らない高齢者が多いことが考えられる。なお、身寄りのない高齢者を支援する現場では、施設入所の際に身元保証人を求められることが多い。身元保証人を確保できない身寄りのない高齢者は多いので、入所の際の課題になっている。

また、日常生活自立度は、「介護してくれる家族がいないことへの不安」に正の影響を与える規定要因となっている。つまり、日常生活自立度が低ければ「介護してくれる家族がいないことへの不安」が低くなることを示している。これは、当初の想定と異なる意外な結果である。この理由は定かではないが、日常生活自立度が低くても、何とか生活を維持できていることがあるのではないかと推察される2

第四に、介護保険をよく理解していないことは、家族の有無などを統制してもなお、「介護してくれる家族がいないことへの不安」に正の影響を与える規定要因となっている。

したがって、高齢期に「介護をしてくれる家族がいないこと」への不安を緩和するには、介護への経済的負担を軽減していくことや、身元保証人がいないために施設に入れないといった事態への対応、介護保険制度の周知の徹底、などが重要になろう。

また、「親しい友人や仲間」が多ければ、「介護してくれる家族がいないことへの不安」を軽減できることが示された。今後、単身高齢者が増えていくことが推計されているが、「親しい友人や仲間」をもつことは、介護してくれる家族がいないという不安を軽減する有効な対応と考えられる。

2 ちなみに、日常生活自立度別に、既に介護を受けている人の割合をみると、自立度0点では33.8%、自立度5点では0.1%である。自立度5点ではほとんどの人は介護の受給者となっていない。一方、自立度別に同居人の有無をみると、自立度0点では88.2%なのに対して、自立度5点で83.6%である。自立度5点では、同居人のいる人の比率がやや低いものの、それほど大きな差ではない。また、日常生活自立度別に、「普段親しくしている友人・仲間」の有無をみると、「いない」という回答は、自立度0点が最も高く67.6%にのぼるが、自立度5点になると同割合は11.5%と低い。本稿では、介護保険以外の支援が不足している点を日常生活自立度から考察しようとしたが、日常生活の自立度が低い人にも、介護保険が一定の効果をもたらしていることが推察される。