7-10:兵庫県明石市――障害者差別解消のパイオニア

ポイント

  • 地域協議会を核とした、差別解消に向けた多彩な取組み
  • 合理的配慮の費用を市が助成

1.明石市の概況

人口:(平成28年)293,227人
障害者手帳所持者数:16,582人(平成28年3月31日現在)
⇒明石市の人口の約5.6%

身体障害者 11,962人
知的障害者 2,420人
精神障害者 2,200人

※平成30年度に中核市への移行に向けて準備を進めている。

2.明石市における障害者差別解消に関する取組

(1)差別事例の収集

  • 差別解消条例制定に向けた収集事例の件数202件(146件)
    ※カッコ内は、2015年4月から1か月間の差別事例収集で寄せられた件数。カッコ外の数字は、前年の手話言語・コミュニケーション条例検討委員会で集めたコミュニケーション場面の事例を加えた件数。

(2)(仮称)明石市差別解消条例検討会の開催

2015年5月 ●第1回検討会の開催
*障害者差別解消法施行に向けた動きの説明
*障害を理由とした差別と思われる事例の検討6月~7月
*事業者アンケートの実施
*6月「障害のある人もない人も共に暮らすまちづくり」フォーラムの開催
*7月タウンミーティングの実施(市内2か所)
8月 ●第2回検討会の開催(※第1回モデル会議)
*タウンミーティングと事業者向けヒアリング結果の報告
*地域協議会の在り方について(内閣府アドバイザーからの説明)
10月 ●第3回検討会の開催(第2回モデル会議)
*条例素案の検討
11月 ●第4回検討会の開催(第3回モデル会議)
*条例素案のまとめ
12月 *地域共生フォーラム開催(内閣府との共催)
12月~2016年1月 *パブリックコメントの実施(市民17人・46件の意見)
2016年3月 *市議会に条例提案⇒成立

(3)〔通称〕障害者配慮条例の施行

明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる福祉のまちづくり条例:図のテキスト版

(4)障害理解の研修・啓発などの普及

1 市職員を対象とした研修

〇職員対応要領研修

  • 7月に4回に分けて開催。
  • 参加者:192人。
  • 内容:障害者差別解消法と職員対応要領策定の背景と考え方、市民対応のロールプレイ等。

〇ユニバーサルマナー研修

 意識のバリアフリーの実現のために、多様性を理解し、障害者等への応対マナーを身につけ、障害者への「合理的な配慮」に向けた市職員としての応対スキル向上を図る。平成27年度より継続して開催している。

  • 平成27年度より5回実施。
  • 参加者は209人。
  • 内容:障害者の「障害」に関する定義と基礎知識や、無関心と過剰にならないための向き合い方など。

2 市民、事業者への周知・啓発の取組

○市民タウンミーティングの開催
 障害のある市民とない市民がともに暮らしやすいまちづくりを進めるため、条例の考え方等を共有し意見交換を行い、交流を深める。

  • 7月から8月にかけて4回実施。
  • 内容:障害当事者や家族、支援者と障害のない市民が、感じていることや必要な配慮、市の取り組み等について意見交換を行う。
    →参加者から、内部障害や難病等の外見からはわかりづらい障害のある人に配慮できるようなマークの作成や周知について要望あり。また、障害がない人に積極的に周知できるような取り組みが重要との意見が多く出された。

○事業者団体への周知

  • 障害者配慮条例の啓発用パンフレットにおいて、障害種別ごとに必要な配慮を掲載。
  • 明石市医師会、明石商工会議所、明石食品衛生協会、兵庫県宅地建物取引業協会明石支部、明石観光協会、明石理美容士会、明石旅館ホテル組合、明石飲食業組合、明石タクシー協会にパンフレットの配布と説明。
  • 市ホームページにもパンフレット内容を掲載。

(5)相談体制の整備

  • 条例施行後、相談窓口としては4つの窓口(福祉総務課障害者施策担当、障害福祉課、発達支援センター、基幹相談支援センター)を設けて連携して対応している。
  • 4月から12月末までの相談総数は22件
内訳
学校 1件
施設・建物 7件
雇用 2件
商品・サービス 3件
交通機関 1件
福祉サービス 3件
医療 1件
個人間 1件
その他 3件

(6)合理的配慮の提供支援に関する公的助成制度

○ 趣旨:
 事業者や地域の団体が、必要な合理的配慮を提供するための環境を整える際に必要な費用を市が助成する。

〇 利用可能な団体:

  1. 商業者などの民間の事業者
  2. 自治会などの地域の団体
  3. サークルなどの民間の団体

○ 助成対象となる費用:

  1. コミュニケーションツールの作成 *上限5万円
    例)点字メニュー、チラシの音訳、コミュニケーションボードなど
  2. 物品の購入 *上限10万円
    例)折りたたみ式スロープ、筆談ボードなど
  3. 工事の施工 *上限20万円
    例)簡易スロープや手すりなどの工事の施工にかかる費用

⇒ 平成28年4月の障害者配慮条例施行と同時に「合理的配慮の提供支援に係る助成金制度」をスタートさせた。点字メニューや筆談ボード、簡易スロープなどの環境整備を想定しており、平成28年12月末時点で125件の申請があった。

(内訳)

  • コミュニケーションツールの作成(点字メニュー):24件
  • 備品の購入(筆談ボード86件、折りたたみ式スロープ8件):94件
  • 工事の施工(段差の解消、手すりの取り付けなど):7件

(7)明石市障害者差別解消に関するガイドライン

  • 障害者差別解消法に基づき整備した明石市障害者差別解消に関するガイドラインの別冊の中で分野ごと(商品・サービス/福祉サービス/公共交通機関/住宅/教育/医療/雇用)の合理的配慮の具体例を示した。

ガイドライン:
https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/fu_soumu_ka/sabetsu/documents/guideline.pdf
事例集:
https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/fu_soumu_ka/sabetsu/documents/s4_2chi1_normal.pdf


3.障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会

(1)設置形態

  • 市長の附属機関として、地域協議会を設置する。(障害者配慮条例第15条条1項)
  • (相談及び助言で解決できない場合の)あっせんを行うほか、障害を理由とする差別を解消するための必要な事務を行う。(同条2項)
  • 地域協議会は、障害者差別解消法に規定する障害者差別解消支援地域協議会(第17条1項)を兼ねる。(同条4項)
  • 地域協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。(同条5項)

(2)構成メンバー

協議会委員 当事者 明石市身体障害者福祉協会副会長
明石ろうあ協会事務局長
明石市視覚障害者福祉協会
明石地区手をつなぐ育成会会長
NPO法人明石ともしび会理事長
法曹等 西宮市権利擁護支援センター運営委員長
兵庫弁護士会弁護士
医療・保健 医療法人社団医仁会譜久山病院院長
福祉等 明石市民生児童委員協議会障害福祉専門部会長
社会福祉法人明桜会法人事務課課長
明石市障害者就労・生活支援センターあくと管理者
事業者 明石地区バス協会会長(神姫バス株式会社明石営業所所長)
明石商工会議所副会頭
国の機関 明石公共職業安定所次長
その他 公募市民 4名
明石市 理事兼福祉部長
福祉部次長
福祉部福祉総務課長
福祉部障害者施策担当課長
福祉部障害者・高齢者支援担当課長
福祉部障害福祉課長
福祉部発達支援課長
政策部シティセールス推進室広報課長
教育委員会学校教育課特別支援教育係主幹兼係長
コミュニティ推進部人権推進課長兼調整係長
土木交通部交通政策室長兼交通政策課長
産業振興部産業振興課商工担当課長
オブザーバー 福祉等 社会福祉法人明石市社会福祉協議会副理事長
地方公共団体 兵庫県明石警察署長補佐兼警務課長
国の機関 神戸地方法務局明石支局総務課長

4.会議等の実施状況

(1)会議等の開催経過

○ 第1回地域協議会(5月29日)

  • 協議会の設置目的及び設置根拠、今後の「主な協議事項」について
  • 職員対応要領(案)、障害者差別解消ガイドライン及び分野別事例(案)

○ 第2回地域協議会(8月23日)

  • 障害理解の研修・啓発などの普及

○ 第3回地域協議会(11月17日)

  • 相談事例への対応

○ 第4回地域協議会(平成29年2月16日予定)

  • 合理的配慮の提供支援

(2)主な協議事項(現状と課題)

○ 障害理解の研修・啓発などの普及について【第2回地域協議会】
障害のある人に対する誤解や偏見、無理解や、合理的配慮に関する情報不足が引き金となって発生する差別を解消していくために、地域の実情を踏まえた障害理解に関する研修・啓発等の内容を検討した。また、地域で障害理解を定着させていくために効果的な情報発信を行うために必要な取組について協議した。

【課題】

  • 全職員に条例の理念や基本的な対応方法等について、周知徹底するのは研修のみでは不十分であり、日々の職務の中で継続的な情報共有や対応の検証が必要。
  • 事業者の規模や事業内容等によって必要な配慮や対応等も異なるため、現在行われている事業所取り組み例について情報提供や助言等が必要。また、助成制度を活用して筆談ボードや簡易スロープを設置した事業者の状況把握が必要。
  • 市民タウンミーティングの参加者は障害当事者や家族、支援者が多い。障害のない人たちへの効果的な情報発信が必要。

〇 相談事例の対応について【第3回地域協議会】
 地域全体の相談対応力の向上につなげていくために、関係機関等が対応した相談事例に関する情報、合理的配慮の提供に結びついた事例、相談を踏まえて実施した調整の内容等について事例を共有し、必要な協議を行った。

【課題】

  • 差別と思われる事例を収集した報告(第1回差別解消条例検討会平成27年5月)の事例総数(202件)からみると、表に出てこない実際の該当事例はもっとあると思われるが、それを相談につなげていくことが必要。
  • 相談窓口の周知や条例の基本理念などについて、理解が定着していない。

〇 合理的配慮の提供支援について【第4回地域協議会(本年2月予定)】
 小規模な民間の商業者や地域の自治会、サークルなどが合理的配慮の提供で発生する費用の負担感を和らげるために、全国で初めて創設された「合理的配慮の提供を支援する助成金制度」の運用状況について事務局から報告を行い、適切な運用や効果的な活用方法について協議する。

【課題】

  • 助成金制度を利用した店舗などを障害のある人が積極的に利用していく仕組みづくりの検討が必要。
  • 分野別で必要な配慮について、各分野の関係団体等への周知が必要。

5.障害者差別解消に関する今後の取組について

(1)条例の施行状況の検討と見直し

  • 条例の附則において、条例の施行状況等について検討を行い、必要な見直しを行うことが規定されていることから、条例に基づく取組に関する実施状況の点検を行い、必要がある見直し事項について検討を行う。
  • 地域づくり協議会においては、差別解消施策の協議課題である三つの柱―「障害理解の普及」「相談助言に関する体制整備」「合理的配慮の推進」に関するフォローアップを行うとともに、分野別の差別解消につなぐことのできる協議の進め方を検討し実施する。

(2)障害者計画との連携

  • 本市の障害者計画は2014年度から18年度までの5ヵ年計画として策定され、条例が障害者計画との連携が定めていることを踏まえ、19年度からの新計画においては障害者差別解消を分野横断的な課題に位置づける方向で検討する。

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