7-6:長野県上小圏域――基幹相談支援センターが事務局に
- 圏域設置した協議会事務局運営を、基幹相談支援センターに委託した事例
- 共通の受付票を用い、市町村ごとの対応を統一
1.上小圏域の概況
構成市町:上田市・東御市・長和町・青木村
人口:196,688人
身体障がい者・児 | 8,773人 |
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小児慢性特定疾患認定者数 | 174人 |
知的障がい者・児数 | 1,782人 |
特定疾患認定者数 | 1,344人 |
精神障がい者・児数 | 1,765人 |
2.上小圏域における障害者差別解消に関する取組
(1)リーフレットの作成と配布:
- 内閣府が作成したリーフレットと同時に、地域協議会で作成した圏域版リーフレットを配布。
- リーフレットの配布状況:
- 上田市・長和町・青木村:リーフレット全戸配布
- 東御市:回覧板にて全戸周知
- 上田市内の病院、コンビニ、金融機関等に配布
- 校長会にて周知及び全校に配布、その他電子データにてメール配信
(2)相談体制の整備:
- 障害者差別に関する相談は、従来から虐待防止法の窓口を担っていた市町村の窓口が受付。
- 市町村ごとでは解決できないものについて圏域にあげる二段構え。
- 圏域で共通の受付票等を協議会で作成し、共有。
【共通の書式を用いることのメリット】
- 圏域の中で市町村格差が生じるのを防ぐ。
- 相談受付、支援計画、その後の評価までをきちんと行い、共有する仕組みとして機能。
⇒支援業務のスキルアップを図る。
3.地域協議会
(1)設置に際しての考え方
- 障害者差別解消法施行に伴い、障害者自立支援協議会権利擁護部会を権利擁護委員会に格上げして、地域協議会として位置づけ。
- それまで、権利擁護部会を含め、自立支援協議会の各部会長を自治体の担当者が担い、事務局は基幹相談支援センターである上小圏域障害者総合支援センターが担っていた。
- 虐待防止法の窓口も市町村が担うが、行政機関は3年単位で担当者が変わっていくため、質の担保をするために、基幹相談支援センターが事務局を引き受けバックアップする仕組みが成立していた。
- また、長野県は以前から障害者の相談体制を圏域設置していたため、予算配分についても仕組みができていた。
- 以上のような背景があり、虐待として通報されるものに差別問題が出てくるようになるだろうという見込みもあり、権利擁護部会を格上げする形で構成。
(2)構成メンバー
福祉 | 上小地域障害者自立生活支援センター運営委員長 |
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医療・保健 | 医療法人友愛会理事長 |
当事者 | 上田市手をつなぐ育成会会長 |
上小やまびこ会会長 | |
東御視覚障害ネットワークゆるり事務局長 | |
上田市身体障害者福祉協会理事長 | |
長和町身体障がい者福祉協会会長 | |
青木村身体障がい者福祉協会会長 | |
東御市身体障害者福祉協会会長 | |
上小地域障がい児者施設連絡協議会会長 | |
福祉 | 在宅福祉サービス連絡会会長 |
上田いずみ園園長 | |
上小圏域障害者総合支援センター所長 | |
教育 | 上田養護学校校長 |
上田市教育委員会教育長 | |
上小校長会(上田市北小学校)校長 | |
国の機関 | 上田公共職業安定所所長 |
地方公共団体 | 上田保健福祉事務所福祉課課長 |
上田保健福祉事務所健康づくり支援課課長 | |
上田市障がい者支援課課長 | |
東御市福祉課課長 | |
長和町町民福祉課課長 | |
青木村住民福祉課課長 | |
学識経験者 | 長野大学社会福祉学部社会福祉学科教授 |
事務局 | 上田保健福祉事務所福祉課福祉係 |
上田市障がい者支援課障がい者支援担当 | |
上田市丸子地域自治センター市民サービス課福祉係 | |
東御市福祉課福祉援護係 | |
長和町町民福祉課福祉係 | |
青木村住民福祉課住民福祉係 | |
上小圏域障害者総合支援センタースタッフ |
4.権利擁護委員会の実施状況
(1)開催状況と議題
〇2016年3月25日
- 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の施行に向けた検討
- 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援に関する法律(障害者虐待防止法)」研修企画について
- 上小圏域内の障害者虐待案件の検証
〇平成27年6月15日(月)13:30~15:00
- 平成27年度部会計画の検討
- 上小圏域内における権利擁護に関する意見交換
〇平成27年8月19日(水)13:30~15:00
- 障害者差別解消法の施行に向けた圏域内の周知について
- 上小圏域版リーフレット作成の目的の確認及び周知方法の意見交換
- リーフレット内容の方向性と共有化
〇平成27年11月9日(月)13:30~15:30
- 虐待発生から終結までの流れと役割分担
- 対応事例を通じた課題等の整理(上田市事例)
〇平成27年12月9日(水)13:30~15:00
- 上小圏域版リーフレット確認及び配布に向けた検討
- 上小圏域自立支援協議会フォーラム(障害者差別解消法周知活動として)報告
- 障害者虐待防止法・権利擁護研修会(上小圏域・佐久圏域合同研修)参加確認及び周知方法の再確認
〇平成28年1月21日(木)13:30~15:30
- 障害者虐待案件の検証(事例検討)
- 平成27年度の振り返りと次年度の部会検討
〇平成28年5月12日(木)15:00~16:00
- 第27回協議会本会の運営の内容について
- 上小圏域版障害者差別解消法・権利擁護についての周知方法(リーフレット配布等)についての検討
〇平成28年9月27日(火)15:15~16:30
- 平成28年度上半期障がい者差別に関する相談支援状況確認と検証
- 平成28年度上半期障がい者虐待に関する相談支援状況確認と検証
- 平成28年度障がい者虐待防止・権利擁護研修(上小圏域・佐久圏域合同研修)運営協力について
5.障害者差別解消に関する今後の取組について
(1)検証について
- 受付票等の共通書式が、今後支援者のスキルを上げていくための重要な材料になると見込まれるが、充分な活動成果はこれからである。
- 相談の件数が少ないこともあり、検証については来年度以後取り組むことになる。
(2)圏域設置について
- 小さな自治体の場合、近隣市町村の学校や病院に行くことは頻繁にあり、生活圏で障害者の権利を考えるために、圏域設置は妥当。
- ただし、圏域で行うことにより、参加する市町村の当事者意識が薄れる可能性がある。
- 上小圏域の場合、地域協議会の事務局運営も委託しているので、官民が一緒に議論しながら一緒に作っていく体制をいかに維持していくかが課題。
- 事務局運営の予算化と委託に際しては、契約書に「協議を進める場所を設定して、すべての市町村が積極的に参加するような事務局機能を果たす」といった一文をきちんと書き込むなど、地域協議会の運営において、各市町村と事業所が相互に応援していることを意識的に確認することが重要。