第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス3)

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第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の生活と意識の特徴(トピックス3)

トピックス3 オンライン『でも』人と地域をつなげる~高齢化率32%、人口5万5千人、埼玉県日高市社会福祉協議会の挑戦~

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、感染防止対策を踏まえた、新たな人や地域との「つながり」の再構築が求められている。

こうした中、埼玉県日高市社会福祉協議会は、コロナ禍において活動休止を余儀なくされたサロンやボランティア組織に対し、つながり続けるための選択肢の一つとしてのオンラインの活用を促しており、その取組を紹介する。

1 コロナ禍の中でもつながり続けるための「置き換え」という視点

集うこと、出向くことに制約が加わったコロナ禍において、大きな影響を受けたのが地域活動である。会うことを前提に紡いできたつながり、支えあい、まちづくりの活動の多くは休止を余儀なくされた。埼玉県中南部に位置する日高市では、昨年の緊急事態宣言発出前後から、趣味や介護予防を通じた交流の場であったサロン活動、ボランティア活動や地縁組織の中には休止する団体が増えていった。緊急事態宣言解除後も活動を止めたままの場も少なくない中で、埼玉県日高市社会福祉協議会(以下「社協」という。)には、YouTubeなどのオンラインを使って何かできないかという相談が寄せられる様になったという。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、これまでも社協では、今何かしなければ、紡いできた地域のつながりが途絶えてしまうという危機感の下、住民とともに、コロナ禍でも「つながる」ことができる方法を考えてきた。孤立化するメンバーを心配するサロンのリーダーとともにハガキやお便りでつながりを伝える方法を考えたり、再開の目途のたたない子ども食堂でお弁当を配布する方法を考えたり、今できる「置き換え」を模索してきた。こうした中で、寄せられたオンライン活用の相談を、「無理」と一言で終わらせることはできなかった。

とはいえ、社協内にオンライン活用が得意な職員もおらず、住民の多くも、オンライン活用に前向きとはいえない状況だった。

そこで、まずは社協に登録しているボランティアサポーターからオンラインに詳しい人に声をかけ、職員が一緒にオンライン活用について勉強しつつ、最初に取り組むべきことを考えた。そこで浮かんだのが、オンライン活用に後ろ向きな住民にも、つながり続けるための選択肢の一つとしてオンラインを実際にイメージしてもらうことだった。

2 つながり続けるための選択肢の一つとして「オンライン」をイメージするために

地域の活動者には拒否感をもつ高齢層も少なくなく、そんな人にも関心をもってもらうための場として選んだのが1年の福祉活動の成果を報告する場である「地域福祉フォーラム」だった。フォーラムのテーマについても、オンラインありきではなく「地域福祉にオンラインは不要?」という逆説の切り口で、昨年8月に準備を始め10月に開催した。例年のように公会堂などに大人数を集めることはできない状況だったことから、フォーラムは、10~20名程度の定員による4つの拠点におけるパブリックビューイングと自宅からオンラインでの聴講の併用開催とした。

当日に参加した88名は高齢者が中心で、オンラインでの聴講が初めてという70代・80代の方もいた。フォーラムでは、地域福祉の推進にオンライン活用の可能性を問いかけたところ、実施後のアンケートでは、オンラインへのハードルが下がったことや、チャレンジしたいという参加者の前向きな姿勢がみえてきた。加えて、フォーラム参加前の自宅からのオンライン聴講に必要な事前の操作方法への相談対応で、これまで顔を見たことのない人とつながったり、初めて顔を見る人の参加があったなど、オンラインならではの新たな「つながり」もみられたという。

オンラインでの聴講の様子(1)
オンラインでの聴講の様子(2)

3 イメージからオンライン「活用」にむけて動き出した地域

その後、昨年12月に地域サロンで開催した「オンライン講座 スマホでつながる地域活動」で、スマートフォンからZoomを使ったつながり方も含め操作方法や活用方法を教えたところ、高齢者を中心にした参加者が知り合いに「Zoomを使うとこんなことができる」という口コミの輪を広げており、オンライン「でも」つながることに挑戦する動きがじわじわと広がりつつあるという。

社協でフォーラムを担当したコミュニティソーシャルワーカーの吉田心弥氏は、オンライン活用によって、「コロナ禍をのりこえるだけではなく、地域がより強く、豊かになっていく可能性を感じている」という。

オンラインでの聴講の様子(3)

日高市はオンラインを活用していくために必要な環境や資源、予算も潤沢とはいえないが、住民のニーズを出発点に、手作りで住民と社協が創り出してきたからこそ、オンライン活用が地域に拡がっているという。

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