7-8:大阪府――地域協議会と府のコラボ
- 地域協議会子会議としての合議体における相談事例の検証
- ハンドブックやヒント集等、多様な周知啓発活動
1.大阪府の概況
人口:8,833,628人(平成28年3月現在推計人口)
身体障害者手帳 | 389,234人 |
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療育手帳 | 75,081人 |
精神障害者保健福祉手帳 | 3,878人 |
2.大阪府における障害者差別解消に関する取組
(1)大阪府障がい者差別解消条例施行
- 差別解消に向けた啓発活動を府の責務に位置付け
- 公的な解決の仕組みを規定し、実効性をもった相談、紛争の防止・解決の体制等を規定 (法第8条に関する相談関係)
(2)大阪府障がい者差別解消ガイドラインの作成
- 平成27年3月作成。
- 目的:何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいか等、府民の関心と理解を深めること。
- 6分野(商品/サービス、福祉サービス、公共交通機関、住宅、教育、医療)ごとに具体的な事例を記載。
- 平成28年4月の条例施行により、条例上の指針に位置付け。
大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第1版)
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1203/00142034/2803sabeguide.docx
(3)広域支援相談員の配置
- 市町村の相談機関における相談事案(事業者における差別事象が対象)の解決を支援し、また、相談機関では解決が困難な広域的・専門的な相談事案等に対応するため、府に配置。
- 対応した相談等は103件、対応回数は延べ402回
(大阪府障害者差別禁止条例に基づく相談と解決の流れ:図のテキスト版)
不当な差別的取り扱い | 20件 |
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合理的配慮 | 4件 |
不適切な行為 | 5件 |
不快・不満 | 15件 |
相談・意見・要望 | 25件 |
問合せ | 27件 |
虐待 | 1件 |
その他 | 6件 |
※ 「不当な差別的取扱い」「合理的配慮の不提供」に加え、差別的・不適切な行為があったものは「不適切な行為」に、差別的・不適切な行為は確認できないが、相談者が差別的と捉えたものを「不快・不満」に分類
- 市町村を通じた相談が2割に対し、障がい当事者等からの直接の相談が全体の8割を占める。
- 「不当な差別的取扱い」に関するもの20件のうち、10件が合理的配慮の不提供が要因となっているものであった。(平成28年4月1日~平成29年2月28日)
(4)大阪府障がい者差別解消協議会の設置
- 知事の附属機関として設置。障がい者差別解消の推進に関する事項を審議。「支援地域協議会」の機能を有する。
- 学識経験者、障がい者、事業者等で構成(20人)。
○ 合議体
- 障がい種別等を踏まえ事案に応じて組織(5人)
- あっせん(不当な差別的取扱いに関する事案)や事例等の検証を踏まえた広域支援相談員への助言を実施。
(5)啓発事業
- 企業等向け出前講座事業(企業での障がい理解促進を支援)
- 合理的配慮対応促進事業(実践マニュアル作成)
- 障がい理解ハンドブック(必要な配慮を考えるきっかけを提供)
・条例リーフレット
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1203/00142034/jyoreileaflet.pdf
・障がい理解ハンドブック ほんま、おおきに!!ひろげようこころの輪
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1203/00142034/rikai-handbook.pdf
・i-Welcome “合理的配慮”接客のヒント集
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1203/00142034/etsuran_i-welcome.pdf
3.大阪府障がい者差別解消協議会
(1)設置根拠
- 大阪府附属機関条例・大阪府障がい者差別解消条例(法第18条第1項の機能を有する)
(2)構成員
※ 大阪府は構成員に含まれず、事務局を担当
委員 | 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会会長 |
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公益社団法人大阪聴力障害者協会会長 | |
関西鉄道協会専務理事 | |
大阪大谷大学教育学部特別支援教育専攻特別支援教育実践研究センター長教授 | |
一般社団法人大阪精神科病院協会会長 | |
公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会会長 | |
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事長 | |
一般財団法人大阪府人権協会業務執行理事兼事務局長 | |
日本チェーンストア協会関西支部事務局長 | |
大阪府立大学教育福祉学類長教授 | |
一般財団法人大阪府視覚障害者福祉協会会長 | |
弁護士 | |
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会大阪後見支援センター所長 | |
株式会社KOTOYA代表取締役 | |
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会代表幹事 | |
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長 | |
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長 | |
一般社団法人大阪府医師会理事 | |
学校法人大阪初芝学園初芝立命館高等学校教諭 大阪私立学校人権教育研究会 障がい者問題研究委員会代表委員 | |
神戸女学院大学文学部総合文化学科准教授 | |
オブザーバー | 大阪法務局人権擁護部第二課長 |
大阪労働局職業安定部職業対策課長 | |
近畿運輸局交通政策部消費者行政・情報課長 | |
市長会代表市担当課長 | |
町村長会代表町村担当課長 |
(3)担任事務
○ 法規定事務
- 情報交換、相談及び事例を踏まえた取組みに関する協議(法第18条第1項〉
- 構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他脳要な協力の求め(法第18条第3項
○ 条例規定事務
- 知事が諮問する差別解消の推進に関する事項への意見申述べ
- 知事に対し、正当な理由なくあっせん案に従わない者等への勧告の求め
- 知事が正当な理由なく勧告に従わない者を公表しようとするときの意見申述べ
- 合議体を設置し、紛争事案や相談事案に対応
(4)運営方法
○ 障がい者差別解消協議会
- 下記以外の担任事務を担う
○ 合議体(会長が、指名した委員等5人で構成〉
- あっせん実施型の合議体:広域支援相談員による解決が難しい揚合、紛争の解決をするためのあっせんを実施(不当な差別的取扱いに限る〉
- 助言・検証実施型の合議体:相談状況の総合的な分析・検証を行い広域支援相談員への助言を実施
4.大阪府障がい者差別解消協議会合議体の活動状況
(1)平成28年度の相談事例等の分析
障がい者差別解消の取組みを検証し、条例附則に規定する見直し検討に資することを目的に、大阪府障がい者差別解消協議会の下に合議体を組織し、広域支援相談員の相談状況等を総合的に分析と検証を実施。
(広域支援相談員による相談対応と合議体における検証のスキーム:図のテキスト版)
(2)合議体で検証した広域支援相談員が対応した相談事例
商品/サービス | 感覚過敏のある人のプール利用 |
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盲導犬利用者の飲食店利用 | |
電動車いす利用者の移動における対応 | |
講習会における要約筆記利用 | |
遊戯施設における車いす利用者への制限等 | |
精神障がいがあると伝えた人に対する引っ越し業者の対応 | |
※ 上記以外に委員提供事例を活用して考え方を整理 | |
福祉サービス | ※ 委員提供による福祉現揚の想定事案を活用し、障がい者の権利擁護と合理的配慮の提供に関して、課題の抽出と考え方を整理 |
公共交通機関 | 盲導犬利用者の飛行機搭乗 |
電動車いす利用者に対する乗務員の言動 | |
※ 上記以外に委員提出事例を活用し考え方を整理 | |
住宅 | 障がいのある人の家族からの住宅賃貸の相談 |
※ 上記以外に委員提供事例を活用し考え方を整理 | |
教育 | ※ 委員提供事例を活用し、学校現揚における合理的配慮と環境の整備に関して考え方を整理 |
医療 | 電動車いす利用者の受診 |
その他 | 聴覚障がいがある人に対する職揚の対応 |
(3)相談状況の整理と検証のポイント
○ 相談事例の範囲
- 「差別的・不適切な言動」等の事例についても、相談や分析等の取組みの対象。
- 障がい者間の異なる取扱いにおいて、不当な差別的取扱いのおそれがあるものは、差別的取扱いに準じる。
○ 相談対応の姿勢
- 円滑な解決に向けては、初期対応が重要。
- 対応の対象範囲外の相談であっても、特に初期対応を丁寧に行い、権限なる機関につなぐ。
○ 相談の分類と整理
- 合理的配慮の不提供が要因となって、サービス提供が拒否・制限・条件付けされたものは、「不当な差別的取扱い」として運用。
○ 「あっせん」の考え方
- 「不当な差別的取扱い」を断定できないものについても、あっせんを活用して解決することも可能。
- あっせんは、様々な影響を勘案し、障がい者本人の意向に十分留意しつつ、共生社会の実現に資することを基本的なスタンスとする。
○ 府の役割
- 分析等の成果を踏まえ、「大阪府障がい者差別解消ガイドライン」の改訂をはじめ工夫した啓発活動を展開する。
- 合理的配慮の実践や好事例を広く示すなど、事業者の自主的な取組みを支援する。
- 分析等の成果を市町村とも共有する。
- 事例の蓄積と課題や対応等の整理を行い、広域支援相談員の対応力の強化を図る。
5.障害者差別解消に関する今後の取組について
- 法施行から間もない平成28年度は、広域支援相談員が受ける相談のうち約8割が障がい当事者等からの直接相談、残り2割弱が市町村を通じた相談となっている。障がい者差別の解消を効果的に推進するためには、障がい者にとって身近な地域における主体的な取組みがなされることが重要。
- 既に大阪府内の全ての市町村には相談窓口が設けられているが、相談への迅速かつ適切な対応など、相談対応力のさらなる向上が期待されているところ。一方、相談内容によっては、市町村のみでは対応が困難な事案もあり、その解決に向けて、府と市町村が連携して取り組むことが求められる。
- このため、大阪府においては引き続き、相談への対応姿勢等について、市町村への情報伝達を積極的に行うとともに、相談対応力の向上に向け、市町村の個々の状況を踏まえた意見交換の場の設定など、市町村への支援に取り組んでいく。