第1章 高齢化の状況(第3節 1-3)

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第3節 <特集>高齢者の住宅と生活環境に関する意識(3)

3 まとめと考察

(1)高齢期の生活の安心の確保

今回の調査では、60歳以上の人のうち4分の3近くが、経済的に心配なく暮らしており、約8割が生きがいを感じているなど、物心両面で安定した暮らしをしている高齢者が多いことが明らかとなった。しかし、その状況は必ずしも一様ではなく、例えば、未婚や離婚のため配偶者がいない人や、健康状態の良くない人は、心配なく暮らしている割合や生きがいを感じている割合が低くなる傾向が見られるなど、個別の事情等により異なる。

今後の生活において不安なこととしては、医療・介護の負担増など、健康面が家計に及ぼす影響を不安に感じる人が多く見られた。認知症等により財産管理ができなくなる不安を感じている人は、全体の2割程度であったが、子供と同居していない世帯の増加や長寿化の進行により、こうした不安が今後増加していく懸念もある。このような不安を減らし、高齢期の生活の安心を確保していくためには、健康状態が悪化した場合にも様々なサポートが得られる見通しを立てられるようにしておくことが重要である。

そのためには、公的な医療保険や介護保険の制度の周知のほか、成年後見制度の利用を促していくことも有効と考えられる。

この点に関して、青森県八戸市では、認知症高齢者が成年後見制度を利用しやすくなるよう、市民後見人の育成や制度の普及啓発に取り組んでおり(トピックス1参照)、認知症になっても地域の力で高齢者の生活の安心を図る仕組みづくりとして注目される。

(2)高齢期の就業は生活の豊かさにつながる

60歳以上の人のうち、収入のある仕事をしている人は4割近くとなり、平成28年と比べて幅広い年齢層で就業割合が増加した。就業している人は就業していない人に比べて、経済的に心配なく暮らしている割合や、生きがいを感じている割合が高いことから、就業する高齢者が増えることは、高齢期の生活の豊かさを高めることにつながると考えられる。

一方で、現在収入のある仕事をしていない人の9割近くが、今後働くつもりはないと答えており、今後さらに高齢者の就業を広げていくためには、就業意欲の掘り起こしも重要である。年齢が上がるほど就業の理由が多様化することや、就業しない理由として体力面の不安を挙げる人が増えることを考えると、収入の確保にこだわらず、個人の事情に合わせて参加可能で、体力面に多少の不安があっても挑戦してみようと思える多様な就業機会が提供されることが望ましい。

この点に関して、鹿児島市シルバー人材センターでは、会員拡大活動や独特の地域サービスの仕組みづくりを通じて、地域の高齢者の就業・社会参加意欲を高める取組を積極的に行っている(トピックス2参照)。こうした取組は、高齢者自身の生活の豊かさだけでなく、高齢者が支え手となって地域の豊かさも高めることにつながっている。

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