第1章 高齢化の状況(第2節 4)
第2節 高齢期の暮らしの動向(4)
4 生活環境
(1)65歳以上の者の住まい
ア 高齢者(65歳以上)のいる主世帯の8割以上が持家に居住している
高齢者(65歳以上)のいる主世帯について、住宅所有の状況を見ると、持ち家が82.7%と最も多い。ただし、高齢者(65歳以上)単身主世帯の持家の割合は65.6%となり、高齢者(65歳以上)のいる主世帯総数に比べ持ち家の割合が低い(図1-2-4-1)。
(2)60歳以上の者の外出の手段
内閣府が平成30(2018)年に行った調査では、外出する際に利用する手段を尋ねたところ、全体では「自分で運転する自動車」が56.6%と最も高く、ついで「徒歩」(56.4%)となっている。
都市規模別で見ると大都市では、「徒歩」(71.0%)、ついで「自分で運転する自動車」(38.4%)、「電車」(36.5%)との回答が多い。町村では、7割近くが「自分で運転する自動車」(66.8%)と回答し、ついで「徒歩」(42.7%)、「家族などの運転する自動車」(24.6%)との回答が多い。
また、年齢別で見ると、60~64歳では「自分で運転する自動車」が78.8%と最も高く、ついで「徒歩」が48.0%となっているが、年齢が高くなるほど「徒歩」か「家族などの運転する自動車」が多くなる傾向にあり、80歳以上では、「徒歩」が58.5%、「家族などの運転する自動車」が36.1%となり、「自分で運転する自動車」は26.4%となっている(図1-2-4-2)。
(3)安全・安心
ア 交通事故死者数に占める65歳以上の者の割合は55.7%
平成30(2018)年中における65歳以上の者の交通事故死者数は、1,966人で、前年より54人減少したが、交通事故死者数全体に占める65歳以上の者の割合は、55.7%と引き続き高い水準にある(図1-2-4-3)。
また、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は減少傾向にあるが、平成30(2018)年における80歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は252件、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は11.1件と前年をやや上回った(図1-2-4-4)。
イ 65歳以上の者の刑法犯罪被害認知件数に占める割合は増加傾向
犯罪による65歳以上の者の被害の状況について、65歳以上の者の刑法犯被害認知件数で見ると、全刑法犯被害認知件数が戦後最多を記録した平成14(2002)年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、近年は減少傾向にあるが、65歳以上の者が占める割合は、平成29(2017)年は14.8%と、増加傾向にある(図1-2-4-5)。
ウ 振り込め詐欺の被害者の約8割が60歳以上
振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺の総称)のうち、還付金等詐欺の平成30(2018)年の認知件数は、1,910件と前年から減少となった一方、オレオレ詐欺は9,134件と前年比で7.5%増加した。また、振り込め詐欺の被害総額は約349億円であった(表1-2-4-6)。
年次
区分
|
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
認知件数(件) | 7,340 | 6,637 | 6,233 | 6,348 | 9,204 | 11,256 | 12,741 | 13,605 | 17,926 | 16,315 |
オレオレ詐欺 | 3,057 | 4,418 | 4,656 | 3,634 | 5,396 | 5,557 | 5,828 | 5,753 | 8,496 | 9,134 |
架空請求詐欺 | 2,493 | 1,774 | 756 | 1,177 | 1,522 | 3,180 | 4,097 | 3,742 | 5,753 | 4,852 |
融資保証金詐欺 | 1,491 | 362 | 525 | 404 | 469 | 591 | 440 | 428 | 548 | 419 |
還付金等詐欺 | 299 | 83 | 296 | 1,133 | 1,817 | 1,928 | 2,376 | 3,682 | 3,129 | 1,910 |
被害総額(億円) | 95.8 | 100.9 | 127.2 | 160.4 | 258.7 | 379.8 | 393.7 | 375.0 | 378.1 | 349.0 |
資料:警察庁の統計による。平成30年の値は暫定値。 平成22年以降の被害総額は、キャッシュカードを直接受け取る手口の振り込め詐欺。(ただし、22年から24年はオレオレ詐欺のみ)におけるATMからの引出(窃取)額を含む。 |
平成30(2018)年中の振り込め詐欺の被害者を見ると、60歳以上の割合は83.7%、特に高齢者が被害者である割合が高いのは、オレオレ詐欺及び還付金等詐欺であった。オレオレ詐欺については、60歳以上の割合は97.9%となっており、特に70歳以上の女性は被害者の79.8%を占めている。また、還付金等詐欺の被害者についても、60歳以上の割合は95.5%となっている。
エ 65歳以上の者の犯罪者率は低下傾向
65歳以上の者の刑法犯の検挙人員は、平成29(2017)年は46,264人と前年に引き続きやや減少した。犯罪者率は、平成19(2007)年以降は低下傾向となっている。また、平成29(2017)年における65歳以上の者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比を見ると、窃盗犯が72.0%と7割を超えている(図1-2-4-7)。
オ 70歳以上の者の関与する消費トラブルの相談は約23万件
平成21(2009)年度から平成30(2018)年度に全国の消費生活センター等に寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数について見ると、相談件数は平成25(2013)年度まで増加傾向にあり、同年度には20万件を超えた。平成26(2014)年度から平成28(2016)年度は減少傾向にあったが、平成29(2017)年度から増加に転じ、平成30(2018)年度は229,935件となっている(図1-2-4-8)。
また、平成30(2018)年度に契約当事者が70歳以上の高齢者の相談を販売方法・手口別に見ると、かたり商法(身分詐称)が31,578件(13.7%)、ついで家庭訪販が21,951件(9.5%)となっている。
カ 住宅火災における死者数は約7割が65歳以上
住宅火災における65歳以上の死者数(放火自殺者等を除く。)について見ると、平成29(2017)年は646人と、前年より増え、全死者数に占める割合は72.7%となっている(図1-2-4-9)。
キ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定
平成29(2017)年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,898件で前年度(1,723件)と比べて10.2%増加し、養護者によるものが30,040件で前年度(27,940件)と比べて7.5%増加した。また、平成29年度の虐待判断件数は、養介護施設従事者等によるものが510件、養護者によるものが17,078件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が66.7%で最も多く、次いで心理的虐待(39.1%)、介護等放棄(20.3%)、経済的虐待(18.3%)となっている。
養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見てみると、女性が76.1%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が24.4%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、67.0%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が40.3% と最も多く、次いで、「夫」が21.1%、「娘」が17.4%となっている(図1-2-4-10)。
ク 成年後見制度の利用者数は増加傾向
平成30(2018)年12月末時点における成年後見制度の利用者数は218,142人で、各類型(成年後見、保佐、補助、任意後見)で増加傾向にある(図1-2-4-11)。
ケ 男性単身世帯の半数以上が近所の人とのつきあいはあいさつ程度
世帯タイプ別に近所の人とのつきあいの程度を見ると、男性単身世帯において、「あいさつをする程度」、「つきあいはほとんどない」と回答する割合が高い(図1-2-4-12)。
コ 一人暮らしの60歳以上の者の5割超が孤立死を身近な問題と感じている
孤立死(誰にも看取られることなく亡くなった後に発見される死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の者全体では34.1%だが、一人暮らし世帯では50.8%と5割を超えている(図1-2-4-13)。
サ 孤立死と考えられる事例が多数発生している
死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成29(2017)年に3,333人となっている(図1-2-4-14)。
(4)60歳以上の者の自殺
平成30(2018)年における60歳以上の自殺者数は8,367人で、前年から減少している。年齢階層別に見ると、60~69歳(3,079人)、70~79歳(2,998人)、80歳以上(2,290人)となり、70~79歳及び80歳以上では前年に比べ増加している(図1-2-4-15)。
(5)東日本大震災における被害状況
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災における被害状況を見ると、被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者は平成31(2019)年2月28日までに15,827人にのぼり、検視等を終えて年齢が判明している15,767人のうち60歳以上の人は10,420人と66.1%を占めている(図1-2-4-16)。
また、東日本大震災における震災関連死の死者6数は、平成30(2018)年9月30日時点で3,701人にのぼり、このうち66歳以上が3,279人と全体の88.6%を占めている。