第2 分野別の基本的施策-5
5 高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進のための基本的施策
高齢者が健康で活躍しやすい環境づくりのために、高齢者に優しく、ニーズに合致した機器やサービスの開発を支援することで、高齢者向け市場を活性化させ、高齢者の消費を高めるとともに、高齢化に対応した産業の強化等を通じて高齢者が生活の質を保ち、安心で快適で豊かな暮らしを送ることができるような環境を形成する。
また、科学技術の研究開発とその活用は、高齢化に伴う課題の解決に大きく寄与するものであることから、高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究、高齢者の利用に配慮した福祉用具、生活用品、情報通信機器等の研究開発など各種の調査研究等を推進するとともに、そのために必要な基盤の整備を図る。
(1)高齢者向け市場の開拓と活性化
ア 医療・介護・健康関連産業の強化
高齢社会において高い成長と雇用創出が見込める医療・介護・健康関 連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し、安全の確保や質の向上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する。医療・介護機関と民間サービス事業者等の連携によるサービス提供を通じ、サービスの有効性や安全性、持続可能性等を担保する仕組みの構築を行う。さらに、こうしたサービスが自立的に創出・提供がなされるよう、多様な機能を有する異業種の連携等により、新たに医療・介護周辺のサービスを立ち上げる医療機関、事業者等を支援する。
イ 不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化
高齢者が将来の不安を払拭し、不安のための貯蓄から、生涯を楽しむための支出を行えるように医療・介護サービスの基盤を強化する。
そのため、医師養成数の増加、勤務環境や処遇の改善による勤務医や医療・介護従事者の確保とともに、医療・介護従事者間の役割分担を見直す。
また、医療機関の機能分化と高度・専門的医療の集約化、在宅サービスの充実や介護基盤の整備などを進め、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備する。
ウ 地域における高齢者の安心な暮らしの実現
住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと考える高齢者は多く、地域主導による地域医療の再生を図る。このため、医療・介護の連携と、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め、そこに暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築する。
高齢者が安心して健康な生活が送れるようにすることで、生涯学習や、教養・知識を吸収するための旅行など、新たなシニアサービスの需要を創造するとともに、高齢者の起業や雇用につなげ、高齢者が有する技術・知識等を次世代へ継承する好循環を可能とする環境を整備する。
(2)超高齢社会に対応するための調査研究等の推進と基盤整備
ア 医療イノベーションの推進
日本発の新たな医薬品・医療機器等の創出により、健康長寿社会を実現するとともに、国際競争力強化による経済成長に貢献することを目指す「医療イノベーション」について、「医療イノベーション5か年戦略」(平成24年6月6日医療イノベーション会議)に基づき、具体的な取組を進める。
イ 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等
認知症、がん等高齢期にかかりやすい疾患について、その病態や発症機序解明等の研究とともに、ゲノム科学など先端科学技術の活用等による、新たな医療技術・新薬の研究開発やその成果の臨床応用のための研究、これらによる効果的な保健医療技術を確立するための研究等を推進する。
また、老化に関する基礎研究とその成果の臨床応用のための研究や効果的・効率的な介護等に関する研究、社会生活を営むための必要な機能の維持を重視する観点から、生活習慣病の重症化予防に関する調査研究等健康づくりに関する研究などを推進する。
ウ 高齢者の自立・支援等のための医療・リハビリ・介護関連機器等に関する研究開発
高齢者の自立及び社会参加を支援するとともに、介護負担を軽減する観点から、高齢者の特性等を踏まえつつ、ものづくり技術を活用した医療・介護ロボット、身体機能の補完・回復等につながる福祉用具等の医療・リハビリ・介護関連機器等の研究開発・実用化を推進する。
エ 情報通信の活用等に関する研究開発
高齢者の生活の質の向上や介護者の負担軽減を図るため、情報通信技術を活用した高齢者の身体機能を代償する技術及び自立支援や生活支援を行う技術等について、ハード及びソフトの両面から研究開発を推進する。
また、高齢者等の安全快適な移動に資するITS(高度道路交通システム)の研究開発及びサービス展開を実施する。
オ 高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究
大綱の基本的考え方や高齢社会対策基本法に規定された分野別施策について国民の意識を把握するための調査や、政策課題を把握し、政策立案に寄与するための調査を行う。