第1章 高齢化の状況(第1節 事例集)
高齢者が日常的に高齢者を支えている事例(北海道小樽市、蘭島ふれあいネットワーク)
蘭島ふれあいネットワークは、20名のメンバーで構成されており、最年少が53歳、最年長が75歳で平均年齢が67歳。男性が2人所属している。蘭島地域の町会、長寿会、民生委員、生活支援者、ホームヘルパー、新聞販売所、ケアマネジャーなどを始め、行政機関との連携を図りながら、一人暮らし高齢者に対する見守りを行っている。
そもそもは、平成2年に4名の町会理事が2年任期で小樽市より健康推進委員に任命されたことが始まり。市の中でも高齢化が進んでおり(20年2月時点高齢化率:小樽市-29.17%、蘭島地域-39.41%)、健康に過ごすための啓発活動を中心に高齢者のいる家庭を回った。その中で、高齢者の孤立の問題を目の当たりにし、「明日はわが身。自分がこの地域で終末を迎えるためにも、今何かしなければいけない。」との思いから蘭島ふれあいネットワークを立ち上げた。
現在、高齢者の安否確認を目的として、市から受託した社会福祉協議会が行う給食サービス事業にボランティアで協力している。毎週金曜日の午後四時に町会会館に集まり、ワゴン車で運ばれてきたお弁当をおそろいの青い保温バッグに入れて、利用者のもとへ届ける。ボランティアは、「毎週金曜日なので、お弁当を届けることで生活のリズムができる。」、「自分の健康管理のためにやっている。」と話す。「毎週ボランティアの方に会うのが楽しみです。」とボランティアがお弁当を持ってくるのを玄関で待っている利用者もいる。「そろそろ雪も溶けてきたから、今度の老人会には来てね。みんな待っているから。」、「そうだね。この前までは雪で自転車に乗るのが危なくて外出できなかったけど、そろそろ出かけられるね。」など、会話が弾む。
蘭島ふれあいネットワークは、そのほかに社会福祉協議会と協力して、高齢者世帯を対象としたニーズ調査を行っている。ニーズ調査では、緊急連絡先やかかりつけ主治医の連絡先のほか、食事、掃除、洗濯、裁縫、外出(買物、病院など)、相談など日常生活での“困りごと”を聞いている。「話し相手がほしい」という利用者には、頻繁にボランティアが家を訪れた。雪などで外出ができなくなった利用者の代わりに買物に行くこともある。
ネットワークの活動を通じて、利用者との間に信頼関係が生まれている。「利用者の中で、ほかの人とは話をしないのに、私の声を覚えてくれて自分とだけは話してくれる。」と嬉しそうに話すボランティアもいる。気分が悪くなり倒れた際に、真っ先に担当ボランティアに連絡をした利用者もいたそうだ。
「高齢者は高齢者が支える。団塊の世代が高齢期を迎える前に、今のうちから“地域力”をつけるためにも、若い人に参加してもらいたい。」と話す代表の薄田八重子さんは74歳。「これからは、昔から蘭島にいた人だけではなく、退職後にほかの地域から蘭島に入ってきた人にも積極的に声をかけていきたい。」とネットワークの充実を目指す。