第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス)
第3節 〈特集①〉高齢者の経済生活をめぐる動向について(トピックス)
事例2 大川市おひとりさま支援事業 ~簡易な金銭管理・意思決定支援~
事業の目的・概要
福岡県大川市(人口30,880人、高齢化率37.2%(令和7年3月31日現在))では、一人暮らしの高齢者や親族による支援が困難な市民が増加し、金銭管理や生活支援などを担う人がいないために、日常生活のちょっとした困りごとへの対応や入院・入所手続や支払いができない高齢者が顕在化していた。
このような問題に対応するため、大川市では、市、市社会福祉協議会(以下「社協」という。)、市成年後見センター及び地元の金融機関等が連携し、令和6年2月に「大川市おひとりさま支援事業(以下「支援事業」という。)」を開始した。
具体的な取組内容
支援事業では、①予算管理機能付きカード等を使った日常的金銭管理サービス、②意思決定サポーターによる意思決定支援、③入院・入所費用支払いのための支援を行っている。
一つ目の日常的金銭管理サービスは、事業者が提供するアシスタント機能付きプリペイドカードの仕組みを活用したもので、その特徴は、1日に利用できる金額を利用者ごとに柔軟に設定できることや、カード利用者の支援者が、履歴の閲覧やカードの停止・再開等の操作を遠隔から行えるというものである。
二つ目の意思決定支援は、大川市に登録した市の意思決定サポーター養成研修修了者が支援対象者へ定期的な訪問を行うとともに、行政手続きへの同行などを含む本人の意識決定への支援を行っている。
三つ目の入院等費用支払い支援は、入院時などに本人が金融機関に行けない場合の入院費の振り込みについて、通帳や印鑑がなくても病院の請求に基づき市と協定を締結した金融機関から振り込まれるというものである。
事業効果
令和6年12月末時点で支援事業を3名が利用しており、意思決定サポーターは8名が登録されている。事業の利用によって、意思決定サポーターの支援を受けながら、自分のための買い物や将来に向けた貯金など、お金の使い方を利用者自身で決めることができるので、利用者のやってみたいことが広がり、生活が充実したものとなっている。また、市、社協、市成年後見センター、金融機関、医療機関、さらには弁護士・司法書士・社会福祉士といった専門職チームなどと、現状の認識や連携の必要性に関する理解が促進された。
今後の展開
今後も人口減少が進んでいくことが見込まれる中で、人材不足に対応していく必要がある。例えば、意思決定サポーターを専門職ではなく身近な住民が担えるような役割を検討し、気軽に関わってくれる人たちを増やすために、社会モデルを学び当事者と対話する演習を中心とした研修を継続的に実施していくことを考えている。