第1章 高齢化の状況(第2節 6)
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(6)
6 高齢者の生活環境
(1)高齢者の住まい
ア 高齢者の8割は現在の住居に満足しており、体が弱っても自宅に留まりたい人が多い
60歳以上の高齢者に現在の住宅の満足度について聞いてみると、「満足」又は「ある程度満足」している人は総数で76.3%、持家で79.1%、賃貸住宅で56.6%となっている(図1-2-6-1)。
さらに、現在の住宅の不満な点を聞いてみると、「住宅が古くなったりいたんだりしている」が63.8%と最も多く、「住宅の構造や設備が使いにくい」(32.2%)、「家賃、税金、住宅維持費等の経済的負担が重い」(24.8%)と続いている。
イ 高齢者は家庭内事故が多く、最も多い事故時の場所は「居室」
医療機関ネットワーク事業の参画医療機関から国民生活センターに提供された事故情報によると、65歳以上の高齢者が20歳以上65歳未満の人より住宅内での事故発生の割合が高い。事故の発生場所は、「居室」が45.0%と最も多く、「階段」18.7%、「台所・食堂」17.0%と続いている(図1-2-6-2)。
(2)高齢者の居住環境
60歳以上の高齢者が、外出時の障害と感じていることをみてみると、「特にない」が44.5%であるが、障害と感じている事柄は、「道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭い」が15.2%と最も多く、「ベンチや椅子等休める場所が少ない」(13.7%)、「バスや電車等公共の交通機関が利用しにくい」(13.4%)と続いている(図1-2-6-3)。
(3)高齢者の安全・安心
ア 交通事故死者数に占める高齢者の割合は5割を超える
平成27(2015)年中における65歳以上の高齢者の交通事故死者数は、2,247人で、前年より54人増加し、交通事故死者数全体に占める高齢者の割合は54.6%となった(図1-2-6-4)。
イ 高齢者の刑法犯罪被害認知件数に占める割合は増加傾向
犯罪による65歳以上の高齢者の被害の状況について、刑法犯罪被害者認知件数でみると、全刑法犯罪被害者認知件数が戦後最多を記録した平成14(2002)年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、近年は減少傾向にあるが、高齢者が占める割合は、26(2014)年は13.4%と、増加傾向にある(図1-2-6-5)。
ウ 振り込め詐欺の被害者の8割以上が60歳以上
振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺の総称)のうち、特に高齢者の被害が多いオレオレ詐欺の平成27(2015)年の認知件数は、5,806件と前年から微増となり、還付金等詐欺は2,377件と前年比で23.3%増加した。また、振り込め詐欺の被害総額は約390億円であった(表1-2-6-6)。
年次 区分 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
認知件数(件) | 17,930 | 20,481 | 7,340 | 6,637 | 6,233 | 6,348 | 9,204 | 11,256 | 12,762 |
オレオレ詐欺 | 6,430 | 7,615 | 3,057 | 4,418 | 4,656 | 3,634 | 5,396 | 5,557 | 5,806 |
架空請求詐欺 | 3,007 | 3,253 | 2,493 | 1,774 | 756 | 1,177 | 1,522 | 3,180 | 4,125 |
融資保証金詐欺 | 5,922 | 5,074 | 1,491 | 362 | 525 | 404 | 469 | 591 | 454 |
還付金等詐欺 | 2,571 | 4,539 | 299 | 83 | 296 | 1,133 | 1,817 | 1,928 | 2,377 |
被害総額(億円) | 251.4 | 275.9 | 95.8 | 100.9 | 127.2 | 160.4 | 258.7 | 379.8 | 390.5 |
資料:警察庁の統計による。平成22年以降の被害総額は、キャッシュカードを直接受け取る手口の振り込め詐欺(ただし、22年から24年はオレオレ詐欺のみ)におけるATMからの引出(窃取)額を含む。 |
27(2015)年中の振り込め詐欺の被害者を見ると、60歳以上の割合は82.1%、オレオレ詐欺の被害者に限ると98.2%となっており、特に70歳以上の女性は67.2%を占めている。また、還付金等詐欺の被害者についても、60歳以上の高齢者の割合は97.7%となっており、このうち70歳以上の女性は57.6%を占めている。
エ 高齢者の関与する消費トラブルの相談は約20万件
全国の消費生活センターに寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数は、平成20(2008)年から増加傾向にあり、25(2012)年には20万件を超えた。26(2013)年は195,480件で、前年より減少に転じたが、依然として20万件近い相談が寄せられている(図1-2-6-7)。
また、26(2014)年度に70歳以上の高齢者から寄せられた相談を販売方法・手口別にみると、電話勧誘販売が35,951件(18.4%)、次いで家庭訪販が25,877件(13.2%)となっている。
オ 住宅火災における死者数は約7割が高齢者
65歳以上の高齢者の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)についてみると、平成26(2014)年は699人と、前年より微減、全死者数に占める割合は69.5%となっている(図1-2-6-8)。
カ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定
平成26(2014)年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,120件で前年度(962件)と比べて16.4%増加し、養護者によるものが25,791件で前年度(25,310件)と比べて1.9%増加した。また、平成26年度の虐待判断事例件数は、養介護施設従事者等によるものが300件、養護者によるものが15,739件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が66.9%で最も多く、次いで心理的虐待(42.1%)、介護等放棄(22.1%)、経済的虐待(20.9%)となっている。
養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見てみると、女性が77.4%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が23.8%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、67.1%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」(40.3%)が最も多く、次いで、「夫」(19.6%)、「娘」(17.1%)と続いている(図1-2-6-9)。
(4)高齢者による犯罪
高齢者の刑法犯の検挙人員は、平成26(2014)年は47,214人と前年に比べほぼ横ばいであったものの、16(2004)年と比較すると、検挙人員では約1.3倍となっているが、犯罪者率は、19(2007)年にピークを迎えて以降は低下傾向となっている。また、26年における高齢者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比をみると、窃盗犯が73.1%と7割を超えている(図1-2-6-10)。
(5)高齢者の日常生活
ア 充実感を感じる時について、男性は「趣味やスポーツ」、女性は「友人や知人との会合・雑談」
60歳以上の日頃の生活の中で充実感を感じる時について、男性は「趣味やスポーツに熱中している時」(43.9%)、女性は「友人や知人と会合、雑談している時」(52.6%)が最も多く、男女共に「家族団らんの時」(男性37.9%、女性42.6%)と続いている(図1-2-6-11)。
イ 日常生活情報の情報源は「テレビ」が最も多く、ICTを利用している人は3割未満
日常生活に関する情報をどこから得ているかについて、「テレビ」が79.0%と最も多く、次いで「新聞」が63.8%となっている。「インターネット、携帯電話」(男性22.7%、女性9.3%)では男性の割合が高くなっている。一方、「家族」(男性34.1、女性42.0%)「友人、近所の人」(男性21.5%、女性35.8%)は女性の割合が高くなっている(図1-2-6-12)。
インターネットやスマートフォンなどの情報端末(ICT)を普段の生活で利用しているかについて、『利用している』(「積極的に利用している」と「たまに利用している」)の計)とする人は26.0%となっている。
『利用していない』(「全く利用していない」と「あまり利用していない」の計)とする人のICTの活用の意向についてみると、約2割(18.2%)が『利用したい』(「積極的に利用したい」と「たまに利用したい」の計)としている(図1-2-6-13)。
ウ 人との交流が少ない人や頼れる人がいない男性が多い
現在住んでいる地域での付き合いの程度について、60歳以上の高齢者をみると『付き合っている』(「よく付き合っている」と「ある程度付き合っている」の計)とする人は、女性80.7%に対して男性73.8%となっている(図1-2-6-14)。
65歳以上の一人暮らし高齢者が、病気などの時に看護や世話を頼みたいと考える相手は、子供がいる人は男女ともそれぞれ「子」が男性41.0%と女性58.2%と最も多い。子供がいない女性は「兄弟姉妹・親戚」(35.4%)が最も多く、次いで「当てはまる人はいない」(21.5%)となっている。一方、子供がいない男性は「当てはまる人はいない」(35.0%)が最も多く、次いで「そのことで頼りたいと思わない」(22.6%)となっており、「当てはまる人はいない」と「頼りたいと思わない」を合計すると半数を超える(図1-2-6-15)。
エ 孤立死(孤独死)を身近な問題と感じる高齢単身者は4割を超える
孤立死(孤独死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の高齢者全体では2割に満たないが、単身世帯では4割を超えている(図1-2-6-16)。
オ 孤立死と考えられる事例が多数発生している
死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成26(2014)年に2,891人となっている(図1-2-6-17)。
また、独立行政法人都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約75万戸において、単身の居住者で死亡から相当期間経過後(1週間を超えて)に発見された件数(自殺や他殺などを除く)は、平成26(2014)年度に186件、65歳以上に限ると140件となっている(図1-2-6-18)。
(6)高齢者の自殺
平成27(2015)年における60歳以上の自殺者数は9,883人で、前年から減少している。年齢階層別にみると、60~69歳(3,973人)、70~79歳(3,451人)は前年に比べ減少した一方、80歳以上(2,459人)は増加している(図1-2-6-19)。
(7)東日本大震災における高齢者の被害状況
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災における高齢者の被害状況をみると、被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は28(2016)年3月11日までに15,824人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している15,749人のうち60歳以上の高齢者は10,404人と66.1%を占めている(図1-2-6-20)。
また、東日本大震災における震災関連死の死者1数は、平成27(2015)年9月30日時点で3,407人にのぼり、このうち66歳以上が3,018人と全体の88.6%を占めている。