第2章 令和7年度高齢社会対策の実施の状況(第2節 トピックス)
第2節 分野別の施策の実施の状況(トピックス)
トピックス2 多世代、多様な主体が集まる場づくり ~「支える側」にも「支えられる側」にもなれる社会を目指して~
令和6年9月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」では、高齢社会対策を「高齢者を支えるための取組だけでなく、高齢者の割合が大きくなる中で持続可能な社会を築いていくための取組」と位置付け、若年世代から高齢世代までの全ての人々が、それぞれの状況に応じて、「支える側」にも「支えられる側」にもなれる社会を目標に掲げるとともに、高齢期においても社会や他者との積極的な関わりを持ち続けることができる環境整備の重要性を指摘している。こうした観点から、地域に根差した多世代交流の場づくりの取組を行っている社会福祉法人の事例を以下紹介する。
事例① 社会福祉法人愛川舜寿会「春日台センターセンター」(神奈川県愛川町)
概要
社会福祉法人愛川舜寿会が運営する「春日台センターセンター」は、かつて地域の中心だったスーパーマーケットの跡地を活用し、福祉を中心としたコミュニティ拠点として再生することを目指し、2022年に開設された福祉施設である。認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービス、就労継続支援事業所(A型・B型)が併設されているほか、地域の活動団体との協働により外国籍の子供たちや不登校の子供たちへの学習支援などを行う寺子屋、用途を限定しない地域交流スペース(コモンズルーム)、地域住民も日常的に利用するコインランドリーや惣菜販売(コロッケスタンド)が設けられている。
住民が気軽に立ち寄れる福祉施設の設計
地域の誰もが、世代や属性にかかわらず気軽に立ち寄れる、開かれた福祉施設にするため、建物内外の空間デザインに様々な工夫が施されている。例えば、周辺の住宅地と敷地の間に塀を設けず、日々立ち寄りやすい環境設定にしているほか、建屋にも玄関を設けず、複数の出入口から、靴を脱がずに、各サービスが提供されている場に行き来できる設計とすることで、誰でも入りやすい開かれた場所になっている。また、大きな軒や縁側、土間スペースなどかつての日本家屋の建築要素を採用したり、建物をガラス張りの構造にすることで、福祉サービスの利用者と地域の人々の間で、自然とコミュニケーションが生まれる空間を創出している。
さらに、地域に偶発的なつながりを生み出すため、広場に面してコロッケスタンドやコインランドリーを配置することで、福祉に直接関わりのない人々も日常的に立ち寄る環境を整えている。
また、完全なバリアフリー化はあえて行わないことで、例えば、車椅子利用者が手動で引き戸を開けるのに時間がかかっている場面で、子供たちがその様子に気付き、手助けをするなど、自然なケアや助け合いが生まれる環境となっている。
春日台センターセンター
日常生活の中で生まれる多世代交流
認知症グループホームと障害児通所支援事業を同じ建屋で展開しており、高齢者と子供たちが同じ空間を自由に行き来できる環境が整えられているため、世代間交流がごく自然な形で促進されている点が特徴である。広場に集まってくる子供たちの活動を高齢者が温かく見守る場面や、施設内の駄菓子コーナーや縁側に腰掛けて会話を交わす様子など、世代を超えた関わりが日常的に生まれている。
また、コインランドリーにおける洗濯代行事業や、コロッケスタンドでの販売業務は、障害者の就労支援を目的とした取組であると同時に、忙しい人々の家事負担を軽減するなど、地域の暮らしを支える役割も果たしている。こうした仕組みにより、「支える側」と「支えられる側」という立場が固定されることなく、多くの人々が相互に関わり合う場が形成されている。
事例② 社会福祉法人ながよ光彩会「みんなのまなびば み館」(長崎県長与町)
概要
社会福祉法人ながよ光彩会は、普段の暮らしの中で出会う機会の少ない、介護・福祉を地域に開いていくことを掲げ、特別養護老人ホーム「かがやき」を始めとする高齢者福祉事業や、就労継続支援B型事業所「GOOOOD KAGAYAKI」、JR長与駅の運営を担う「GOOOOOOOD STATION」などの事業のほか、公益事業として「みんなのまなびば み館」を運営している。「み館」は、高齢者グループホームが入っている施設の1階を改装し、「まちのリビング」をコンセプトとして、子供から高齢者まで、誰もが無料で利用できる地域に開かれた場として2020年に開設された。
「誰もが先生、誰もが生徒」という学びの仕組み
「みんなのまなびば み館」では多様な「きょうしつ」が開催されており、地域住民、施設入居者、職員、子供など、立場を問わず誰もが「せんせい」となり、自分の得意なことを教えることのできる仕組みが特徴である。
誰もが「せんせい」「生徒」の両方になれるため、「支える側」「支えられる側」の区別なく参加できる仕組みとなっている。例えば、入所後に以前の趣味から離れていた高齢者が、華道や習字といった得意分野を生かして「きょうしつ」を主催し、地域の子供たちも参加するなど、参加者の「得意」や「好き」を起点とした多様な「きょうしつ」が定期的に開催されている。教える側と学ぶ側が固定されない点が特徴であるため、高齢者が講師となる場面だけでなく、子供が大人に教える場面もあり、「きょうしつ」の開催などを通じて、支援する側・される側という関係に固定されず、地域住民自身が主体的に関わることで、世代や立場を超えた交流が双方向的な形で自然に生まれている。
住民が気軽に立ち寄れる工夫
「み館」では、多世代が集いやすい空間づくりが行われている。塀のない開放的な構造に加え、ハンモックやソファーが配置され、来館者がリラックスして過ごせる環境が整えられている。
さらに、若年層も利用しやすいよう、Wi-Fi環境を整備するほか、職員が所蔵する本を活用した「まちの図書館」を設置し、一般的な図書館には少ない漫画を揃えることで、子供たちが足を運ぶきっかけづくりも行われている。そのほかにも、「み館スペース」の貸切利用、プロジェクター、テプラ、ラミネーターなどを貸し出す「まちのおどうぐばこ」といったサービスを提供しているほか、毎月第3土曜日には、年齢を問わず参加できる「まちの食堂(らふキッチン)」が開催されるなど、気軽に住民が立ち寄ることのできる工夫がされており、地域の外国人との交流の場にもなっている。
また、子供の主体的参加を促進するための工夫として、単なる居場所の提供にとどまらず、例えば、「せんせい」として「きょうしつ」を開催したり、お手伝いすることでポイントが貯まり、お菓子と交換できる仕組みが導入され、子供たちの主体的な参加を促進している。
みんなのまなびば み館