第2章 令和2年度高齢社会対策の実施の状況(第2節 2)

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第2節 分野別の施策の実施の状況(2)

2 健康・福祉

「健康・福祉」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を示している。

高齢期に健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、長寿を全うできるよう、個人間の健康格差をもたらす地域・社会的要因にも留意しつつ、生涯にわたる健康づくりを総合的に推進する。

今後の高齢化の進展等を踏まえ、地域包括ケアシステムの一層の推進を図るとともに、認知症を有する人が地域において自立した生活を継続できるよう支援体制の整備を更に推進する。また、家族の介護を行う現役世代にとっても働きやすい社会づくりのため、介護の受け皿整備や介護人材の処遇改善等の「介護離職ゼロ」に向けた取組を推進する。

高齢化の進展に伴い医療費・介護費の増加が見込まれる中、国民のニーズに適合した効果的なサービスを効率的に提供し、人口構造の変化に対応できる持続可能な医療・介護保険制度を構築する。また、人生の最終段階における医療について国民全体で議論を深める。

(1)健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

健康寿命の延伸や生活の質の向上を実現し、健やかで活力ある社会を築くため、がん等生活習慣病の一次予防に重点を置いた対策として平成12年度から進めてきた「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が平成24年度で終了したことから、平成23年10月に取りまとめた最終評価を基に「厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会」等で議論を行い、平成25年度から10年間の国民健康づくり運動を推進するため、健康を支え、守るための社会環境の整備に関する具体的な目標等を明記した健康日本21(第二次)を平成24年7月に告示した。平成29年度は健康日本21(第二次)開始から5年目にあたり、平成30年9月に中間評価報告書をまとめた。

健康日本21(第二次)に基づき、企業、関係団体、地方公共団体等と連携し、健康づくりについて取組の普及啓発を推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」を引き続き実施していく。

さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が「健康増進法」(平成14年法律第103号)に基づき実施している健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の健康増進事業について一層の推進を図った(表2-2-4)。

表2-2-4 健康増進事業の一覧
種類等 対象者 内容 実施場所
健康手帳の利用
  • 40歳以上の者
  • 特定健診・保健指導の記録
  • 健康教育、健康相談、健康診査、訪問指導等の記録
  • 生活習慣病の予防及び健康の保持のための知識
  • 医療に関する記録等必要と認められる事項
 
健康教育
  • 個別健康教育
  • 40歳から64歳までの者で特定健康診査及び健康診査等の結果、生活習慣病の改善を促す必要があると判断される者(特定保健指導又は保健指導対象者は除く)
  • 疾病の特性や個人の生活習慣等を具体的に把握しながら、継続的に個別に健康教育を行う
    • 高血圧個別健康教育
    • 脂質異常症個別健康教育
    • 糖尿病個別健康教育
    • 喫煙者個別健康教育
市町村保健センター
医療機関等
  • 集団健康教育
  • 40歳から64歳までの者
  • 必要に応じ、その家族等
  • 健康教室、講演会等により、以下の健康教育を行う
    • 一般健康教育
    • 歯周疾患健康教育
    • ロコモティブシンドローム(運動器症候群)健康教育
    • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)健康教育
    • 病態別健康教育
    • 薬健康教育
健康相談
  • 重点健康相談
  • 40歳から64歳までの者
  • 必要に応じ、その家族等
  • 幅広く相談できる窓口を開設し、以下の健康相談を行う
    • 高血圧・脂質異常症・糖尿病・歯周疾患・骨粗鬆症
    • 女性の健康・病態別(肥満、心臓病等)
市町村保健センター等
  • 総合健康相談
 
  • 対象者の心身の健康に関する一般的事項に関する指導、助言
健康診査等 健康診査
  • 健康診査
  • 40歳以上の者で特定健康診査及び後期高齢者医療広域連合が保健事業として行う健康診査の対象とならない者
  • 必須項目
    • 既往歴の調査等(服薬歴・喫煙習慣の状況に係る調査含む)
    • 身長、体重及び腹囲の検査等
    • 理学的検査(視診、打聴診、腹部触診等)
    • 血圧測定
    • 肝機能検査(血清GOT、GPT、γ-GTP)
    • 血中脂質検査(中性脂肪、HDL-コレステロール、LDLコレステロール)
    • 血糖検査
    • 尿検査(糖、蛋白)
  • 選択項目〔医師の判断に基づき実施〕
    • 貧血検査(ヘマトクリット値、血色素量及び赤血球数)
    • 心電図検査・眼底検査
    • 血清クレアチニン検査
市町村保健センター
保健所
検診車
医療機関等
  • 訪問健康診査
  • 健康診査の対象者であって寝たきり者等
  • 健康診査の検査項目に準ずる
  • 介護家族訪問健康診査
  • 健康診査の対象者であって家族等の介護を担う者
  • 健康診査の検査項目に準ずる
保健指導
  • 健康診査の結果から保健指導の対象とされた者
    (40歳から74歳までの者)
  • 動機付け支援
  • 積極的支援
市町村保健センター
保健所
医療機関等
歯周疾患検診
  • 40、50、60、70歳の者
  • 検診項目
    • 問診
    • 歯周組織検査
 
骨粗鬆症検診
  • 40、45、50、55、60、65、70歳の女性
  • 検診項目
    • 問診
    • 骨量測定
 
肝炎ウイルス検診
  • 当該年度において満40歳となる者
  • 当該年度において満41歳以上となる者で過去に肝炎ウイルス検診に相当する検診を受けたことがない者
  • 問診
  • C型肝炎ウイルス検査
    • HCV抗体検査
    • HCV核酸増幅検査(必要な者のみ)
  • B型肝炎ウイルス検査
    • HBs抗原検査
市町村保健センター
保健所
検診車
医療機関等
訪問指導
  • 40歳から64歳までの者であって、その心身の状況、その置かれている環境等に照らして療養上の保健指導が必要であると認められる者
  • 家庭における療養方法等に関する指導
  • 介護を要する状態になることの予防に関する指導
  • 家庭における機能訓練方法、住宅改造、福祉用具の使用に関する指導
  • 家族介護を担う者の健康管理に関する指導
  • 生活習慣病の予防に関する指導
  • 関係諸制度の活用方法等に関する指導
  • 認知症に対する正しい知識等に関する指導
対象者の居宅
総合的な保健推進事業
  • 他の健康増進事業の対象者と同様
  • 健康増進法第19条の2に基づき市町村が実施する各検診等の一体的実施及び追加の健診項目に係る企画・検討
 
(注) 65歳以上の者については、介護予防の観点から別事業を実施している。平成10年度より一般財源化されているがん検診についても、健康増進法に基づく健康増進事業として位置づけられている。

このほか、国民が生涯にわたり健全な食生活を営むことができるよう、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の発症及び重症化予防の観点から、「日本人の食事摂取基準」を策定し、5年ごとに改訂している。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、我が国における更なる高齢化の進展を踏まえ、新たに高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れて策定を行った。この改定と合わせて、高齢者やその家族、行政関係者等が、フレイル予防に役立てることができるパンフレットや動画を作成し、公表した。

また、平成29年3月に策定した「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を踏まえた配食サービスの普及と利活用の推進に向けて、適切な配食の提供及び栄養管理を行う事業をモデル的に実施した。

さらに、医療保険者による特定健康診査・特定保健指導の着実な実施や、データヘルス計画に沿った取組等、加入者の予防健康づくりの取組を推進していくとともに、糖尿病を始めとする生活習慣病の重症化予防の先進的な事例の横展開等を実施した。

いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会の実現に向けて、地方公共団体におけるスポーツを通じた健康増進に関する施策を持続可能な取組とするため、域内の体制整備及び運動・スポーツに興味・関心を持ち、習慣化につながる取組を推進した。

「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月食育推進会議決定)に基づき、家庭、学校・保育所、地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者の交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性の情報提供等を実施した。

また、配食事業の栄養管理に関するガイドラインを踏まえた配食サービスの普及と利活用の推進に向けて、事業者及び地方公共団体において、ガイドラインを踏まえて取り組んでいる先行事例を収集し、事業者及び地方公共団体向けの参考事例集を作成し、公表した。

高齢受刑者で日常生活に支障がある者の円滑な社会復帰を実現するため、リハビリテーション専門スタッフを配置した。

加えて、散歩や散策による健康づくりにも資する取組として、河川空間とまち空間が融合した良好な空間の形成を目指す「かわまちづくり」の推進を図った。

国立公園等においては、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてユニバーサルデザイン化、情報発信の充実等により、高齢者にも配慮した環境の整備を実施した。

イ 介護予防の推進

介護予防は、高齢者が要介護状態等になることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的として行うものである。平成27年度以降、通いの場の取組を中心とした一般介護予防事業等を推進しており、一部の自治体では、その取組の成果が現れてきているとともに、介護予防に加え、地域づくりの推進という観点からも保険者等の期待の声も大きく、また、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の動向も踏まえ、その期待はさらに大きくなっている。

このような状況を踏まえ、令和元年5月から、「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」を開催し、一般介護予防事業等の今後求められる機能やPDCAサイクルに沿った更なる推進方策等の検討を集中的に実施し、令和元年12月13日に取りまとめを公表した。

また、同取りまとめを踏まえ、令和3年度から開始する第8期介護保険事業(支援)計画に向けた今後の方向性等について、自治体職員等に対する担当者会議や研修会等を実施し、市町村における地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組を推進するとともに、2020年度保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金において、健康づくり・介護予防に関する抜本的な強化を行い、更なる推進を図った。

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、高齢者の外出自粛による閉じこもりや健康への影響が懸念されたことから、高齢者が居宅で健康に過ごすための情報や感染防止に配慮して通いの場の取組を実施するための留意事項等を紹介する特設Webサイトの開設や、自治体等の好事例の横展開、国立長寿医療研究センターで開発しているスマートフォン等用アプリを活用した居宅における健康づくりの支援等を実施した。

(2)持続可能な介護保険制度の運営

介護保険制度については、平成12年4月に施行されてから20年以上を経過したところであるが、介護サービスの利用者数はスタート時の3倍を超える等、高齢期の暮らしを支える社会保障制度の中核として確実に機能しており、少子高齢社会の日本において必要不可欠な制度となっているといえる(表2-2-5)。

表2-2-5 介護サービス利用者と介護給付費の推移
  利用者数 介護給付費
平成12年4月 平成15年4月 平成18年4月 平成21年4月 平成24年4月 平成25年4月 平成26年4月 平成27年4月 平成28年4月 平成29年4月 平成30年4月 平成31年4月 平成12年4月 平成15年4月 平成18年4月 平成21年4月 平成24年4月 平成25年4月 平成26年4月 平成27年4月 平成28年4月 平成29年4月 平成30年4月 平成31年4月
居宅
(介護予防)サービス
97万人 201万人 255万人 278万人 328万人 348万人 366万人 382万人 390万人 381万人 366万人 378万人 618億円 1,825億円 2,144億円 2,655億円 3,240億円 3,538億円 3,736億円 3,795億円 3,626億円 3,670億円 3,651億円 3,811億円
地域密着型
(介護予防)サービス
- - 14万人 23万人 31万人 34万人 37万人 39万人 72万人 81万人 84万人 87万人 - - 283億円 445億円 625億円 696億円 760億円 801億円 1,120億円 1,181億円 1,245億円 1,299億円
施設サービス 52万人 72万人 79万人 83万人 86万人 89万人 89万人 90万人 92万人 93万人 93万人 95万人 1,571億円 2,140億円 1,985億円 2,141億円 2,242億円 2,296億円 2,327億円 2,325億円 2,336億円 2,379億円 2,436億円 2,484億円
合計 149万人 274万人 348万人 384万人 445万人 471万人 493万人 512万人 523万人 554万人 543万人 559万人 2,190億円 3,965億円 4,411億円 5,241億円 6,107億円 6,530億円 6,823億円 6,921億円 7,082億円 7,230億円 7,332億円 7,594億円
資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告」
(注)端数処理の関係で、合計の数字と内訳数が一致しない場合がある。地域密着型(介護予防)サービスは、平成17年の介護保険制度改正に伴って創設された。

今後、2025年さらには2040年を見据え、介護保険制度のさらなる見直しを進める必要があり、社会保障審議会介護保険部会での議論等を踏まえ、「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」を第201回通常国会に提出し、2020(令和2)年6月5日に成立した(令和2年法律第52号)。

この法律では、地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進や医療・介護のデータ基盤の整備の推進、介護人材及び業務効率化の取組の強化を盛り込んでおり、これらを踏まえ、第8期介護保険事業計画を策定するとともに地域共生社会の実現に向けた取組を進めている。

(3)介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)

ア 必要な介護サービスの確保

地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指すため、令和2年度においても訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能をあわせ持つ「看護小規模多機能型居宅介護」等の地域密着型サービスの充実、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいや要介護高齢者の長期療養・生活施設として平成30年度に創設した「介護医療院」の整備、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を進めた。

また、地域で暮らす高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として、全国の自治体に「地域ケア会議」の普及・定着を図った。

「地域ケア会議」は、地域における高齢者支援の中核機関である地域包括支援センター等において、医療、介護の専門家等多職種が協働して個別事例の支援方針を検討し、この取組を積み重ねることにより地域の共通課題の抽出を進めている。市町村では、地域包括支援センターから提供された地域課題等に基づき、課題の解決や地域包括ケアの基盤整備に向けた資源開発・政策形成等を進めている。国においては、市町村に対し、「地域ケア会議」の開催に係る費用に対して、財政支援を行った。

あわせて、介護人材の確保のため、介護分野への元気高齢者等参入促進セミナー事業や、介護職員に対する悩み相談窓口設置事業等を地域医療介護総合確保基金に新たに位置付け、令和元年度に引き続き、当該基金の活用により、「参入促進」「労働環境の改善」「資質の向上」に向けた都道府県の取組を支援した。さらに、介護福祉士修学資金貸付事業や再就職準備金貸付事業等により、新規参入の促進や離職した介護人材の呼び戻し対策に取り組んだほか、職場体験の実施等の取組を行った。また、介護職の魅力や社会的評価の向上を図り、介護分野への参入を促進するため、介護を知るための体験型イベントの開催等多様な人材の確保等に向けた取組を行った。介護職員の処遇改善については、これまでに実施してきた処遇改善に加えて、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)に基づき、令和元年10月から、経験・技能のある職員に重点化を図りつつ、介護職員の更なる処遇改善を実施している。なお、介護福祉士修学資金等貸付事業については、令和2年度第3次補正予算において、貸付原資等の積み増しを行った。

また、介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」に基づき、従前から実施してきた介護福祉機器を導入した事業主や、賃金制度の整備等を行った事業主への助成措置や、介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え、事業所の雇用管理改善に係る好事例把握やコンサルティングを実施した。人材の参入促進を図る観点からは、介護に関する専門的な技能を身につけられるようにするための公的職業訓練の充実を図るとともに、全国の主要なハローワークに設置する「人材確保対策コーナー」において、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人充足に向けた助言・指導等を実施することに加え、「人材確保対策コーナー」を設置していないハローワークにおいても、医療・福祉分野の職業相談・職業紹介、求人情報の提供及び「人材確保対策コーナー」の利用勧奨等の支援を実施した。さらに、各都道府県に設置されている福祉人材センターにおいて、離職した介護福祉士等からの届出情報をもとに、求職者になる前の段階からニーズに沿った求人情報の提供等の支援を推進するとともに、当該センターに配置された専門員が求人事業所と求職者双方のニーズを的確に把握した上で、マッチングによる円滑な人材参入・定着支援、職業相談、職業紹介等を推進した。

また、在宅・施設を問わず必要となる基本的な介護の知識・技術を修得する「介護職員初任者研修」を各都道府県において実施した。

「11月11日」の「介護の日」に合わせ、都道府県・市区町村、介護事業者、関係機関・団体等の協力を得つつ、国民への啓発のための取組を重点的に実施した(図2-2-6)。

図2-2-6 介護の日ポスター

また、地域包括ケアの推進等により住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるような体制整備を目指して、引き続き在宅医療・介護の連携推進等、制度、報酬及び予算面から包括的に取組を行っている。

イ 介護サービスの質の向上

介護保険制度の運営の要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、引き続き、実務研修及び現任者に対する研修を体系的に実施した。また、地域包括支援センターにおいて、介護支援専門員に対する助言・支援や関係機関との連絡調整等を行い、地域のケアマネジメント機能の向上を図った。

また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、自治体と連携し、地域住民への普及啓発や関係者への研修等を進め、高齢者虐待の未然防止や早期発見に向けた取組を推進した。

平成24年4月より、一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件の下に喀痰吸引等の行為を実施できることとなった。令和2年度においては、引き続き各都道府県と連携のもと、研修等の実施を推進し、サービスの確保、向上を図った。

高齢化が進展し要介護・要支援認定者が増加する中、介護者(家族)の不安の軽減やケアマネジャー等介護従事者の負担軽減を図る必要があることから、平成31年1月より、マイナポータルを活用し介護保険手続の検索やオンライン申請を可能とする「介護ワンストップサービス」を開始した。

令和2年度においては、オンライン申請における申請フォームのひな形を作成し、マイナポータル・ぴったりサービスへのプリセットを順次実施するなど、地方公共団体への導入促進を図った。

ウ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供

持続可能な社会保障制度を確立するためには、高度急性期医療から在宅医療・介護までの一連のサービス提供体制を一体的に確保できるよう、質が高く効率的な医療提供体制を整備するとともに、国民が可能な限り住み慣れた地域で療養することができるよう、医療・介護が連携して地域包括ケアシステムの実現を目指すことが必要である。

このため、平成26年6月に施行された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第83号。以下「医療介護総合確保推進法」という。)に基づき各都道府県に創設された消費税増収分を財源とする地域医療介護総合確保基金を活用し、在宅医療・介護サービスの提供体制の整備等のための地域の取組に対して支援を行った。また、医療介護総合確保推進法の下で、在宅医療・介護の連携推進に係る事業は、平成27年度以降、「介護保険法」(平成9年法律第123号)の地域支援事業に位置づけ、市区町村が主体となって地域の医師会等と連携しながら取り組むこととされた。平成30年度からは、全ての市区町村で、地域の実情を踏まえつつ、医療・介護関係者の研修や地域住民への普及啓発等の取組が実施されている。また、令和2年10月には在宅医療・介護が円滑に切れ目なく提供される仕組みを構築できるよう、介護保険法施行規則の一部改正(令和3年4月1日施行)を行うとともに「在宅医療・介護連携推進事業の手引き(ver.3)」を公開した。

エ 介護と仕事の両立支援
(ア)育児・介護休業法の円滑な施行

介護休業や介護休暇等の仕事と介護の両立支援制度等を定めた「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)について、都道府県労働局において制度の内容を周知するとともに、企業において制度内容が定着し、法の履行確保が図られるよう事業主に対して指導を行った。

また、介護休暇をより柔軟に利用できるよう、介護休暇の時間単位での取得を可能とすること等を内容とする法令の改正(令和元年12月公布、令和3年1月1日施行)について、リーフレット等により改正内容の周知を図った。

(イ)仕事と家庭を両立しやすい職場環境整備

育児や介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備を推進するため、「女性の活躍・両立支援総合サイト(両立支援のひろば)」を通じて、「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)に基づく一般事業主行動計画の策定等を促進するとともに、企業の環境整備の参考になるよう、仕事と介護の両立に関する好事例集を収集・公表した。

また、中高年を中心として、家族の介護のために離職する労働者の数が高止まりしていることから、全国各地での企業向けセミナーの開催や介護プランナーによる個別支援を通じて、事業主が従業員の仕事と介護の両立を支援する際の具体的取組方法・支援メニューである「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」の普及促進を図るとともに、介護に直面した労働者の介護休業の取得及び職場復帰等を円滑に行うためのツールである「介護支援プラン」の普及促進に取り組んだ。加えて、ケアマネジャーなど家族介護者を支援する者が仕事と介護の両立について学習できる「仕事と介護の両立支援カリキュラム」の策定を行った。

そして、「介護支援プラン」を策定し、介護に直面する労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ中小企業事業主や、その他の仕事と介護の両立に資する制度(介護両立支援制度)を労働者が利用した中小企業事業主、新型コロナウイルス感染症への対応として家族を介護するための有給の休暇制度を設け、労働者が利用した中小企業事業主に対し助成することを通じて、企業の積極的な取組の促進を図った。

(4)持続可能な高齢者医療制度の運営

令和2年12月15日に「全世代型社会保障改革の方針」が閣議決定された。

この方針では、後期高齢者(現行で3割負担となっている現役並み所得者を除く。)の医療の自己負担割合の在り方について、「課税所得28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方に限って、その医療費の窓口負担割合を2割とし、それ以外の方は1割とする。」こととされ、「施行時期については、施行に要する準備期間等も考慮し、令和4年度(2022年度)後半までの間で、政令で定めることとする。」こととされた。また、「施行に当たっては、長期頻回受診患者等への配慮措置として、2割負担への変更により影響が大きい外来患者について、施行後3年間、1月分の負担増を、最大でも3,000円に収まるような措置を導入する。」こととされた。これらについて令和3年(2021年)の通常国会に必要な法案を提出した。

また、後期高齢者の保健事業について、高齢者の心身の多様な課題に対応し、きめ細かな支援を実施するため、後期高齢者医療広域連合のみならず、市民に身近な市町村が中心となって、介護保険の地域支援事業や国民健康保険の保健事業と一体的に後期高齢者の保健事業を実施する「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」の法的な枠組みが、令和2年4月に施行された。

具体的には、医療専門職が高齢者一人一人の医療・介護等の情報を一括把握し、地域の健康課題の整理・分析を行った上で、多様な課題を抱える高齢者や、閉じこもりがちで健康状態の不明な高齢者を把握し、アウトリーチ支援等を通じて、必要な医療サービスに接続することや、通いの場に、保健医療の視点から積極的に関与し、健康教室や健康相談などの取組等を市町村において実施するものである。

こうした取組を推進するため、①事業全体のコーディネートや企画調整・分析、②高齢者に対する個別的支援や通いの場等への関与等を行うために医療専門職を配置する費用を、国が後期高齢者医療調整交付金のうち特別調整交付金により支援した。

さらに、新型コロナウイルス感染症の対策下において高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に取り組む市町村の参考になるよう、高齢者保健事業の取組事例を収集・公表した。

後期高齢者医療の保険料均等割の軽減特例措置(本則の7割軽減に上乗せして、9割又は8.5割を軽減)について、令和元年度から段階的な見直しを行っており、令和2年度においても引き続き見直しを行った。

(5)認知症施策の推進

政府全体で認知症施策を更に強力に推進するため、平成30年12月、認知症施策推進関係閣僚会議が設置された。認知症に関する有識者からの意見聴取に加え、認知症の人や家族等の関係者からの意見聴取等や関係省庁における協議を行いながら議論を深め、令和元年6月、同関係閣僚会議において、「認知症施策推進大綱」が取りまとめられた。

認知症施策推進大綱では、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら、「共生」と「予防」を車の両輪とした施策を推進していくことを基本的な考え方としている。なお、認知症施策推進大綱上の「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」、「認知症になっても進行を穏やかにする」という意味である。

こうした基本的な考え方のもと、①普及啓発・本人発信支援、②予防、③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、⑤研究開発・産業促進・国際展開、の5つの柱に沿って施策を推進していくこととしている。

具体的には、

「共生」の取組として、認知症サポーターなどが支援チームを作り、見守りや外出支援などを行う仕組みである「チームオレンジ」の取組推進や、認知症の人ご本人による「希望大使」等の普及啓発活動の推進などを進めるとともに、「予防」の取組として、高齢者が身近に参加できる「通いの場」の拡充や認知症に関する研究開発等を推進している。対象期間は令和7年までとなり、施策ごとにKPI/目標を設定しているが、令和2年において、施策ごとの進捗確認を行い、実施状況を首相官邸ホームページに掲載した。

また、認知症施策推進大綱等を踏まえ、令和2年の介護保険法の改正において、地域社会における認知症施策の総合的な推進に向けて、地域における認知症の人への支援体制の整備等、国及び地方公共団体の努力義務等を規定したほか、他府省所管の分野を含めた総合的な取組を進めていく必要があることから、市町村介護保険事業計画の記載事項として、教育等の他分野との連携など認知症施策の総合的な推進に関する事項が追加された。

(6)人生の最終段階における医療の在り方

人生の最終段階における医療・ケアについては、医療従事者から本人・家族等に適切な情報の提供がなされた上で、本人・家族等及び医療・ケアチームが繰り返し話合いを行い、本人による意思決定を基本として行われることが重要であり、国民全体への一層の普及・啓発が必要である。

そのため、人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業として、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき、医療従事者等に向けて、研修を行った。

また、本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組(人生会議)の普及・啓発を図るため、人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の国民向け普及啓発事業として、国民向けに映像配信を行った。

(7)住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進

(ア)地域の支え合いによる生活支援の推進

年齢や性別、その置かれている生活環境等にかかわらず、身近な地域において誰もが安心して生活を維持できるよう、地域住民相互の支え合いによる共助の取組を通じて、高齢者を含め、支援が必要な人を地域全体で支える基盤を構築するため、自治体が行う地域のニーズ把握、住民参加による地域サービスの創出、地域のインフォーマル活動の活性化等の取組を支援する「地域における生活困窮者支援等のための共助の基盤づくり事業」等を通じて、地域福祉の推進を図った。

また、「寄り添い型相談支援事業」として、24時間365日ワンストップで電話相談を受け、必要に応じて、具体的な解決につなげるための面接相談、同行支援を行う事業を実施した。

市町村において、地域住民の複合・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備するため、対象者の属性を問わない相談支援、多様な参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に行う重層的支援体制整備事業の創設等を行うため令和2年6月に社会福祉法を改正した。

そして、地域における共生社会の実現に向けた課題(高齢者、障害者及び青少年の3分野)について、内外の実務者の派遣・招へいを通じて解決の担い手を育成することを目的に、地域課題対応人材育成事業「地域コアリーダープログラム」を実施している。令和2年度は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、派遣・招へいを中止し、オンラインでの交流を実施した。このうち高齢者関連分野については、令和3年1月及び2月に、日本青年10名とオランダの青年7名によるオンラインでのディスカッション等の交流を行った。

(イ)地域福祉計画の策定の支援

福祉サービスを必要とする高齢者を含めた地域住民が、地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう地域福祉の推進に努めている。このため、福祉サービスの適切な利用の推進や福祉事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進等を盛り込んだ地域福祉計画の策定の支援を引き続き行った。

(ウ)地域における高齢者の安心な暮らしの実現

令和2年度においても、地域主導による地域医療の再生や在宅介護の充実を引き続き図った。医療、介護の専門家を始め、地域の多様な関係者を含めた多職種が協働して個別事例の支援方針の検討等を行う「地域ケア会議」の取組の推進や、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備等を進め、地域に暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会の構築を進めた。

また、高齢者が地域での生活を継続していくためには、多様な生活支援や社会参加の場の提供が求められている。そのため、市町村が実施する地域支援事業を推進するとともに、各市町村が効果的かつ計画的に生活支援・介護予防サービスの基盤整備を行うことができるよう、市町村に生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置するとともに、令和2年度からは、就労的活動をコーディネートする人材の配置を可能とするなど、その取組を推進した。

高齢者が安心して健康な生活が送れるようになることで、生涯学習や、教養・知識を吸収するための旅行等、新たなシニア向けサービスの需要も創造される。また、高齢者の起業や雇用にもつながるほか、高齢者が有する技術・知識等が次世代へも継承される。こうした好循環を可能とする環境の整備を行った。

(8)新型コロナウイルス感染症への対応

(ア)新型コロナウイルス感染症に関する事実

我が国においては、令和2年1月15日に最初の感染者が確認された後、令和3年3月31日までに、合計472,366人の感染者、9,159人の死亡者が確認されている。

令和2年4月から5月にかけての緊急事態宣言下において、東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県及び福岡県の13都道府県については、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があったことから、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「法」という。)に基づく「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(以下「基本的対処方針」という。)において特定都道府県(緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県)の中でも「特定警戒都道府県」と位置付けて対策を促してきた。

また、これら特定警戒都道府県以外の県についても、都市部からの人の移動等によりクラスターが都市部以外の地域でも発生し、感染拡大の傾向が見られ、そのような地域においては、医療提供体制が十分に整っていない場合も多いことや、全都道府県が足並みをそろえた取組が行われる必要があったことなどから、全ての都道府県について緊急事態措置区域として感染拡大の防止に向けた対策を促してきた。

その後、5月1日及び4日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解を踏まえ、引き続き、それまでの枠組みを維持し、全ての都道府県について緊急事態措置区域(特定警戒都道府県は前記の13都道府県とする。)として感染拡大の防止に向けた取組を進めてきた。

その結果、全国的に新規報告数の減少が見られ、また、新型コロナウイルス感染症に係る重症者数も減少傾向にあることが確認され、さらに、病床等の確保も進み、医療提供体制のひっ迫の状況も改善されてきた。

5月14日には、その時点における感染状況等の分析・評価を行い、総合的に判断したところ、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県の8都道府県については、引き続き特定警戒都道府県として、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていくこととなった。

また、5月21日には、同様に、分析・評価を行い、総合的に判断したところ、北海道、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の5都道県については、引き続き特定警戒都道府県として、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があった。

その後、5月25日に改めて感染状況の変化等について分析・評価を行い、総合的に判断したところ、全ての都道府県が緊急事態措置区域に該当しないこととなったため、同日、緊急事態解除宣言が発出された。

夏以降、減少に転じた新規報告数は、10月末以降増加傾向となり、11月以降その傾向が強まっていったことから、クラスター発生時の大規模・集中的な検査の実施による感染の封じ込めや感染拡大時の保健所支援の広域調整等、政府と都道府県等が密接に連携しながら、対策を講じていった。また、10月23日の分科会においては、「感染リスクが高まる「5つの場面」」を回避することや、「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」を周知することなどの提言がなされた。12月には首都圏を中心に新規報告数は過去最多の状況が継続し、医療提供体制がひっ迫している地域が見受けられた。

こうした感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況に鑑み、令和3年1月7日、政府対策本部長は、法第32条第1項に基づき、緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年1月8日から令和3年2月7日までの31日間とし、緊急事態措置区域を東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県とする緊急事態宣言を行った。

令和3年1月13日には、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域に栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県を加える変更を行った。

令和3年2月2日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、2月8日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県の10都府県に変更するとともに、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月7日まで延長した。

令和3年2月26日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、3月1日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県に変更することとした。

令和3年3月5日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、法第32条第3項に基づき、引き続き埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県を緊急事態措置区域とし、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月21日まで延長することとした。

令和3年3月18日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、全ての都道府県が緊急事態措置区域に該当しないこととなったため、緊急事態措置を実施すべき期間とされている3月21日をもって緊急事態措置を終了することとした。

また、3月18日、政府対策本部において、「緊急事態宣言解除後の対応」が取りまとめられ、社会経済活動を継続しつつ、再度の感染拡大を防止し、重症者・死亡者の発生を可能な限り抑制するための取組を進めていくこととなった。

(イ)新型コロナウイルス感染症対策

政府は、新型コロナウイルス感染症への対策は危機管理上重大な課題であるとの認識の下、国民の生命を守るため、これまで水際での対策、まん延防止、医療の提供等について総力を挙げて講じてきた。国内において、感染経路の不明な患者の増加している地域が散発的に発生し、一部の地域で感染拡大が見られてきたため、令和2年3月26日、法附則第1条の2第1項及び第2項の規定により読み替えて適用する法第14条に基づき、新型コロナウイルス感染症のまん延のおそれが高いことが、厚生労働大臣から内閣総理大臣に報告され、同日に、法第15条第1項に基づく政府対策本部が設置された。

その後、令和2年3月28日に、法第18条第1項に基づき、基本的な対処の方針について定めた基本的対処方針を決定し、各種対策を講じてきた。

また、高齢者を念頭に置いた取組としては、感染拡大防止の観点から、感染拡大地域において、無症状者も含め、特定の地域における大規模・集中的な検査や、医療機関や介護施設等において、従業者や、入院・入所者に対する一斉・定期的な検査を実施するよう要請し、11月には、感染拡大状況を踏まえ、高齢者施設等での重点的な検査を徹底するため、介護施設等の入所者又は従事者で発熱等の症状を呈する方については、必ず検査を実施すること、検査の結果、陽性が判明した場合には、当該施設の入所者及び従事者の全員に対して原則として検査を実施することを都道府県等に要請した。さらに、令和2年度第一次・第二次補正予算及び予備費による医療機関支援に加え、同年12月8日に閣議決定した「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」に基づく第三次補正予算においても追加支援を行い、新型コロナウイルス対応の病床確保等を支援することを決定した。

また、介護サービス事業所・介護施設等に対しては、感染者等が生じた場合において、必要なサービスを継続して提供できるよう、通常の介護サービスの提供時では想定されない、職員の確保に関する費用や消毒費用などのかかりまし経費等に対して支援を行うとともに、緊急時の応援派遣に係る体制整備を構築する取組について補助を行った。

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