第1章 高齢化の状況(第3節 1-1)

[目次]  [前へ]  [次へ]

第3節 <特集>高齢者の住宅と生活環境に関する意識(1)

高齢期の住生活には様々な不安が伴うと考えられる。例えば、最期まで安心して暮らせる住宅の確保や、病気や要介護になり日常生活に支障を来した場合の問題、車の運転による事故の危険性等である。こうした不安を乗り越えて高齢者が安心して暮らせるようにするためにはどうしたらよいのだろうか。背景事情を探るため、平成30年度は「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」を実施し、60歳以上の人を対象に住宅や生活環境に関する実態や意識を把握することとした。この白書では、当該調査のうち特徴的な事項を紹介する。

(資料出所は特に断りのない限り、内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度))。

内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度)

・調査地域:全国

・調査対象者:全国の60歳以上(平成30年1月1日現在)の男女(施設入所者は除く)

・調査時期:平成30年11月17日~平成30年12月9日

・有効回収数:1,870人(標本数男女合わせて3,000人)

[都市規模区分]

大都市 東京都23区・政令指定都市

中都市 人口10万人以上の市

小都市 人口10万人未満の市

町村  郡部(町村)

※本調査については、本格的な高齢期を迎える前からの年代による意識の違い等についても把握するため、60歳以上の男女を調査対象としている。

[調査対象者の主な基本属性]

性別 全体
1,870人 46.5% 53.5%
年齢 全体 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80歳以上 65歳以上(再掲) 75歳以上(再掲)
1,870人 14.4% 25.4% 22.1% 19.4% 18.7% 85.6% 38.1%

1 住まいに関する意識

(1)60歳以上の人の約9割が持家に居住

全国の60歳以上の男女に現在の住まいの形態を聞いたところ、「持家(計)」(一戸建てと分譲マンション等の集合住宅の合計)とする者が9割近く(88.2%)となっている。

都市規模別に見ると、大都市では「持家(計)」の割合が8割弱(79.4%)とやや低くなっている。

また、未既婚別でも差が見られ、「持家(計)」の割合は、「既婚(配偶者あり)」で91.7%と高くなっている一方、「既婚(配偶者と離別)」は54.4%、「未婚」では78.3%と低くなっている(図1-3-1)。

(2)持家より賃貸住宅居住者で不安を感じている割合が高い

次に、60歳以上の人に、将来の住まいに関して不安と感じていることがあるかどうかを聞いたところ、「不安と感じていることはない」とする人が71.1%であるのに対し、「不安と感じていることがある」とする人は26.3%であった。

年齢別に見ると、年齢が高くなるほど、「不安と感じていることはない」とする人の割合が高くなる傾向がある。

持家、賃貸住宅の別で見ると、「不安と感じていることがある」とする人が「持家(計)」の24.9%に対し、「賃貸住宅(計)」(一戸建てとアパート、マンション、公営・公団等の集合住宅の合計)の人が36.5%と高くなっている(図1-3-2)。

「不安と感じていることがある」と答えた人が、具体的にどのような点を不安に感じているかを住居形態別に見ると、「持家(計)」の人は、「虚弱化したときの住居の構造」(29.7%)、「住宅の修繕費等必要な経費を払えなくなる」(26.5%)、「世話をしてくれる人の存在」(24.3%)を不安と感じている割合が比較的高いのに対し、「賃貸住宅(計)」の人は、「高齢期の賃貸を断られる」(19.5%)、「家賃等を払い続けられない」(18.2%)を挙げる割合が、比較的高くなっている(図1-3-3)。

[目次]  [前へ]  [次へ]