令和6年度交通安全フォーラムの開催結果について
- テーマ:
- 子どもと高齢者の交通事故防止
- 日時:
- 令和6年9月5日(水)
13時15分~17時00分まで - 場所:
- 鹿児島県庁講堂
(鹿児島県鹿児島市鴨池新町10番1号) - 主催:
- 内閣府、鹿児島県
- 後援:
- 警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
- 協賛:
- 交通安全フォーラム推進協議会構成団体
- 一般社団法人 日本自動車工業会
- 一般財団法人 全日本交通安全協会
- 一般社団法人 日本自動車連盟
- 公益財団法人 三井住友海上福祉財団
- 公益財団法人 国際交通安全学会
- 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
- 内閣府では、国の重要施策及び開催都道府県が実施する交通安全対策上の諸問題を踏まえ、学識経験者等の専門家による研究発表、討議等を通じて、交通事故防止のための有効適切な提言を得て、国民の交通安全意識の高揚を図ることを目的とした「交通安全フォーラム」を、前身の行事も含めて昭和56年から毎年各地で開催しています。
- 今回で44回目となる令和6年度は、鹿児島県と共同で「子どもと高齢者の交通事故防止」をテーマとして開催しました。子どもと高齢者の特性と、地域における様々な官民の取り組み事例の紹介を通じ、今後の交通安全のあり方を考える集いとしました。当日は幅広い年齢層の聴講者約400名が来場し、交通安全への決意を新たにしました。
専門家からの提言内容
【基調講演・コーディネーター】
九州大学大学院システム情報科学研究院教授
志堂寺 和則 氏
人は日々の生活を送るなかで、ある程度、楽観的で無意識のまま行動しています。これを心理学ではポジティビティ・バイアスと言います。日々の生活にとって必要なことですが、このバイアスが「安全への過信」に陥ると交通事故につながります。また、人の注意力には限界があります。年齢や急ぐ気持ち、覚醒水準、体調などで注意力は大きく変化します。「安全への過信」と「注意力の限界」。この2つは交通事故を起こす大きな要因です。
今、免許保有者の1/4は65歳以上です。免許人口10万人当たりで考えると年齢が上がってくると交通事故は増えていきます。私もできるだけ長く運転していただきたいと考えているのですが、きちんとした運転ができなくなってくると、免許返納を考えなければならない状況も出てきます。免許返納の前には、その後の生活についてしっかりと準備をする必要があります。
【パネルディスカッションパネラー】
鹿児島県警察本部交通部参事官
宮永 利文 氏
鹿児島県での交通事故件数は減少傾向ながら死者数が増加しており、死者数の7割を高齢者が占めています。死亡重傷事故での高齢者の第一当事者率も高く、被害者・加害者ともに高齢者が重大事故の当事者になりやすい傾向が窺えます。警察では、歩行中の反射材着用の啓発や安全運転に必要な心身を保つ「安全運転体操」の取り組みなどをおこなっています。
また、子供を交通事故の被害から守るためには、子供自身の交通安全への学び・気づきを育みつつ、大人が子供の安全を気遣うことが不可欠です。後席におけるチャイルドシート着用率の向上や自転車用ヘルメットの着用促進をはかってまいります。
株式会社九州経済研究所企画戦略部部長・志學館大学客員教授
眞竹 龍太 氏
車の運転ができずに遠方への移動に不自由がある。また、交通事故に遭いやすく重症化しやすい。この2つの特徴を持つ子供と高齢者は「交通弱者」です。公共交通の政策では、この交通弱者の方々が安全安心に、なるべく便利に移動できるようにすることが重要な目標の一つです。
いま、地域公共交通は重大な岐路にあります。過疎化による移動距離の拡大や高齢者の免許返納等で需要が増す一方で、ドライバー不足が深刻化しているからです。その解決策として、住民自らが地域交通を担う自家用有償運送の取り組みが各地ではじまっています。また、自動運転の実用化も待たれます。
これらの取り組みには、予約システムや運行管理にデジタル技術による支援が不可欠です。「デジタルとの共生」を通じて、地域公共交通を維持する取り組みが加速するでしょう。
特定非営利活動法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長
宮田 美恵子 氏
安全に行動できる力を子供に身につけてもらうためには、子供の発達段階に応じた手法が必要です。
就学前の幼児期は自己中心的で周囲の状況が見えにくいため、大人が危険を予測し、予め事故を防ぐ役割が重要です。小学生になると身体能力や社会性が向上し、大人の真似やルールを守る意識が芽生えます。実際の体験を通じて繰り返し注意点を教えることが効果的です。ぜひお子さんと一緒に通学路を歩いて、「止まる」「待つ」「見る」「渡る」に着目して話をしてください。
中高生になると自転車での行動範囲が広がり、ルールを軽視しがちになります。命の大切さを繰り返し伝え、ルール遵守と責任感を再確認することが必要です
特定非営利活動法人高齢者安全運転支援研究会理事長
岩越 和紀 氏
我々のNPOでは、高齢ドライバーの認知機能低下と運転リスクとの関係を明らかにしようと、8年間にわたり延べ400名以上を対象に調査をおこなってきました。まだ明確な結論には至っていませんが、MCI(軽度認知障害)の判定を受けたドライバーには、事故につながる運転リスクの傾向が少なくありません。MCIは認知症ではないけども、その一歩手前の段階です。MCIの段階で必要な対応をおこなうことで認知症への移行を防ぎ、健康寿命を伸ばして、安全運転を続けることができます。MCIを早期に把握するための制度づくりが必要です。MCIの早期発見と対策が進めば、高齢ドライバーに地域公共交通の担い手として活躍してもらうこともできるでしょう。
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