7-5:長野県――条例なくとも差別解消推進員が活躍

ポイント

  • 県職員対応要領に対応チェックリスト
  • 差別解消推進員を配置し、市町村に対してもバックアップ

1.長野県の概況

人口:2,087,534人(人口異動調査に基づく、平成28年4月1日現在の人口推計)

障害者手帳所持者数(平成28年3月末現在)
身体障害者手帳所持者 94,945人
療育手帳所持者 17,997人
精神障害者保健福祉手帳所持者 17,502人

2.長野県における障害者差別解消に関する取組

(1)相談及び紛争の防止のための体制の整備

 長野県では、まず、相談体制の整備を重視し取り組んだ。相談窓口としては、県下77市町村の障害者施策担当部署を一番身近な窓口として、また、圏域ごとに保健福祉事務所が置かれているので、こちらも窓口として指定した。
 加えて、要として県の窓口に差別解消推進員を配置。県の相談窓口としての役割に加え、市町村の後方支援と出前講座を担っている。

相談及び紛争の防止のための体制:図のテキスト版

(2)県障がい者差別解消推進員の配置

  • 県障害者相談窓口に、障がい者差別解消推進員(行政嘱託員)1名、職員(兼任)1名を配置
  • 相談受付件数43件(平成29年1月20日現在)
  • 「調整の実施」としては、電話での調整や、対面で話し合う場を設定しての調整を実施
相談内容の区分 ※複数該当あり
不当な差別的取扱い 5件 9%
合理的配慮の提供 24件 41%
制度説明 5件 9%
その他 24件 41%
対応結果 ※主な対応方法
助言・傾聴等 18件 42%
調整の実施 11件 25%
他機関(窓口等)紹介 9件 21%
制度説明 5件 12%

(3)職員対応要領の策定

障がいのある人への配慮のチェックリスト:図のテキスト版

長野県では、平成23年から「障害のある人もない人も共に生きる社会を目指す研究会」を開催し、障害者に対する差別に関する検討が進んでいた。このため、障害者差別解消法が成立した後、早い段階で県の職員対応要領の素案を準備していた。その後、内閣府等から示された基本方針や対応要領・対応指針を受け、県の職員対応要領素案を見直し、その過程で「障がいのある人への配慮のチェックリスト」等も併せて提示する形になった。

参照:
http://www.pref.nagano.lg.jp/shogai-shien/kenko/shogai/sodan/documents/200331taiouyouryou.docx


(4)障害者差別解消法の周知・啓発

  1. 県民向け学習会の開催:県下4地域で開催(平成28年度)
  2. 出前講座の実施:平成28年4月~12月末現在53回実施
  3. あいサポートメッセンジャーの養成等による信州あいサポート運動の強化:平成28年12月19日養成研修開催により31名のあいサポートメッセンジャーを養成

3.障害者虐待防止・差別解消支援連携会議

(1)設置形態

障害者差別解消法第17条に基づき、障がいを理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行う障害者差別解消支援地域協議会として位置付けるとともに、障害者虐待防止法第39条に基づき関係機関等の連携協力体制を整備するための協議会としても位置付け、平成28年7月25日に設置。

(2)構成メンバー

関係機関・団体 長野県弁護士会
長野県司法書士会(リーガルサポートながの)
長野県社会福祉協議会
長野県社会福祉士会
長野県精神保健福祉士協会
長野県自立支援協議会
長野県民生児童委員協議会
長野県相談支援専門員協会
長野県身体障害者施設協議会
長野県知的障がい福祉協会
せいしれん
長野県医師会
長野県身体障害者福祉協会
長野県手をつなぐ育成会
長野県精神保健福祉会連合会
長野県自閉症協会
長野県経営者協会
長野県中小企業団体中央会
長野県商工会議所連合会
長野県商工会連合会
障がいのある人もない人も共に生きる社会を目指す研究会元代表
長野県市長会
長野県町村会
特別支援学校長会
長野県地方法務局
長野労働局
県民文化部 こども・家庭課
健康福祉部 地域福祉課
保健・疾病対策課
介護支援課
障がい者支援課
保健福祉事務所(福祉課)
教育委員会事務局 特別支援教育課
警察本部 生活安全企画課

4.会議等の実施状況

(1)会議等の開催経過(平成28年度)

1 第1回会議(平成28年7月25日)実施内容

  • 構成団体の紹介
  • 当該連携会議の趣旨・障害者差別解消法に係る県の取組状況
  • 障害者虐待の状況及び障害者虐待防止に係る県の取組等
  • 情報交換

2 想定される協議内容

ア 障がい者差別解消に関すること

  • 相談に係る事例の共有(相談事例の情報、実施した調整内容の共有)
  • 相談体制の整備(記入シートの作成、標準スキームの検討等)
  • 取組の共有・分析(合理的配慮の事例の収集・分析等)
  • 取組の周知・発信や研修・啓発(効果的な方法についての協議等)等

イ 障害者虐待防止に関すること

  • 障害者虐待防止のための取組
  • 関係機関及び団体の連携に関すること
  • 障害者虐待予防、養護者に対する支援の在り方について 等

(2)今後の予定

  • 平成28年度の相談状況、合理的配慮の提供状況等を検証し、情報共有・連携を図るため、開催する(平成29年7月頃)。
  • 市町村又は圏域の地域協議会の早期の設置について、市町村や圏域の自立支援協議会に先行事例を紹介するなどにより検討を働きかける。

5.障害者差別解消に関する今後の取組について

(1)長野県社会福祉審議会障がい者権利擁護専門分科会の設置(案)

〇審議内容
障がいを理由とする不当な差別的取扱いや合理的な配慮の提供等の相談事案に対する県の対応内容について、障がい者の権利擁護の観点から専門的意見を求める必要があると判断する場合に、障がい者権利擁護専門分科会の意見を聴くこととする。

専門的意見を求める視点について
ア 相談事案に係る対応について、不当な差別的取扱いの解消が図られているか
イ 相談事案に係る対応について、合理的な配慮の提供が図られているか
ウ その他、事前的改善措置がなされているか 等

〇委員構成案 次のア~ウの6名程度
ア 学識経験者:大学教授、弁護士、司法書士、社会福祉士
イ 障がい当事者
ウ 行政機関:長野地方法務局
ただし、必要に応じ参考人として関係者の意見を聞くことができるものとする。(例:視覚障がい当事者、交通事業者、特別支援学校長 等)

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