65歳以上の高齢者人口は,「人口推計」(総務庁)でみると,平成11年10月1日現在,2,119万人で,総人口(1億2,669万人)に占める割合(高齢化率)は16.7%となっている。1年前の10年10月1日と比較すると,高齢者人口は68万人増加し,高齢化率は 0.5ポイント上昇している。
今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成9年1月推計,中位推計)(厚生省)でみると,65歳以上の高齢者人口及び高齢化率は,平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け,平成27年(2015年)には,高齢者人口は3,188万人,高齢化率は25%を超え,国民の約4人に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと見込まれている。
高齢者のいる世帯について,「国民生活基礎調査」(平成10年)(厚生省)でみると,65歳以上の者のいる世帯数は1,482万世帯であり,全世帯(4,450万世帯)の33.3%を占めている。
65歳以上の者のいる世帯の内訳は,「単独世帯」が272万世帯(18.4%),「夫婦のみの世帯」が396万世帯(26.7%),「親と未婚の子のみの世帯」が203万世帯(13.7%),「三世代世帯」が440万世帯(29.7%)であり,65歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し,単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている。
我が国の平均寿命について, 最近の状況を「平成10年簡易生命表」(厚生省)でみると,平成10年 (1998年) には男性が77.16年で9年(77.19年)をわずかに下回り,女性は84.01年と9年 (83.82年)より伸びている。
また,65歳時の平均余命は,昭和22年(1947年)には男性が10.16年,女性が12.22年となっていたものが,平成10年(1998年)には男性が17.13年,女性が21.96年となっており,男性で6.97年,女性で9.74年,それぞれ高齢期が長くなってきている。
65歳以上の者のいる世帯の内訳は,「単独世帯」が272万世帯(18.4%),「夫婦のみの世帯」が396万世帯(26.7%),「親と未婚の子のみの世帯」が203万世帯(13.7%),「三世代世帯」が440万世帯(29.7%)であり,65歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し,単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている。
出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成10年)(厚生省)でみると,平成10年の合計特殊出生率は1.38で,過去最低を更新している。
なお,平成10年の出生数は120万3,147人で9年と比べて1万 1,482人増加し,出生率(人口千人当たりの出生数)は,10年は 9.6で,9年(9.5)を上回った(11年は,推計値で117.5万人, 9.4 )。
我が国では婚姻外での出生が少なく,有配偶女性の出生児数は大きく低下していないことから,出生率低下は,主として初婚年齢の上昇 (晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行により, 結婚する人が減り, 結婚に伴う出生数が減少していることが,出生率の低下につながっている。
未婚率の推移を「国勢調査」 (総務庁) でみると,昭和50年頃から25〜39歳の男性及び20歳代の女性で上昇が際立っている。
生涯未婚率を「人口統計資料集」(平成11年) (厚生省) でみると,男女とも上昇傾向にあって,平成7年(1995年)には男性8.92%,女性5.08%となっており,特に男性において上昇幅が大きくなっている。また,初婚年齢も男女とも上がってきている。
平成11年(1999年) の労働力人口総数(15歳以上労働力人口) は,6,779万人であったが, そのうち60歳以上は924万人であり,13.6%を占めている。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり,労働力人口総数が21世紀に入ると減少していくと予想される中で,今後一層進展していくものと見込まれる。
年金・医療・福祉における社会保障給付を「社会保障給付費」(厚生省)でみると,平成9年度(1997年度)は69兆4,187億円であり,国民所得に占める割合は,昭和45年度(1970年度)の5.8%から17.8%に上昇している。
租税負担,社会保障負担及び財政赤字を合わせた潜在的な国民負担率(対国民所得)は,昭和45年度(1970年度)の24.9%から平成12年度(2000年度)には49.2%に上昇すると見込まれている。
高齢者世帯の年間所得(平成9年の所得)について,「国民生活基礎調査」(平成10年)(厚生省)でみると,323万1千円であり,その内訳をみると,公的年金・恩給が63.6%を占めている。高齢者世帯の年間所得は,全世帯(657万7千円)の半分程度に過ぎないが,世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の状況について,「貯蓄動向調査」(平成11年)(総務庁)でみると,1世帯平均の貯蓄現在高は,2,527万1千円となっており,全世帯(1,737万7千円)の約1.5倍となっている。
住宅・宅地資産について,「全国消費実態調査」(平成6年)(総務庁)でみると,高齢者夫婦世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの世帯)の平均住宅・宅地資産額は,6,078万3千円となっており,一般世帯(4,294万4千円)の約1.4倍となっている。
高齢者の就業状況について,「高年齢者就業実態調査」(平成8年)(労働省)でみると,男性の場合,就業者の割合は,60〜64歳で70.0%,65〜69歳で53.4%となっている。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者
(30.0%) のうち6割以上が,65〜69歳の不就業者 (46.6%) のうち4割近くの者が,就業を希望している。
女性の就業者の割合は,60〜64歳で41.1%,65〜69歳で28.1%となっている。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者(58.9%) のうち3割以上が,65〜69歳の不就業者(71.9%)のうち2割以上が,それぞれ就業を希望している。
健康の維持増進に心がけていることがあるかどうかについて,60歳以上の者を対象とした「高齢者の健康に関する意識調査」(平成9年)(総務庁)でみると,約4分の3の者が心がけていることがあるとしており,その内容を同調査でみると,食事・休養・運動といった健康の3大要素に関する項目が上位となっている。
高齢者の健康状態について,「国民生活基礎調査」(平成10年)(厚生省)でみると,65歳以上の高齢者の有訴者率(人口千人当たりの病気やけが等で自覚症状のある者の数)は,530.3と半数以上の者が自覚症状を訴えている。
また,日常生活に影響のある65歳以上の高齢者(健康上の問題で,日常生活の動作・外出・仕事・家事・学業・運動・スポーツ等に影響のある者)の割合は,高齢者人口千人当たりで,203.3となっている。
70歳以上の高齢者の一人当たりの老人医療費は,「老人医療事業年報」(平成9年)(厚生省)によると,79万円となっており,国民一人当たり医療費(約23万円)の約3.4倍となっている。
65歳以上の在宅の「寝たきり」(「全く寝たきり」及び「ほとんど寝たきり」を合わせたもの)の高齢者について,その寝たきりの期間を,「国民生活基礎調査」(平成10年)(厚生省)でみると,「3年以上」となっている割合が半数近くになっている。
65歳以上の要介護等の高齢者の割合について,65歳以上人口千人当たりの数でみると,在宅の要介護者は48.7, 特別養護老人ホームの在所者は12.7, 老人保健施設の在所者は8.0となっている。また, 病院・一般診療所に6か月以上入院している65歳以上の高齢者は, 65歳以上人口千人当たり15.6となっている。これらの割合は,年齢階層が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある。
60歳以上の高齢者の社会参加活動に対する意識について,「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成10年)(総務庁)でみると,「グループや団体で自主的に行われている活動(地域活動)に,今後とも(又は今後は),参加したいと思うか」という質問に対し,「参加したい」が47.9%と約半数となっており,「参加したいが事情があって参加できない」が14.8%,「参加したくない」は32.6%となっている。
高齢者の各種サークルや団体への参加状況について,「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成10年)(総務庁)でみると,60歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は66.4%となっている。参加している団体では,「町内会・自治会」が34.6%,「老人クラブ」が24.8%,「趣味のサークル・団体」が19.8%となっている。
高齢者世帯の住宅について,最低居住水準(「住宅建設五箇年計画」において定めている居住水準の一つ)を満たしているかを「住宅・土地統計調査」(平成10年)(総務庁)でみると,高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも65歳以上の夫婦一組のみの主世帯)では99.4%,高齢者単身主世帯(65歳以上の単身者のみの主世帯)では96.1%が水準を満たしている。借家に住む世帯では,水準を満たしていない世帯が,高齢者夫婦主世帯で2.8%,高齢者単身主世帯で10.1%となっている。
60歳以上の高齢者の住宅に対する意識について,「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成11年)(総務庁)でみると,現在住んでいる住宅に対する不満な点は,「特に不満はない」が73.6%と7割以上を占めており,不満があるとする者では,「住宅が古くなったりいたんだりしている」が13.4%と最も多く,そのほかに「住宅が狭い」が6.5%,「住宅の構造や設備が使いにくい」が5.6%となっている。
60歳以上の高齢者の外出時の障害について,「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成11年)(総務庁)でみると,「特にない」が61.6%と6割を超えている。障害があるとする者では,「道路に階段,段差,傾斜があったり,歩道が狭い」が14.5%と最も多く,外出先でも階段や段差に悩まされている高齢者の姿がうかがえる。
高齢者の交通安全に関して,65歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成11年)(警察庁)でみると,3,143人で交通事故死者全体の34.9%を占めている。
交通事故死者数は,平成4年までは16〜24歳の若者が多かったが,5年に高齢者が若者の死者数を上回り,その後も高齢者の割合の増加と若者の割合の低下が続いている。
高齢者と犯罪,災害に関し,65歳以上の高齢者の犯罪による被害の状況について「犯罪統計書」(平成10年)(警察庁)の刑法犯被害認知件数でみると,平成10年は13万9,069件で,9年と比較すると2万1,329件,18.1%増加しており,被害認知件数全体に占める割合も上昇を続けている。
また,65歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く。)について,「消防白書」(平成11年)(自治省)でみると,平成10年は572人であり,全死者数の約半分を占めている。
我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは,高齢社会対策基本法 (平成7年法律第129号) に基づいている。
高齢社会対策会議は,内閣総理大臣を会長とし,委員には閣僚が任命されており,高齢社会対策を総合的に推進するための中心となっている。
高齢社会対策大綱は,高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり,政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。
高齢社会対策大綱は,平成8年7月5日,高齢社会対策会議における案の作成を経て,閣議において決定された。
高齢社会対策は,就業・所得,健康・福祉,学習・社会参加,生活環境,調査研究等の推進という広範な施策にわたり,着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると,平成11年度においては10兆3,215億円となっている。
これを各分野別にみると, 就業・所得5兆2,095億円,健康・福祉4兆9,694億円,学習・社会参加583億円,生活環境399億円,調査研究等の推進445億円となっている。
1 就業・所得
高齢者の雇用・就業の機会の確保については,継続雇用の推進,再就職の促進,定年退職後等における臨時・短期的な就業の場の確保等に重点を置いて,多様化する高齢者の就業ニーズを踏まえつつ,総合的な雇用・就業対策を推進している。
65歳までの継続雇用を推進するため,継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示,計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに,各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図っている。
シルバー人材センター連合において,事業主団体等との連携の下,60歳台前半の者を対象に技能講習, 合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラムを実施している。
平成11年度からは,高齢者のための自営開業講座等を実施するとともに,高齢者と事業主双方の意識改革を促し,雇用に関するミスマッチを解消する高年齢者マッチング支援事業を実施している。また,中高年ホワイトカラー求職者の主体的な求職活動を支援するため,就職支援セミナー等を行う「キャリア交流プラザ」を設置している。
勤労者の生涯を通じた能力の発揮については,職業能力の開発,労働時間の短縮,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の一層の確保,育児・介護休業制度の定着及び普及などの施策を推進している。
高齢期における所得の確保については,公的年金制度の安定的運営により,高齢期における生活の基本的部分の保障を図るとともに,企業年金や個人年金等の自助努力による資産形成等の促進を行っている。
平成12年3月,給付水準の適正化,老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の段階的な引上げ等を内容とする国民年金法等の改正を行った。
2 健康・福祉
国民の健康に対する認識と自覚を深め,健康の増進,疾病の予防,早期発見,早期治療を図り,栄養,運動,休養のバランスのとれた生涯にわたる健康づくりを推進している。
平成12年3月には,「保健事業第4次計画」を策定したほか,国民の健康づくりを総合的に推進するため,22年(2010年)を目途とした目標等を提示する「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)を策定した。
老人保健や母子保健など住民に身近で利用頻度の高いサービスは,市町村が市町村保健センター(平成11年12月末現在1,630か所)等を拠点として一元的に提供し,専門的・技術的サービスは,保健所(11年4月1日現在641か所)が提供している。
高齢者の保健・医療・福祉サービスについては,在宅サービスや施設サービスなど高齢者介護サービス基盤の整備目標,今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤の整備に関する施策の基本的枠組みを示した新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(平成6年,大蔵・厚生・自治3大臣合意)に基づき,保健・医療・福祉サービスの充実を図った。
また,平成11年12月には,12年度からの高齢者介護サービス基盤の整備を始めとする高齢者保健福祉施策の基本的な枠組みとなる「今後5か年間の高齢者保健福祉施策の方向」(ゴールドプラン21)を策定した。
平成11年度には,痴呆性高齢者等の自己決定能力が低下している者に対して,その者の権利を擁護し,自立した地域生活が送れるよう,社会福祉士等の生活支援員を派遣し,福祉サービス等の利用援助や日常的金銭管理サービス等の支援を行う地域福祉権利擁護事業を創設した。
平成11年度には,12年4月に施行される介護保険法に基づき,介護報酬単価等を定めたほか,要介護認定の事務に要する経費,高齢者保険料の軽減等のため市町村が設置する基金等について補助を行った。
なお,介護保険制度を円滑に実施するため,平成12年4月から半年間は高齢者の保険料を徴収せず,その後1年間は経過的に保険料を軽減することができることとする等の特別措置を講ずることとしている。
健康・福祉サービスに対する高度化及び多様化したニーズに迅速かつ的確に対応し,サービスの効率化を図るため,民間事業者による健康・福祉サービスの積極的な活用を推進している。
少子化への対応に関し,平成11年12月には,今後中長期的に進めるべき総合的な少子化対策の指針となる「少子化対策推進基本方針」を,少子化対策推進関係閣僚会議において決定するとともに,少子化対策推進基本方針に基づき,12年度を初年度として16年度までに重点的に推進する保育サービス等少子化対策の具体的実施計画として,「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(新エンゼルプラン)(大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意)を策定した。
3 学習・社会参加
地域における生涯学習の推進体制の整備については,生涯学習担当部局の設置(平成8年9月現在全都道府県及び742市町村で設置),都道府県生涯学習審議会の設置(11年4月現在36都道府県で設置),生涯学習推進会議の設置(8年9月現在全都道府県及び1,994市町村で設置)等を促進している。
生涯学習のニーズの高まりに対応するため,大学においては,科目等履修生制度の実施,夜間大学院の設置,昼夜開講制の実施,社会人特別選抜の実施などを行い,履修形態の柔軟化を図って,社会人の受入れを促進している。
放送大学においては,テレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供している。同大学の放送対象地域は関東地域の一部に加え,平成10年1月から衛星放送により全国に拡大された。また,放送授業を視聴するための学習センターを全都道府県において整備している(平成11年度現在49か所)。
公民館を始め,図書館,博物館,婦人教育施設等の社会教育施設や教育委員会において,青少年から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には,高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている。
高齢者自身が積極的に社会に参加できる各種社会環境の条件整備を図るため,地域においてボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い,その振興を図っている。
平成11年度からは,退職後間もない,又はこれから定年を迎えるサラリーマン等が,それまでの仕事で蓄積した知識や経験を社会の様々なシステムの中でいかし,充実した人生を送れるよう,電子メール等を活用してボランティア活動等社会参加に関する相談・アドバイスなどを行う高齢者のボランティア活動相談事業を実施している。
ボランティア活動に対する興味・関心は年々高まっており,平成11年4月におけるボランティア活動者総数は695万8,000人,ボランティアグループ数は9万700グループに達している。
4 生活環境
公営住宅において,老人世帯向公営住宅を供給するとともに,50歳以上の者の単身入居を認めている。また,公団賃貸住宅においては,高齢者同居世帯等に対して,募集時に当選率を優遇するとともに,1階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの優遇措置を行っている。
高齢者自身が積極的に社会に参加できる各種社会環境の条件整備を図るため,地域においてボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い,その振興を図っている。
住宅金融公庫においては,高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに,ホームエレベーターの設置や住宅リフォーム時において高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施している。
シルバーハウジング・プロジェクト事業として,生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常の生活指導や安否確認などのサービスが受けられ,かつ,高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様を備えた公共賃貸住宅の供給を推進している。
鉄道駅,旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進している。
平成11年度においては,鉄道駅について,駅前広場,自由通路等周辺の都市機能整備と一体的にその構造を総合的に改善する事業に対して補助を行う制度を創設した。
また,乗合バス事業者が行うノンステップバス等の車両の導入及び中小鉄軌道事業者が行う低床型路面電車等の導入に対して,補助及び融資を行っている。
高齢者等が安全,快適に,また不便なく歩行できるよう,各種施設の整備等を推進しているほか,良好な歩行空間の形成を図っている。
高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づき認定を受けた建築物に対しては,補助,税制上の特例措置及び融資を実施している。
市街地再開発事業,土地区画整理事業等の面的な都市整備と併せて,社会福祉施設等の適正かつ計画的な立地を推進している。また,福祉・医療施設と一体となった公園の整備を推進している。
第6次交通安全基本計画等に基づき,高齢者への交通安全意識の普及徹底,高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり,高齢者の安全運転対策等を実施した。
高齢者を犯罪や事故から保護するため,交番,駐在所の警察官を中心に,巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか,痴呆症等によってはいかいする高齢者を発見,保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。
病院,老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施,高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害,土砂災害を受けた場合の再度災害防止等を図っている。
都市公園等整備七箇年計画に基づき,都市公園等の緊急かつ計画的な整備を行った。また,農山漁村地域の農林漁業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を積極的に推進している。
5 調査研究等の推進
痴呆疾患,骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については,長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われており,平成11年度までに,免疫不全症の治療法開発の進展,アルツハイマー病の早期確定診断法の開発,骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等が行われている。
福祉機器に関しては,使用者ニーズに対応する新しい技術の可能性(シーズ)に関する調査を行っている。
医療機器に関しては,老化等により失われた身体の機能を代替・補完する人口臓器,高齢者でも軽い負担で治療が受けられる医療機器,患者のQOL(生活の質)を高める在宅医療機器等の研究開発を促進している。
情報通信等の新たな技術の活用は,高齢者の生活の様々な局面に利便をもたらすものと考えられることから,ハード及びソフトの両面において研究開発を推進している。
平成11年度からは,情報通信技術を用いて日常生活支援や社会参加促進を目指すコミュニケ―ションケア技術の研究開発をはじめ,効率的な福祉サービスの提供と高齢者等の自立・社会参加を可能とする福祉支援情報通信システムの研究開発を行っている。
長寿科学研究を推進するため,国立療養所中部病院に設置された長寿医療研究センターを中心に老人性痴呆症,寝たきりの予防,支援機器の開発に関する研究等に取り組んでいるほか,長寿科学総合研究事業等において,自然科学から人文社会科学に至るまでの幅広い分野の研究を行っている。
科学技術の進歩は,研究開発に携わる人々の能力や創造力に依存する面が多く,科学技術の振興を図るために人材の養成,確保,資質の向上及び流動化に努めている。