7-9:兵庫県――差別解消に向けたアイデアがあちこちに

ポイント

  • 障害者差別解消相談センターの開設等、相談体制の充実
  • 県職員対応要領に検証機能

1.兵庫県の概況

人口:5,514,731人(平成29年2月1日現在)
障害者手帳所持者数:330,422人(平成28年3月31日現在)

2.兵庫県における障害者差別解消に関する取組

(1)兵庫県障害者差別解消推進要綱の策定

  • 平成28年2月19日策定
  • 第1~第10で構成され、障害者差別解消法施行に当たっての、県としての基本的な考え方を記載

参照:
http://web.pref.hyogo.jp/kf08/documents/sabetsuyoukou.pdf


(2)職員対応要領の策定

  • 内閣府のものに準じて作成。ただし、評価・検証システムを組み込む。
  • 3年サイクルで職員への意識調査を実施し、評価検証する仕組み。

(3)障害者差別解消相談センターの開設

県職員対応要領の検証システム:図のテキスト版

  1. 平日10~12時、13~16時(年末年始を除く)
  2. 障害者差別に関する悩み相談の場として、相談対応業務経験が豊富な社会福祉士または精神保健福祉士が、対面・電話・ファクス・メールで助言等を実施(面談用ブースも設置)
  3. 必要に応じて相談員や調整員が調査等を行うほか、斡旋・調停機関とも連携
    ⇒相談センターでの相談受付状況は、上半期で128件。
相談形態
来所 4
電話 112
FAX 2
E-mail 9
相談分野
福祉 17
医療 7
小売 2
労働 16
教育 4
交通 7
サービス 16
行政 19
家族 2
住民 3
37

(4)弁護士・福祉専門職法律相談

  1. 週2回(毎週火・木曜日)13~16時 ※火曜日は県委託事業、木曜日は兵庫県弁護士会の自主事業として実施。
  2. 既に訴訟を念頭に置いている方や、成年後見・財産管理・人権問題等、法的な観点からのアドバイスを必要とする方を対象に、無料での法律相談を実施。
  3. 三者間同時通話システムを活用し、弁護士・福祉専門職(社会福祉士/精神保健福祉士)が対応。

障害者差別事案への対応体制:図のテキスト版

(5)合理的配慮アドバイザーの派遣

〇アドバイザーの業務

  1. 法第8条に規定する責務の遂行に取り組む事業者に対して助言を行うこと。(合理的配慮の助言)
  2. 県民及び事業者が行う障害を理由とする差別の解消に関する理解を深めるための学習会等に対して助言を行うこと。(研修会の講師、バリアフリー化投資の助言等)
  3. 前2号に掲げるもののほか、障害福祉局長が必要と認めるもの。

〇合理的配慮アドバイザー制度の仕組み

  1. 企業は合理的配慮アドバイザー(障害者雇用・対応等のエキスパート)から、無償で助言の提供等を受け、自社に必要な合理的配慮の提供を構築することができる。
  2. 県は、合理的配慮アドバイザーに対して必要な経費(謝金・旅費)を支給する。

(6)権利擁護のための普及啓発(主なもの)

  1. 障害者差別解消法の手引【平成27年5月発行】
  2. 県民・事業者ガイド(実践事例集)【平成28年3月発行】
  3. 地域フォーラム(県・内閣府)【平成28年7月29日(金)開催】
    • 複合差別(女性障害者、障害児)対策
  4. 政策プレゼン・コンテスト【平成28年12月4日(日)開催】
    • 障害及び障害者を理解するための県民への啓発
    • 差別解消法の理解促進(若い世代への教育効果)

3.兵庫県障害者差別解消支援地域協議会

(1)差別解消支援地域協議会の編成

  • 本県の差別解消施策体系に、個別紛争事案のあっせん・調停機能は含まれないため、内閣府による設置・運営指針の例示機能のうち、
    イ:関係機関等が対応した相談に係る事例の共有
    エ:障害者差別の解消に資する取組の共有・分析
    カ:障害特性の理解のための研修・啓発、障害者差別の解消に資する取組の周知・発信
    を主たる機能として差別解消支援地域協議会を整備。
  • 障害者施策推進協議会・自立支援連絡協議会を母体として民間事業者等が参加し、障害福祉審議会という名称で開催。
  • 加えて、「障害者委員会」を本県独自に設置。当事者を中心に具体的事例について分析検討し、意見等を提案。

(2)構成メンバー

学識経験者 兵庫県議会議員
関西福祉大学社会福祉学部准教授
関西大学社会学部教授
大阪市立大学大学院生活科学研究科准教授
神戸大学大学院法学研究科教授
神戸新聞社論説委員
福祉業務等従事者 一般社団法人兵庫県医師会副会長
一般社団法人兵庫県精神保健福祉士協会会長
一般社団法人兵庫県精神科病院協会会長
兵庫県精神神経科診療所協会会長
姫路聖マリア病院診療部小児科顧問兼医療型障害児・者施設準備室室長
社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会常務理事
一般社団法人兵庫県知的障害者施設協会会長
兵庫県人権擁護委員連合会会長(弁護士)
就労支援関係者 加古川就業・生活支援センター所長
NPO法人兵庫セルプセンター理事長
兵庫県社会就労センター協議会会長
兵庫県経営者協会副会長
市町関係者 兵庫県市長会理事
兵庫県町村会理事
障害関係者 公益財団法人兵庫県身体障害者福祉協会理事長
公益財団法人兵庫県手をつなぐ育成会理事長
NPO法人発達障害をもつ大人の会代表
一般社団法人兵庫県相談支援ネットワーク代表理事
公益社団法人兵庫県精神福祉家族会連合会副会長 
兵庫県精神保健福祉協会会長
兵庫県難病団体連絡協議会幹事
公募委員(身体障害者当事者)
公募委員(知的障害者当事者)
公募委員(精神障害者当事者)
行政関係者 県立光風病院院長
神戸地方法務局人権擁護課長
兵庫県教育次長
兵庫労働局職業安定部長

4.会議等の実施状況

(1)地域協議会の開催状況

〇平成28年度
日時:平成29年2月
議題:
1 第四期障害福祉計画の評価
2 第五期障害福祉計画の策定に向けた検討
3 障害者差別解消法施行後の状況について

(2)障害者委員会の開催状況

〇平成28年度
日時:平成28年8月
議題:障害者差別解消相談センター等の対応からの事例分析と検討
事例1 代筆を巡る合理的配慮の提供と利益相反への懸念について
事例2 過重な負担か、必要かつ合理的な配慮かについて
事例3 配慮を求める意思表示と社会通念について

5.障害者差別解消に関する今後の取組について

(1)現状

  1. 事業者については、差別解消法に対する理解が不十分なケースもあるが、障害者に対する配慮に関する意識は着実に向上している。
  2. 差別解消法の主旨は、障害者・事業者との建設的対話を通じた相互理解にあるが、一部の障害者については、対話よりも、行政に代理対応(事業者への指導・制裁)を求めるケースもある。
  3. 合理的配慮の実施や求めにあたっては、事業者と障害者がお互いの状況を理解し、尊重するため、丁寧に対話することが重要である。
  4. 障害者差別に関する事例の蓄積が全国的にもまだ十分ではないことから、不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供に係る過重な負担について、今後も幅広く事例を収集する必要がある。

(2)制度的課題

  1. 労働分野等とは異なり、法制度上、障害者差別に関する統一的な枠組に基づく斡旋・調停等の仕組みが存在しない。
  2. 差別解消法には私法上の効力がないため、障害者の救済には、従来どおり、民法上の一般原則(不法行為、信義則違反、名誉毀損等)に頼らざるを得ない。
  3. 相談体制の整備や差別解消支援地域協議会の運営等が法的義務等とされているにも関わらず、必要な財源上の措置がなされていない。

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