第1章 高齢化の状況(第1節 事例集)

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定年制を廃止し、高齢者の経験や技術を活用している事例(千葉県鎌ヶ谷市、部品工業株式会社)

千葉県鎌ヶ谷市にある部品工業株式会社(従業員137名)は、昭和40年に設立され、設立当初から、高い技術力を基に建機を始めとした車体部品を中心に製造しており、特に曲げの技術に関しては、国内のみならず海外からも高い評価を受けている。

同社は、若年層の採用が困難な中で、経験と高い技術を持つ熟練の高齢従業員を活用するため、定年制の廃止に踏み切った。

そもそもの同社の発想は、女性パート従業員の短時間・短日数勤務制を高齢従業員に応用したことから始まっており、現在では、全ての従業員に対して、勤務時間等を個々の希望に応じて、一人ひとり完全に個別管理することにより、従業員のモチベーションアップにつなげている。

その一方で、会社がこれまでと同様、高い技術力を基に市場競争の中で勝ち残っていくためには、高齢従業員が長年培ってきた経験と技術を継続的に若年従業員に伝承していくことが大事であるが、熟練した高齢従業員には、どうしても仕事が集中し、時間的な余裕がなく、また、長年の自己研鑽の中での自己努力により技術を修得してきたという自負もあるため、他人には、なかなか教えたがらないところが課題としてあった。

そこで、同社は、日常業務の中で、熟練の高齢従業員と若年従業員とをペアで働かせることとした。

その際、代表取締役自らが直接、高齢従業員に依頼をするなど職人気質の高齢従業員の心理的な垣根を取り除く工夫や、積極的な設備導入により高齢従業員の日常的な業務負担を減らすなど、ソフト・ハード両面の工夫を行った。

その結果、高齢従業員と若年従業員が、体力的な不足と技術の不足をお互いに補うことができるとともに、両者の心理的な接近が図られ、技術の伝承が進むという、良いサイクルが構築されつつあるという。

同社の取組は、会社経営を行っていく上での必然性から発生したものであるが、今後ますます少子・高齢化が進行していくと予測されている中で、ひとつの参考となる事例である。

(平成19年度高年齢者雇用開発コンテスト厚生労働大臣表彰最優秀賞)

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