第2章 令和6年度高齢社会対策の実施の状況(第2節 3)

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第2節 分野別の施策の実施の状況(3)

3 学習・社会参加

(1) 加齢に関する理解の促進

児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、学習指導要領に基づき、小・中・高等学校において、ボランティア等社会奉仕に関わる活動や高齢者との交流等を含む体験活動の充実を図った。

(2) 高齢期の生活に資する学びの推進

① デジタル等のテクノロジーに関する学びの推進

高齢者等が、デジタル技術の利活用により豊かな生活を送ることができるようにするため、住居から地理的に近い場所で身近な人からデジタル活用を学べる環境が必要である。

このため、関係府省庁や地方公共団体・関連団体、ボランティア団体等と連携し、デジタル機器・サービスの利用方法、各地で実装されているデジタルサービス及びマイナンバーカード・マイナポータルの利用方法をサポートするなど、国民運動としての「デジタル推進委員」の取組を令和4年度にスタートさせ、令和6年12月末時点で5万7,000人超を任命した。また、民間企業や地方公共団体等と連携し、スマートフォンを利用したオンライン行政手続等に対する助言・相談等を行うデジタル活用支援の講習会を令和3年度から全国の携帯電話ショップ等において実施している。令和6年度は、全国6,000か所以上で実施した。

② 社会保障教育及び金融経済教育の推進

中学校学習指導要領の社会科や技術・家庭科、高等学校学習指導要領の公民科や家庭科において、少子高齢社会における社会保障の充実・安定化や介護に関する内容等が明記されていることを踏まえ、その趣旨の徹底を図るとともに、令和3年度に新たに作成した教材等について内容の充実や効果的な周知を図る等、若い世代が高齢社会を理解する力を養うために、教育現場において社会保障教育が正しく教えられる環境づくりに取り組んだ。

より公平・公正な社会保障制度の基盤となるマイナンバー制度については、平成29年11月から情報連携の本格運用が開始され、各種年金関係手続のほか、介護保険を始め高齢者福祉に関する手続において従来必要とされていた住民票の写しや課税証明書、年金証書等の書類が不要となっている。令和6年8月からは戸籍関係情報の情報連携の本格運用も開始され、本格運用の対象事務手続数は、平成29年11月の約900件から令和6年11月には約3,300件と順次拡大している。こうしたマイナンバー制度の取組状況について、地方公共団体等とも連携し、国民への周知・広報を行った。

また、国全体として金融経済教育を推進するため、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が令和6年4月に設立され、同年8月に本格稼働した。J-FLECにおける社会保障制度を含む幅広い分野の金融経済教育の取組を支援するなど、社会保障分野も含めた金融経済教育の充実に取り組んだ。

③ 消費者教育の推進

消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者教育)は、幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行われるとともに、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮した適切な方法で行わなければならない。こうした消費者教育を総合的かつ一体的に推進するため、平成24年12月に「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年法律第61号)が施行され、令和5年3月28日には、同法に基づく「消費者教育の推進に関する基本的な方針」の2回目の変更の閣議決定を行った。同方針に基づき、消費者教育コーディネーターの配置・育成の支援や、地域、家庭等の様々な場を活用した消費者教育の推進を図っている。令和6年度は、体験型教材「鍛えよう、消費者力 気づく・断る・相談する」を活用したモデル事業の実施や、「高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」等において周知・広報を行った。また、高齢者向け消費者教育教材とその活用事例集については、「消費者教育ポータルサイト」に取組事例を掲載するなど、地方公共団体での啓発講座等での活用を促進した。

④ 身近な場やオンラインでの学習機会の充実

生涯学習の振興に向けて、平成2年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(平成2年法律第71号)が制定され、推進体制の整備が図られた。その後、平成18年に改正された「教育基本法」(平成18年法律第120号)で生涯学習の理念(第3条)が、さらにこの理念の実現のために、「社会教育法等の一部を改正する法律」(平成20年法律第59号)においても「生涯学習の振興への寄与」が明示された。これらの法律や中央教育審議会の答申等に基づき、国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組み作り等、「生涯学習社会」の実現のための取組を進めた。

ア 社会教育の振興

地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設等において、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進した。

また、高齢者等の社会的に孤立しがちな住民の社会参画促進を図るため、行政や各種団体等で社会教育に携わる者を対象に、学びを通じた社会参画の実践による社会的孤立の予防・解消を図る方策を共有した。

イ 学校機能・施設の地域への開放

学校は地域コミュニティの核となることから、児童生徒が地域住民とともに創造的な活動を企画・立案したり交流したりするための「共創空間」を生み出す必要があることや、他の公共施設との複合化等を通じて、児童生徒や地域住民にとって多様な学習環境を創出する必要があることなどを周知している。また、公立学校施設の整備のうち学校以外の公共施設との複合化・集約化を伴う改築及び長寿命化改修について、一定の条件の下、国庫補助率を引き上げている(1/3から1/2)。

ウ 文化活動の振興

国民文化祭の開催等による幅広い年齢層を対象とした文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図った。また、博物館・美術館等を中核として、社会的・地域的な課題への対応に先進的に取り組む事業を補助する中で、文化活動の推進を図る取組を支援した。

エ スポーツ活動の振興

いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「スポーツによる地域活性化推進事業」を活用し、スポーツを通じた地域の活性化を推進するとともに、スポーツ行事の実施等の各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図った。

オ 自然とのふれあい

国立公園等の利用者を始め、国民の誰もが自然とふれあう活動が行えるよう、自然ふれあい施設や自然体験活動等の情報をインターネット等を通じて提供した。

(3) 地域における社会参加活動の促進

① 多世代による社会参加活動の促進

ア 高齢者の社会参加と生きがいづくり

高齢者の生きがいと健康づくりに向けて、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ(図2-2-5)の加入者が長期的に減少傾向にある中で、引き続き、各地域の状況に応じた活動が積極的に行われるよう、都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援した。加えて、国民一人一人が積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」について、令和6年10月に「第36回全国健康福祉祭とっとり大会」を開催した。

図2-2-5 老人クラブ数と会員数の推移

また、地域の社会教育を推進するため、社会教育を行う者に対する専門的・技術的な指導助言を行う社会教育主事等の専門的職員の養成等を図った。

さらに、退職教員や企業退職高齢者等を含む幅広い地域住民や企業・団体等の参画を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支えるとともに、「学校を核とした地域づくり」を目指して、地域と学校が相互にパートナーとして連携・協働して行う「地域学校協働活動」を推進した。また、企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービスの基盤整備を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施した。

加えて、高齢者・障害者等が安心して旅行ができる環境を整備するため、令和2年12月に創設した「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の改善に向けた調査を行うとともに、普及のための広報動画等を作成した。さらに、旅館・ホテル等におけるバリアフリー化への改修の支援を実施した。

また、高齢者の社会参加や世代間交流の促進、社会活動を推進するリーダーの育成・支援、関係者間のネットワーキングに資することを目的に、地域参加に関心を持つ者が情報交換や多様な課題についての議論を行う「高齢社会フォーラム」を毎年行っており、令和6年度においては、11月に愛媛県松山市で開催した。さらに、年齢にとらわれず自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており、令和6年度においては、個人49名及び29団体を選考し、社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。

イ 高齢者の余暇時間等の充実

高齢者等がテレビジョン放送を通じて情報アクセスの機会を確保できるよう、字幕放送、解説放送及び手話放送の充実を図るため、平成30年2月にテレビジョン放送事業者の字幕放送等の令和9年度までの普及目標値を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を策定し、令和5年10月に同指針を改定した。本指針に基づき、各放送事業者は字幕放送等の普及に取り組んでおり、本指針対象番組に対する字幕放送の令和5年度実績において、日本放送協会(NHK)総合テレビジョン及びキー5局では約100%を引き続き達成した。

② 地域住民を支援する専門人材・団体の活動基盤の整備

市民やNPO等の活動環境を整備するため、認定NPO法人等の寄附税制の活用促進に取り組むとともに、「特定非営利活動促進法」(平成10年法律第7号。以下「NPO法」という。)の円滑な運用に取り組んだ。また、NPO法人運営に係る手続の簡素化・効率化の観点から、NPO法に基づく各種事務をオンライン化したシステムの利用を促進した。

また、開発途上国からの要請に見合った技術・知識・経験を有し、かつ開発途上国の社会や経済の発展への貢献を希望する国民が、JICA海外協力隊員(対象:20歳から69歳まで)として途上国の現場で活躍する、独立行政法人国際協力機構を通じた事業(JICAボランティア事業)を引き続き推進した。

NPOや企業等の多様な主体と連携・協働して、社会教育施設における活動のみならず、環境や福祉、まちづくり等の社会の多様な分野における学習活動の支援を通じて、人づくりや地域づくりに携わると期待される「社会教育士」の制度が、令和2年度から開始され、令和5年度末までに7,000人超に称号が付与された。また、社会教育士等の社会教育人材の継続的な学びの機会の確保等を図るとともに、社会教育人材ネットワークを構築するため、令和6年度から新たに教育委員会に委託し社会教育士フォローアップ研修を実施した(令和6年度は北海道、和歌山県の2箇所)。

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